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きょうの社説 2011年12月15日
◎F15訓練再開へ 安全徹底と信頼の再構築を
航空自衛隊小松基地のF15戦闘機の燃料タンク落下事故で、中止されていた飛行訓練
は能美市議会などの容認判断を受け、再開へ動き出したとはいえ、基地と地元との関係に大きな課題を残した。防衛省、空自は国防に理解を示す地元判断を重く受け止め、再発防止策を含めた安全対策の徹底とともに、地域との信頼関係を再構築する必要がある。燃料タンクが飛行中に爆発した今回のケースは、タンクの部品が広範囲に散乱し、一つ 間違えれば大惨事につながる深刻な事故だった。原因は外れたナットで配線ショートを起こし、引火による爆発と断定されたが、住民は基地が存在することのリスクに真正面から向き合うことになった。 地道な活動で築いてきた地域の信頼や、東日本大震災の救援活動で高まった評価も、一 つの事故で崩れかねないのが自衛隊を取り巻く厳しい現実である。 10月7日の事故から訓練中止は2カ月以上に及び、隊員は他の基地に出向く移動訓練 を余儀なくされた。操縦士の技量維持、戦闘機の整備体制には明らかにマイナスであり、防衛上の懸念が増す見過ごせぬ状況になっていた。 一方、空自が今月2日に事故原因と再発防止策を公表した後も、能美市は対策が不十分 として慎重な姿勢を崩さなかった。判断先送りの過程では、一川保夫防衛相の対応への不満や、民主、自民党間の政治的な思惑も絡み、能美市議会は訓練再開の前提として、防衛省高官の訪問、謝罪を求めていた。 安全上の問題とは別に、謝罪の在り方などにも論点が移ったことで感情論も入り交じっ た展開をたどったが、防衛省サイドの事故後の対応に配慮や丁寧さが欠けていたのは、謝罪に訪れた防衛事務次官がすでに認めた通りだろう。 能美市では基地に関する地域連絡協議会が発足し、地域防災計画に航空機事故対策を新 たに検討するなど、基地への意識は確実に変わった。住民に理解を求める空自の日常活動も、これまで通りの対応では信頼回復はおぼつかない。事故の教訓を生かし、地域とのパイプを太くする広報体制についても見直しが必要である。
◎韓国の慰安婦像 甘く見られた民主党政権
ソウルの日本大使館前に、日本政府の要請を無視する形で、旧日本軍の慰安婦を象徴す
る少女像が設置された。李明博大統領の来日が迫るなか、日本を貶める行為を追認する無神経さは、残念というほかない。野田政権が首脳会談を延期するような強硬手段に打って出る心配はないと高をくくっているのだろう。韓国は慰安婦に関する賠償請求権を確認するための政府間協議を提起し、日本側はこれ を拒否している。韓国政府が少女像の設置を黙認したのはその意趣返しでもあるのだろうが、大使館前に、その国を非難するシンボルを設置した例など聞いたことがない。 民主党政権は韓国政府が求める在日外国人の地方参政権付与に積極的で、日本に渡った 朝鮮半島由来の図書1200冊を見返り無しに韓国政府に引き渡すなど、一方通行ともいえる好意を示してきた。その「返礼」が慰安婦像の設置であるなら、民主党政権も随分甘く見られたものである。 像の設置を許可した韓国政府の対応は、外交に関するウイーン条約違反の疑いがある。 同条約には「接受国は使節団の公館を保護するため及び公館の安寧の妨害また公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」(第22条)とあり、条約違反の疑義は免れない。 韓国が慰安婦に関する政府間協議を提起したのは、韓国憲法裁判所が今年8月末、韓国 政府が慰安婦問題などの解決のために具体的な努力を怠っているのを「違憲」と判断したからだ。だが、日本と韓国は1965年に日韓基本条約を結び、個人補償を含めて「両国民の間の請求権に関する問題」は完全かつ最終的に解決したことを文書で確認している。韓国憲法裁判所が指摘した慰安婦などへの補償の努力不足は韓国政府に向けられたものであり、日本を巻き込むのは筋が違う。 民主党には、野田佳彦首相や前原誠司政調会長、菅直人前首相ら在日韓国人から違法な 献金を受けた議員がいる。民主党政権の脇の甘さが付け入る隙を与えている印象も否めない。
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