「悲痛な気持ちでお知らせしなければならない」−。北朝鮮の国営メディア、朝鮮中央テレビが19日正午からの特別放送で、金正日総書記(69)の死去の第一報を伝えたのは同局の看板女性アナウンサー、リ・チュンヒ氏(68)。ある意味、こちらも衝撃的だった。
10月19日を最後にテレビ出演がなく、“消息不明”だったことから、今月中旬には日本のメディアで“失踪”“粛清”“重病”などの諸説が飛び交っていた。60日ぶりに見せたその姿にはやつれた様子はないものの、身には喪服のような黒い民族衣装をまとい、発せられる声は悲しみに震えていた。
朝鮮中央テレビは19日午前10時に、別の女性アナウンサーが「正午に特別放送がある」と異例の事前放送をしていた。正午になって本放送が始まると、“消息不明”となっていたはずのリ氏が登場、厳かに金総書記の訃報を伝え始めた。
リ氏の最大の特徴といえば「独特の口調」。金総書記に関するニュースは威厳に満ちて丁寧。米国や日本を非難するときには、威圧的(ほとんどケンカ腰)で強い。国民を鼓舞するようなときは絶叫調と変幻自在だ。
平壌演劇映画大学卒業後、国立演劇団に入り女優として活躍していただけあって、ニュースを口で伝えるというよりも、体全体で演技しているようだった。
今回も涙で目をはらせたように見える顔で、手元の原稿に視線を落としながら、金総書記の偉業を伝えた。声は震え、涙をこらえるように全身で悲しみを表していた。
リ氏は、北朝鮮のアナウンサー格付けで6人しかいない最高位の1人。他に「労働英雄」の称号も持つ“超エリート”とされる。
(紙面から)