韓国の歴代政権では、大統領の親族による不正が繰り返されてきた。全斗煥(チョン・ドゥファン)政権では、全元大統領の長兄、全基煥(チョン・ギファン)氏がソウル市の鷺梁津水産市場の運営権を強引に奪取したとして逮捕された。弟の全敬煥(チョン・ギョンファン)氏もセマウル運動本部会長として在任中、公金70億ウォン(約4億7000万円、円換算は現在のレート、以下同じ)余りを着服した疑いで、次の盧泰愚(ノ・テウ)政権発足直後に起訴された。いとこの全淳煥(チョン・スンファン)氏、全禹煥(チョン・ウファン)氏、妻の兄弟の李昌錫(イ・チャンソク)氏も収賄、脱税、横領などの罪で逮捕された。
盧泰愚元大統領の妻のいとこに当たる朴哲彦(パク・チョルオン)氏は、スロットマシーン業者から金品6億ウォン(約4000万円)を受け取ったとして逮捕された。
金泳三(キム・ヨンサム)元大統領は「親族政治」を禁止する原則を打ち出した。当選直後に親族数十人を呼び「カネを包んで接近してくるハエに注意しろ。100ウォン受け取っただけでも逮捕させる」と忠告した。しかし、金元大統領の次男、金賢哲(キム・ヒョンチョル)氏は斗洋グループ会長などから利権に絡む便宜を図るよう要求され、30億ウォン(約2億円)余りの金品を受け取ったとして逮捕された。現職大統領の息子が逮捕されたのは初めてだった。
金大中(キム・デジュン)元大統領は、選挙戦で「大統領親族不当行為禁止法」の制定を公約に掲げ、8親等以内の血族、4親等以内の姻族を管理した。しかし、金大中元大統領の3人の息子はいずれもさまざまな不正事件に関与し、法廷に立った。長男の金弘一(キム・ホンイル)氏は「李溶湖(イ・ヨンホ)ゲート」「陳承鉉(チン・スンヒョン)ゲート」と呼ばれる不正事件で在宅起訴された。次男の金弘業(キム・ホンオプ)氏は利権に便宜を図る見返りに25億ウォン(約1億7000万円)を受け取り逮捕された。三男の金弘傑(キム・ホンゴル)氏も「崔圭善(チェ・ギュソン)ゲート」と呼ばれる事件に関与し、逮捕された。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領は民政首席秘書官室の下に大統領の親族を監視する特別監察班を設置したが、兄の盧建平(ノ・ゴンピョン)氏は、農協の世宗証券買収に絡む収賄事件で、30億ウォン(約2億円)を受け取ったとして、大法院(最高裁に相当)で懲役2年6月、追徴金3億ウォン(約2000万円)の判決を受けた。また、盧前大統領の夫人、権良淑(クォン・ヤンスク)氏が朴淵次(パク・ヨンチャ)元泰光実業会長から大統領府(青瓦台)の官邸で600万ドル(約4億8000万円)を受け取った疑惑が浮上。盧前大統領は検察の取り調べを受けた後、2009年5月に自殺した。
高麗大の李来栄(イ・ネヨン)教授(政治外交学)は「帝王的な大統領制の特性で、親族が権力に通じるロビー活動の窓口になっている」と指摘。 慶熙大の尹聖理(ユン・ソンイ)教授(政治外交学)は「大統領がどれだけ真剣に親族の不正を監視するかがカギだ」と語った。また、明知大のキム・ヒョンジュン教授は「親族の不正について、大統領府民政首席秘書官室だけでなく、検察、警察も大統領に直接報告できるように、『競争体制』を整える必要がある」と提言した。