【球界のタブー】オリンピックに出せない
長嶋監督悩ます「在日」プロ野球選手問題
■「選びたくても選べない選手」
■ドリームチームはできない
■パ・リーグ有名選手は帰化
ドリームチームはできない
 長嶋監督を悩ませている、もうひとつの問題がドーピングである。筋肉増強剤を日常的に服用してパワーアップを図っている選手も、選ぶことができないのだ。プロ野球の憲法にあたる「野球協約」では、薬物使用の禁止にいっさい触れていないが、五輪では抜き打ちでドーピング検査がある。球界で薬物使用をウワサされている選手を連れていって、万一のことがあれば日本代表の名前は一気に地に堕ちてしまうのだ。
 長嶋監督は就任当初、
「能力だけを重視してドリームチームをつくる」
 と大見得を切ってしまった以上、各チームのトップ選手をピックアップする以外にない。そうなると、在日とドーピングの問題は避けて通れない。
「実際に選手の名前をリストアップしてみると、どうしても在日の選手がかなりの人数入ってきてしまう。また、最近急速にドーピングに手を染める選手も増えている。超人気選手のなかにも、います。大リーグのホームラン王、マーク・マグワイアは薬物を使用して筋肉をつけ、シーズン70本のホームラン記録を作ったが、薬物の副作用で選手生命を縮めてしまった。彼が活躍した前後から、日本でも薬物使用が急増しているのです。
 二つの問題に該当する選手を外すと、『ドリームチーム』という公約とのズレが出てしまうのです」(前出・長嶋監督に近い関係者)
 長嶋監督に監督就任を依頼した日本野球連盟側も、
「選手、コーチ選びは長嶋監督に一任」
 としていたため、長嶋監督は不用意に「ドリームチーム」発言をして自分の言葉に振り回される結果になった。
 日本野球連盟・山本英一郎会長に聞いた。
――野球の五輪代表チームに、在日選手を選べないという問題がありますが。
「当然、長嶋君も事前に(国籍を)調べて、選考しているでしょう。なんてことないよ」
――会長から、この問題について長嶋監督に話したことは。
「ない、ない。言わなくても、長嶋君や、(連盟の)幹部会議に出ているメンバーがちゃんとやっているよ。発表してから困った、なんてことにならんように調べていますよ」
――予想されるメンバーのなかには、ドーピングをウワサされている選手も入っていますが。
「具体的な選手の名前を出してのコメントは、ワシはしない!」
 在日韓国・朝鮮籍プロ野球選手を描いたノンフィクション『いつの日か海峡を越えて』の著者で在日二世の作家・鄭仁和氏は、
「長嶋さんには、本当の意味でのドリームチームをつくってほしいですね。国籍にこだわらず、五輪に出られるようになればいい。ラグビーのワールドカップは、トンガ出身の選手でも日本代表選手として出場できるでしょう。五輪野球でも、そうなるといいと思いますね。在日選手は、運動能力が高い。五輪の舞台で、活躍してほしいものです」
 在日の選手が、本人が望めば日本代表として五輪に出られるよう、JOCや野球連盟はIOCに働きかけるべきではないか。



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