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交通事故死者 昨年超す84人

2011年12月14日

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ライトの真ん中に人がいることが分かりにくくなる蒸発現象

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反射材を身につける場所によっても、ドライバーからの見え方が違ってくる=いずれも熊本市明徳町

  県内で急増している交通死亡事故を受け、県警は13日、県内23警察署の交通課長らを集めた緊急会議を開いた。歩行者の死亡が相次いでいるなどと報告され、安全意識を高めるために県民に注意を呼びかけていくことを確認した。

  県内の今年の交通事故死者数は、9月までは1桁だったが10月に11人、11月に14人、12月に6人と急増。12日までに計84人と昨年(78人)を超えた。今年は歩行者の死亡事故が目立つといい、昨年より12人多い31人が死亡。特に夜間は17人と半数以上を占めるという。

  また県警は、ドライバーの安全意識の低下を懸念。漫然運転による死亡事故が6割を超え、歩行者を巻き込んだケースでは運転者の8割が衝突やその直前まで相手に気づかなかったという。一方、歩行者も6割以上が左右不確認など注意力の欠如があったとしている。

  県警本部の木庭強交通参事官は「事故防止の基本である『(ドライバーや歩行者は)見ること、見せること』を大切に」と、事故防止に努めるよう呼びかけた。

  どうすればドライバーは夜間の事故を防げるのか。歩行者の安全対策は――。県警が実施した実験に参加して闇に潜む危険を体感しつつ、注意すべきことを学んできた。

  11月末の日も暮れた午後6時半、熊本市明徳町の県警交通機動隊訓練場。照明が消され、まずはドライバーからの色の見え方を確かめる実験に挑戦した。100メートル先に並べた色つきコーンをライトで照らしたまま進む。コーンから75メートルの地点で白や黄、赤の3色を識別し、35メートルまで近づいて緑、青、紺が浮かび上がった。

  全部でコーンは6本かと喜んでいると、「あと1本あります」と担当者。近づいて目を凝らすと白と黄の間にやっと黒を発見することができた。

  一方で、ライトをハイビーム(上向き)にすると75メートルで黒と紺以外を確認。50メートルで黒以外が分かり、30メートルでは7本すべてが見えた。

  県警交通企画課によると、下向きライトの明かりが届く距離は40メートルだが、ハイビームは100メートル。利用することで歩行者らを早く確認し、事故を防げるという。ハイビームはほかの車両にとってはまぶしく、使うことに抵抗がある人も少なくないが、「対向車や先行車がいたら下向きにし、それ以外はハイビームが基本でいい。こまめな切り替えを」と同課。

  歩行者が注意したほうがいいことも教えてもらった。対向車のライトの影響で、ドライバーから歩行者が一瞬見えなくなる「蒸発現象」だ。実験では、ライトをつけた対向車の前を人が横断。二つのライトの間に入った瞬間、姿が消えた。じっと見つめても、足が影になって見えただけだった。

  この現象を防ぐのに有効なのが反射材だ。それぞれ手と足、胸につけた場合とで実験を再開したが、動きのある手と足のほうが胸よりはるかに認識しやすかった。

  歩行者は反射材の有無や付け方で、運転者はハイビームを利用するだけで夜間の安全度はより増す。ちょっとした意識で、悲しい事故は減らせるかもしれない。(山本恭介)

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