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ベネッセ アートサイト直島

ベネッセ アートサイト直島(香川、岡山)
Benesse Art Site Naoshima
http://www.benesse-artsite.jp/

行きたいところ。瀬戸内海の三つの島をまたぐ美術館群。

* * *

所蔵作品の一部。(サムネイルのみ。)
https://pr-benesse-artsite.co-site.jp/
picture/2?lang=ja#kind_NC

* * *

参照サイト。(20111124にアクセス。)

http://www.domusweb.it/en/architecture/
teshima-art-museum-/

http://www.designboom.com/weblog/cat/9/view/12559/
ryue-nishizawa-teshima-art-museum.html

http://www.japantimes.co.jp/text/fa20101126a1.html

(国内より、海外でのほうがより知られているよう。)


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Dryden, ("Farewell, ungrateful traitor!")

ジョン・ドライデン (1631-1700)
(「さよなら、恩知らずの裏切り者!」)

さよなら、恩知らずの裏切り者!
さよなら、嘘つきなしもべ!
傷つけられた女のひとが、
二度と男を信じませんように。
自分のものにする、といううれしさは、
言葉では言いあらわせない。
でもそんなよろこびは、早すぎるくらい早く消え、
愛しい気持ちが、長すぎるくらい長く、痛みとして残る。

わたしたちをだますのは簡単、
つらそうにしていれば、かわいそうって思ってしまう。
でも愛してあげると、男たちは去っていき、
いくら責めても帰ってこない。
そのはかなさを見てしまうまでは、
愛に勝るよろこびはない。
でも、愛を手にして、そして失ったひとは、
もう二度と愛したりしない。

どうしようもなく好き、というふりをするけど、
男たちは、ただわたしたちを手に入れたいだけ。
魅了されなくなったら、
魅了していたはずのわたしたちを見下す。
男の愛もわたしたちの愛と同じ、と思っていると、
大切なものをなくしてしまう。
死ぬことがよろこびだわ、
今は生きるのはつらいから。

* * *

John Dryden
("Farewell, ungrateful traitor!")

Farewell, ungrateful traitor!
Farewell, my perjured swain!
Let never injured creature
Believe a man again.
The pleasure of possessing
Surpasses all expressing,
But 'tis too short a blessing,
And love too long a pain.

'Tis easy to deceive us,
In pity of your pain;
But when we love, you leave us,
To rail at you in vain.
Before we have descried it,
There is no bliss beside it;
But she, that once has tried it,
Will never love again.

The passion you pretended,
Was only to obtain;
But when the charm is ended,
The charmer you disdain.
Your love by ours we measure,
Till we have lost our treasure;
But dying is a pleasure,
When living is a pain.

* * *

劇『スペインの修道士』(The Spanish Friar)中の挿入歌。
「ビレーノに棄てられたときに、オリンピア姫がつくった歌を
歌ってちょうだい」、という女王レオノーラに応えて、
侍女テレサが歌う。

ビレーノ、オリンピア姫というのは、ルネサンス期イタリアの
詩人アリオストの叙事詩『狂えるオルランド』(Orlando Furioso)の
登場人物。フィクションのなかでフィクションに言及して、
という構造。

* * *

以下、訳注。

2 swain
召使い(男)(OED 2)。(牧歌における)恋人(男)(OED 5)。
女性の恋人との男性が「召使い」というのは、
自分より身分の高い貴族の女性に騎士が仕える、
という宮廷愛(騎士道的恋愛)のパターンを踏襲してのこと。

13 descry
見る、発見する(OED III)。

13-15 it
愛のこと。行ごとにニュアンスが異なる。
13: 愛(がすぐに失われるということ)
14: 愛(両想いの状態)
15: 愛(を手にして、そして失うこと)

17 passion
心を強く動かす感情(OED 6a)

23-24
(マネをしてはいけません。)

* * *

詩形とリズムは、Keats, ("In drear-nighted
December") と同じ(20111126の記事を参照)。
キーツはこのドライデンの詩をモデルにした。

* * *

以下、私見。研究者の方へ。また、人文系の
学術研究のあり方に関心のあるすべての方へ。

スペンサー、シェイクスピア、ミルトンからキーツへ、
という影響のラインのほうがより明白で、また、
より重要ではあるだろうが、ドライデンからキーツ、
というやや意外な線の存在も、イギリス詩の歴史、
その詩形の歴史をより具体的なかたちで理解し、
そして示していく上で重要ではないか。

こういうことを考えていて頭に浮かぶのは、
文学史における、いわゆる「キャノン」的なもののこと。

それは、各作品の内容(プロット的なもの)に関して
後世あるいは現代の読者が与える(究極的には主観的な)
評価によってつくられるべきものでは、そもそもなかった。

むしろそれは、各作品のもつ形式、テーマ、トピックなどが、
どの詩人/作家のどの作品から来て、そしてどの詩人/作家の
どの作品に受け継がれていったか、という(多かれ少なかれ
証明可能な)事実を探求し、蓄積することによって構成される
べきもの。

近年、さまざまなかたちで文学研究のあり方が
問われているが、写真、ラジオ、映画、レコード、
テレビ、CD、PCなどの音声/映像メディアが発明され
普及する以前の世界で中心的な(ほとんど唯一絶対的な、
といってもいい?)役割をはたしてきた文化/芸術/
娯楽的創作形態としての文学の研究を放棄することは、
歴史の半分を放棄することに等しくはないか。

* * *

以下、メモのようなもの−−20世紀における、
文化/芸術/娯楽的なものの伝達/変容の例。

作曲家Sofia Gubaidulinaは、T. S. EliotのFour Quartets
使った曲をつくっている。

作曲家Morton Feldmanは、画家Philip GustonやMark Rothkoに
捧げる曲をつくっている。

ビートルズの "Every Little Thing" の背後にあるのは
60年代のモータウンの音。

(有名な話だが)John Lennonの "Grow Old with Me" の
背後にあるのはR. Browningの詩。

Keith Richardsの "Hate It When You Leave" の背後に
あるのは、モータウンとスタックスの音。

ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)監督の映画『デッド・マン』
Dead Man)の主人公の名は、ウィリアム・ブレイク(William Blake)。

---
パッヘルベルの「カノン」のコード進行を借りた曲の数々。

Donnie Fritts, "We Had It All"

Tom Petty, "Lonesome Sundown"

橋本 祥路、「遠い日の歌」

戸川 純、「蛹化の女」
(これは20世紀日本版のオウィディウス。カフカの「変身」や安倍公房の
「・・・・・・」−−タイトルも内容も覚えていません−−を経て、
オウィディウスの『変身物語』に戻ったかのような詩が、「カノン」に
やや強引に載せられている。YouTubeにオリジナル・ヴァージョンと
パンク・ヴァージョンあり。特にオリジナルは、ちょっと怖くて、
ちょっと泣かせる。)

KAN, 「愛は勝つ」

ZARD, 「負けないで」

(ほか多数。たとえば、「カノン 愛は勝つ」、「カノン ZARD」で
検索すると、山のようにヒットします。)
---

(思いつくものがあれば、また追記します。)

* * *

英文テクストは、The Works of John Dryden, Vol. 6 (of 18) より。
http://www.gutenberg.org/files/16456/16456-h/16456-h.htm

* * *

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剽窃行為のないようにしてください。


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Pound, "Regina Avrillouse"

エズラ・パウンド (1885-1972)
「四月の女王」

魅惑あふれる貴婦人、
春に抱きしめてくれる女王、
あなたの腕は長く、トネリコの枝のよう、
笑い、はじける川のなか、気まぐれな雨の精、
ケシの花の息、
森のすべてが君の部屋、
丘が君の家。

これは、もう夢ではない。
あたたかく魅了する君の腕、
あたたかく強い息が、
君の唇がぼくの唇にふれる前に、
ぼくの頬にふれて、いう、
「これが大地のよろこび、
これが歓楽のワイン、
グラス一杯飲み干して、ね、

花の蜜のグラスを手にとって、
蜜のように甘い歌を歌って、
魅惑の春を飲みこんで、
四月と、草露と、雨を。
茶色の大地のことを歌って、ね、
頬と唇と髪のことを、
それから、あなたがまだ飲みに来ていないところに
口づけする静かな息のことを」。

コケとやわらかい土、
そのベッドで君の楽しみをくり広げて。
君の陰ある枝は、長い腕のよう。
四月の魅惑−−草の細い葉は、
露をつかみ、冠のように頭にのせ、そこに太陽を閉じこめる。
旗のように
高くなびいて、
森中に光と美しさを見せてあげて、
魅惑の四月、輝かしく、大胆に。

* * *

Ezra Pound
"La Regina Avrillouse"

Lady of rich allure,
Queen of the spring's embrace,
Your arms are long like boughs of ash,
Mid laugh-broken streams, spirit of rain unsure,
Breath of the poppy flower,
All the wood thy bower
And the hills thy dwelling-place.

This will I no more dream;
Warm is thy arm's allure,
Warm is the gust of breath
That ere thy lips meet mine
Kisseth my cheek and saith:
"This is the joy of earth,
Here is the wine of mirth
Drain ye one goblet sure,

Take ye the honey cup
The honied song raise up,
Drink of the spring's allure,
April and dew and rain;
Brown of the earth sing sure,
Cheeks and lips and hair
And soft breath that kisseth where
Thy lips have come not yet to drink."

Moss and the mold of earth,
These be thy couch of mirth,
Long arms thy boughs of shade
April-alluring, as the blade
Of grass doth catch the dew
And make it crown to hold the sun.
Banner be you
Above my head,
Glory to all wold display'd,
April-alluring, glory-bold.

* * *

以下、訳注。

3 ash
トネリコ

By Jean-Pol GRANDMONT
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Fraxinus_ornus_JPG1b.jpg

4 unsure
(形容詞)あてにならない(OED 3)、確かさや自信を欠いている(OED 5)。
(天気雨とか、そういうイメージ?)

ウェブ上にとてもきれいな画像があるが、"All rights reserved" と
いうことなので、URLのみを。
http://www.flickr.com/photos/tarmo888/4886948631/

5 poppy
ケシ(英語の詩に頻出する花のひとつ。)

By John Beniston
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Poppy2004.JPG

10 gust
突然の強い風(OED n1)、(おいしい)味、経験(OED n2, 6a-b, 7)

10-12
行ごとに訳している。日本語らしくいえば次のように:
「君の唇がぼくの唇にふれる前に、あたたかく強い息が
ぼくの頬にふれて、いう」。

15 goblet
金属/ガラスでつくられた、ワインなどのためのグラス、コップ。

By Trish Mayo
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:WLA_brooklynmuseum_Wine_Goblet_
mid_19th_century_Blue_glass.jpg
http://www.flickr.com/photos/obsessivephotography/
3314672069/in/pool-892086@N25/

15 sure
副詞。絶対に、必ず、確かに(OED adv. 2-3a)。
「絶対よ」という感じ。

17 raise up
歌う(OED v1, 13c)。

18 drink of
・・・を/から飲む。Ofの前置詞句で液体の名、
またはその源が示される(OED 10c)。

24 moss

By Manfred Morgner
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Moos_5769.jpg

24 mold
イギリスではmould. 地表のやわらかい土(OED "mould" n1)。

29 hold
なかに閉じこめる(OED 5a)。

32 wold
森、丘(古語、OED 1, 2)。

32
省略されている語を補い、散文的に並べ直すと、たとえば:
[your] Glory [being] display'd to all wold,
[May your] Glory [be] display'd to all wold,
など。

32 Glory
光り輝く美しさ(OED 6)。

* * *

(リズムについてなど、後日に少し追記します。)

* * *

英文テクストはウェブサイトPoets' Cornerより。
http://www.theotherpages.org/poems/pound01.html#2

Collected Early Poems of Ezra Pound (1982) に
収められたテクストとは若干異なるところがあるので、
後日、パウンドの最初の詩集A Lume Spento (1908) で
確認したい。

が、自費出版されたこの詩集は150部ほどしか刷られなかったので、
日本ではどこに行けば見られるのかわからない。
(Webcatでもヒットしない。)

イギリスの古書店による次のブログサイトのページによれば、
$45000-$90000/£24000-£48000で取引されているらしい。
(1ドル=80円として、360-720万円!!!)
http://www.bookride.com/2007/04/ezra-pounds-
rarest-lume-spento-1908.html

* * *

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箱根 彫刻の森美術館

箱根 彫刻の森美術館
The Hakone Open-Air Museum
http://www.hakone-oam.or.jp/
20111110





















* * *

自然の(ような−−実際には手入れされているので−−)緑の風景と
人工的な物体の不思議な融合が、刺激的で、同時になぜか心地いい。

* * *

作者、タイトルなどは、メモしていないのでわかりません。

* * *

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(この記事の画像は、みな私が撮影したものです。)


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Keats, "To Autumn" (Comp.)

ジョン・キーツ (1795-1821)
「秋に」

〈秋〉−−君は、霧と、甘く熟した果実の季節、
恵みの太陽の心の友。
君は太陽とたくらむ、藁ぶき屋根の軒下をつたう
ブドウの実を、どれくらい重く実らせようか−−
小さな家の脇、コケに覆われた木々を、どれくらいリンゴでしならせようか−−
果実の芯の芯まで、どれくらい熟れさせようか−−
ヒョウタンや、ヘーゼル・ナッツの殻を、どれくらいふくらませようか、
その中の実はおいしくて−−そしてどれくらい、さらに咲かせようか、
さらにさらに咲かせようか、ハチたちのために遅咲きの花を−−
するとハチたちは、あたたかい日々がずっとつづくと思いこむだろう、
夏が過ぎても、ねっとりした蜜が巣からあふれているから。
(ll. 1-11)

収穫されたもののなかによくいる君を、見たことない人がいるだろうか?
探しに行けば、君は必ず見つかる。
たとえば、納屋の床に何気なくすわって、
もみがらを飛ばす風に、やさしく髪をなびかせていたり。
畑の列の途中で眠りこけていたり。
ケシの香りに酔ってしまい、鎌の次のひと振りで、
作物を、からみつく花ごと刈りとることも忘れて。
またあるときには、落穂拾いをする人のように、
作物をのせた頭を支えつつ小川をわたっていたり。
あるいは、リンゴしぼりのところで、辛抱強く、
何時間も何時間も、最後までリンゴがしぼられるのを見ていたり。
(ll. 12-22)

〈春〉の歌はどこにある?そう、それはどこへ行った?
いや、忘れよう。君には君の音楽がある。
雲を通る夕日の筋が、静かに死にゆく一日に花を添え、
刈り株の広がる畑をバラ色に染める。
そんなとき、小さなブユの悲しげな合唱団が、歌い、嘆く−−
川辺の柳のあいだで、高く飛び、
あるいは低く沈みつつ−−穏やかな風が生まれ、死ぬのにあわせて。
丸々育った子羊の大きな鳴き声が丘のほうから聞こえ、
垣根の下でコオロギが歌う。今、やさしい高音にのって
コマドリの口笛が庭の畑から聞こえてくる。
空に集うツバメも軽やかに鳴いている。
(ll. 23-33)

* * *

John Keats
"To Autumn"

Season of mists and mellow fruitfulness,
Close bosom-friend of the maturing sun;
Conspiring with him how to load and bless
With fruit the vines that round the thatch-eves run;
To bend with apples the moss'd cottage-trees,
And fill all fruit with ripeness to the core;
To swell the gourd, and plump the hazel shells
With a sweet kernel; to set budding more,
And still more, later flowers for the bees,
Until they think warm days will never cease,
For Summer has o'er-brimm'd their clammy cells.
(ll. 1-11)

Who hath not seen thee oft amid thy store?
Sometimes whoever seeks abroad may find
Thee sitting careless on a granary floor,
Thy hair soft-lifted by the winnowing wind;
Or on a half-reap'd furrow sound asleep,
Drows'd with the fume of poppies, while thy hook
Spares the next swath and all its twined flowers:
And sometimes like a gleaner thou dost keep
Steady thy laden head across a brook;
Or by a cyder-press, with patient look,
Thou watchest the last oozings hours by hours.
(ll. 12-22)

Where are the songs of Spring? Ay, where are they?
Think not of them, thou hast thy music too,―
While barred clouds bloom the soft-dying day,
And touch the stubble-plains with rosy hue;
Then in a wailful choir the small gnats mourn
Among the river sallows, borne aloft
Or sinking as the light wind lives or dies;
And full-grown lambs loud bleat from hilly bourn;
Hedge-crickets sing; and now with treble soft
The red-breast whistles from a garden-croft;
And gathering swallows twitter in the skies.
(ll. 23-33)

* * *

以下、訳注。

タイトル
「(擬人化された)秋に(対して歌う)」ということ。
英語の詩のタイトルによくある "To. . . . " は
みなこのパターンで、「(詩人/わたしが)・・・・・・に(対して歌う)」
という意味。

1-11
1行目の "Season. . . fruitfulness" と
2行目の"Close . . . sun" は、どちらも「秋」を
いいかえた表現。このようにいって(擬人化された)「秋」に
対して呼びかけている。そして、3-11行目でそんな秋のようすを
具体的に描写。

3 bliss
贈りものをしてよろこばせる(OED 7b)

5 cottage
(自営ではない)農民などが住む小さな家(OED 1)。

By Joseph Mischyshyn
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rathbaun_Farm_-_
200_year_old_thatched-roof_cottage_-_geograph.org.uk_-_
1632126.jpg
(200年前、ちょうどキーツの生きていた頃のもの。
アイルランド。屋根は藁ぶき。)

7 hazel

By Fir0002
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hazelnuts.jpg
(ふくらんでる・・・・・・。)

12- thee
第一スタンザに引きつづき、「秋」が擬人化され、
「君」と呼びかけられて、描写されている。
15行目で長い髪が想定されていることから、
「秋」は女性。

英文テクストを使用した1900年版の全集には
巻頭にこんな絵が。

(いろいろ誤解があるような気がする。)

14 granary

By Derek Harper
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Tetcott_granary_-_geograph.org.uk_-_606575.jpg

17 poppies
畑に生えるのはヒナゲシ(英語では、field poppy,
corn poppyなどと呼ばれる)だが、文学作品のなかでは
しばしばアヘン用のケシ(opium poppy)と混同される。
(マイナーな詩人だが、Francis Thompsonの "To Monica"
など参照。)

Field poppy

By Fornax
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Papaver_rhoeas_eF.jpg

Opium poppy

By Zyance
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Mohn_z10.jpg

19-20
ニコラ・プッサン(プーサンとも)の絵「秋」が
この二行の背後にあるといわれる(Ian Jack,
Keats and the Mirror of Art, 1967)。


http://www.nicolaspoussin.org/
Autumn-1660-64-large.html
右のほうで頭に作物をのせてあちらを向き、
その向こうの川の流れを見ている女性が、
この二行の「秋」の描写につながる、とのこと。

21 cider-press

By Man vyi
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Cider_press_in_Jersey.jpg

25-
引きつづき、君=擬人化された〈秋〉への呼びかけから
第三スタンザがはじまる。

25 barred clouds
雲のあいだから差す光が棒状になっていて・・・・・・などという
説明より、画像のほうがわかりやすい。


By Spiralz
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Crepuscular_rays_with_clouds_and_high_contrast_fg_FL.jpg


By Fir0002/Flagstaffotos
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Crepuscular_ray_sunset_from_telstra_tower.jpg
次のライセンスにて。
http://commons.wikimedia.org/wiki/Commons:
GNU_Free_Documentation_License_1.2

ただの秋の夕暮れの風景と見てもいいが、おそらく、
「ヤコブのはしご」的なイメージとして用いられているのかと。
つまり、ここを死者が天に昇っていく・・・・・・というような。
(実際の聖書中の「ヤコブのはしご」を昇り降りするのは天使。)

25 the soft-dying day
今日が「静かに死んでいく」・・・・・・もちろん、夕暮れのこと。
あえてdyingということばを使っているところがポイント。
他の描写も死の暗示として読め、というサイン。

26 stubble-plains
刈り株の広がる平らな土地(畑)

By Andrew Smith
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Farmland,_Lockinge_-_geograph.org.uk_-_938209.jpg

ただの秋の夕暮れの風景と見てもいいが、おそらく聖書における
「刈り株」stubbleの比喩を思い出すべき。

---
神の怒りがエジプト人を刈り株のように焼き尽くした。
(出エジプト記15:7)

悪人が風の前の刈り株のように吹き飛ばされることがあるか。
(ヨブ記21:18)

あなた(神)の敵を、風の前の刈り株のようにしてください。
(詩篇83:13)

地上の王たちは、刈り株のようにつむじ風に巻きこまれて消える。
(イザヤ記41:24)

見よ、占星術師(?)は刈り株のように炎に焼き尽くされる。
(イザヤ記47:14)
---

また、「刈り株」は第二スタンザの「鎌hookで刈りとる」という
イメージにもつながる。つまり、鎌で麦などを刈りとる ≒ 死神が
鎌で人間を刈りとる。


http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Drick_ur_ditt_glas.jpg
18世紀のものとのこと。

26 rosy
夕陽の色、炎の色(上記、聖書からの引用参照)、血の色・・・・・・。

29 the light wind lives or dies
風が生まれたり死んだり・・・・・・もちろん、風が吹いたりやんだり、
ということ。25行目と同様、あえてdieということばを使っているところが
ポイント。他の描写も死の暗示として読め、というサイン。

30 full-grown lambs
丸々太った子羊は・・・・・・もちろん、殺されて食卓へ。
加えて、子羊 = 神の子羊 = イエス・キリスト = 殺される。

33 swallows
集まったツバメはどこかに行ってしまう(渡り鳥だから)、
というところがポイント。

(また追記します。コオロギ、コマドリにも死のイメージが。)

* * *

以下、全体を要約。

第一スタンザは、「実り」という秋の側面を描く。
やや甘ったるく感じるほど豊かな言葉で。

第二スタンザでは、実りをあらわす表現のなかに、
少しずつ陰のある言葉が散りばめられてくる。
[D]rowse, poppy, hook, swath (flowers), lastなど。

第三スタンザは、表面的に秋の風景や音を描きつつ、
その裏で一貫して、執拗なまでに、暗示的なことばで「死」を描く。
死について、語らずに語る。

そもそも秋とはどんな季節?−−恵みの季節、
収穫の季節であると同時に、冬の直前。

その冬とは、花が散り、草木が枯れ、虫たちが死に、動物も眠り、
あたり一面が雪に覆われたりもする、いわば死の季節。

第三スタンザは、そんな冬=死の直前の風景/心象風景を描く。

そして、特に印象的なのは、一貫して象徴的な言葉を
用いているため、死に関する叙情性/感傷性がまったく、
あるいは必要以上に、感じられないこと。

下記のように、死とは、キーツ本人にとってもっとも身近な
ものであったはずなのに、それがまるで他人ごとであるかのように。

* * *

1818年12月
弟トムが結核で死去。彼の看病をしていたキーツには
それ以前に結核がうつっていたと思われる。

1819年
一年を通じてキーツは体調不良を訴える。

1819年9月
「秋に」が書かれる。

1820年2月
結核発症。

1820年 秋以降
療養のためにイタリアにわたるが、医師の誤診なども
あってかなり苦しむ。錯乱状態のなか、「アヘンをよこせ!」
(痛み止めとして)とわめいた、などのエピソードが残っている。
(そういわれた友人は、これを与えなかった。)

1821年2月
キーツ死去。死後の解剖では、「肺がほぼ完全に
破壊されていた」とのこと。

* * *

後日、情報の出典など、少しずつ追記していきます。

* * *

英文テクストは、Keats, Keats: Poems Published
in 1820
, ed. M. Robertson (Oxford, 1909) より。
<http://www.gutenberg.org/files/23684/23684-h/23684-h.htm>

* * *

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Keats, ("In drear-nighted December")

ジョン・キーツ (1795-1821)
(「わびしく、夜のように暗い十二月」)

I.
わびしく、夜のように暗い十二月の
幸せな木、幸せすぎる木よ。
おまえの枝はけっして覚えていない、
緑色だったころの幸せを。
それらは枯れて落ちない、
みぞれまじりの北風が音を立てて通りすぎても。
雪どけ水がまた凍って、おまえの枝を固めてしまい、
春に芽を出すことなど思い出さない。

II.
わびしく、夜のように暗い十二月の
幸せな川、幸せすぎる川よ。
おまえに浮かぶ泡はけっして覚えていない。
夏のアポローンのまなざしを。
心地よい忘却のなか、それらは水晶のように凍り、
過去についてなどくよくよしない。
けっして、絶対に、文句をいわない、
凍える季節に対して。

III.
ああ、そうだったらいいのに、
心やさしい女の子や男の子、みんなにとって。
だが、そんな人はいただろうか?
過ぎ去った幸せに、身をよじるほどの痛みを感じない人は?
その痛みを感じないという感じ、
それをいやすくれるものはなく、
鉄のように感覚を麻痺させることもできない、
そんな痛みを感じないという感覚を、歌った人はいない。

* * *

John Keats
("In drear-nighted December")

I.
In drear-nighted December,
Too happy, happy tree,
Thy branches ne'er remember
Their green felicity:
The north cannot undo them,
With a sleety whistle through them;
Nor frozen thawings glue them
From budding at the prime.

II.
In drear-nighted December,
Too happy, happy brook,
Thy bubblings ne'er remember
Apollo's summer look;
But with a sweet forgetting,
They stay their crystal fretting,
Never, never petting
About the frozen time.

III.
Ah! would 'twere so with many
A gentle girl and boy!
But were there ever any
Writh'd not of passed joy?
The feel of not to feel it,
When there is none to heal it,
Nor numbed sense to steel it,
Was never said in rhyme.

* * *

以下、訳注と解釈例。

5 undo
多義的な表現。(下のgentleも参照)。
服を脱がす(OED 3b)、元に戻す(OED 7a, 7b)、
破壊する(OED 8)。

7 Nor
= Or (OED 4)。5行目のcannotの "not" に
引きずられてnorとなっているだけ。

8 From
なんらかの状態、状況、行為が奪われること、そこから
切り離されること、解放されることをあらわす(OED 6b)。
"Prevent (人/もの) from -ing" といういい方などのfrom.

8 budding
芽を出すこと。過去のものか、これからのものか、あいまい。

8 prime
春(OED 7)。

12 Apollo's summer look
Apolloはギリシャ神話の太陽神アポローン。太陽のこと。
そのsummer lookとは、夏の太陽の光。

14 stay
止める(OED III)。

15 crystal
川の水が水晶のように透きとおり、また水晶のように
凍っているようすをあらわす。

18 gentle
やわらかい、しなやかな(木の枝; OED 5)−−第1スタンザにつながる。
静かに流れる(川; OED 6b)−−第2スタンザにつながる。
もともと「高貴な生まれの」という意味の言葉だが、ここでは
この意味は無関係。

24
つまり、そのようなもの(過ぎ去った幸せを思い出して
苦しまない、ということ)はありえない、ということ。

* * *

全体の要約:

I.
枯れてしまった冬の木は、夏、緑色に生い茂っていたときのことを
覚えていない。

II.
凍った冬の川は、夏、太陽に照らされて流れていたときのことを
覚えていない。

III.
しかし、幸せを失った人は、幸せだったときのことを忘れられない。

* * *


By Stanley Howe
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Frozen_river_bank_-_geograph.org.uk_-_1640260.jpg

* * *

この詩のポイントは、第1-2スタンザで、過去の幸せを覚えていない
木や川を「幸せすぎる!」といっているが、本当にそれは幸せか?
という疑問が残ること。

満たされていない状態にあって、満たされていた過去を
思い出すことはつらいことかもしれないが、満たされていない状態のなか、
凍った木の枝や川のように心を凍らせてしまうというのは、どうなのか?

鉄のように心を麻痺させて生きるということは可能か?
可能であったとしても、それは幸せなことか?

("[D]rear-nighted December" というフレーズから、
答えはノーであることが明らか。)

このような、ものごとを両面からみるような思考のスタイルが、
「ギリシャ壺」や「ナイチンゲール」に引きつがれることになる。

「ギリシャ壺」
古代の壺に描かれた永遠と、いずれ老いて滅びる人間の世界、
どっちが幸せ?

「ナイチンゲール」
酒、アヘン、芸術などによる陶酔とシラフの状態、
どっちが幸せ?

* * *

リズムと形式について。



リズムはストレス・ミーター(四拍子)。各行とも、ビート三つに
言葉がのっている。脚韻パターンはababcccdで、aとcのところは
女性韻、またdのところは三スタンザ共通(prime/time/rhyme)。

---
ふつうの脚韻(男性韻):
行末の母音(+子音)が同じ音。この母音にはストレスあり。

女性韻:
行末の母音(+子音)+母音(+子音)が同じ音。
最初の母音にはストレスあり、あとのものにはストレスなし。
Dec-ember/rem-emberとか、und-o them/thr-ough themとか。
---

この詩形/リズムは、Drydenの劇 The Spanish Fryar
挿入された歌("Farewell ungratefull Traytor")から借りたもの。
(このドライデンの詩は、20111210の記事に。)

* * *

英文テクストは、Project Gutenberg Consortia Centerのもの。
http://ebooks.gutenberg.us/Alex_Collection/
keats-stanzas-503.htm

* * *

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浜松市楽器博物館

浜松市楽器博物館(静岡)
Hamamatsu Museum of Musical Instruments
http://www.gakkihaku.jp/
20111109

バリの竹ガムラン(ジュゴッグ/ジェゴグ)の楽器?


エチオピアの楽器


弦楽器


管楽器


チェンバロ


ダルシマー


* * *

ダルシマーを弾く少女の
幻を見たことがある。
あれはアビシニアの子。
ダルシマーを弾き、
アボラの山を歌いつつ・・・・・・。

A damsel with a dulcimer
In a vision once I saw:
It was an Abyssinian maid,
And on her dulcimer she played,
Singing of Mount Abora.
(Samuel Taylor Coleridge, "Kubla Khan," ll. 37-41)



(Bのところで軽く拍子を。ストレス・ミーターですが、
バラッド的で素朴な雰囲気ではなく、内容ともあいまって
異国的で神秘的な香りがただようリズムになっています。)

* * *

英文テクストは、The Complete Poetical Works of
Samuel Taylor Coleridge
、vol. 1, 1912より。
http://www.gutenberg.org/files/29090/
29090-h/29090-h.htm

* * *

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(この記事の画像は、みな私が撮影したものです。)


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Shelley, "To a Skylark" (Comp. in Jap.)

パーシー・B・シェリー(1792-1822)
「ひばりに歌う」

やあ、陽気な妖精の君!
君は絶対に鳥じゃない。
天から、あるいはそこに近いところから、
君は心そのものをそそぐ。
あふれるほどの即興のメロディというかたちに変えて。
(1-5)

どんどん高く、さらに高く、
大地から君は飛び立つ。
まるで炎の雲のように。
君は青く深い空を横切って飛ぶ。
歌いながら舞いあがり、そして舞いあがりながら歌う。
(6-10)

沈んだ太陽の
金色の稲妻のなかを、
輝く雲の下を、
君は漂い、駆けぬける。
まるで、からだをもたない「歓び」そのものが走りはじめたかのように。
(11-15)

赤くおぼろげな夕暮れが、
君が飛ぶまわりで溶ける。
天の星が
一面に広がる日の光のなかで見えないように、
君も見えない。が、君の鋭い高音の歓びが聞こえる。
(16-20)

君の声はまるで鋭い矢、
あの銀色の星から降る矢だ。
その星のまぶしい光は弱くなっていく、
透き通るような白い夜明けのなかで。
そしてほとんど見えなくなる・・・・・・が、そこに銀の星は確かにあって。
(21-25)

大地そのものが、すべての空気が、
君の声で大きく鳴りひびく。
まるで、裸の夜に、
ひとつだけ浮かぶ雲から
月が光の矢を雨のように降らせ、空が大洪水になるように。
(26-30)

君が何なのか、ぼくたちは知らない。
君に似ているものは何?
虹の雲から、
そんなまぶしい雨粒は流れてこない、
君のいるところから降ってくるメロディの雨ほどには。
(31-35)

---

By jannefoo (Janne V)
http://jannefoo.deviantart.com/art/
BowRain-34239662?fullview=1
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Rainbow_panorama.jpg?uselang=ja
---

たとえば、君は詩人のよう? 思考の光のなかに
隠れていて、頼まれもしないのに
賛美歌を歌う。
すると世界中の人々が、
これまで気にとめていなかった希望と恐れで共鳴しはじめる。
(36-40)

それとも貴族の家の少女のよう?
お城の塔のなか、
愛がいっぱいで重い
魂を、こっそり夜に癒す
愛のように甘い音楽で・・・・・・そしてそれは洪水のように部屋からあふれ出す。
(41-45)

それとも金色の蛍?
木々から露のしたたる谷で
誰にも見られず、
空気のように透明な光を
草花のあいだにまき散らす・・・・・・が、この草花にさえぎられ、蛍の光は見えない。
(46-50)

それともバラ? 緑の葉の
小部屋のなか、それは
あたたかい風に散らされる。
するとその香りで、
盗人たちの気が遠くなり、その羽も重くなる・・・・・・香りがあまりにも甘いから。
(51-55)

春の雨が、
キラキラ光る草に降る音、
雨に目を覚ます花々、
その他すべての
楽しげで、透きとおっていて、新しく、いきいきしたもの。でも君の歌はさらに上をいく。
(56-60)

教えてほしい、妖精または鳥の君、
どんなすてきなことを考えているの?
ぼくは聞いたことがない、
愛やワインを称える歌が、
君の歌ほど神々しい陶酔の洪水を、熱く、大きな音で流すのを。
(61-65)

結婚の合唱も、
勝利の歌も、
君の歌に比べれば、みな
中身のないいきがり、ほらのようなもの。
はっきりわからないが、そこには必ず何かが欠けている。
(66-70)

源には何がある?
君の楽しげな歌の源には?
どんな野原、波、山?
どんな姿の空、平野?
仲間に対するどんな愛? 苦痛に対するどんな無知?
(71-75)

君の透明で鋭い歓びは
疲れることを知らない。
不満やいらだちの影すら
けっして君には近づかない。
君は愛する・・・・・・そして愛に満ち飽きる悲しみを知らない。
(76-80)

目覚めていても、夢のなかでも、
君は知っているにちがいない、
死がより真正で、より深いものであると。
ぼくたち人間が夢見るより、はるかに正しく、深いものと。
でなければ、君の歌声はそのように、水晶の川のように、流れ出ないはずだろう?
(81-85)

ぼくたちは過去ふりかえり、未来を望む。
そして、そこにないものを求めて、病み、衰える。
心の底から笑っているときにも、
どこかに痛みを抱えている。
ぼくたちのもっとも美しい歌は、もっとも深い悲しみを歌う。
(86-90)

でも、もしぼくたちに、
憎しみ、傲慢、恐れをあざけることができないなら、
生まれながらにしてぼくたちは
涙を流す運命にあるのなら、
そもそも楽しみ、歓ぶ君の歌は聞こえてこないはずではないか。
(91-95)

どんなメロディやリズム、
どんな心地よい音より、
書物に記された
どんな宝より、
君の歌は詩人に多くを教えてくれる。大地をあざける君!
(96-100)

半分でいいから教えてほしい、
君の頭のなかにあるはずの楽しみ、歓びを。
そうすれば、狂いつつ調和するメロディが
ぼくの口から流れ出て、
すべての人々に聞こえるだろう。そう、今、ぼくが聞いているようなメロディが。
(101-5)

* * *

英文テクスト、解釈例などについては、
三部に分割した別記事をご参照ください。

* * *

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国立民族学博物館

国立民族学博物館(大阪)
National Museum of Ethnology, Osaka, Japan
http://www.minpaku.ac.jp/
20101010

農作業の道具1


農作業の道具2


漁のための舟


少し前の日本の家


衣服


装飾品


楽器

(ジャワ島あたりのもの?)

記載がないものについては、どこの国のものか不明。
(メモなどをとってきていません。)

* * *

歴史的に見て、また世界的に見て、現在の日本の
(特に都市部の)暮らしがあたりまえのものでは
ないことを感じるための場所。

* * *

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(この記事の画像は、みな私が撮影したものです。)


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Keats, "To Autumn" (3)

ジョン・キーツ (1795-1821)
「秋に」 (3)

〈春〉の歌はどこにある?そう、それはどこへ行った?
いや、忘れよう。君には君の音楽がある。
雲を通る夕日の筋が、静かに死にゆく一日に花を添え、
刈り株の広がる畑をバラ色に染める。
そんなとき、小さなブユの悲しげな合唱団が、歌い、嘆く−−
川辺の柳のあいだで、高く飛び、
あるいは低く沈みつつ−−穏やかな風が生まれ、死ぬのにあわせて。
丸々育った子羊の大きな鳴き声が丘のほうから聞こえ、
垣根の下でコオロギが歌う。今、やさしい高音にのって
コマドリの口笛が庭の畑から聞こえてくる。
空に集うツバメも軽やかに鳴いている。
(23-33)

* * *

John Keats
"To Autumn" (3)

Where are the songs of Spring? Ay, where are they?
Think not of them, thou hast thy music too,―
While barred clouds bloom the soft-dying day,
And touch the stubble-plains with rosy hue;
Then in a wailful choir the small gnats mourn
Among the river sallows, borne aloft
Or sinking as the light wind lives or dies;
And full-grown lambs loud bleat from hilly bourn;
Hedge-crickets sing; and now with treble soft
The red-breast whistles from a garden-croft;
And gathering swallows twitter in the skies.
(23-33)

* * *

訳注と解釈例。

25-
引きつづき、君=擬人化された〈秋〉への呼びかけからはじまる。

25 barred clouds
雲のあいだから差す光が棒状になっていて・・・・・・などという
説明より、画像のほうがわかりやすい。


By Spiralz
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Crepuscular_rays_with_clouds_and_high_contrast_fg_FL.jpg


By Fir0002/Flagstaffotos
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Crepuscular_ray_sunset_from_telstra_tower.jpg
次のライセンスにて。
http://commons.wikimedia.org/wiki/Commons:
GNU_Free_Documentation_License_1.2

ただの秋の夕暮れの風景と見てもいいが、おそらく、
「ヤコブのはしご」的なイメージとして用いられているのかと。
つまり、ここを死者が天に昇っていく・・・・・・というような。
(実際の聖書中の「ヤコブのはしご」を昇り降りするのは天使。)

25 the soft-dying day
今日が「静かに死んでいく」・・・・・・もちろん、夕暮れのこと。
あえてdyingということばを使っているところがポイント。
他の描写も死の暗示として読め、というサイン。

26 stubble-plains
刈り株の広がる平らな土地(畑)

By Andrew Smith
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Farmland,_Lockinge_-_geograph.org.uk_-_938209.jpg

ただの秋の夕暮れの風景と見てもいいが、おそらく聖書における
「刈り株」stubbleの比喩を思い出すべき。

---
神の怒りがエジプト人を刈り株のように焼き尽くした。
(出エジプト記15:7)

悪人が風の前の刈り株のように吹き飛ばされることがあるか。
(ヨブ記21:18)

あなた(神)の敵を、風の前の刈り株のようにしてください。
(詩篇83:13)

地上の王たちは、刈り株のようにつむじ風に巻きこまれて消える。
(イザヤ記41:24)

見よ、占星術師(?)は刈り株のように炎に焼き尽くされる。
(イザヤ記47:14)
---

また、「刈り株」は第二スタンザの「鎌hookで刈りとる」という
イメージにもつながる。つまり、鎌で麦などを刈りとる ≒ 死神が
鎌で人間を刈りとる。


http://commons.wikimedia.org/wiki/File:
Drick_ur_ditt_glas.jpg
18世紀のものとのこと。

26 rosy
夕陽の色、炎の色(上記、聖書からの引用参照)、血の色・・・・・・。

29 the light wind lives or dies
風が生まれたり死んだり・・・・・・もちろん、風が吹いたりやんだり、
ということ。25行目と同様、あえてdieということばを使っているところが
ポイント。他の描写も死の暗示として読め、というサイン。

30 full-grown lambs
丸々太った子羊は・・・・・・もちろん、殺されて食卓へ。
加えて、子羊 = 神の子羊 = イエス・キリスト = 殺される。

33 swallows
集まったツバメはどこかに行ってしまう(渡り鳥だから)、
というところがポイント。

(また追記します。コオロギ、コマドリにも死のイメージが。)

* * *

以上、この最終スタンザは、表面的に秋の風景や音を描きつつ、
その裏で一貫して、執拗なまでに、暗示的なことばで「死」を描く。
死について、語らずに語る。

そもそも秋とはどんな季節?−−恵みの季節、
収穫の季節であると同時に、冬の直前。

その冬とは、花が散り、草木が枯れ、虫たちが死に、動物も眠り、
あたり一面が雪に覆われたりもする、いわば死の季節。

この詩は、そんな冬=死の直前の風景/心象風景を描く。

そして、特に印象的なのは、一貫して象徴的な言葉を
用いているため、死に関する叙情性/感傷性がまったく、
あるいは必要以上に、感じられないこと。

下記のように、死とは、キーツ本人にとってもっとも身近な
ものであったはずなのに、それがまるで他人ごとであるかのように。

* * *

1818年12月
弟トムが結核で死去。彼の看病をしていたキーツには
それ以前に結核がうつっていたと思われる。

1819年
一年を通じてキーツは体調不良を訴える。

1819年9月
「秋に」が書かれる。

1820年2月
結核発症。

1820年 秋以降
療養のためにイタリアにわたるが、医師の誤診なども
あってかなり苦しむ。錯乱状態のなか、「アヘンをよこせ!」
(痛み止めとして)とわめいた、などのエピソードが残っている。
(そういわれた友人は、これを与えなかった。)

1821年2月
キーツ死去。死後の解剖では、「肺がほぼ完全に
破壊されていた」とのこと。

* * *

後日、情報の出典など、少しずつ追記していきます。

* * *

英文テクストは、Keats, Keats: Poems Published
in 1820
, ed. M. Robertson (Oxford, 1909) より。
<http://www.gutenberg.org/files/23684/23684-h/23684-h.htm>

* * *

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