どうしんウェブ 北海道新聞

岐路 大間はいま

「住民の安全のため無期限凍結の主張を貫きたい」と話す函館の工藤市長

 電源開発(東京)が青森県大間町で建設を進める大間原発は3年後の2014年11月に稼働の予定だったが、東日本大震災により工事が中断し、今後の見通しがはっきりしない。30キロ圏内の函館市や、地元の大間町の首長らは原発にどう向き合うのか。11月30日〜今月4日に全道版で5回連載した「岐路 大間はいま」の番外編としてインタビューを紹介する。まず工藤寿樹・函館市長に聞いた。(聞き手・渡辺創)

30キロ圏内の同意こそ必要

 −−建設の無期限凍結を求める理由は。

 「福島第1原発の事故の深刻さによって、原発を安全としてきた国や事業者への信頼感は失われた。大間原発と函館は最短で23キロしか離れておらず、遮るものもない。大間は世界の商業炉で初めてプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)を100%使う。しかも電源開発はこれまで原発を造った経験がない。万一、福島のようになったら函館や道南は何十年も立ち直れない。住民が故郷に住めなくなる。今回も風評で観光など幅広い産業に悪影響が出た。非常に心配している」

 −−国は原発事故の防災重点地域を広げ、30キロ圏を緊急防護措置区域(UPZ)とする方針だが。

 「大間原発について、函館は今まで無視され、おざなりな対応しかしてもらえなかった。今後は立地自治体に加え、30キロ圏にある函館の意向も同じ重みを持ってくる。大間原発の工事を再開するかどうか、あらためてUPZの範囲内の同意を得なければならない。50キロ圏の自治体の意見も聞くべきだが、少なくとも函館と道の意見を踏まえることが必要だ」

 −−地域振興のために原発に頼る大間の事情もある。

 「過疎が進む中、原発関連の交付金で施設整備を進めることや、立地による経済効果を期待するのは理解できる。大間の人たちを非難するつもりはない。ただし、それが本当の地域振興につながるのか。国は原発に代わる根本的な振興策をつくるべきだ。函館−大間のフェリー航路は、何らかの支援をしなければならない。大間町や事務方とも協議して話を詰めたい。これは原発とは別問題だ」

 −−今後の函館としての対応は。

 「国の原子力政策が見えない。野田内閣は耐用年数が過ぎた原発は危険だから順次廃炉にする方針と聞く。その一方で、大間など建設中の原発を残すなら、金をかけたのにもったいないという話でしかない。金と人命はどっちが大切なのか。建設再開が強行されれば法的措置も辞さない。原発訴訟を手がける専門の弁護士にも相談するなど情報収集をしている。また、国や電源開発に対し、無期限凍結を求める函館や道南の考えをあらためて伝えることも考えている」


このページの先頭へ