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第49話【月日は流れ】
その年は何事もなくそのまま過ぎて行った。


練習に試合、テレビに大忙しの日々を送っていて、いろいろありすぎた夏を越すと秋や冬はいとも簡単に訪れた。


次の春、変わったことと言えばみかさがフランスの州立大学に入学したこと。


高校でフランスに留学するつもりだったが烈が日本にいたため留学はやめ、大学をフランスで過ごすことに決めていた。



もちろん最初は両親からいろいろ反対されたが、烈が近いうちフランスに行くことやみかさの熱意に負けてフランス行きを認めた。


最後の最後までさくらは秘密は守り通した。



そして夏、烈は再び師匠のもとで修行するためにフランスに向かう。


阿笠とも離れてしまった。



ワールドカップで活躍した阿笠や秋人も、もうこの年にはエスパルスでスタメンを張っていた。


いとも簡単に潰れていく新人は五万といるが、2人はどんな逆境にもめげずに立ち向かい、乗り越えた。


同年、武井はドイツに、村田はスペインのチームに移籍し、本格的に阿笠はチームのエースストライカーとなり、秋人も10番を背負った。



いよいよここからまた新しいスタートを切ることになり、更にやる気に磨きがかかる。


阿笠は真っ茶色だった髪を金色に染め、片耳にピアスの穴が2つあいている。


1つは綾女と別れた次の日、全てを忘れるためにあけたもの。


そして2つめは烈が旅立つときに烈にあけてもらったのだ。


金髪にしたのはいつだったか覚えてない程度の適当な日。





たくさんのファンから手紙やプレゼントをもらい、いろんな人に告白された。


だが阿笠が本気の女性からその好意を受け取ることは一度たりともなく、また同時に阿笠の髪は伸び続ける一方だった。


翌年には、肩甲骨の最下部より下くらいまでの長さにまでなり、なおも色は金だった。


練習中は後ろで1つに結っているが、普段や試合のときなどは結っておらずそのままで金色の美しい髪がフィールドを駆け巡った。


シャギーを入れていて決して重そうではない髪は、あの穏やかな阿笠をワイルドに見立てる。


そしてその年は、4年ぶりのオリンピック開催年だった。







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