八ッ場ダム関係1都5県、建設継続求め緊急声明
政府が建設継続の是非を検討している八ッ場やんばダム(群馬県長野原町)について、民主党の前原政調会長が「本体工事に入ることは容認できない」と
建設に反対する発言をしたことを受け、関係する利根川流域の1都5県(東京、埼玉、群馬、栃木、千葉、茨城)は9日、共同で、前田国土交通相に建設継続の
決断を求める緊急声明を出した。
埼玉県の上田清司知事が呼びかけた。
声明文では、「国交省関東地方整備局による検証は科学的・合理的に行われ、建設継続は妥当と結論づけている。
苦渋の選択でダム建設を受け入れた地元にとって、これ以上の時間をかけることは許されない」として、早期の建設再開を求めた。
上田知事は9日、県庁で記者団に対し、「大臣が決めることに党が口を出すのは恥ずかしい話」と民主党を批判し、
「予算を集中投下して、基本計画通り2015年度までに完成させたい」と語った。
(2011年12月9日22時29分 読売新聞)
八ッ場ダム:国交省の方針尊重 官房長官、建設再開を容認
藤村修官房長官は9日午前の記者会見で、八ッ場ダム(群馬県)の建設再開について、「国土交通省で(検証の)手続きをしており、それを重視する。
政治的判断はしない」と述べ、建設再開の方向で検証を終えた同省の方針を尊重し、本体工事を容認する考えを示した。
ただ、民主党の前原誠司政調会長は建設再開に慎重姿勢を示しており、今後調整が難航する可能性もある。
藤村氏は「党が政治判断されるならそれは重く受け止めるが、政府が政権交代後に順にやってきた手続きは最終段階に至っている」と強調した。
また、最終結論は来年度予算編成に関する政府・与党会議で出されるとの見通しも示唆した。
一方、前田武志国交相は閣議後の記者会見で「八ッ場は長年議論している。既に流域自治体とも協議のうえ、合意を得ている」などと前原氏をけん制した。
八ッ場ダムをめぐって、民主党は09年衆院選マニフェスト(政権公約)で建設中止を明記。公共事業を大幅に削減する民主党政権の「象徴」の一つとなっていた。
群馬県には建設継続の要請が強く、国交省で全国84のダムを再検証する有識者会議を設け、八ッ場ダムについても再検証していた。【小山由宇、樋岡徹也】
毎日新聞 2011年12月9日 12時11分(最終更新 12月9日 12時48分)
クローズアップ2011:八ッ場ダム 野田政権、試金石 国交省VS前原氏
建設の是非を巡り検証作業が続く群馬県の八ッ場(やんば)ダム。国土交通省関東地方整備局が関係自治体との「検討の場」で「最も有利な案はダム建設」という検証結果を提示した。
民主党が09年衆院選のマニフェスト(政権公約)で掲げた「コンクリートから人へ」の象徴となった建設中止方針を覆しかねない内容に、当時国土交通相として「中止」を
宣言した同党の前原誠司政調会長が「極めて不愉快」と猛反発。官僚との距離や政策決定のあり方など、野田政権の性格を占う試金石となりそうだ。
「私が最終的に判断する」。前田武志国交相は26日、ダム関係1都5県の知事らから早期完成の要望を受けた後、記者団に強調した。野田佳彦首相が15日の参院本会議で
「一切の予断を持たずに検証するとの考えのもとで、国交省で検討が進められている。検証結果に沿って国交相が適切に対処する」と述べたのを受けた発言だ。
「行き過ぎた政治主導」の末、官僚機構の機能不全を招いたとされる鳩山、菅両政権の反省を踏まえ、官僚との融和路線を進める野田首相は、国交相に旧建設省河川局出身の
前田氏を起用した。
国交省幹部は「官僚を重用する野田首相ならでは」と歓迎。別の幹部は「良識ある判断を下すだろう」と建設への「回帰」に期待する。
●公約の「象徴」
マニフェストの「象徴」の一つに挙げられる八ッ場ダム問題に対する党内のこだわりは根強い。前原氏ら小沢一郎元代表と距離のある議員にはマニフェスト見直し派が多いが、
八ッ場ダム問題は元代表が党に加わる前の旧民主党が掲げた「公共事業見直し」の流れをくんでおり、建設中止はマニフェスト見直し派にも一定の支持がある。
同党の「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(川内博史会長)は16日、ダムの建設予定地住民に対する生活再建法案を前原氏に手渡した。
川内氏は小沢元代表に近く、マニフェスト堅持を主張して前原氏と対立することも少なくないが、党関係者は「八ッ場ダムは2人が唯一協力できるテーマだ」と指摘する。
民主党は党国交部門会議でこの問題の対応を協議する。14日の会議では国交省批判が続出した。党内には建設推進派の議員もおり、部門会議で中止を決めるのは困難な情勢
だが、部門会議幹部は「前原氏は自分が引き取って(中止を)決めるつもりでは」と話す。
政策決定の最終権限が国交省から党に移れば、前原氏主導で「ダム優位」が揺らぎかねない。「またちゃぶ台をひっくり返されるのでは」。省内ではそんな不安も出始めた。
●知事とタッグ
関東地整は今後、学識者や関係住民から意見を聞いて対応方針案を作成。国交相が有識者会議の意見などを踏まえて最終判断する段取りだ。
26日に関係自治体の知事らが前田国交相と会談したのも、中央官庁と地元自治体がタッグを組み、建設への流れを作る狙いがある。
ただ、当初は今秋までに判断する予定だったが、前田氏は東日本大震災の影響などを踏まえ、ずれ込む可能性も示唆している。
野田政権で党の権限が強まったとはいえ、官僚が積み上げた結論を党が覆す力を持ち得るかは、まだ見通せない。
何より、この問題をどう収拾するかについて、野田首相自身の意思がまだ見えてこない。【野口武則、葛西大博、樋岡徹也】
◇「移転、何のため」地元住民翻弄され
「命がつきる前にダム問題の決着を見たい。もし建設が中止になったら、何のために移転したのか、分からなくなってしまう」。
81歳の竹田博栄さんは、こうつぶやく。ダムは人生を翻弄(ほんろう)してきた。
竹田さんは八ッ場ダムができれば水没する、群馬県長野原町の川原湯温泉で旅館を営んできた。温泉街を守るため、ダム反対期成同盟の委員長として先頭に立ってきた。
しかし06年、旅館を廃業した。国の「下流は水を必要としている」「防災のためだ」との説得に折れざるを得なかったからだ。
ところが、2年前の政権交代で事態は反転し、地元は惑う。川原湯温泉は2軒が休業し、営業しているのは5軒になった。中止か、建設か、決められない国をよそに、
長野原町の空洞化は進む。国交省八ッ場ダム工事事務所によると、79年を基準にした水没予定の340世帯のうち、314世帯は国に土地を売って補償契約を結んだ。
国は水没予定地の住民のために、07年から付近に移転代替地を分譲している。しかし、移転したのは34世帯。213世帯は町外に出た。
自動車修理店と田が水没予定地にある篠原箭(すすむ)さん(64)は語る。「建設中止を打ち上げた2年前と同じように、住民に説明なく、方針が決められるのでは」
「八ッ場あしたの会」(事務局・前橋市)などダム計画見直しを求める市民団体は警戒を強める。
同会の渡辺洋子事務局長は「建設主体の国交省が検証を行っていること自体が問題だ」と話す。【奥山はるな、鳥井真平】
◆八ッ場ダム問題の経緯(肩書、組織名は当時)
1952年 建設省が予定地の調査開始
53年 建設反対の住民大会開催
80年 群馬県が長野原町に生活再建案提示
85年 知事と同町長が生活再建案で覚書締結
86年 建設省が00年度完成の基本計画提示
88年 建設省が現地調査開始
95年 旧吾妻町が協定締結。建設本格化
2001年 水没予定5地区の住民の個別交渉始まる。工期延長、10年度完成に
04年 2回目の計画変更。総事業費が約4600億円に倍増
07年 水没地区の代替地分譲始まる
08年 3回目の計画変更。工期さらに5年延長
09年 国交省が本体工事入札を公告(1月)
鳩山内閣発足、前原誠司国交相が中止明言(9月)
10年 国交省有識者会議が検証手順作成(9月)
関東地整と6都県が建設の是非を検証する初会合(10月)
馬淵澄夫国交相が中止方針を棚上げ、11年秋までに結論を出すと表明(11月)
11年 大畠章宏国交相が馬淵氏の方針支持(1月)
関東地整が「最も有利なのはダム建設」との総合評価案提示(9月)
毎日新聞 2011年9月28日 東京朝刊
官僚とうまくやる路線にきりかえてしまったんですね、民主党は。
静岡県の富士川河口から首都圏に導水する代替案と比較しても、計算方法を変えたら治水効率が6倍以上になってしまっても、その検証は正しく行われたとして
処理してしまうのですね。
前原政調会長、15人の民主党議員さん、正しいことをしようと頑張ってくれてありがとうございます。
私は全力で支持します。
奇しくも、今日は日本中で滅びの魔法がいっせいに唱えられた日です。
冗談抜きで八ッ場ダムは日本滅びのスイッチです。
頼むからここだけは建設しないでください。