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【社会】

災害用自転車 被災地での活用期待

2011年12月15日 13時53分

震災などの被災地向けに開発中の自転車「トランク」の試作品を紹介する湘南工科大の小谷章夫教授=神奈川県藤沢市で(加藤木信夫撮影)

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 震災時にがれきを乗り越えて移動したり、車の代わりに最大八十キロの生活物資を運んだりできる自転車の開発に、神奈川県藤沢市の湘南工科大学の研究グループが取り組んでいる。阪神大震災と東日本大震災で見聞きした被災者のニーズを考慮した。先月下旬に試作品を発表したが、市民から被災地での活躍を期待する声が寄せられているという。 (加藤木信夫)

 開発を手がけるのは工学部コンピュータデザイン学科の小谷章夫教授(56)の研究室。学生九人と外部スタッフ四人が昨年九月から取り組んできた。頑丈でたくさんの物を運べることが特徴で「トランク」と名付けた。

 普通の自転車のようにペダルと後輪をチェーンでつなぐと、被災地では切れて使い物にならなくなる可能性がある。このためチェーンではなく、自動車などで使われる「シャフトドライブ」という棒状の回転軸を採用。回転軸は両端が歯車になっており、ペダルをこいだ力を後輪に動力として伝える。

 シャフトドライブは全体をカバーで覆い、津波などで水に漬かってもさびにくい。重心が低い構造で荷台を地面に近い位置に設置。車輪も小回りが利くサイズで、水や灯油を入れたポリタンクを荷台に積んでも安定して走行でき、手押し車のような利用もできる。

 開発のきっかけは、一九九五年の阪神大震災。小谷教授は当時住んでいた大阪市から、兵庫県明石市に出かける必要が生じた。震災直後で交通網が寸断される中、知人から借りたバイクで向かった。途中、自転車で水などを運ぶ人々を目撃、「被災地では自転車だ。それも水や燃料を運ぶのに役立たないといけない」と実感した。

 三月の東日本大震災以降は、耐久性の強化などに努めてきた。開発チームの一人で自転車デザイナーの谷信雪さんは「ギアは三段あり、電動アシストの装着も可能。高齢者にも使用してもらえる」と話す。

 商品化にはまだ十カ月ほどかかり、価格も十五万円と高級自転車並みとなる予定だが、NPOや企業の協力を得て、東北の被災地に無償提供できないか検討を進めている。

(東京新聞)

 

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