失楽園


 

 
オハシノユウコ


証言2。


中田優子。19歳。
 『ゴシュジンサマ』の通う学校の近くのコンビニでバイトしていた。
 いわゆるフリーターで親元を離れ一人暮らしをしていたため失踪認定が遅れた。
 地元の暴走族に所属していた模様。
 催眠度は浅い部類。


−こんにちは。名前から教えてくれるかな?

「ああん?名前?『オハシノユウコ』だ。」

−オハシノユウコっていうのはどういう字を書くのかな?

「はぁ?オマエばかかぁ?お箸の優しい子に決まってんだろ?」

−あ、ああ、そうだね、ごめんね。

「ごめんで済んだらケーサツいらねーんだよっ。イシャリョー払えよイシャリョー」

−慰謝料はまた今度ね。次の質問は・・・歳はいくつ?

「シラネー」

−歳はいくつかな?

「オボエテネー」

−歳を言うのが恥ずかしいのかな、じゃ次の質問ね。ユウコさんは『あの館』でどんなことをしていたのかな?

「べっ別に恥ずかしいワケじゃねーよ。それとアタシの名前は『ユウコ』じゃねぇ、『オハシノユウコ』だっつーの、1回で覚えろよ」

−ああ、ごめんね。じゃ、『オハシノユウコ』さんは『あの館』で何をしていたのかな。

「アンタバカァー!?お箸って言ったらゴハン食べるときのお箸に決まってんじゃん!!」

−・・・ゴハンを食べるときのお箸をしていたってこと?

「そうだよ、それ意外にナンカあるかボケぇ?」

−んー、もうちょっと詳しく教えてくれないかな、決まりなんだ。

「ちっ決まりかよ。ならしかたねーな。教えてやるから海よりも深く感謝しろよな。お箸ってのは二つで一つを挟むものだよな?人差し指と親指で食べ物挟むだろ?それをご主人様に、あーんって食べさせるわけだ。それかあれだ口移しとかな、上唇と下唇で挟むわけだな。ま、あれだ、要するに食べ物をご主人様の口に運ぶのがアタシの役目さ。な、カンタンだろ?」

(『決まり』『約束』といったことには素直に従ってくれる。彼女らに施された催眠のキーワード的なものなのだろうか)

−うん、簡単だね。他には何かないかな?

「そうだなー、ご主人様の機嫌がいいときは、『椅子』に座ったご主人様にまたがってアタシのコキタネーマンコにご主人様の逞しいオチンポ様をぶち込んでもらいながら、口移しでフルーツ食べさせたりしたなー。ううー、楽しかったなーご主人様早く帰ってこねーかなー。なぁ、アンタご主人様がどこにいるかわかんねーの?」

−残念ながら『ゴシュジンサマ』がどこにいるのかまだわかってないね。

(『ゴシュジンサマ』の行方は未だにわかっていない。彼女達の話しによるとある日突然いなくなってしまったらしいが)

「てゆーかさー、アタシらいつになったらこんな辛気クセーとこから出れんのさ?」

−きっともうすぐでれるよ。

(少なくとも人前でチンコだのマンコだの言わなくなってからだな)

「つまんねーのー」

−次の質問いいかな。『あの館』にいた人達のことを教えてもらいたいんだ。

「ふーん?別に口止めされてるわけじゃないからいーけどよ。まず、ご主人様。んでご主人様お気に入りの3人。ま、アタシはこの3人はあんまり好きじゃなかったね、すぐにご主人様を独占するんだもんなー。『食堂』の連中とは仲よかったな。『皿』『コップ』『テーブル』『椅子』『シャンデリア』『哺乳瓶』『ナイフ』『フォーク』『スプーン』・・・、そういえば『ナイフ』と『フォーク』と『スプーン』は三つ子でさー、3人そっくりで見分けがつかないんだけど、ご主人様だけは見分けがつけられたんだよなー。あれってなんでわかるんだろうな?」

(新しい『名前』が出てきた。『コップ』『テーブル』『シャンデリア』『ナイフ』『フォーク』『スプーン』。他は今までの経験からある程度の想像がつくが、『シャンデリア』がよくわからないので。確認してみることにする)

−『シャンデリア』さんていうのはどんなことしてたのかな?

「はぁ?オマエホントっとにバカだなぁ。お箸すらわかんねーんだから仕方ないか。で、『シャンデリア』がなんだって?』

−いや、だから『シャンデリア』さんがどんなことをしていたのか、と。

「そりゃオマエ、『シャンデリア』なんだから照明だよ。決まってんだろ?天井からぶら下がって緊縛されていろんなとこにロウソクつけて食堂を明るく照らしてたんだよ。ジューヨーな仕事だぞ?暗いと何も見えないからな」

−『シャンデリア』さんはその時どんな様子だった?

「嬉しそうにしてたなー、ま、当たり前か。ご主人様のお役に立ててるんだ嬉しいに決まってるじゃん。ニッコニコしながら吊るされてたぞ」

−『シャンデリア』さんの『名前』はわかるかな?

「あー、あいつら6人で交代制だったからなー。重労働なんだよ意外と。ガッチガチに縄キめられて何時間も吊るされるんだからなぁ。名前ねぇ・・・グループ名ならわかるんだけどな」

−グループ名?

「サプライズ娘。って知らね?アイドルグループの。あれの卒業メンバーが次々増えてったんだ。増えすぎてご主人様に飽きられたヤツから減っていったけどな」

−・・・な、なるほど。

(サプライズ娘。かつて国民的人気を誇ったアイドルグループ。人気メンバーの卒業で徐々に人気が衰えてはきたが未だに熱狂的なファンがいるという。・・・しかし、卒業メンバーが『あの館』に連れ去られていたとは・・・。卒業メンバーに限らず、現メンバーにも調査が必要か)

−じゃ、次は『コップ』さん達について・・・

「えー?まだやんの?もう疲れたよ・・・あとはまた今度な、じゃーな!」

(部屋から追い出されてしまった。口調は朗らかだが随所に異常な言動が目立つ。『ゴシュジンサマ』はいったいどんな方法で彼女達をこんな風に変えてしまったのだろうか・・・)

 
 


 

 

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