広島で被爆し、医師として被爆者治療や救援活動に携わりながら原爆や原発の危険性を訴えてきた肥田舜太郎さん(94)=さいたま市=の講演会が17日、佐賀市で開かれた。肥田さんは福島原発事故に触れ「被爆者は病気以上に差別に苦しんできた。福島でもすでに同じ苦しみが始まっている」と警鐘を鳴らした。
軍医だった肥田さんは原爆投下時、往診のため爆心地から約6キロの広島市郊外の村にいた。村へ逃げてきた被爆者を治療することになった肥田さんは、目、鼻、口から血を噴き出し、髪の毛がごっそり抜け落ちて死んでいく様子を目の当たりにし「こんな恐ろしい死に方は他になかった」と振り返った。
被爆しなくても、内部被ばくで被爆者同様に死ぬ患者が増えたといい、「知らないうちに放射性物質の粒子が体に入れば被ばくしたことになる」と、内部被ばくの危険性を指摘。「今まで以上に原爆、原発を地球上からなくす努力をすることが子孫たちへの義務」と訴えた。【田中韻】
毎日新聞 2011年12月18日 地方版