自転車の事故防止に向け、警視庁が「自転車安全ルート推奨マップ」を作成しホームページで公開を始めた。車などの交通量が多いルートを選び、これを迂回(うかい)する「推奨ルート」を示す試みで、第1弾が東京都世田谷区で設定された。自転車の走行空間に詳しい専門家と一緒に、警視庁お勧めルートの安全性を点検した。【馬場直子】
都内で今年1~10月に起きた自転車事故は1万5871件。交通事故全体の37・6%を占め、東日本大震災以降は通勤、通学中の事故が増えた。「マップ」は都内の全102警察署が管内で1カ所ずつ作成。学校や官公庁、商業施設などと最寄りの主要駅などを結ぶ、利用の多い「通常ルート」と、推奨ルートの両方を示す。
第1弾は成城署が11月24日、京王線千歳烏山駅の駐輪場と日本女子体育大との間で示した。通常ルートは烏山通り(区道)の1・4キロ、推奨ルートは住宅街を通る1・7キロ。ただ、所要時間はほとんど変わらないという。
帰宅などで交通量も多い平日の午後5時半過ぎ。神奈川県茅ケ崎市や宇都宮市で自転車走行空間の安全性や快適性を評価した住信基礎研究所の古倉宗治・研究理事(61)とともに大学側から推奨ルートを徒歩でたどった。既に暗く、街灯が頼りだ。
中央自動車道と交差するまでの約300メートルはガードレール付きの歩道があり、車道幅も4メートル以上で見通しは良い。古倉さんは「安全性は十分で快適性もまあまあ」。更に200メートル先の都立世田谷泉高を過ぎると、マンションやアパートが密集する一角に出る。辺りは道幅が3メートル余と狭く、歩道もない。ほぼ直角に曲がるところが3カ所続き、「自転車同士が出合い頭に衝突する可能性がある」と古倉さんは懸念する。
通常ルートの烏山通りは交通量が多いが、片側1車線でバスがすれ違うのがやっと。40キロの制限速度を超えて走る車も目立つ。車道端に電柱が立ち、カーブで自転車が電柱の陰に隠れ、車から死角になる危険性もある。
二つのルートを比べ、古倉さんは「相対的に推奨ルートの方が安全性は高く、車の圧迫感を受けないので快適性もある」と評価。その上で、急カーブなど危険な場所に注意を促す看板を設けたり、車のドライバーに自転車優先を指導するなどの工夫を求めた。
記者も取り組みは評価すべきだと思う一方、推奨ルートは自転車を遠回りさせ我慢を強いる感じがした。利用を促進するなら通常ルートで車に協力してもらうことも必要ではないか。警視庁が自転車の通行場所を明示するため10月に打ち出した車道左側の青色塗装が効果的だと思った。
古倉さんもこう指摘した。「早く目的地に着こうと通常ルートを走る自転車利用者もいる。電線の地中化や車の制限速度引き下げ、自転車レーン設置など安全性向上の努力を怠ってはいけない」
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毎日新聞 2011年12月14日 東京夕刊
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