

幹細胞医療と聞いて、どんな医療を想像されますか。多くの方々は、ES細胞(胚性幹細胞)や、iPS細胞(人工多能性幹細胞)など、心臓や肝臓などの臓器を作ったり、骨や軟骨、角膜や脂肪を手術の移植材料にしたり、クローン動物を作ったりする工学的な再生医療をイメージされ、夢のようだが、なんだか怖い未来の医療だと思われているのではないでしょうか。しかし、幹細胞療法はすでに現実のものとして始まっています。その多くは、上述のような組織工学的な再生医療ではなく、体内に持っている体性幹細胞を取り出し、大量に培養するだけで操作を加えず、そのままの未分化のマルチクローンな幹細胞を、採取した患者さまの身体に静脈注射、皮下注射、髄腔注射で大量に戻すという治療法です。
疾患の治療やアンチエイジングをめざすという修復を目的としたこの自家幹細胞療法は、自分の細胞を取り出し自分に戻すわけで、自己輸血や透析療法と理論的には同じで安全かつ倫理的な問題もありません。また、我々が使用している培地は、いっさいの動物由来物質を含んでいない完全無血清培地でありながら、強力な細胞培養能力を持つということも特筆すべきところです。もちろん、治療開始前には、患者さまへのリスクと期待される効果とその確率に関する説明と同意、感染症スクリーニングも徹底しております。
さらに、厚生労働省は国内でのヒト幹細胞の臨床研究に対して、諸外国と比べても厳格な内容の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」および関連する複数の指針を示しております。我々はこの指針を遵守しながら幹細胞医療を行い、現在の医師法下での幹細胞投与から、複数の施設での高度先進医療、さらには薬事法申請のための臨床治験を行い、保険医療制度に組み込まれる医療にしていきたいと思っております。幹細胞医療の分野でも、我が国が最も進んだ医療を提供できるよう、我々も全力を尽くす所存です。

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昭和55年関西医科大学卒業
ウェイクフォレスト大学、ハーバード大学留学、関西医科大学耳鼻咽喉科講師・助教授、
関西医科大学付属男山病院教授などを経て現職
アレルギー学会代議員、国際顔面形成学会日本支部代表 |
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