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「冷温停止状態」でも課題残る事故の収束

2011/12/17付
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 福島第1原子力発電所の原子炉は落ち着いてきたにしても、「事故は収束した」と言えるのか。住民や作業員の安全確保を考えても政府の判断には疑問が残る。

 野田佳彦首相は16日、原子炉が冷えて安定する「冷温停止状態」になったとし、政府と東京電力がつくった工程表の第2段階(ステップ2)の終了を宣言した。来年1月までとした目標期間内の達成で、首相は「大きな不安要因を解消できた」と成果を強調した。

 事故発生から9カ月。原子炉に注水して冷やす作業がひとまず奏功し、新たな爆発などの危険はかなり小さくなった。現場の作業員や自衛隊、消防など関係者の努力には頭が下がる思いだ。

 しかし「冷温停止状態」の判断をめぐって専門家には疑問の声がある。政府・東電は原子炉の底の温度が、目標とする100度以下で安定したことを根拠とした。だが、溶けた燃料を直接測る手立てはなく、靴の上から足の形をなぞるようなものだ。本当に「停止」と断定できるのか、内外の研究機関などの評価も仰ぐべきだ。

 放射性物質を含んだ汚染水はたびたび漏れている。建屋をカバーで覆う工事も3、4号機はこれからで、微量ながらも大気への飛散が続いている。外部への漏れを完全に抑え込んだ段階で、事故収束を宣言するのが筋ではないか。

 首相が会見で述べたように、冷温停止後も長く厳しい闘いが続く。炉心溶融を起こした燃料を取り出せるのか。熱を出し続ける燃料をこれから何年間、冷やし続けなければならないのか。技術的な見通しは、まだ立たない。

 政府・東電は最長40年かけて福島原発を廃炉にする工程表づくりを始めた。廃炉の工程に移る前に、仮設の注水装置を頑丈に造り直すなど、事故を確実に収束させるステップが大事だ。

 政治的な意味で事故にひと区切りつけたいのなら、住民にもっと配慮が要る。政府は事故直後に決めた緊急の避難区域を近く見直す方針だが、それにあわせて避難住民の生活再建策を示すべきだ。

 原発周辺の除染は汚染土の置き場の確保などで壁に突き当たっている。除染がどの程度まで進めば帰れるのか。戻れない住民が出てくるのなら、移住先を選び、就業・就学など生活再建を支援する手立てが不可欠だ。

 事故の本当の収束は、むしろこれからが正念場になる。

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東京電力、野田佳彦、福島第1原子力発電所、事故

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