経済

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12年度税制改正:大綱のポイント

 12年度税制改正大綱は、自動車重量税の軽減や省エネ住宅ローン減税以外にも温暖化対策税導入など生活や企業活動に影響を与える改正項目を盛り込んだ。税制見直しのポイントをまとめた。

 ◆温暖化対策税

 ◇家計に転嫁の可能性も

 11年度大綱に盛り込みながら、自民党などの反対で実現していない地球温暖化対策税(環境税)創設を改めて打ち出した。原油や天然ガスなど化石燃料にかかる「石油石炭税」に上乗せする形で12年10月から導入。税率を3年半かけて段階的に1・5倍に引き上げる。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量が多い燃料から税金を多く取って省エネを促し、CO2排出抑制を目指す。

 課税対象は化石燃料を採取、輸入する電力会社や商社、石油会社など。税率の引き上げ幅はCO2排出量に応じて変わるが、最終的には原油・石油製品で1キロリットル当たり760円▽天然ガス・石油ガスは1トン当たり780円▽石炭は同670円の増税となる。資源エネルギー庁の試算によると、増税分がすべて価格転嫁された場合、ガソリンや軽油の小売価格は1リットル当たり0・79円、電気料金は標準世帯で月34円上昇する。【宮島寛】

 ◆中小企業減税

 ◇設備投資の負担軽く

 円高などによる経営環境の悪化を踏まえ、企業向けには中小企業の競争力強化やエネルギーの安定供給確保を促す減税の延長・拡充策が盛り込まれた。

 中小企業が製造設備やIT(情報技術)への投資を行う際、法人税負担などを軽くする「中小企業投資促進税制」は期限を今年度末から2年延長。その上で対象に製品の品質管理に使う試験機器などを追加する。

 また、天然ガスや石油などの資源開発に投資する企業に対し、投資損失に備えた準備金の損金算入を認める制度も2年延長する。【宮島寛】

 ◆海外資産課税

 ◇罰則で「課税逃れ」防止

 富裕層などが海外に持つ預金や株式などの資産に対する課税は強化される。海外に合計で5000万円を超える資産を保有する個人が対象で、年1回、税務当局に預金の利子や株式配当所得などの報告を義務付ける。違反すれば1年以下の懲役か50万円以下の罰金を科し、「課税逃れ」を防止する。報告で資産状況を正確につかんだ上、海外の税務当局に徴収の代行を依頼できる。【小倉祥徳】

 ◆再生エネ税制

 ◇参入促進へ優遇拡充

 再生可能エネルギーの普及を目的に、太陽光や風力などの発電設備を導入する事業者への税優遇を拡充する。現行は再生エネの発電施設を導入する事業者に対し、設備投資の3割まで初年度に損金算入することを認めているが、12年度から全額算入可能となる。現在は太陽光に限って設備導入から3年間、固定資産税を3分の2に軽減する措置についても、12年度から適用対象を風力や地熱発電に拡大。資源エネルギー庁によると、一連の減税規模は年6・8億円。福島第1原発事故の影響もあり、企業の間で売電事業への関心が高まっているが、初期投資の重さが大きなハードル。政府は事業開始当初の税負担を軽減することで新規参入を促す考えだ。【宮島寛】

 ◆給与所得控除

 ◇高所得者は実質増税

 サラリーマンにも一定の「必要経費」を認めて税負担を軽くする「給与所得控除」は、年収1500万円を超える高額所得者を対象に縮小(増税)される。現行は、年収が増えるほど、控除額(減税額)も青天井で拡大し、「高額所得者ほど得」との指摘があった。改正後は、年収が1500万円を超えると、どれだけ年収が高くても控除額は245万円で頭打ちとなる。

 自営業者だけでなく、サラリーマンもスーツ代など仕事にかかる経費はある。給与所得控除は、サラリーマンに一定のみなし経費を認め、課税額を計算する際に所得から一定割合を差し引く制度。【赤間清広】

 ◆役員退職金課税

 ◇「渡り」批判受け強化

 特殊法人や民間企業に天下りした高級官僚OBらが転職を繰り返し、高額の退職金を受ける「渡り」に対しては、強い批判がある。この批判を背景に税制改正には、勤続年数が5年以内と短い企業や団体の役員に支払われる退職金への課税を強化する措置が盛り込まれた。退職金は、通常の給与所得より課税が軽減されている。勤続年数に応じた「退職所得控除」を差し引いた上、残りの部分の半分にのみ課税する。改正後は勤続5年以内に退職する役員に限って、控除後の全額を課税対象にする。【宮島寛】

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 ◇今後の主な増減税の予定

12年 1月 省エネ住宅の住宅ローン減税拡充(~13年12月末)

       住宅購入資金にかかる贈与税の非課税枠拡充(~14年12月末)

    4月 法人税の2.4%の定率増税※(~15年3月末)

    5月 自動車重量税の減税

       エコカー減税の延長(~15年4月末)

   10月 地球温暖化対策税の導入

13年 1月 所得税の2.1%の定率増税※(~37年12月末)

       給与所得控除の上限導入

       勤続5年以内の役員退職金への優遇税制を廃止

14年 1月 海外資産5000万円超の個人に調書提出を義務化

    6月 個人住民税を年1000円増税※(~23年5月末)

 ※は東日本大震災の復興財源確保の臨時措置。省エネ住宅ローン減税などは税制改正法案の成立後、遡及(そきゅう)して適用。

毎日新聞 2011年12月11日 東京朝刊

 

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