緊急特集:東日本大震災の国際ビジネスへの影響
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日本食品輸出は再び大幅減、原発事故以降最低の水準に
2011年12月12日 農林水産・食品調査課発
ジェトロが財務省の貿易統計をまとめたところ、日本における2011年10月の食品輸出は前年同月比26.4%減の3億3,200万ドルとなり、9月の同3.9%減から再び減少幅が拡大。原発事故が発生した3月以降で最低の水準となった。
<低迷する中国向け輸出>
日本の10月の食品輸出を国・地域別にみると、中国、香港、韓国向けが前年同月を大きく割り込んだ(それぞれ、72.9%減、28.0%減、27.6%減)(表1)。寄与度をみても、これらの国・地域向け輸出の減少が、輸出額全体の減少に大きく寄与している(図1)。
表1.日本の食品輸出内訳(ドル建て)
(注)「食品」は、標準国際貿易商品分類(SITC)改訂第4版における、第00~11類を対象としている。
(資料)Global Trade Information Services, Inc.「World Trade Atlas」
図1.日本の食品輸出額の推移、各国・地域の寄与度(ドルベース、2011年1月~)
(注)表1に同じ。
(資料)表1に同じ。
2011年の3月から10月までの累計額をみると、中国、香港、韓国向け輸出の減少による影響が大きいことがみてとれる(図2)。品目別では、水産物や育児食用調製品などが大幅減となった(表2)。
図2.日本の食品輸出額の推移、各国・地域の寄与度(ドルベース、3月~10月累計)
(注)表1に同じ。
(資料)表1に同じ。
表2.輸出が減少した主な品目(単位:100万ドル、%)
(資料)表1に同じ。
<中国向け輸出に明るい兆し>
中国の食品輸入は3月以降、日本以外の国・地域からの輸入が前年を上回る水準で推移するなか、日本からは前年を大きく割り込んだ(図3)。この背景として、水産物を除いた食品の輸入が事実上停止状態になっていたことなどが挙げられる。一部品目では、日本産が他国・地域産に代替される動きもみられた。
図3.中国における食品輸入動向(ドルベース、前年比伸び率、2011年1月~)
(注)表1に同じ。
(資料)表1に同じ。
しかし、11月24日に日中政府間で産地証明書の様式について協議が整ったことに伴い、指定された10都県以外で生産された食品・飼料(ただし、一部品目を除く<注1>)の輸入が可能となった。ジェトロが9月末から10月中旬にかけて中国5都市で実施した消費者意識調査(注2)では、中国の一般消費者の約8割が「日本食が好き」、7割弱が「輸入が再開されれば日本食を買う」といった日本食への肯定的な見方をしており、根強い日本食の人気は今回の証明書発行に関する政府間合意がなされたなか、今後の輸出回復に向けた明るい材料となろう。
ただし、中国経済の減速懸念や昨今の円高傾向といった不安材料も残ることから、引き続き注視を要する状況が続いている。
(注1)農林水産省ウェブサイト「中国向けに輸出される食品等に関する証明書の発行について」参照。
(注2)調査レポート「「中国消費者の日本食品に対する意識調査報告書‐主要都市(北京、上海、広州、深セン、成都)1,500人インターネット調査」参照。