太り気味、肥満の子供で高血圧リスクが3倍に―米研究

2011年12月13日 12時0分 更新

太り気味、肥満の子供で高血圧リスクが3倍に―米研究

 米インディアナ大学生物統計学のWanzhu Tu教授らは「過体重(太り気味)あるいは肥満の子供では、体重が正常の子供と比べて、高血圧になるリスクが3倍近く高い」とする研究結果を、米医学誌「Hypertension」(2011; 58: 818-824)に発表した。

1,111人を「BMIパーセンタイル」で検討

 Tu教授らは、米インディアナ州の就学児1,111人(うち男児50%、黒人42%)を対象に、肥満と血圧との関連について検討した。研究登録時の平均年齢は10.2歳で、平均追跡期間は4.5年。半年に1回、血圧測定および身体測定を受け、測定回数は通算で9,102回(1人当たり平均8.2回)だった。これらの子供は10歳以下、11~14歳、15歳以上に層別化された。

 成人の肥満度の測定はBMI(肥満指数)を用いるが、子供の場合は必ずしも正確に肥満度を反映しないため、年齢と性で調整したBMIパーセンタイルを使用。BMIが85パーセンタイルを超える子供を過体重とし、95パーセンタイル超を肥満と定義した。

 血圧に関しては収縮期/拡張期血圧が90~94パーセンタイルの範囲を前高血圧、95パーセンタイル超を高血圧と定義した。

全年齢層で同じ影響

 その結果、過体重に到達した段階で、血圧に対する脂肪蓄積の影響は正常体重群の4倍以上であることが分かった。これは10歳以下、11~14歳、15歳以上のいずれの年齢層でも認められたという。

 また、正常体重群で前高血圧あるいは高血圧だった割合は5%だったが、過体重・肥満群では14%と、高血圧リスクが約3倍高まっていることも分かった。

 さらに、脂肪組織で分泌されるホルモン「レプチン」の血液中濃度および心拍数と血圧との関連は、血圧とBMIパーセンタイルの関連とパターンが類似していた。このことから、レプチンは肥満症が誘発する高血圧で仲介役を果たしている可能性が示唆された。

 今回の研究結果は、過体重児あるいは肥満児には正常体重児とは異なる対応が必要であることを再認識させるものとなった。このような認識がないと、正常体重児ではadiposity effectを過大評価し、過体重児では過小評価することにもつながる。

 Tu教授らは「子供の高血圧は、成人後の高血圧の前段階。このような子供に照準を定めた介入が必要で、BMIのわずかな低下でも大きな健康便益をもたらす可能性がある」と説明。「医療従事者や保護者は、子供の体重に注意を払うべき。もし、すでに過体重の子供に著しい体重増加が認められた場合は、食生活の改善や運動療法などを行い、全般的な健康改善に努めるべきだ」と指摘している。


(編集部)

  • パーセンタイル……数値が低い方から何パーセント目に当たるかを示す言葉。10パーセンタイルなら100人中低い方から10番目以内、85パーセンタイルなら高い方から15番目以内に入っていることになる。母子手帳にある乳幼児身体発育曲線は、下の線が3パーセンタイル、上の線が97パーセンタイルで、その間に94%の子供の値が入る。

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