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できごと
【関西事件史】附属池田小児童殺傷(7)監禁された先輩記者
契約書を“盗み見”
翌日、私自身が向かったは最も遠い兵庫県加古川市。宅間が事件を起こすきっかけになった3番目の元妻と暮らしていた場所だ。通信部からの情報で判明したマンションで聞き込みをしたが、残念ながら宅間を知っている人は皆無だった。
絶対にもう一つ前の居住地を割り出さないと…。住民から聞いた大家さんの住所を尋ね、何度もお願いしたが、一切取材に応じてくれない。マンションに看板がかけられている不動産会社に望みをかけた。
対応してくれたのは若い男性従業員。当然、「契約者の情報を漏らすわけにはいかない」ときっぱりと断られたが、簡単に引き下がるわけにはいかない。どれほど悲惨な事件で、報道する意味があるのかを必死に訴えると、従業員は「上司に聞いてくる」と言い残し、事務所の奥に入っていった。
私の懇願にほだされたのか、それとも単に不注意だったのかは分からない。テーブルの上に「契約書」と書かれたファイルが置き去りになっていた。この状況で盗み見ない新聞記者なんているのだろうか。どきどきしながらファイルを開くと何ページ目かに宅間の名前が目に飛び込んできた。
住所を丸暗記し、ファイルを閉じてから1分もたたないころ、従業員が戻ってきた。「申し訳ありませんが、やはりお答えできません」。心の中ではお礼を言いながら「そうですか…」と残念そうに装って事務所を後にした。外に出ると、ハイヤーに飛び乗った。(呼称略)
(東京社会部 楠秀司)
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