厚生労働省は14日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の職業安定分科会雇用対策基本問題部会で、13年度から希望者全員を65歳まで再雇用するよう企業に義務づける方針を明らかにした。厚生年金の支給開始年齢(60歳、報酬比例部分)は13年度に61歳へ引き上げられる一方、60歳の定年後、希望者全員を再雇用している企業は半数にも満たず、このままでは賃金も年金もない「空白期間」が生じるためだ。しかし、負担増となる経済界は強く反発している。【鈴木直】
60歳だった厚生年金の定額部分の支給開始年齢は、01年度から段階的に引き上げられており、男性は13年度に65歳となる。男性は13年度から報酬比例部分も3年ごとに1歳ずつ上がり、25年度に65歳支給となる。そこで同省は来年の通常国会に高年齢者雇用安定法(高齢法)改正案を提出し、「希望者全員の65歳までの雇用」の実現を図ることにした。
ただし、企業側の反発は強い。経団連は14日、「希望者の増加を踏まえると雇用確保には限界がある。新卒採用にも影響が出かねない」と早速けん制した。厚労省は来年の通常国会に税と社会保障一体改革関連をはじめ、法案を15本程度提出することを検討している。高齢法改正案を出しても成立までこぎつけられるかは不透明だ。
一方、「60歳定年」を65歳まで延長することは「直ちには困難」として先送りした。
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■解説
年金の65歳支給開始は、再来年4月に迫っている。希望者全員が65歳まで働けるようにならないと、老後に路頭に迷う人が続出しかねない。厚生労働省が高年齢者雇用安定法の改正に乗り出す背景には、そうした切羽詰まった事情がある。
年金の支給開始年齢を65歳に遅らせたことに対応し、厚労省は06年、65歳までの就労を可能にするため、企業に(1)定年年齢の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制廃止--のいずれかの採用を義務づけた。しかし、厚労省の調査では希望通り65歳まで働ける企業は、今年6月時点で全体の47・9%。大企業は23・8%に過ぎない。その要因は、80%以上の企業が選んだ(2)の継続雇用制度に設けられた「抜け穴」だ。
同制度は労使の合意があれば、再雇用する人の基準を設定できる。この規定を使い、「働く意欲がある」「勤務態度がよい」など、あいまいな基準を設け、一部の人しか再雇用しない企業も多い。
厚労省の有識者会議は6月、この基準について「弊害が多い」として、撤廃を求めた。厚労省は中長期の課題として、年金の支給開始年齢を68~70歳へと遅らせることも検討しており、まずはこの基準を撤廃して65歳までの雇用を確保する必要があると判断した。それでも経団連は「自律的な労使関係を否定することにつながりかねない」と批判している。【鈴木直、川口雅浩】
毎日新聞 2011年12月15日 東京朝刊
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