1940年代のアメリカで、初めてケーキミックスが発売された当初、この手軽な調理食材はなぜか人気がなかった。パイ用のミックス粉やスコーン用のミックス粉といった、類似商品が爆発的に売れていたにもかかわらずだ。それに対し、料理記者のローラ・シャピロは「ケーキは、スコーンやパイに比べて特別な料理だからだ」と指摘した。つまり、水を加えるだけのケーキミックスでは、特別な料理を作っている感じがしないというのだ。
そこで、心理学者でありマーケティングの専門家でもあったアーネスト・ディヒターが、ケーキミックスから「乾燥卵」を取り除くことを提案した。そうすれば、ケーキミックスに卵を混ぜるという“手間”を、調理者がかけられる。すると、ケーキ作りの満足感も高まるというのだ。この「タマゴ理論」にのっとって、あえて不完全なケーキミックスを、ピルズベリー社が実際に販売したところ、一躍売り上げが伸びたという。
つまり、人は手間をかけて作るものほど価値があると思い込み、満足する傾向があるのだ。例えば、組み立て式の家具を販売する「IKEA」の人気にも、この人間の心理が影響している。
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