「遺伝子くみかえの法則」というのを勝手に作りました。 ・遺伝子組換え ・遺伝子組み換え ・遺伝子組み替え この三つの用語で書かれている本のレベルがわかるという法則です。もちろん、例外がいっぱいありますので、単なる目安です。 少なくとも、公的な機関や科学者は「遺伝子組換え」しか使いません。 (「やさしいバイオテクノロジー」p180参照) 同じような例として、次の用語を見つけました。 ・ドコサヘキサエン酸 ・ドコサヘキサエンサン ・ドコサヘキサ塩酸 この三つ、読みは同じですが、おもしろいことに、「ドコサヘキサエンサン」を使った文章にはトンデモニセ科学が多いようです。 「遺伝子組み換え」みたいなものです。 「ドコサヘキサ塩酸」は問題外。 「遺伝子組み替え」と同様、読む価値ナシです。 「ドコサヘキサエン酸」、「遺伝子組換え」が正しい用語。 松田有利子著「病気にならない体質がある かつての日本人の“生き方”に、その答えがあった!」(ゴマブックス・2007年03月)を読んでいると、あれれっ??と引っかかりました。 この本全体は突っ込みどころ満載のおもしろい誤解がいっぱいあるのですが、この手の本を見分けるリトマス紙(古い表現かな?)のような言葉が見つかりました。 「最近テレビでは健康番組がブームで、皆さん健康についての知識が豊富で、コラーゲンやコエンザイム、DHA(ドコサヘキサエンサン)などの言葉が頻繁に会話に登場します」(p48) ちなみに、この本にはコラーゲン、コエンザイム、DHAなど用語は他のところには出てきません。 ドコサヘキサエン酸の英語表記は Docosahexaenoic acid です。 中には、ドコサ+ヘキサ+エンサンだと思っている人もいて塩酸がエンサンですから、そのつながりかなと思っている人もいるようです。 ドコサヘキサエン酸は、正式な命名法の名前ではありません。 でも、何となく構造がわかります。 最後の「酸」は、この場合カルボキシル基です。 ヘキサは6の意味、エンはアルケンで、ヘキサエンは二重結合が6個あることを意味しています。 あたまのドコサは22を表しています。 IUPACの正式命名法によれば、 (4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)-Docosa-4,7,10,13,16,19-Hexaenoic acid となります。 6個の二重結合はすべてcisです。 つまり、22個の炭素が直鎖状につながっていて、1番はカルボキシル基。 4と5、7と8、10と11、13と14、16と17、19と20番目の炭素間がシスの二重結合。 こんな構造の不飽和脂肪酸のひとつです。 詳しい構造までわかっていなくても、名前から、「ドコサ」の「ヘキサエン」の「酸」だとわかっていれば、ドコサヘキサエン酸になるでしょう。 どこかで見た用語を、そのままよくわからないなりに書き写た人は、「ドコサヘキサエンサン」を使ってしまうのでしょう。 つまり、わかっている人が書いていれば、ちゃんと「ドコサヘキサエン酸」になるでしょうが、よくわからないなりに書いていれば、「ドコサヘキサエンサン」でも違和感なく使えてしまう、といえると思います。 つまり、先の本のように、「ドコサヘキサエンサン」という記述を見ても違和感をもたない人が書いた本はそれなりの本だと思って読んだ方が無難でしょう。 実際に、例の本はそれなりの本です。 ちなみに、健康食品業界では「ドコサヘキサ塩酸」という名前のものが高額で販売されています。これもDHAと略すらしい。 単なるミスとは思いますが、もしかしたら、ドコサヘキサエン酸とは別の化合物で、新しく「ドコサヘキサ塩酸」という名前の物質を勝手に作って、それしか入っていないのに本物のDHAが入っていると見せかける商品かなとも考えられなくもありません。 これって、「遺伝子組換え」大豆を使っているのに、「遺伝子組み換え大豆は使っていません」とか「遺伝子組み替え大豆は使用しておりません」とか表示するのと同じ詐欺では、とも考えられなくはありませんが、実際には単なるミスでしょう。 ・ニセ科学と言葉 科学用語 ・科学用語は意味も大切ですが読みも大切です。 ・放射能 波動 フォトンベルト やさしいバイオテクノロジー 血液型や遺伝子組換え食品の真実を知る (サイエンス・アイ新書)
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『それでも遺伝子組み換え食品を食べますか?』
福岡伸一推薦文。これは「遺伝子組み換え本」ですね。 ...続きを見る |
liber studiorum 2009/09/28 21:32 |
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