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橋下新市長:批判的職員に反省文書かせ、市は「忠誠」通達

橋下徹・新大阪市長
橋下徹・新大阪市長

 大阪市が今月8日、「職員は市長の職務命令に忠実に従う」とする法律の規定を周知徹底させるよう、全所属長に異例の通達を出していたことが分かった。11月27日の市長選後、橋下徹氏や大阪維新の会に対する職員の否定的なコメントがテレビで放映されたのがきっかけで、橋下氏の意向を受けた措置。橋下氏は、職員を特定して「反省文」を提出させており、識者からは「越権行為だ」との批判も出ている。

 橋下氏が圧勝した市長選を受けて、テレビの取材に応じた市職員が「民意という単語が僕の(認識)とは違う」「向こうが言っている二重行政が分からない」とコメント。これが11月28日以降、繰り返し放映された。

 映像を見た橋下氏は「『民意』とは公務員の身分で言うべきことではない。日本の民主主義がだめなのは、公務員に選挙がバカにされているからだ」と不快感をあらわにした。今月5日にはコメントした職員に発言の真意をただすよう、総務局長に指示。更に市として民意や政治への対応方針を出すよう求めた。

 総務局は8日、「民意、選挙、公選首長と公務員、行政と政治についての基本認識の徹底について」と題する内部通達文書を全所属長に配布。「市長は職員を指揮監督する権限を有し、職員は職務上の命令に忠実に従う義務を負う」など地方自治法や地方公務員法の規定を引用し、「軽率な意見表明や行動で市民の信頼を損なわないように」と指導を求めた。

 コメントした職員2人は9日までに「発言の一部だけが取り上げられ、誤解を招いた」「もう少し丁寧な言い方をすべきだった」などとする反省文を総務局を通じて、橋下氏に提出した。橋下氏は「きちっと反省の弁が出てきた。今後、2人には行政上の反対論はどんどん言ってほしいと伝えた」と、一件落着させる考えを示している。【林由紀子、茶谷亮】

◇古い体質、越権行為だ

 新藤宗幸・元千葉大教授(行政学)の話 公務員も、就業時間外や職場の外では自由な立場・人格が尊重されるというのが近代の常識。「犯人捜し」をして反省文を出させるというのは越権行為で、橋下氏自身が批判する古い体質のやり方だ。言論統制に他ならず、職員が自由な意見を言えない萎縮した組織になってしまう。職員は公務員であると同時に一市民でもある。橋下氏は、自分を批判する「民意」にも誠実に耳を傾けるべきだ。

◇統治の面で理解できる

 山中俊之・関西学院大大学院教授(人材開発)の話 カメラを向けられて、組織のトップへの批判と受け止められかねないコメントをするのは民間では考えられない。国でも地方でも、役人は選挙で選ばれた閣僚や首長を軽視しがちだ。解雇や降格がほとんどない公務員特有の体質だろう。内部では活発に意見を出すべきだが、対外的に組織批判をすべきではない。反省文を書かせるのも、ガバナンス(統治)の面では理解できる。

毎日新聞 2011年12月16日 15時00分(最終更新 12月16日 15時22分)

 

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