東日本大震災関連の犯罪・問題行為
東日本大震災関連の犯罪・問題行為(ひがしにほんだいしんさいかんれんのはんざい・もんだいこうい)では、2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって環境・情勢などが変化した事で起きた、主な犯罪や問題行為、人災(第二の災害)について述べる。
目次 |
概要
東北地方太平洋沖地震の発生以降、地震に影響された、もしくは便乗した犯罪・問題行為が発生している。
- 被災地で発生する犯罪の種類としては、「災害の混乱時に発生する犯罪(金品を狙う火事場泥棒など)」[1][2]や、「食料不足などの要因から、生存手段として止むを得ず行われる犯罪」[1][2]などがある。
- 警視庁・警察庁・消費者庁(国民生活センター)などでは、ホームページや報道を通じて防犯の注意を呼びかけている。また、内閣官房震災ボランティア連携室のサイト「助けあいジャパン」[3]を通じて、確実な情報を発信している。
- 日本国外メディアにおける報道
日本国外メディアによる地震直後の状況についての報道には、主に「秩序が保たれている」と好意的に報じたものが多かった。
- 中国のテレビ局・中央電視台 - 「秩序があって混乱は全く見当たらない」[4]。
- 台湾の新聞・『中国時報』 - 「(米ニューヨーク大停電やハリケーン・カトリーナのような)商店略奪も起きず、すべてに秩序が保たれている」[5]。
- 米メディアの記者 - 「それ以外の国(2004年のスマトラ島沖地震や、2010年のチリ地震、2005年のハリケーン・カトリーナ)と比較して、日本人は震災に対し冷静に判断し、犯罪自体は少ない」[6]。
- 米CNNのコメンテーター・ジャック・カファティ - 「なぜ震災下の日本で、略奪が起きないのか」をテーマに、自身の番組で視聴者に問いかけた[6]。
- アルゼンチンの新聞『ラ・ナシオン(電子版)』 - 略奪が起きない日本を称賛[7]。
一方、アメリカの新聞『ウォールストリート・ジャーナル』では、「被災地の極端な物不足により生存手段として、やむなく略奪行為を行ったり、その行為を黙認したりしている」との報道があった[1]。
関係各所が注意喚起する悪質商法・詐欺
地震発生日の3月11日以降、被災地・その周辺地域において、震災後に増える傾向の「点検商法(電気・屋根など)」[8][9]「騙り商法」といった悪質商法や、「募金詐欺」「義捐金詐欺」などが発生。不審情報の事例や相談が、関係各所に寄せられている[8][9]。
これを受け、警視庁[8]や国民生活センター[9]では、注意を呼びかけている。国民生活センターは3月27日に、「震災に関連する悪質商法110番」を開設した(主に東北3県における消費者トラブルに対応)[10]。
3月23日には、訪問・電話だけでなく、ダイレクトメール(加入していない「災害見舞制度」の更新通知)による詐欺の存在も千葉県で確認、報道された[11]。
犯罪
被災地で発生している犯罪
窃盗
被災地では、(住民が避難したことによる)留守宅への「空き巣」[12]や、休業中の商店・金融機関に侵入する「店舗荒らし」「自販機荒らし」[13][14][15][16]、海外での解体転売を目的に入国した外国人による被災車両の盗難[17]などが発生している(他所からやってきた「偽ボランティア」による窃盗行為もあった[18])。
宮城県警察は3月30日、地震発生から26日までの県内の窃盗被害総額が、約1億円(その内、現金被害は約7500万円)に上ったと発表した[19](気仙沼信用金庫・松岩支店の金庫からの盗難、約4000万円を含む[14])。逮捕者数は7人、合わせて40人が検挙された[20]。
こうした窃盗被害を防ぐため、以下のような対策が講じられている。
- 宮城県石巻市 - 個人店・企業・金融機関へのバリケードや警備の強化、警察によるパトロールの強化[21]。
- 宮城県仙台市 - コンビニエンスストアや電器店では、店内が見えないよう、ガラス窓に新聞紙などを貼って防犯[22][23]。
- 岩手県陸前高田市 - 窃盗事件を未然に防ぐ為に被災地に残る金庫を回収して、大船渡警察署で保管[24]。
燃料不足に乗じてガソリンを窃盗する事件も発生しているが[25][26][27]、運搬の滞りや避難生活の長期化による食料・燃料不足から、状況的に「やむを得ず」「仕方なく」と犯行に至るケースもあった[28][29]。
そんな中、4月9日には、岩手・宮城両県のトータルで数千万円に上る(津波で流出した)現金が、拾得物として沿岸部の各警察署に届けられていることも判明[30]。また、5月20日の時点では、宮城県内で県警に届けられた金庫は2000個に及ぶという報道があった[31]。
詐欺
被災者の家族などを装い、「預金通帳が津波で流失した」と偽って金融機関に再発行させ、その通帳を騙し取る事件も発生した[32]。
ヤミ金
6月には、無登録の「ヤミ金」業者による出資法の制限を超える金利での貸し付けが、被災地で横行していることが明らかになった。[33]。
暴力事件
避難所では被災者のストレスが高まってきており、些細なことから喧嘩や事件に進展することもあった。
- 3月29日には、被災者の一人である理容師の男性が避難所内で包丁を振り回したため、銃刀法違反で現行犯逮捕された[34]。
- 警視庁は3月31日、「警視庁きずな隊」の派遣を開始した。避難所で女性警察官などが被災者の相談に乗り、トラブル防止にもあたる[35]。
わいせつ事件
岩手県盛岡市にて、4月7日深夜の余震で停電になったことに乗じて住居に侵入し、女性を強姦したとして翌日に容疑者が逮捕された[36]。
自衛隊
- 原発が怖くなり、トラックを窃盗した上で逃走した自衛隊員が存在する。この自衛隊員は懲戒免職となっている[37]。
全国的に発生している犯罪
募金詐欺
「募金詐欺」と呼ばれる、募金活動の名を借りた犯罪行為も発生し[38]、逮捕者も出ている[39]。電話で親族などを騙る「振り込め詐欺」[40]や、インターネット上で騙すもの[41]も発生した。
募金の窃盗・強盗・恐喝
募金箱を窃盗した事件[42][43]や、募金を奪う強盗致傷事件[44]・恐喝事件[45]が発生した。
- 募金箱の盗難を防ぐ為、または被害を最小限にする為に、募金箱を店員が常時いる所に設置、高額募金の場合は取り出し金庫に保管、また回収スパンを短くするなどの対応が行われている[46]。
物資の窃盗
愛知県の一宮市(3月21日)と豊田市(22日)で、農協の枯れ草を乾燥させる為の燃料の灯油が盗まれる事件が、相次いで発生。震災との関係が疑われた[47][48]。
サイバー犯罪
日本赤十字社などを騙る「フィッシング詐欺」サイト[49][50]や、災害情報を装った「ウイルスメール」[51]などの存在が確認されている。
- トレンドマイクロ社は、サイバー犯罪に対しての注意喚起を行っている(ユニセフを騙って寄付を促す「スパム・メール」など)[52]。
- 情報処理推進機構では、具体例を挙げて注意喚起している[53]。
- アメリカでも、今回の震災関連のネット詐欺が確認され、 FBIが注意喚起している(マルウェアに感染させる添付ファイル・リンクを仕込んで個人情報を盗むものや、偽チャリティーサイトなど)[54]。
密航
大韓民国の釜山市で3月21日、震災の混乱に乗じて日本に密航しようとする事件が発生した[55]。
問題行為
犯罪性自体は無いものの、問題視される行動(「デマ」・「チェーンメール」、「買い占め」など)も発生した。そのため、公的機関などが以下のような対策を講じている。
- 国民生活センター - ホームページ上に震災関連のページを作り、「正しい情報を発信している各問い合せ先」をまとめて提供[56]。
- 総務省[57]、迷惑メール相談センター(日本データ通信協会)[58] - ホームページで悪質なメールの実例を挙げて、注意を喚起。
- ACジャパン - 臨時テレビCM『今、わたしにできること。』で(節電と共に)、「デマへの冷静な対応」と「買い占めの自粛」を呼びかけ[59]。
被災地で発生している問題行為
避難所で発生している問題行為
- 震災直後の、まだ救援物資が全く届かない時期には、食料不足から、後から避難所にやって来た市民を追い出そうとする行為も出始めていた[60]。
- 避難所生活が長期化してくると、プライバシーが乏しいなどのストレスにより、食料不足が原因ではないトラブルも発生してきている。「飯の量の大小」「手伝いに対する代償がない」などで、避難者間でトラブルが発生した事例が報道されている[61]。
デマ情報
被災地域では、情報不足などが原因で、治安・ライフライン・健康などに関わるデマ情報が流れている[62]。以下については、全てデマ情報である。
- 関係各所の対応
- デマの放置は、関東大震災時の本庄事件(埼玉県)・福田村事件(千葉県)などのような重大事件発生に繋がる可能性があることから、宮城県警察では3月25日にデマ情報をまとめたチラシを市民に配布。惑わされないよう、冷静な対応を呼びかけた[64]。
- 警察庁や各警察本部でも、特に悪質なデマ28件を削除するようインターネット掲示板などの管理者に求め、11件(4月1日の時点)が既に削除された[65]。また、デマを流した人物を特定した場合は、名誉毀損や偽計業務妨害の容疑での立件も示唆した[66]。
- 総務省は4月6日、インターネット関連の通信各社に対して、震災・原発事故に関連した流言飛語の自主的な削除を要請した[67]。
便乗ごみ
宮城県仙台市では、一般家庭において地震で壊れた「震災ごみ」の回収を行っているが、それに便乗して、(震災とは関係のない)「通常ごみ」「事業ごみ」「危険物」などを持ってくる人が出ている[68][69]。
暴力行為
岩手県内で鉄パイプを持った自警団が、火事場泥棒らしき相手に過剰な暴力を振るったとの報道が存在する[70]。なお、ビートたけしは『情報7days ニュースキャスター』(3月19日)にて、火事場泥棒行為に対して「撃ち殺していいと思うんだよね」とコメントしていた[71]。
精神的被害から起きた行為
- 震災自殺も参照
地震後には精神的な面で被害をこうむってしまったため、それが問題行為を起こす原因となっている場合がある。4月9日には千葉県市原市の男性が精神的に不安定になったため自宅に火を放って自殺している[72]。また、内閣府の調査によると、震災関連の自殺が6月だけで16人に上ったという[73]。
放射能関連
震災後の原子力発電所で命を懸けて作業に当たっている人員に対しての扱いが酷いという報道が存在しており、扱いに不満を持った作業員に対して「死ね」とまで発言した親会社の社員が存在する[74]。また、東電幹部が危険な要求を行っている事などから現場では不満が溜まっており、ボイコット寸前にまでなることもあると報道されており、4月5日のテレビ電話での会議中には、所長が東電幹部に対して「もう、やってられねぇ!」などと発言するまでになった[75]。
4月6日には、福島県田村市(福島第一原発の半径30km圏内)の国道288号沿いで、放射性物質の付着した防護服が不法投棄されているのを確認[76]。
5月には、東京・お台場の移動献血会場にて、福島第一原発近くのいわき市から来た男性が「放射線で遺伝子が傷ついているかもしれない」という説明とともに採血を断られ、その対応の仕方が問題視された[77]。
被災地外で発生している問題行為
チェーンメール
地震に関連して、日本国内でチェーンメールが出回った(Twitter上でも事実確認せずに行われたリツイートによって、デマが拡散してしまう例もあった)[78]。 以下については、全てデマ情報である。
- コスモ石油千葉製油所の火災に関連して、「火災で発生した有害物質が雨として地上に降る」としたメールが出回った事実が3月12日に明らかになり[79]、同社のウェブサイトにメール内容を否定する文章が掲載された[80]。
- 福島第一原子力発電所事故などに関連して、「節電を呼びかける」メールが出回った事実が3月13日に明らかになった[81]が、電力会社ではチェーンメールを回した事実は無いとホームページなどで注意を呼びかけた(参考 - [82])。
- 北海道内でも「節電要請」「安否情報」「支援物資要請」などのメールが出回っていることが、3月16日に報じられた[83]。
- 宮城県石巻市で援助活動を行っているピースボート[84]が、福島県いわき市で「物資横流し」や「物資の意図的な停滞」を行っているというデマが3月31日頃に流布され、Twitterの公式アカウントなどで否定している[85][86]。
チェーンメールに関連して3月12日に、枝野幸男内閣官房長官が国民に注意を呼びかけた[87]。
フィリピンなど東南アジア各国でも、原発に関するチェーンメールが出回った[88]。また韓国では、3月15日に流れた「放射能物質が、早ければ午後4時に韓国に到着」というデマによって、株価が暴落。これを受け(韓国の)金融監督院が、警察庁サイバーテロ対応センターに捜査依頼[89]。17日、最初にデマを発信したとされる容疑者が特定され、検挙された[90][91]。
買い占め
地震に関連して、一部商品で買い占め問題が発生した。具体的な商品は非食料品は乾電池・ティッシュペーパー・トイレットペーパー・紙おむつ・ガソリンなど、食料品では、飲料水・米・カップラーメン・缶詰・納豆などである[1][2]。
商品不足に関しては、「被災地に送る為」[3]「流通の混乱」も一因としてある[4]。
買い占め問題に関連して、3月14日に消費者庁が監視を強化[5]。3月17日に枝野幸男内閣官房長官が買いだめを控える様に呼びかけ[6]、場合によっては強制策をとることに言及した[7]。また、政府は品薄商品の増産の要請や、備蓄放出などの対応をした[8][9]。
- 水 - 放射性ヨウ素汚染問題(東京都は3月23日)の影響も加わり、需要が急増した[10]。これに対し、母子手帳を提示した客に、優先して水を販売するスーパーマーケットも出た[11]。消費者庁が特別に認可したことを受け、被災地向けに限り「ラベル無し商品(ペットボトルのミネラルウォーター)」の製造も、一部で行なわれた[12]。また、韓国からの輸入も行われることになった[13]。
- 乾電池 - 輪番停電(計画停電)の実施が発表された直後からさらに品薄となり、Yahoo!オークションでも高騰した[14]。インドネシアやタイ王国で本来日本国外向けに製造している製品を、日本国内向けに振り向けて出荷することになった[15]。
工場被災などの商品不足の要因に関しては、「東日本大震災#産業」も参照
買い占め行為は、日本国外(アメリカ西海岸で「ヨウ素剤」、中国で「ヨウ素入り塩」など)でも発生した[16]。中国の場合は、デマに基づくものでもあった[17](日本における「うがい薬」のデマ[18]と同様)。
買い控え・風評被害
「福島第一原子力発電所」関連の風評被害に関しては、「福島第一原子力発電所事故#風評被害」を参照
問題発言
本震災発生後になされた、本震災に関する著名人の発言のなかには、「不適切」との批判が寄せられるなど物議を醸すものもあった。
なかでも、災害時にしばしば起こる超自然主義的な思想や宗教的思考に基づく発言は、本震災でも論議を呼んだ[19]。特に、東京都知事であった石原慎太郎[20]、国民日報の発行人[21]でもあった韓国の牧師 趙鏞基(チョ・ヨンギ)[22]、趙の義弟で同じく牧師の金聖光(キム・ソングァン)[23]、米国のプロ・バスケットボール選手キャッピー・ポンデクスター[24]らによる本震災を我欲や偶像崇拝などにまみれた「日本への神罰」と捉えた発言、および米国のトーク番組司会者グレン・ベック[25]、イタリア学術会議の副会長であった歴史学者ロベルト・デ・マッテイ[26][27]、シー・シェパードの代表ポール・ワトソン[28]らによる本震災を「人類への神の警告」と捉えた発言は、それぞれ各国で批判を呼んだ。
本震災にまつわる冗談で槍玉に挙げられた人もおり、「ドック・オブ・ベイ」は今の日本ではヒットしないなどと洒落のめした当時ミシシッピ州知事であったヘイリー・バーバーの報道官は辞任に追い込まれ[29]、「日本人はビーチに行かない。向こうから来てくれるから」などのブラック・ユーモアを連発した米国のコメディアン ギルバート・ゴットフリードは、長らくCMキャラクターを務めていたアフラック社との契約を即刻打ち切られた[30][31]。
また、冗談ではないものの、大阪府議会議長であった長田義明の「この地震は天の恵み、起こって良かった」[32]、米国の脚本家アレック・サルキンの「日本での地震に対する気持ちを和らげたいなら『真珠湾攻撃の死者数』と検索してみて」[33]、米国の経済評論家ラリー・クドローの「経済への損害より犠牲者のほうがひどいようで、これには感謝してもよい」[34]、韓国京畿道知事であった金文洙(キム・ムンス)の「(日本とは違い)朝鮮半島を守ってくれる神や先祖に感謝する」[22]、李明博の実兄で韓国国会議員の李相得(イ・サンドゥク)の「(日本に送る)水や奉仕団に太極マークを付ければ効果的」[35]、金原久雄・愛知県蒲郡市長の「歴史的に大津波が多数来ている所に家が建っているのはおかしい」[36]、武田邦彦・中部大学教授の「(被災地の)肉や野菜を食べると健康を害する」[37]、鉢呂吉雄・経済産業相(当時)の「(福島は)死の町」[38]、2011年に大分県由布市で行われた『牛喰い絶叫大会』での近藤和義・大分県議による「セシウム牛はいりません」[39]、早川由紀夫・群馬大学教授の「福島県の農家はオウム真理教と同じことをしている」[40]なども、不謹慎な発言として非難の的となった。
著名人のみならず、一般人による発言のなかにも社会的に物議を醸したものがあった。いずれもユーチューブに投稿された、狂信的なキリスト教右派を装った女性による「私達が無神論者を目覚めさせてと祈ったら、神は日本という国を揺るがしたわ」と歓喜する釣り動画や[41]、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の女子学生による「津波で家族の安否を確認しているのだろうが、電話するなら図書館の外に出てくれても良くない?」とアジア人学生のマナーの悪さをあげつらう動画は大きな騒動となり[42]、特に人種差別発言と受け取られて全米中から非難を浴びた女子学生の発言は、表現の自由との兼ね合いで同国内で論議を呼んだ[43]。また震災発生直後、米国、韓国、中国から真珠湾攻撃や日韓併合など過去の日本の行為の報いとして震災を喜ぶ投稿がインターネット上で多数なされたが[44][45][46][47]、このうち韓国では度を超しているとして大統領の李明博から憂慮の念が示されるほど同国内でひんしゅくを買った[45][48]。このほか、日本では本震災以後「頑張れ」や「頑張ろう」などの励ましの言葉がマスメディアなどで多く用いられたが、これに対し被災者からかえって苦痛との声があがるなど問題視する意見も出た[49]。
過度の自粛
震災後に起きた(計画停電の関係もある)自粛ムードに対し、各所から経済的影響が指摘されている。
- アメリカの新聞『ニューヨーク・タイムズ』(3月28日の紙面)では、「津波後の日本は、自粛という強迫観念に襲われた」という見出しの記事を掲載。贅沢な活動が非難される過剰自粛ムードを指摘し、国民経済への悪影響を懸念した[50]。
- 日本国内でも、おちまさと、堀江貴文らが過剰な「自粛」「不謹慎」ムードへの疑義を表明している[51]。
- 小田嶋隆[52] 、乙武洋匡[53]らは、他者からの強要・しがらみによる自粛は「他粛」ではないかと指摘している。
- 花見・宴会に関して、東京都管理の一部公園で3月25日に宴会自粛の看板が出されたことで、行政・民間(被災者側からも)から、様々な意見が出た。後に看板の撤去も行われた[54][55]。
イベントの中止例に関しては、「東日本大震災のイベント等への影響」を参照
- 自粛の理由としては、「不謹慎」の他に、「節電」「その分を義援金に回す」[56]もある。
古着問題
北海道南西沖地震(1993年)などでは、救援物資として古着が大量に送られて問題となったが、今回は各団体側が募集対象を「未使用のものに限定」しているケースが多かった[57]。しかし、全てを防ぐことはできなかった[58]。
「第二の災害#古着による混乱」も参照
放射能関連
- 福島県から避難した人は放射線を浴びている(被曝している)恐れがあることから、「いじめ」という形で嫌な思いをさせられている子供が存在する[59]。
- 放射線被曝が原因で元気な子供が生まれなくなるという懸念から、福島県出身者の結婚が破談になっている[60]。
- 原子力発電所や計画停電などの事柄に不満を持った人が内幸町の東京電力本店へ石を投げ込む、電力館の壁へ「反原発」と落書きするなどといった形で嫌がらせをすることで東電社員が被害を受けている[61]。台東区の上野支社では2度にわたって、「原発反対」「ふざけるな」とペンで書かれた紙パック入り乳飲料が通用口に投げつけられた[62]。東電の新入女性社員と思われる人物が批判者に対して「文句あるなら電気使うな」などといった反発した文章をmixi上に投稿したことで炎上した。この女性は後に現在mixiを退会した[63][64]。
- 茨城県つくば市が、放射線の影響を調べる「スクリーニング検査」の受診証明書類の所有確認について仙台市からの転入者の男性に対し求めたところ、男性側から苦情が出、つくば市側が謝罪する事態になったほか、神奈川県で受信証明書類を持たない事を理由に福島県からの転入者の70代の女性が介護施設への入居を一時的に断られる事態が発生するなど、日本各地の被災者の転入先で証明書類の所有の有無を巡ってトラブルが起きている[65]。
- 原子力発電所で作業に当たる人材を募集するに際しての問題点が発生しており、求職者には別の業務であると内容を表示して人員募集を行って集めたものの、実際は原子力発電所での作業員であったとの事態が存在する[66]。東京電力は作業員の日当として10万円を支払っていたものの、それらの大部分を下請け会社が中間搾取(ピンハネ)しており、作業員の中には日当8千円しか得られていなかったという事態が存在している[67]。
マスメディアによる問題行為
いずれも、「不適切な表現」との指摘・抗議がなされ、謝罪があった。
週刊誌『AERA』3月28日号の表紙問題に関しては、「AERA#不祥事」を参照
- マレーシアの新聞『ブリタ・ハリアン』 - 3月13日の紙面で、逃げるウルトラマンを津波が追い掛ける風刺一コマ漫画を掲載[68]。
- アメリカの週刊誌『ビジネスウィーク』 - 3月21日 - 27日号の表紙に、亀裂が入った日の丸のイラストが用いられた[69]。
- 台湾のテレビ局「中天電視」 - 今上天皇・皇后による3月30日の被災者訪問を、31日のバラエティ番組「全民最大党」の中でコント化して放送[70]。
- フランスのテレビ局「カナル・プリュス」 - 3月中旬に放送された風刺番組で、人形劇で原爆投下後の広島と被災後の仙台の写真を比較して、「日本は(何十年も)復興に向けた努力をしていない」とコメントし、福島第一原発事故の作業員をゲームのキャラクターに例えた場面があった。[71]。
- アメリカの新聞『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』 - 4月25日の紙面で、白雪姫と魔女と毒リンゴを用いた、風評被害を助長するような風刺一コマ漫画を掲載[72]。
また、長野県北部地震(3月12日に発生、暫定M6.7、死者は無し)に関する報道が、東日本大震災の陰に隠れてしまい、扱いが小さいということが、一部の報道機関で指摘された[73][74]。
未然に防がれた問題行為・混乱
帰宅困難者関連
地震発生日(3月11日)の首都圏では多くの鉄道機関が一晩ストップし、帰宅困難者が多数出たが、大事故は起こらなかった。行政側の要請や、民間の自主的な協力があった。
- 11日夕方の時点で首都圏の4都県と5つの政令指定都市は、約1万5000の店舗(コンビニエンスストア・ファミリーレストラン・ファーストフード店など)に対し、帰宅困難者への飲料水・トイレ・休憩場所の提供を要請した[75]。
- ホテルや飲食店が無償で自主的に、帰宅困難者の臨時宿泊所代わりとして開放した[76]。
便乗値上げ
中国の国営通信社・新華社のニュースサイトでは、「関東地区の小売店においては、食料品・日用品の便乗値上げは見られなかった」と報じられた[77]。一方、一部の週刊誌では、震災直後の被災地近辺での小売店における値上げの存在が報じられた[78]。
既に3月11日の時点で経済産業省は、小売り関係10団体に対し、「会員企業への混乱防止の周知徹底」を要請していた[79]。
脚注
- ^ 都内で買いだめ収まらず 企業の対応も焼け石に水+(1-3ページ) - MSN産経ニュース 3月15日
- ^ 徹底調査:モノが消えた(4) 入荷した途端に消えてしまう納豆 (1/2) - J-CASTニュース 3月22日
- ^ 企業が被災地向けにまとめ買い 関西のスーパー、コンビニ品薄に (1-2ページ) - SankeiBiz 3月16日
- ^ 食料・日用品の品不足、供給力は十分 物流混乱など響く - 日本経済新聞 3月16日
- ^ 買い占め・売り控え監視強化 消費者庁 - 毎日新聞 3月15日
- ^ 枝野氏「全国ベースの物資不足ない」 買いだめ控え訴える - MSN産経ニュース 3月17日
- ^ 枝野氏、買い占め防止で「強制的措置も検討」 - MSN産経ニュース 3月17日
- ^ 放射性物質:ペットボトル水増産要請へ 政府 - 毎日新聞 3月24日
- ^ 塩備蓄6300トンを追加で放出 財務省 - 日本経済新聞 3月28日
- ^ 東京水パニック!買い占め続出…乳児基準値超える放射性物質 - スポーツ報知(ウェブ魚拓) 3月24日
- ^ 【放射能漏れ】イトーヨーカドー、乳児がいる家庭に水を優先販売 - SankeiBiz 3月24日
- ^ 水の注文10〜20倍 山梨の工場フル回転 心配は停電 - ビジネス・経済 (1-2ページ) - 朝日新聞 3月27日
- ^ ミネラル水:コカ・コーラ、韓国から緊急輸入へ - 毎日新聞 3月28日
- ^ Yahoo!オークションで『乾電池』が高騰!乾電池祭り状態 - 秒刊SUNDAY 3月18日
- ^ パナソニック、海外工場から乾電池空輸へ - 毎日新聞 3月26日
- ^ 国民に平静呼び掛け=原発の包括的見直し指示-米大統領 - 時事通信 3月18日
- ^ 被ばく予防に塩・みそ買い占め?中国デマで混乱 - 読売新聞 3月18日
- ^ 「うがい薬飲めば大丈夫」ネット上のデマ - デイリースポーツ 3月16日
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- ^ 「津波で「我欲」洗い落とす必要ある 石原知事、巨大地震に」『読売新聞』2011年3月15日付朝刊、14版、29面。
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- ^ 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明 「ひとつになろう」より「てんでんこ」がいい (日経ビジネスオンライン) - gooニュース 4月2日
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- ^ 蓮舫大臣「権力による制限は最低限に」「花見、是か非か」論戦に参入 - J-CASTニュース 4月2日
- ^ 自粛の春、花見考 不謹慎→復興支援に - 毎日新聞 4月9日
- ^ 「九州も節電」呼び掛け広がる 市民「東北の痛み共有」 - 西日本新聞 3月14日
- ^ 古着 ふるさと納税 - 読売新聞 3月27日
- ^ 支援の古着 大量に余る - 読売新聞 5月1日
- ^ 東日本大震災:教育現場に戸惑い 被ばく量、子どもの基準定まらず - 毎日新聞 4月16日
- ^ 福島出身を理由に結婚破談? 「放射能差別」起きているのか (1/2) - J-CASTニュース 4月15日
- ^ 落書き・侵入…東電へ抗議過熱 自衛に寮表札の社名隠す 朝日新聞 4月2日
- ^ いたずら:「原発反対」と書き、東電上野支社に紙パック投げ込む--東京・台東 - 毎日新聞 4月21日
- ^ 東京電力社員のコメントが酷いと物議「よく考えてから批判するように!! 文句あるなら電気使うな!」 – ロケットニュース24(β)
- ^ 東電の女性新入社員mixiで「文句あるなら電気使うな」 | YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア) | 最上級を刺激する総合情報サイト | 1
- ^ つくば市が放射能検査を転入者に要求 - 日刊スポーツ 4月20日
- ^ 求人と違い「福島原発で作業」 大阪・西成の労働者 - 47NEWS(よんななニュース)
- ^ 下請け原発作業員に“中間搾取” 日当、10万円が8千円に - 47NEWS(よんななニュース)
- ^ 津波の漫画めぐり謝罪=マレーシア紙 - 時事通信 3月14日
- ^ 米誌が表紙に「日の丸に亀裂」イラスト 総領事館の抗議で謝罪 - MSN産経ニュース 3月25日
- ^ 天皇陛下と被災者をパロディ化した台湾テレビ局が謝罪「不敬な気持ちは一切ない」 - ロケットニュース24(β) 4月5日
- ^ 「復興努力してない」と仏TV、日本大使館抗議 - 読売新聞 4月30日
- ^ 毒リンゴ漫画、掲載の米紙がおわび 「日本人傷つけた」 - 朝日新聞 4月26日
- ^ “黙殺”された長野県「栄村大震災」の傷跡に迫る - ZAKZAK 4月7日
- ^ 「栄村も忘れないで」被災地から連日リポート - 日刊スポーツ 4月16日
- ^ 帰宅困難者に水やトイレ コンビニなどに支援要請 - 日本経済新聞 3月11日
- ^ 帰宅難民 大渋滞で親切タクシーがメーターを「予約車」に - 『女性セブン』3月31日・4月7日号 3月18日
- ^ 震災後の日本で品物不足、便乗値上げは見られず―中国メディア - レコードチャイナ 3月16日
- ^ 東日本大震災 やっぱり起こりだした「悪徳商法」と「火事場泥棒」(2) - 『週刊実話』 3月31日
- ^ 経産省、小売り10団体に便乗値上げ防止要請 - 日本経済新聞 3月11日
関連項目
- 過去の災害における問題行為・日本国内
- 過去の災害における問題行為・日本国外
- スマトラ島沖地震 (2004年)#各国の被害状況(2004年)
- ハリケーン・カトリーナ#被害 - ハリケーン・カトリーナにおける問題行為(2005年)
- 悪質商法・詐欺
- その他
外部リンク
- 震災を口実とした「だまし・不審事案」事例!! - 警視庁
- 東北地方太平洋沖地震に関する情報 - 警視庁
- 震災に関する消費生活情報 - 国民生活センター
- 震災に関する義捐金詐欺にご注意ください - 消費者庁
- 便乗商法や義援金詐欺など…国民生活センターが注意喚起 - MSN産経ニュース 3月18日
- 耐震リフォーム工事 ポイント1:不安商法には引っ掛からない - All About 3月19日
- 震災後のデマ80件を分類整理して見えてきたパニック時の社会心理 - 絵文録ことのは 4月8日
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最終更新 2011年12月10日 (土) 03:07 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
【東日本大震災関連の犯罪・問題行為】変更履歴