どさくさ紛れ。悪知恵。火事場泥棒。何と表現していいのやら。混乱が続くさなかでの恥知らずな行為である。しかもその混乱が東日本大震災とあっては、乗じる側の姿勢さえ問われる▲
個人の事ではない。れっきとした国家政策の話である。第3次補正予算に、南極海での調査捕鯨経費として約23億円が計上されたという。当初予算と合わせて約30億円なり。最大で、過去の予算規模の6倍にも上るという▲
予算要求した水産庁の話。「調査を安定的に実施し、石巻周辺の復旧・復興につなげたい」。むろん、石巻市は全国有数の捕鯨基地ではある。だが、市内の鯨肉加工会社は被災し操業停止。捕鯨会社も船を流されたという▲
せっかくの「超大幅増額」なのに、加工会社復旧など被災地のインフラ整備は対象外。「整備されても鯨肉がなければ、加工食品は作れない」と水産庁。「商業捕鯨を復活させることが復興になる」と臆面もなく述べる。全く、順番が逆だろう▲
調査捕鯨を受託する日本鯨類研究所などは先日、妨害行為を行う団体相手に米国で提訴した。妨害対策にも税金は使われる。それも復興予算? やはり、そんな理屈は通るまい▲
捕鯨の是非以前の話だ。堂々と「被災地支援」と言う心根が悲しい。被災者が捕鯨継続のために利用されたとするならば、罪深い。そして、捕鯨史に刻まれる汚点となる。