2011年12月1日(木)、詩人のアーサー・ビナードさんが文化放送「吉田照美 ソコダイジナトコ」に出演。
復興財源確保法に関して臨時増税のありかたに鋭く言及し批判をしています。
<音源>
http://youtu.be/ytYqePljB0c
※初稿です。誤字脱字は随時修正していきます。
=====(文字おこし、続き)
※「アーサー・ビナード がシニカルに語る『冷温思考停止』、当時のことを本当に知り尽くしてる人が去ってこういう発表 12/1(2)」からの続きです。
吉田「それは今朝のニュースのポイントです」
※音楽
唐橋「東日本大震災の復興財源を賄うための臨時増税などを盛り込んだ復興財源確保法案が昨日参議院法会議で賛成多数により可決、成立しました。これにより先月21日成立した第三次補正予算に盛り込まれた復興事業の財源が裏付けられたこととなります。
増税規模は10.5兆円。所得税は2013年1月から25年間。2.1%の定率増税となり、個人の住民税は2014年6月から10年間、一人当たり年1000円の均等割などとなっています。」
※音楽終わり
吉田「えー政府がまとめた当初案ではですね。負担を次の世代に回さないということで所得税は4%の定率増税で、期間は10年間という風になってたんですが、最終的には2.1%の定率増税で期間は25年間という事になったわけなんですけども。え、この判断もふい埋めてですね、今回この成立した復興財源確保法についてアーサーさんの、えーとらえ方はどんな感じですか」
アーサー・ビナード「め、見事確保でき、できましたね。」
吉田「うんそうだよね」
アーサー「確保したかったんですね。なんか与野党も。東電ていう巨大企業が健在であって、それで僕らは増税なんですね。」
吉田「そうですね。東電を守って……」
アーサー「守って」
吉田「国民に負担を」
アーサー「国民に負担を。で、4%の定率で10年間がもし通っていたなら、えー負担額は所得100万円あたり40万円になるんだよね。まあ単純計算で」
吉田「そうですねえ」
アーサー「で、だけど成立したのは2.1%の定率で、25年間。そうすると負担額は、えー所得100万あたり、52.5千円。これあの、その年数でね。だからまあトータルで、100万あたり、12万5千円多くぶんどられるっていう計算なんだよね」
吉田「数字のマジックで結局は一杯取られちゃうってことだもんねこれね」
アーサー「そうですね。まあ長生きしない人は、あのー、命では損するけど税金の面では得するっていうなんか……」
吉田「得するっていう嫌な図式ですけど(笑)」
アーサー「嫌な図式ですけど。で、25年間っていうのはまあ四半世紀ですよね」
吉田「そうです、ながいですよこれ」
アーサー「これあの自民党公明の反対で、あの、決まったんですね。10年で4%は、無理だって。で、25年先のビジョンが、じゃあその野党に、あるいは与党にあるかっていうと誰も示せてないですね。」
吉田「そうですね」
アーサー「5年後の話になったって、なんかほんとに、あの説得力のあるビジョンを持ってる人は、あの、永田町にはいないような感じなんですね。だから税金だけは決められるんです。」
吉田「ほんとだね……」
アーサー「税金が、もうバッチリ見通しがきくんですよ」
吉田「国民をいじめることははっきり抑えるね」
アーサー「これは別にあの、議論、まあ、何年、どのぐらい……いびるかっていうそういうあの話は、あの細かいところはあの議論になるんですけど。基本的なところは方向性は一緒なんですね、与野党は。で、25年の期間ですよ(笑)。それで臨時増税っていってんだよ」
吉田「もうめちゃくちゃだよね。これ日本語の使い方がめちゃくちゃになってるでしょ」
アーサー「もう臨時は続くよどこまでもっていう」
吉田「へっへっへっへ(笑)」
アーサー「この(笑)、臨時がすごいね」
吉田「いや、やり方もひどいしなあ」
アーサー「で、こうなるとね、まだ生まれてもいない子どもが成人して就職して、それで復興税を支払うってことなんですね」
吉田「ヒドイ話だねこれね」
アーサー「まあだから、あのやっぱ見事な、設計図がちゃんと、あのー向こうにはあるんですね」
吉田「イカサマですね、これは」
アーサー「ただ4%で10年と、2.1パーセントで25年の、そのどっちがいいかって。一概には言えないですね。あのー所得が高い人にはそれほどの重圧にはならないかもしれないけど。200万円の課税所得の場合で、年に8万円の税金を収めるのと、年に4万2千円の税金を取られるのと、まあこの違いですよね。」
吉田「実感が大きいでしょこれね」
アーサー「大きいですよね。実感は大きい。だけど、で、この実感が実は一つのポイントなんだけど。この法律で注目すべきポイントは、あの、この、何%で何年って所じゃないんです」
吉田「え? どこ? 他にあるんですか?」
アーサー「報道されてるのはあの。そのあたりの比較なんだけど。実はそうじゃなくて。臨時増税25年の(笑)」
吉田「ながいなあー」
アーサー「臨時は続くよどこまでもっていう臨時増税を、それをあの、開始する時期が大事なんですね。
所得税が、えー13年の1月からの課税なんです。ていうことは13年の12月の年末調整と、14年の2月の確定申告で、増税を実感するわけです」
吉田「はーいはいはいはい」
アーサー「実感はまだちょっと先なんです」
吉田「先になってるからね……」
アーサー「で、その14年2月って(笑)どういう時期かっていうと、衆議院選挙、参議院選挙ともに、えー13年の7月までには行われなきゃなんない。」
吉田「はーいはいはい」
アーサー「選挙が終わって、それでみんな永町の人たちが安堵の胸をなでおろして、まだ選挙民有権者にはまったく実感がなくて、怒りもかぶらずに済んで。それで、時限爆弾が来るんですよ」
吉田「あー。時限爆弾だな、これ」
アーサー「そうです。地雷を僕らが踏むんですよ、ずうっと後になって。時限爆弾を仕掛けておいて、時限爆弾が爆発するときには、周りに日本の国民、一般市民納税者はいるんだけど、政治家はだれもいないんです。」
吉田「そういうことに……」
アーサー「もうタイミングを分かって、みなさんがあの遠くへ」
吉田「雲隠れと」
アーサー「雲隠れっていうこと。結局与党も野党も選挙を考えて問題を先送りしただけのことで」
吉田「悪い奴らですね……」
アーサー「それが、あのー、ね。だからなぜ来年からの課税なんだよ。」
吉田「そうだね」
アーサー「今とるならとれって。っていう事を実は国民は逆にあの、突っ込んでいったほうがいいかもしれないです」
吉田「なるほどなるほど。これいっぽうこの復興財源確保法ではですね。法人税に関しては来年4月から実効税率を一旦5パーセント引き下げた上で、3年間はその減税の範囲内で増税を行うというふうに定められてましたけれども。この法人税の扱いに関しては、アーサーさんどういうふうに捉えていますか」
アーサー「うーん。これも見事に……」
吉田「見事?」
アーサー「……巧みですよお……。だったら、だって、3年後から減税とまあ解かりやすく定めればいいじゃん。一旦引き下げた上で……」
吉田「まあまあそうねえ」
アーサー「なんとかっていって、これもあの、タイミングだけが、もうこのからくりのタイミングだけが」
吉田「誤魔化すことだけ考えてる感じだねえ」
アーサー「そうなんです。そうなんです。来年4月から導入をはじめて、3年後ってことは、つまり、2015年の4月から、減税ってなるわけ。で、14年に個人に対する、僕ら一般国民の個人に対する増税がくるわけ、どーんと。」
吉田「はいはい」
アーサー「で、そこで始まるわけでしょ。だからその時点で、永田町のあの面々が集まって、その時点で、来年から法人税の減税をやりましょうって言ったって国民は、冗談じゃないよってことになるでしょ?」
吉田「ってことになるからね」
アーサー「だから国民がその実感する前に、ずうっと前に仕込んでおくんですよ……」
吉田「まあ恐ろしい奴らだなあ……」
アーサー「だって3年後の、あの、景気とか誰も読めてないじゃない」
吉田「もうほんと姑息だね」
アーサー「その前にまた、また何が起きるか。どういう自然災害がくるか、なんにもわからないよ。この臨時増税は大震災、大津波、原発事故を受けての話でしょ。3年後にどういう災害が起きてるか、それもわからないのに、それをあの、シッカリバッチリ、なんの疑いもなんの問題もなく決められるっていうのはすごいんですよね。」
吉田「ほんとだよねえ」
アーサー「だから法人税を、あのー下げるためには今仕込んでおかないとっていう、そういう企みなんですね」
吉田「おそろしいなあ」
アーサー「実現できるあのーその、経団連に言われたとおりにするためにはどうすればいいかっていう、その仕掛けを考えるのは巧みですね」
吉田「あのー人たちなんですね。税金で食べさせてもらってるくせにねえ」
アーサー「そうです。そうです。」
吉田「国民の」
アーサー「だから、食べさせてもらってるからこそよくわかるんです。分捕り方」
吉田「なるほどなあ(笑)」
アーサー「2015年っていうと、あのTPPの条約発行のタイミングなんですね。だから、あのその、ただの、ただのペテンパートナーシップのTPPに、日本の、日本国民を突き落として、その地獄に突き落としておいて。それでタイミングを上手く合わせてるっていう、段階的な関税の撤廃を始める年として、2015年。そこであのー減税を実施っていう」
吉田「ああーいうことで、ちょっと、いやあーな気分になりますけど。あの昨日の党首討論ですけども。自民との谷垣総裁がですね、衆議院の解散を迫ったわけですが。自民・公明はこの復興財源確保法が成立したということで、その震災復興への協力に区切りがついたと、いうことで、今後は対決姿勢を強める方針という報道がありますけど。これに関してはどうですか?」
アーサー「ねえ。区切りが付いたって、これはあの、分捕りに区切りが付いたっていうのかなあ」
吉田「まあまあそういうことですね」
アーサー「あのむさぼりに区切りがついた……っていう感じで。あのー、復興やってるんじゃなくて、復興を一つの看板にして、それでどさくさに紛れてもともとやりたかったことをやってるんです。」
吉田「ひどいね」
アーサー「みんながショックをウケてる状態の時に、みんなが細かいところまで……」
吉田「気がつかない所を上手く利用して」
アーサー「ドーンとやって。しかも、あの、何年も、5年先のことをきめて、仕込んで送って。で被災地ではもうあの全く区切りがついてなくて」
吉田「そうですよねえ」
アーサー「あの、陸前高田にいる僕の友達のばばあきこさんは、仮説で冬を過ごすんですよ。それ、区切りがついてんじゃなくて、これからどうやって生きて行くのかっていう、そのみんなそういう危機的状況がずうっと続いたまんまで。なんにも復興が続いて、あのあの始まってなくて。それであの永田町では与野党が協力できるのは分捕り。あのー臨時は続くよどこまでも、の」
吉田「そこで協力しあって」
アーサー「そう。で被災地のためにきょうりょくすることはない。被災地に行って来いって。もう、あの、国会を仮設でやってよ……」
吉田「ほんとだよね」
アーサー「陸前高田の仮設で国会をやりましょう。そうすると、あのー事故、えー津波、大地震、なんにも片付いてないってことがわかるはずなんだよね。で菅さんがやめれば、与野党で協力して、もう団結して、日本のために働くんだってずうっと言ってたわけだよね。」
吉田「言ってたねそんなことね(笑)」
アーサー「そう言ってたんですよ。そう、菅さんが邪魔なんだ。菅がいると、ダメだからやめさせてそれで協力するって言ってたんだよね。だけど菅をやめさせて何が、どういう問題が消えたかって言うと、脱原発消えた。」
吉田「消えましたね」
アーサー「脱原発を消すために菅をやめさせて、それで、国民に負担を押し付ける法律はみんな協力して。で、自分たちのみを削るような法律は、なんにも、話題にすらしないっていう、もうあの、見事!」
吉田「最悪な政治家どもですね。ほんとにね」
アーサー「これ民主体制じゃないよ。民主体制をどうやって作るかって本当に僕ら市民側で、」
吉田「怒んなきゃ本当にだめだよね」
アーサー「うん。本当に民主体制をどうやって作るか、ゼロから作るしかない」
吉田「ないですね、本当にね。はい。木曜日のコメンテーターは詩人のアーサー・ビナードさんでした。どうもありがとうございましたー」
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