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事件
「定義」なき人権救済機関、新たな人権侵害の恐れも
■不透明な権限
人権救済機関の持つ権限にも疑問が残る。法案の概要では機関は法務省の外局として設置。人権委員の任命を国会の同意人事とし、事務局に弁護士を充てる。機関の権限には、人権侵害の申し立てに対する調査のほか、「援助」「調整」、人権侵害が認められた場合には「説示」「勧告」「通告」「告発」「要請」などが可能とあるが、それぞれの詳しい説明はない。
調査拒否時に過料などの制裁を科すことが可能な「特別調査に関連する規定は設けない」として調査は任意調査のみに一本化したが、委員長と委員の職権行使にあたっては「独立性を保証」とした。
韓国では2001年に設置された国家人権委が、死刑廃止を勧告したり、03年のイラク戦争で米国支持の政府の判断に真っ向から反対姿勢を示すといった事態が起きている。機関自体が政治的に偏向した場合や恣意的に暴走した場合の歯止めはない。
公務員による人権侵害が認められた場合には「勧告」「公表」「資料提供」などの権限が定めてあり、警察活動や捜査活動、教育現場での教師の指導などに足かせとなる恐れもある。
■批判回避
法案からは報道統制につながると批判が強かった「報道条項」は消えた。しかしメディアの言論が「差別助長行為」と認定されうる恐れは否定できない。
差別助長行為について法務省は「被差別部落地などをまとめた出版などを指し、メディアの言論はあたらない」と強調したが、百地教授は「差別や人権侵害を助長・誘発する文書と認定するのはあくまで公権力で、言論規制につながる本質は変わらない。法務省は人権事案について現行の制度で99%は解決してきたとしており、あえてこのような法を作る必然性はない」と話す。
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