- [PR]
事件
「定義」なき人権救済機関、新たな人権侵害の恐れも
15日公表した「人権救済機関設置法案」について、法務省は裁判所の令状なしで調査できるとした特別調査や報道に関する規定をなくし、「今までの人権救済機関とは性格が大きく異なる組織」と強調した。だが、識者からは「批判をかわし、とにかく組織を作ろうとの意図が見え隠れし、新たな人権侵害の恐れが依然払拭できない」との指摘があがった。
■定義なき人権侵害
法案の最大の問題は「人権侵害」の定義だ。強大な権限を持つ救済機関が私人間の出来事を調査して人権侵害と認定するにあたって、肝心の「何を『人権侵害』とするか」が依然として曖昧だからだ。
法案の概要では「人権侵害」を「特定の者の、その有する人権を侵害する行為で司法手続きで違法と評価される行為」としたうえで、「憲法の人権規定に抵触する公権力などによる侵害行為のほか、私人間においては、刑法、民法その他の人権に関わる法令の規定に照らして違法とされる侵害行為」と説明した。
法務省は「女性は…」「障害者は…」といった個人を特定できない表現では差別や人権侵害にはあたらず、原則誰を指すのかが特定できる場合のみを人権侵害にあたると説明した。
人権救済機関の設置はこれまで何度も議論が繰り返されたが、そのたびに「人権侵害の定義が曖昧」などとして法制化が見送られてきた経緯がある。法務省も「人権侵害の例示は不可能」としており、百地章日本大学教授(憲法学)は「人権侵害とは『人権を侵害することだ』では定義していないに等しく、今までの議論から全く進んでいない。これでは公権力が恣意(しい)的に解釈する恐れは払拭できず、恐怖社会の到来が依然危惧される内容だ」と警鐘を鳴らす。
関連ニュース
- [PR]
- [PR]