ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン鳥取> 記事

住民投票 外国人ダメ?

2011年12月15日

写真

鳥取市内に住む外国人も住民投票へ参加できるように求める署名活動が行われた=11月23日、鳥取市尚徳町

 鳥取市庁舎の移転新築計画をめぐる住民投票の条例案が市議会で検討されている。全国的には住民投票で在住外国人が1票を投じる事例も増えているが、今回の住民投票を巡っては、外国人への投票権付与が話し合われたことはほとんどない。住民投票を機に、改めて外国人の参政権問題を考えてみた。

◆自治条例 排除規定なし

 鳥取市の市民課によると、10月末現在で市内に居住する外国人は1318人。うち永住者(特別永住を含む)は514人に上る。こうした外国人に投票権を与えるかどうか、市議会での議論は低調だ。

 その理由について、市議の意見は様々だ。会派「新」の上杉栄一市議は「そもそも、市庁舎の位置を決めることを住民投票にゆだねることはなじまない。そういう例外的な住民投票で、今後の前例になってしまう」。一方、外国人の参政権に積極的な公明党の田村繁已市議も「当初は、来年2月に住民投票を行うという想定だった。外国人への投票権付与を議論する時間が短すぎた」と話す。

 住民投票条例検討会で座長を務める中西照典議長は「全会派が見直しに合意すれば拒まないが、座長として見直す考えはない」と話し、今後も議論される見込みは低い。

 しかし、鳥取市の自治基本条例では、市民を「市内に在住する人、市内で働き、若しくは学ぶ人又は市内において事業若しくは活動を行う団体」と規定し、「まちづくりに参画し、協働すること」は「市民の権利」「市民の責務」と定める。条文を見る限り、外国籍を理由に住民投票での投票権を与えないという根拠は見あたらない。

 市議会の姿勢に疑問を感じる市民有志は今月5日、1033人分の署名を添え、外国人にも投票権を付与するよう求める要望書を中西議長宛てに提出している。

◆合併問題では参加例

 首長や議員を選ぶ公職選挙法上の選挙権は、在日外国人にはまだ付与されていない。しかし、地方の抱える問題を住民に問う住民投票では、投票権が与えられた例は珍しくない。
 全国で初めて永住外国人に投票資格が付与されたのは、2002年に滋賀県米原町(現米原市)であった周辺自治体との合併を問う住民投票。その後、全国の自治体に広がり、住民投票を推進する市民団体「国民投票/住民投票情報室」(大阪市)によると、これまでに169例を数える。

 しかし、ほとんどは自治体合併を問う住民投票で、個別課題については、08年4月に沖縄県伊是名村であった牧場誘致計画の是非を問う住民投票だけという。この際は、3カ月以上居住する20歳以上の外国人約10人に投票権が与えられた。

 県内では03年の日吉津村を皮切りに、智頭町、旧気高町(現鳥取市)などで合併の是非を問う住民投票の際に付与された。さらに、北栄町は08年、永住外国人を含む18歳以上の町民が住民投票や、その請求をすることができると定めた常設型の住民投票条例を制定している。

 在日外国人の参政権問題に詳しい田中宏・一橋大学名誉教授は「住民投票で外国人に投票権を付与するのが当たり前の時代になってきている。そんな中で鳥取市が投票資格者から外国人を除くのであれば、なぜ除くのか、除かねばならないのか、はっきりとした理由を市民に説明する必要がある」と話している。(宋潤敏)

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

ここから広告です

広告終わり

広告終わり