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[30870] 【R15】少女・スッポン
Name: バラー◆3ae50617 ID:65ec0385
Date: 2011/12/14 21:11

襖の隙間。それは不機嫌な顔で挟まっていて。だから私は、スッポンを手に取った。

『──スッポン』




「……うわあ、ボロっ」

私の新居に対する第一声は、何とも惨めなものだった。
元は白かっただろう壁は年月を経て灰色に染まり、いい塩梅に廃墟っぽい雰囲気を醸し出し。それに加え、割れたまま放置された窓がさらに陰気くさいアクセントを添えていた。

「あのハゲ……掘り出し物件? むしろ、埋め立てなさい物件よ」

筋肉むきむき、スキンヘッドの大家が、頭を汗で光らせながら掘り出し物件だと暑苦しく力説していたのを思い出す。風呂、トイレ付。駅も近く、近所にはスーパー。
今ならなんと家賃一万円、に釣られて契約したのは失敗だったかもしれない。そう言えば、築年数で口ごもっていた。

「はあ……そして重っ」

重いバックが肩に食い込み、存在を主張。大切な大切な、お雛様が入ったバック。部屋は二階。肩は重い。
赤錆だらけの階段を恐る恐る昇る、今にも崩れそう。少し泣きたい。
無事昇り切り、二階の左端を目指す。今時見かけない木の扉が一個、二個、三個目で止まる。201号室、新生活の拠点は目の前。文句を垂れても、もう遅い。
扉を開き、えいやと踏みこむ。申し訳程度の玄関、廊下右側に小さなシンクと黒いガスコンロ。洗濯機とシンクの隙間に冷蔵庫。廊下左側に磨りガラスの扉、中はトイレにお風呂。
短い廊下の奥にまた木の扉。此処までは至って良好、問題は後1つ。ドアノブを捻って。

「あれ? 意外に」

ワックスでピカピカのフローリング、洋風の部屋に似合わない古めかしい襖、二つの窓からは良く日が入っていて。部屋はアパートの外見に反し普通だった。
覚悟していただけに、肩すかしを食らった気分。ここは大家が言うように、本当に掘り出し物件なのかも知れない。何はともあれ片づけだ。窓から見える引っ越し業者のトラック。これからの作業を想像し、憂鬱な気分になった。


それから二時間後。


「よしっ片付いた」

呟き、グルリと部屋を見回す。テレビ、ベッド、ちゃぶ台、以上。届いた大物を適当に配置しただけの殺風景な室内、私の居城。
大切なお雛様は、バックに詰まったまま立てつけの悪い襖の奥へ。外を見ればもう夕暮れ、逢魔時。

「お腹減ったし」

誰に言うでもなく言い訳。部屋はちっとも、これっぽっちも、片付いていなかった。明日があるさ、片づけは明日でも出来る。今は自己主張を繰り返すお腹を黙らせないと。
我ながら馬鹿丸出しの思考で、台所に置いてあるダンボールからカップ麺とヤカンを引っ張り出す。

「明日、明日っと」

水で一杯になったヤカンを、ガスコンロにセット。

「わっ」

摘みを捻ると、工事現場のバーナみたいに勢い良く炎が噴き出た。ちょっと驚き。ガスコンロはやけに強力で、あっと言う間にお水が沸く。
ピーピー鳴るヤカン、グーグー鳴るお腹。今この瞬間だけは、コンロを改造し狂った火力にパワーアップさせた誰かに感謝する。今だけは。

「……後で取り換えよ」

この火力は危なすぎる。一体何を焼いていたのだろう。
考えると思い浮かぶ、豚の丸焼きを作っているスキンヘッドの筋肉むきむき大家の姿。汗だくになりながらニヤニヤ笑って……。

「怖っ!」

止めた。想像もしたくない。
カップラーメンにお湯を掛け、蓋を閉める。相変わらずお腹が煩い。耐えろ私、あと三分の辛抱だ。
蓋の隙間から漏れ出す白い蒸気、醤油ラーメンのいい匂い。携帯でセットしたタイマーがピピピと鳴り、私に三分たった事を知らせる。蓋を剥がし、割り箸を持って。

「いただきます」

ズズー、と一口。程良い堅さの麺、魚介の出汁が香る醤油スープ。
空腹は最高のスパイスだと聞くが、正にその通りだと思う。半額の醤油ラーメンが非常に美味しい。さらにもう一口、箸を銜えたところで。

「ぶはあっげほっげほっ──く、苦し……!」

思いっきり咽た。
私の口から発射された具、スープ、麺。最初はひと固まりに、次第に拡散しキラキラと宙を舞う。グッド・ラック麺。良い旅を、君の食感と味は忘れない。

「……」

現実逃避終了。フローリングの床に散らばったラーメンを。そして、そうなった原因を見る。

襖の隙間。嫌そうに顔を顰めたおかっぱ頭。それは雛人形の女雛を可愛らしくデフォルメしたような、そんな姿をしていて。
赤い着物の、とても、とても小さい女の子が、手足をバタバタさせ襖に挟まっていた。

少女は可愛らしい口をすぼめ、這いずるように低くしゃがれたで言う。出せ、出せ、出せ! と。
頭を激しく振って、瞬きをして、目をゴシゴシ擦る。きっと気のせいだ、引っ越しで疲れが溜まって幻覚を……いや、それはそれで不味いような?
聞けえ、だか、きえええ、だか、低く重い一喝。顔を歪めた仮称お雛様と目が合った。

大儀そうに首を振り、手を伸ばすお雛様。
私の体は瞬間冷凍されたように固まった。挟まって、しまって? いや、それは見れば分かるけど。固まった私を見て、手足をバタつかせもがく。

私は無言で立ち上がり睨みつける、ジーっと。お雛様が黙り、再び手を伸ばす。私は勿論、その手を引っ張るつもりは無い。
何が何やらサッパリ不明で、訳が分からなかったけれど。1つだけハッキリしている事がある。襖から出てきたのだ、襖にお帰り頂こう。

「えーと、ガムテープと……」

お雛様が暴れ出したけれど無視。
見つけた、ガムテープはちゃぶ台の下。あとは適当な長さの棒があれば。

「あ! 丁度いい物が」

トイレの備品。契約した後で、よく詰まるからとイイ笑顔で渡された物。呆然とした記憶が蘇るが、今は有り難い。
廻れ右、目的地はトイレ。お食事中ゴメンナサイ。早足で向かう。扉を開けて、も1つ開けて、それを手に戻る。私の右手を指差すお雛様。左手にはガムテープ、右手には、

「スッポンよ。正式名称ラバーカップ、トイレの詰まりを解消する道具の事」

解説し、完全装備で近づく私。首を傾げ考え込み、何かに気が付いたように突然青褪めるお雛様。お雛様は何を怖がっているのか、嫌々と首を振り激しく暴れる。
大丈夫、すぐにお家に帰れますよ。

「えいっ」

ラバーカップを繰り出す私。目を大きく見開き、体を捩るお雛様。
目標に見事命中。ラバーカップをグイグイ押し込み、素早く引き戻し放り投げる。そのまま襖に突撃、ピシャリと閉めガムテープで封印。

「ふう……ラーメン、ラーメンと」

私は今の出来ごとを全て忘れることにした。カップラーメンは冷めきって伸びていたが仕方ない。あーお腹減った。


だから聞こえない、聞こえない。ラバーカップの先に張り付いて、唸っている何かなんて見て無い。無理、バッチリ見える。ラバーカップの柄を両手で掴み、必死に引っ張るお雛様。
そうだった、あれは吸い取る物だ。

「えーと、この場合は」

トイレかな。

雛人形は川に流すと聞いた事が……流し雛?





ギコギコと動く、バラバラに解(ほど)く。

吹き出す赤、染まる床。

キッパリと流れて、バイバイと手を振る。

今日はグッタリ、もうお休み。










「うわあああああああああああああああああああああ!?」


恐ろしい夢を見た。テレビを付けたまま寝たせいかな? リモコンは無い。

もういいや、お休みなさい。





「──本日未明、河川敷で──された遺体が──警察は死体遺棄・損壊──連続──事件との関連も──」





翌日、トイレが詰まっていた。




『──パフパフ……スッポン』









[30870] 第二話 お買いもの
Name: バラー◆3ae50617 ID:9466cc3d
Date: 2011/12/16 21:07

お肉、お肉、お肉いっぱい。お母さんから頼まれた、お買いもの。

なるべく新鮮なお肉がいい。



──お肉、ちょうだい?





学校の帰り道。早足で歩く帰り道。
今日のお買いものはどこが良いかな? とか。夜ご飯またお肉だったらイヤダなあ、とか。そんな事を考えていたら分かれ道。左の道は前の場所に、右の道は行った事の無い場所へ。

「オイ、お前っ」

右に行こうか左に行こうか迷っていたら、後ろから声。男子の声。無視する? 振り向く?
右手と左手でジャンケン、ポン。右手が勝ったら振り向かない、左手が勝ったら、

「なあに?」

チョキとパー、左手が勝った。
黒文字でNewYorkのダサいプリントTシャツ、ヨレヨレでパッチワークだらけのジーンズ。傷だらけの黒いランドセルを背負って。
真っ赤な顔でモジモジ動く、私より背の低いクラスメイトの男子がいた。右手を上げて、下ろして、上げて、下ろして、体を揺らし……なにがしたいの? やっぱり無視すればよかった。
少し、にらんでみる。

「き、気を付けろよ!最近スッポン女が出るってウワサだから。……お前んちオバケ屋敷みたいだし」

ピタッと止まって、早口で変な事を言ってきた。失礼な人。確かに少しボロイけど、オバケ屋敷は言い過ぎだと思う。
それよりスッポン女ってなに。男子が見るアニメに出て来るような、怪人カメ女? ヌルヌルしたこうらを背負ったカメ頭の女がボンヤリ浮かぶ。

「なにそれ、かみ付いて来る女の人?」

それとも、スッポンの頭が付いてる女の人? そう聞いたら男子の顔が青くなった。なんでだろ?

「そんな訳ないだろ! 気持ち悪いこと言うなよ。トイレのスッポンを持っておそってくる女の事だよ!」

そっちの方が気持ち悪いよ。気持ち悪い事言った男子の顔を、しゃがんでのぞき込む。
スゴイ早さで顔をそらされた。地面を見て、空を見上げて。どうしても私の顔を見たくないらしい。変なの、もう行こう。あんまり遅いとお母さんに怒られるし。

「お母さんにお使い頼まれてるから、もう行くね。バイバイ」

男子は何か言いたそうにしてたけど、結局何も言わずに走っていなくなった。
そう言えばあの子、名前何だっけ?

「まあいいや」

忘れちゃった。
道はジャンケンで勝った方、左を選ぶことにした。


カラスがカーカー鳴いて、血みたく真っ赤な夕日が落ちる頃。
やっと見えて来るお家、ボロボロのアパート。すごく遅くなっちゃった。この前行った所に人が沢山いてお肉を買えなかったから。
いっぱい、いっぱい歩いてやっと手に入ったお肉。元々重い赤色ランドセルをさらに重くする原因、ビニール袋いっぱいに入った新鮮なお肉。
ボロボロの階段を上がって、木の扉を開ける。203号室。

「ただいまー」

言った途端にドタドタと足音。お母さんだ。

「遅い! ちゃんと買ってきた!?」

げっそりとやつれてガイコツみたいな顔、ガリガリにやせ細った体。いつも同じ黒い染みだらけのエプロンを着て。
お母さんは、つや消しの黒い目を。昆虫みたいな目をギョロギョロ動かして聞いてくる。

「うん。買ってきたよ」

ランドセルを下ろして、中から出したビニール袋を差し出す。お母さんの右手がスゴイ早さで伸びて、袋をつかんで元の位置に。
カマキリみたいで気持ち悪い動き。背筋がゾッてなる。

「新鮮じゃなかったら、許さないわよ!?」

お母さんが、キンキン耳に残る甲高い声で言うと袋の中身を取り出した。ポタポタ落ちる赤い液体、ツンと鼻をつく鉄くさい匂い。
赤いカタマリをジロジロ見て、あちこちさわる。お肉が新鮮かどうかの確認作業。クチャクチャと一通りさわって満足したのか、お母さんが頷いた。

「お母さん?」

呼んだら、キタナイ物を見る目でにらまれた。ゴキブリを見る目によく似てる。これもいつものこと。
私はガンバって買ってきたのに、よしよしってなでてくれない。少し前まではほめてくれたのに、泣きながらギュって抱きしめてくれたのに。

「アンタ臭いわよ。早くシャワーを浴びなさい!」

バチーンって音がして、ほおがカアっと熱くなる。最近はこればっかり。

「こんな事してる場合じゃ! ヒカリ、ヒカリちゃん、ご飯ですよー!」

私の名前を叫びながら部屋に戻るお母さん。
私よりヒカリのほうがくさいよ、お母さん。言ったらまたバチーンだから、お口にチャック。

「あーあ」

ほおが熱い、シャワーで冷やそ。
いつからこんな事になったんだっけ? 確か私がくさくなって……全部、全部ヒカリのせい?
まあいいや、お肉を食べれば治るってお母さん言ってたし。ヒカリが治って、早く優しいお母さんに戻らないかなあ。




「お前なんか─んじゃえ」


洗面台。鏡の中でヒカリの口が勝手に動いた。あれって思って手でさわる。



三日月みたいな形だった。





◆◇◆◇





引っ越し一週間目にして大問題が発生。大切なお雛様が無くなった。

「どうして?」

誰がしたのか、襖はガムテープが執拗に張り付けられ、ガッチリ封印されていて。
その襖の奥に入れてあった筈のお雛様が、バックを残して消えていた。空っぽのバックを手に、呆然と見る。カラッポの襖を唖然と眺める。

「探さないと……煩いなあ」

手の中で携帯電話がブルブル震える。多分バイト先の店長。でも、それよりも重要なことがあるから無視。
ちゃぶ台を裏返して、テレビの隙間を覗き込んで、パイプベッドを持ち上げる。お雛様はどこにも無い。もしかしてトイレ? トイレにも無い。
携帯電話は相変わらずブルブル。私は怒りでプルプル。

「うるさい!」

電話はポチャンっと水音を立てやっと静かになった。最近大活躍しているスッポンを掴み、外に飛び出す。
お雛様を探さないと。



あっちをウロウロ、こっちをウロウロ、お雛様は見つからない。
犬小屋を覗き込んでワンワン吠えられ。公園を探していたら子どもにキャーキャー言われて、近くの大人に白黒カーを呼ばれそうになったり。

「私はお雛様を探してるだけなのに!」

みんな私を変な目で見る。嘲る様に笑う人。顔を伏せ忍び笑いを浮かべる人。顔を顰め怒鳴りつけてくる人。

「ハハっ……なにあの人、救急車呼べば?」

ヒソヒソと囁き、私を指差す人。私の苛々は最高潮。だから、スッポンを天高く掲げて、

「うああああああああ!」

こうして叫ぶ。それだけで、みんな蜘蛛の子みたいに散っていく。
これだからスッポンは手放せない。人がいなくなる魔法のステッキ。邪魔者もいなくなったし、早くお雛様を見つけないと。



「ねえ、あれって」

適当に歩いていたら、下校途中の小学生集団に擦れ違う。やっぱりヒソヒソ囁く女の子、男の子。

「もしかしてウワサの……」

魔法のステッキを使うか悩む。効果は強力、けれど強力過ぎて白黒カーを呼び寄せるかも。
悩んで、止めた。お雛様がいるかも知れないし。少し進んで角を曲がる、途端に狭くなる道。人の姿は二つだけ。
ボロボロの黒いランドセルを背負い、草臥れたジーンズを履いた背の低い男の子。彼の隣、握り拳一個分背の高い子、赤いランドセルの女の子。

「……いつも、いつも、どこ行って何してるんだよ」

男の子が呟く。怒りと悲しみと疑問を複雑に混ぜたように、グチャグチャに震える声で。

「関係無いでしょ」

即答した女の子、冷たく突き刺す氷柱(つらら)みたいに尖ってツルツルな言い方。
黒いワンピースに、チェック柄のスカートを履いた女の子。黒い長髪が風に流れるように舞っていて。

「あはっ……見いぃぃつぅぅけぇぇたぁあ」

あの匂い、雰囲気、異彩を放つ気配。やっとお雛様を見つけた。
電信柱の影に入り、なるべく体を小さくする。ここで見つかる訳にはいかないよ。

お雛様と男の子は言い合いながら、一緒に住宅街を歩いて行く。怒鳴る男の子、受け流すお雛様。後を付けなきゃ。
ドンドン進む二人、段々減る人目。この先にはホームレスの溜まり場うらぶれた河川敷しかない。あんな所に何の用が?

「ホームレス狩り?」

そんな訳無いか。色々想像を巡らし、ワクワクしながら尾行。二人は言い合いに夢中で、気が付かれた様子も無い。
この前のお雛様は勘が鋭くて大変だった……それに比べて何て楽ちん。

「フンフン、フーン」

鼻唄混じりに楽々追跡。気分は上々、首尾も好調。
もう少しでお雛様を───

「もうちょっと待ってね……お雛様」


そして、やっぱり河川敷に到着。
つい三日前まで、沢山の人と警官に取り囲まれていた場所。
何の事件だったかな? 思いだそうと頭を捻るも出てこない。確かホームレスがどうたらだったような。そんな曰くつきの場所に入って行くランドセルの二人。
私だったら間違ってもデートスポットには選ばない。鬱蒼と茂った雑草、剥き出しの地面。橋の影でジメジメした空気。
二人は自分たちの身長より高い雑草を掻きわけて、尚も進む。ガサガサと、ガサガサと。
少し先でガサガサが聞こえなくなる。草の隙間からソーッと覗く。橋の真下、雑草に囲まれるようにポッカリっと開いた空間。剥き出しの土とコンクリートの広場。
お雛様と男の子は、そんな場所で向かい合いまだ言い争っていた。

「面倒くさいなあーやっちゃおうかな……」

スッポンを見て、男の子を見る。彼は要らない。ジリジリ近づいて雑草の中へしゃがむ。
飛び掛かれば届く距離。

「……ここは入っちゃいけないって、ママが」

怯えた声を出し、落ち着き無く動く男の子。

「じゃあ、帰れば?」

馬鹿にしたように言い放ち、見下ろすお雛様。
あと3数えたら飛び出そうと決めた。いーち、にーい、さ───

「私がどこで何してるか知りたいんでしょ……教えてあげる」

お雛様のゾッとする程淫靡で、甘く濡れた声。妖しい響きに思わず体が急停止。
ソワソワしてた男の子も急停止、お雛様を食い入るように見る。ちょうど日が暮れ、

「キレイな血色」

うっとりと呟き、両手を広げクルリと廻る。黒い長髪が宙を舞い、光の軌跡が後を引く。
紅の舞台、血に染まったように赤い舞台で1人舞う、妖艶な幼き姫。


夕暮れの太陽を背に、赤黒いお雛様が笑みを浮かべた。何故か凄惨な雰囲気が漂う、三日月みたいに歪んだ笑みを。





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