福島第一原子力発電所事故
2011年3月16日撮影
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| 日付 | 2011年3月11日 |
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| 時間 | 14時46分 (JST) |
| 場所 | 福島県双葉郡大熊町大字夫沢字北原22番地 |
| 座標 | 北緯37度25分17秒 東経141度1分57秒 / 北緯37.42139度 東経141.0325度 |
| 結果 | 国際原子力事象評価尺度 (INES) レベル7(4月12日時点の原子力安全・保安院による暫定評価[1]) |
| 負傷者 | 地震による被害 6人[2] 1号機・3号機の爆発による被害 15人[2] 被曝の可能性[2] その他の被害 19人[2] |
| 死者 | 地震・津波による被害 2人(4号機タービン建屋内)[2] その他の被害 2人[2] (原子力安全・保安院 地震被害情報(第169報)、pp.50-55、2011年6月14日15時30分現在)[2] |
福島第一原子力発電所事故(ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょじこ)は、2011年3月11日に、東京電力福島第一原子力発電所において発生した、東北地方太平洋沖地震に起因する、日本及び世界における最大規模の原子力事故である。巨大地震及び大津波つまり天災が原因で炉心溶融および水素爆発が発生するまでに至ったのも、米国メーカー設計の原子炉容器が大きく損傷して放射能が大量に外へ漏れだしたのも、本事故が原子力発電史上初めてである。様々な要因が重なり、国際原子力事象評価尺度のレベル7(深刻な事故)に相当する多量の放射性物質が外部に漏れ出た。
国際原子力事象評価尺度 (INES) による評価はまだ確定していないが、原子力安全・保安院による暫定評価は最悪の、レベル7(深刻な事故)である[3]。同レベルの原子力事故は、1986年4月26日にソビエト連邦で起きたチェルノブイリ原子力発電所事故以来2例目である[1]。
目次
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[編集] 経過概要
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)によって、運転中の東京電力福島第一原子力発電所(以下「原子力発電所」は「原発」と省略する)の各原子炉(分解点検中の4号機、定期検査中の5号機と6号機を除く1〜3号機)は自動的に制御棒が上がり緊急停止した(原子炉スクラム[4])。また、発電所への送電線が地震の揺れで接触・干渉・ショート・切断したり、変電所や遮断器など各設備が故障したり、送電線の鉄塔1基が倒壊したりしたため、外部電源を失った[5]。非常用ディーゼル発電機が起動したものの、地震の約50分後、遡上高14 m - 15 m(コンピュータ解析では、高さ13.1 m)[6][7]の津波が発電所を襲い、地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機が海水に浸かって故障した。電気設備、ポンプ、燃料タンクなど多数の設備が損傷し、または流出で失ったため[8]、全交流電源喪失状態(ステーション・ブラックアウト、略称:SBO、#専門家による指摘で後述)に陥った。このためポンプを稼働できなくなり、原子炉内部や、核燃料プールへの送水が不可能となり冷却することができなくなり、核燃料の溶融が発生した。原子炉内の圧力容器、格納容器、各配管などの設備の多大な損壊を伴う、史上例を見ないほど甚大な原発事故へとつながった[9][10]。
点検中の4〜6号機を除く1〜3号機とも、核燃料収納被覆管の溶融によって核燃料ペレットが原子炉圧力容器(以下「圧力容器」という)の底に落ちる炉心溶融が起き、溶融した燃料集合体の高熱で、圧力容器の底に穴が開くこと、または制御棒挿入部の穴およびシールが溶解損傷して隙間ができたことで、溶融燃料の一部が原子炉格納容器(以下「格納容器」という)に漏れ出し(メルトスルー)、燃料の高熱そのものや、格納容器内の水蒸気や水素などによる圧力の急上昇などが原因となり、一部の原子炉では格納容器の一部が損傷に至ったとみられ[11][10]、うち1号機は圧力容器の配管部が損傷したとみられている[12]。また、1〜4号機ともメルトダウンの影響で水素が大量発生し、側壁のブローアウトパネルを開放した2号機以外は原子炉建屋、タービン建屋各内部に水素が充満(4号機は分解点検中だったが3号機からタービン建屋を通じて充満したとみられている[13])、水素爆発を起こして原子炉、タービン各建屋及び周辺施設が大破した[14][15][16][17]。
なお5号機・6号機は、1〜4号機と立地が異なりやや離れた高所にあり、津波被害がやや軽微だった。6号機のディーゼル発電機1機のみ津波被害を免れ実働であったので、これを輪番で兼用することで全電源喪失を免れることができ、核燃料冷却を継続できた[18]。(#地震と津波による電源喪失と原子炉の破損の進行も参照)
福島第一原発から半径20km圏内は、現在も一般市民の立入りが原則禁止されている。原子力安全・保安院は、6月の発表で、事故後4月12日時点までに放出された放射性物質の総量は85万 テラベクレルと発表している[19][注 1]。これにより広範囲に、高い線量の、大気土壌及び海洋の放射能汚染が発生し、現在も放出量は減ったものの毎日、放出による汚染は続いている。東京電力は、8月時点で、半月分の平均放出量は2億 Bq程度と発表している[20]。
また、文部科学省が開発した緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム (SPEEDI) のデータ公表が事故直後の計測時点ですぐに発表されなかったことで、関東および福島近県の国民が、ひろく被曝の危険にさらされたと、事故直後から各紙、あるいは各識者らから指摘され続けている[21][22][23]。一方、菅内閣は6月に国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書の中で、損壊した原発の放射線放出に関する完全なデータをリアルタイムで入手することができず、また、SPEEDIが推測に基づいて作成した予測結果を公表すれば「不必要な混乱」を招く可能性があったと報告した[23]。
[編集] 事故の内容
3月末までの詳細な経緯については「福島第一原子力発電所事故の経緯」を、4月以降の経緯については「福島第一原子力発電所事故の経緯 (2011年4月以降)」を参照
施設の損害状況一覧については「福島第一原子力発電所事故の経緯#施設の損害状況」を参照
[編集] 大地震による影響
日本近海の三陸沖で2011年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震で本原発のある大熊町は震度6強の揺れとなり、最大加速度は設計値の約126パーセントの550ガルを記録[24][25]、施設内外に多くの破損が起こった。
館内は停電し、大量の水が降ってきた場所もあり[26]作業員は緊急退避した。
稼働中の1 - 3号機は自動停止した。
参考までに他の地震と比べると、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)で観測された最大加速度は818ガル[27]、事故時までの世界最大はギネスブックによると[28]、2008年岩手・宮城内陸地震での4022ガル[29]である。
[編集] 地震と津波による電源喪失と原子炉の破損の進行
「#福島第一原発での事故発生に関するリスク評価」および「東北地方太平洋沖地震#津波」も参照
この地震により、原発に電力を供給していた6系統の送電線のうちの鉄塔1基[注 2]が地震による土砂崩れで倒壊し[30]、5号機・6号機が外部電源を喪失した。1〜4号機もまた、送電線の断線やショート、関連設備故障などにより、同じく外部電源を喪失している[5]。
東京電力は公式見解で事故原因は未曽有の大津波だとしているが、4月27日の衆議院経済産業委員会で吉井英勝議員(日本共産党)の質問に答えて、原子力安全・保安院長は、倒壊した受電鉄塔は津波が及ばなかった場所にあったことを認めた[31][32]。
外部電源が失われたため、一旦は非常用電源(ディーゼル発電機)が起動し切り替わった。しかし大きな津波が、地震発生41分後の15時27分の第一波[33]以後、数回にわたり本原発を襲った。津波は低い防波堤を越え、施設を大きく破壊し、地下室や立坑にも浸水した。地下にあった1 - 6号機の非常用電源は水没し[34]、二次冷却系海水ポンプや、燃料のオイルタンクも流失した。このため各プラントは全交流電源喪失に陥り、非常用炉心冷却装置 (ECCS) や冷却水循環系のポンプを動かせなくなった。しかも海水系冷却装置は海面へむけて露出状態で設置されていたため、津波で破損した(最終ヒートシンク喪失)[35]。核燃料は原子炉停止後も長い年月、崩壊熱を発し続けるので、長時間冷却が滞ると過熱を起こし事故に繋がる。
1号機では、11日14時46分の地震発生後、14時52分非常用復水器が起動したが急激な圧力低下を緩和するため(圧力容器の破損を避けるため)、作業員が回路をON/OFF中、15時半に津波に襲われ、15時50分非常用電池が水没して遮断状態のまま非常用復水器が使用不能になり、同時に計器、動弁電源も失われた。東京電力は、17時に電源車を出動させたが渋滞で動けず、18時20分に東北電力に電源車の出動を要請したが到着は23時で津波の被害・電圧不一致もあって翌日15時まで接続できなかった。一方11日19時30分に1号機の燃料は蒸発による水位低下で全露出して炉心溶融が始まり、所内での直流小電源融通で動かしていた非常用復水器も翌12日1時48分に機能停止、翌12日明方6時頃には全燃料がメルトダウンに至ったとみられる。1号機は上記の経緯で、地震発生後5時間で燃料が露出したとみられ、15時間ほどでメルトダウンしたと思われる。
2号機・3号機では蒸気タービン駆動の隔離時注水系 (RCIC) が、2号機は約3日、3号機は約2日の間、炉心に水を注入し続けた(2号機・3号機は、全交流電源喪失を考慮し、隔離時注水系 (RCIC) ・高圧注水系 (HPCF) と、2系統の蒸気タービン駆動注水装置がある。2号機の高圧注水系はバッテリー水没で起動しなかったが、3号機ではバッテリーが生きていたHPCFが、RCIC停止を感知して入れ替わり起動し、その後15時間ほど稼働し続けた)。しかし停電時間は、電力会社が設計上想定してきた最大8時間に収まらず、非常用バッテリーを使い切った。渋滞による電源車の遅れ、原子炉の電圧と合う電源車が62台のうち1台しかなかったこと、電源車の出力不足、唯一の受電施設が水没したこと、震災翌日に開通した仮設電源ケーブルが開通6分後に1号機の水素爆発で吹き飛ばされたこと、自衛隊や米軍による電源車のヘリコプター空輸が重量超過のためできなかったことなどの複合要因により、全電源の喪失が長期化した[36][37][38]。
政府の事故調査・検証委員会による1号機水素爆発に関する事情聴取から、現場側がベント操作が手間取ったことについて、現場には長時間の全電源喪失を想定した対応マニュアルがなく、よって手動によるベント手順も整備されておらず、設計図などから新規に手順作成しなければいけなかったこと、全電源喪失のためベント弁操作用バッテリーが必要とされた際、機材形式の連絡に不備があり、本社が調達し発送した多機種が一斉に搬入され必要機種の選別に手間取ったり、必要な機材が福島第二原発やJビレッジに誤配されて取りに行く手間が増えたなど、本社の援護が乏しく、突然の非常事態に現場側の混乱も多かったためとされている。ドライベント成否は、圧力容器内の圧力低下や線量増加など各数値からの推測であって、事実を確認できてはいない(これは、容易に分解や立入で状態確認できない原子炉プラントにおいて常に共通の概念である)。水素爆発について、圧力容器が損傷したことで建屋内に水素が充満していた、誤って原子炉建屋作業スペースへ排気してしまった、等と諸説あるが、多忙な現場では誰も水素爆発まで予見できなかったとされる。仮に津波がきてもポンプが故障し、非常用復水器 (IC) など各炉冷却系が起動し冷却するはず、という程度の甘い認識だった(ICは1号機のみ)。また現場作業員が炉内圧力急低下を確認したために非常用復水器を数回にわたり手動停止させていた事実は吉田所長には伝えられておらず、作動前提で指示を出していたとされている。このような経緯の中、3月12日午後3時36分に1号機は水素爆発した[39][40]。
福島第一原発1 - 4号機は、標高35mの丘陵を岩盤に近づけ標高10 mまで削って整地し[41]、非常用電源も地下や1階に設置していた。標高は5号機・6号機は13m、福島第二原発は12mだった。この落差がそのまま、津波被害の大小へ直結した。現地では、やや高い5号機付近の敷地から、施設周辺が次第に津波に覆われる様子を撮影している[42]。
2002年に、東京電力は、福島第一原発で想定する津波の高さを、土木学会が2002年に開発した、歴史的地震の文献や断層モデルを組み合わせる評価法によって計算していた[43]。この結果、平均海面(O.P.=小名浜港工事基準面……詳細は福島第一原子力発電所#海象状況の調査も参照)からの高さが5.7 mを超える津波はないとした。
しかし、東京電力の発表によると、今回の地震で実際に襲来した津波は遡上高14 m - 15 mといった規模であり、標高10 mの1 - 4号機の敷地では津波の痕跡が4 m - 5 mの高さの所にまで残っていた(標高13 mの5号機・6号機の敷地では0 m - 1 m)[9]。また6月28日の定時株主総会では株主の事故への対応に関する質問に対して「津波については5.7mを想定していたが、福島は全域で14 m - 15 mに達した。事故原因を調査していく」と回答している[44]。また7月8日東京電力はコンピュータ解析により、沖合30 kmの地点で6つの断層破壊による津波は次々重なり地震発生約51分後津波の高さが13.1 mに達し原発を襲ったと発表とした[6][7]。
[編集] 原子炉および使用済み核燃料プールの異常
「#人体の吸収と健康に与える影響」および「#地震と津波による電源喪失と原子炉の破損の進行」も参照
いったん冷却不能になれば、燃料棒は過熱し続け炉内温度は上昇、そのため冷却水からの水蒸気発生によって炉内水位は低下し、圧力容器と格納容器の内圧は上昇、燃料ペレット被覆管(ジルカロイ材)溶融による化学反応で多量の水素発生、といった過程は進行を続け、有効な対策を打たない限りは数十時間程度で爆発する可能性がある。実際、緊急停止(スクラム)直後に冷却が不可能になった1 - 3号機でこの過程は進行していた[45]。1号機の格納容器内部圧力は設計強度の1.5倍にも達したため、大量の放射性物質が大気中に放出され、臨界低減用に充填されている窒素も抜けてしまう恐れは承知のうえで、炉心から大気中への排気(ベント、vent)いわゆるウェットベントが緊急に実行された(ただし、1号機のベントは失敗した可能性もある[46])。その直後の15時36分に1号機の原子炉建屋は水素爆発を起こしたが、これはベントにより排出された多量の水素を含む水蒸気が、原子炉建屋のオペレーションフロアに誤って流れ込んだためという見方もある[47]。
この最初の数日間、1〜3号機すべて、地震と津波によって全電源喪失し冷却機能を失ったことで、炉心溶融に至った。さらに一部では圧力容器の底が抜ける炉心貫通(メルトスルー)も起きたと見られている。1号機と3号機の原子炉建屋では水素爆発が発生、2号機では圧力抑制室で水素爆発とみられる破裂が起きた。4号機は炉心分解点検中で、炉に燃料は装填されていなかったが、3号機と4号機はタービン建屋の配管でつながっているため、3号機の水素が4号機へ漏れてしまうことで、爆発が発生した[48][49]。なお4号機建屋に3号機からの水素ガスが漏れてきた原因は、オペミス、単純に配管がスルーだった、など諸説ある……少なくとも仕様としては、1号機・2号機、3号機・4号機というふうに隣接同士でタービン建屋と排煙系配管がつながった設計となっている。その他、原因不明の火災や発煙事故などがしばらく各号機で続発した。
日本において原子力政策を管轄する原子力安全委員会は従来、長時間の全交流電源喪失 (SBO) の防止や、全交流電源喪失の発生後の対処を想定した、是正勧告を形式上はメーカーや電力会社に行ってはいたが有名無実であり、実際には特に対策はされなかった(これはGE社はじめ原子炉メーカー数社の本国、アメリカ合衆国など、他国においてはこの限りではない。原子力安全委員会#原発における長期間の全電源喪失は、日本では想定外 も参照)。政府は、今回の事故を教訓とし、原子力産業を監督管轄して安全を確保する立場の原子力安全・保安院を、エネルギー確保を重視する経済産業省から独立させる方針を発表した[48]。
原子炉の冷温停止状態を目指す復旧作業として、原子炉と使用済み核燃料プールを冷やすための注水または放水(初期は海水、のちに淡水。福島県双葉郡大熊町の坂下ダムの貯水の淡水を使用。)が各種ポンプ車両、および仮設ポンプ等により行われ続け、完成とは呼べないものの7月上旬には従来の注水から、アレヴァ、キュリオンの設備により放射性物質を除去した上でのの循環水冷却に完全に移行し、8月には東芝などの開発した「サリー」も加わり処理能力が向上した。以降も引き続き事態を収束へ向かわせる懸命の努力が続いている。
[編集] 放射性物質放出
「#原発からの初期の放射性物質放出」、「#原発内の水の放射性物質による汚染と海・地下への放出」、「#日本の食品・水道水・海水・土壌等の放射性物質による汚染」、および「福島第一原発事故による放射性物質の拡散」も参照
風評被害については「#風評被害」を、経済への影響については「#経済等への影響」を、人体への影響については「#人体への吸収と健康への影響」を参照
ベント、水素爆発、圧力抑制プールの爆発、冷却水漏れなどにより、大気中、土壌、溜まり水、立坑、海水、および地下水へ放射性物質が放出された。汚染は日本国内、国外に広がった。
原子力安全・保安院は4月18日に、1〜3号機について、燃料ペレット被覆管の破壊(炉心損傷)、さらに燃料ペレット溶融も起こっているとはじめて認めた。ただし、同時に、溶けた燃料が圧力容器の底に溜まっているような状況には至っておらず、冷却のために圧力容器内にある水の水面付近に固まっているのではないかとし、また、再臨界の可能性も極めて低いとした[50]。
燃料ペレット溶融は水位低下による過熱(“空焚き”)で起こり、余震でも激しく揺らされた。圧力容器の底が完全には抜けていないとしても、原子力安全委員会の委員長が指摘したように[51]被覆管を溶融した燃料が制御棒周辺の隙間から落下して、格納容器の底にいくらか落ちている可能性は否定できない。
原子力安全・保安院は同日の会見で、ペレットの一部が溶けだしている状態を「燃料ペレットの溶融」、溶けた燃料棒が原子炉下部に落ちることを「メルトダウン」と定義した上で、「燃料ペレットの溶融」までを認めた[50][52]。英語のmelt downは国際原子力機関 (IAEA) や米 原子力規制委員会 (NRC) などの公式用語ではない。
東京電力の5月26日の発表では、崩壊熱は5月20日時点で1〜3号機でそれぞれ1000 kW〜2000 kW、地震から半年後時点で1000 kW前後としている[53]。いずれにしてもウラン燃料が被覆管を溶融し、圧力容器、格納容器、そして配管の破れや2号機圧力抑制プールの破れから、放射性物質として外部環境に漏れ続けている。3号機の炉心にはプルサーマル利用としてMOX燃料が使われ、ウランのほかにプルトニウムが含まれている[54]ので、特に大気、海水および地下水への漏洩が心配されている。
2011年5月24日に、東京電力は、計測された圧力データを基に、1号機は圧力容器の外側にある格納容器に直径7 cm相当の穴が1箇所、2号機では格納容器に直径10 cm相当の穴が2箇所開いていると見ていることを発表した[55]。これは事故が炉心溶融だけでなく、さらに進んだ炉心溶融貫通(メルトスルー)に至っている可能性を示唆している。
[編集] 事故重大度の評価
大気に漏洩した放射性物質の量は37京 Bq以上と推算され、4月12日、国際原子力事象評価尺度[56]について、暫定的ながらレベル7と評価されている[1][57][58](#国際原子力機関の動き 参照)。
なお、2号機から放出された高濃度汚染水が含む放射性物質の量は、東京電力発表の水量と濃度[59]に基づけば330京 Bqである(詳しい計算とレベル7のチェルノブイリ原子力発電所事故などとの比較は、#原発内の水の放射能汚染と海・地下への放出 参照)。一部は海洋や地下水に漏れた[60][61]。
日本政府は8月、大気中に放出された各放射性物質ごとの試算値をまとめた。福島第一原発から放出されたセシウム137総量は6月時点で、広島原爆の約168個分であるとする[62]。
[編集] 収束への措置
注水を継続する中、タービン建屋の修理に必要な汚染水移送や、海外製ロボットによる調査などがされている[63][64][65]。原子炉建屋は高線量で人が立ち入れず、配管故障状況の調査、修理は難航している。また、多くの計器や電気系統が故障し、原子炉の状態の把握とコントロールは掌握されていない。
現場では、過酷な状況の中で作業者、技術者らが事故収束作業をしている。彼らは当初の人数にちなみ「フクシマ50」(フクシマフィフティ)などと称賛された[65]。
4月17日、東京電力から2011年10月 - 2012年1月に原子炉を冷温停止させる2ステップからなる収束工程表が発表された[66]。進められている手順は、主に以下のとおりである。
- 機器のリモートコントロール化を利用し、また、作業員の線量管理、健康管理を厳重に行うことで、被曝などによる疾病を予防する。
- 建屋に人が入れるように、また、環境に漏出させないように、放射性物質を含む溜まり水を保管できる先を確保して移す。将来は浄化する。
- 立ち入れるよう、建屋の空気をフィルターでこして線量を下げる。
- 立ち入れるようになったら水位計、圧力計を修理して状況をより正確に把握する。状況に応じて適切に冷却手段を講じる。その過程で圧力が下がりすぎて空気(酸素)の流入で水素爆発が起こらないよう、窒素の注入を慎重に継続する。
- 4号機の使用済み燃料プールが損壊しないよう、下部を補強する。
- 空冷による冷却水循環系を早期に構築して、冷温停止させる。
2011年4月11日、福島県を訪れた東京電力社長清水正孝は、記者団の「津波への事前の対策が不十分だったのでは」との問いに「国の設計基準に基づいてやってきたが、現実に被災している。今後は国の機関などと津波対策を検討する必要がある」と語った[67][68]。また東京電力の皷紀男副社長は2011年5月1日、訪問先の福島県飯舘村で「個人的には」としたうえで本事故について、「人災だと思う」、「原発事故は想定外だったという意見もあるが(飯舘村の皆さんのことを考えると)想定外のことも想定しなければならなかった」と述べた[69]。
この重大事故をしっかり検証して根本対策を講じるべきという表明が、菅直人首相[70]をはじめ、枝野官房長官[71]、東京電力[72]、国際原子力機関 (IAEA)[73]、日本原子力協会[37]、その他専門家、政治家などから出された(#専門家による指摘 および#福島原発事故後の、事故リスク評価に関する報道 参照)。
これを機に、他の原発や核処理施設の安全性や今後のエネルギー政策の論議が高まった。4月21日、本事故を受け東京電力は柏崎刈羽原子力発電所に海抜高さ15 mの防潮堤を設置し2013年6月に完成目標と発表。本事故前の3.3 mの津波を想定したものから高くする[74][75]。また5月6日、菅直人首相は浜岡原子力発電所のすべての原子炉の当分の間の停止を中部電力に要請した[76]。
作業の制約になる敷地内の線量を減少させ、また大気汚染を減らすために、主に以下の対策が行われている[77]。
[編集] 放射性物質による汚染の状況と影響
「被曝#放射線量の大きさに対する人体の影響」も参照
[編集] 原発からの初期の放射性物質放出
正門付近の放射線量は、3月12日4時00分まで0.07 μSv/hと正常範囲だったが、4時30分に0.59 μSv/h、7時40分に5.1 μSv/hと上り、15時29分には1号機北西敷地境界付近で1,015 μSv/hになった[78]。12日15時36分に1号機で爆発が発生し、火炎を視認できない透明な爆発(水素爆発)と同時に地面を這うような白煙が広がった。政府は12日18時25分、半径20 km以内の住民に避難を指示した[16]。
3月14日11時01分、3号機で一瞬の透明な爆発の直後、燃料プール付近で一瞬の赤い炎が発生し、爆発煙が上がった(保管燃料由来の水素爆発とされている)。付近の翌15日10時22分の線量は400 mSv/h[注 3]と非常に高かったので、大量の放射物質が出たと推測された。15日6時10分、2号機でも爆発音があり(事前に水素爆発対策の穴が空けられていたため、建物の外見には大きな変化は無し)、圧力抑制プールは圧力が3気圧から1気圧に低下したので、損傷したとみられる[16]。ほぼ同時刻に4号機でも爆発があった。4号機は、15日と16日には火災もあった。政府は15日11時06分、半径30 km以内の住民に屋内退避を指示した[16]。その後敷地の線量は減少し、5月2日21時に正門付近では45 μSv/hとなった。
[編集] 原発内の水の放射性物質による汚染と海・地下への放出
放水によって、地下に大量の水が流れ込んだことに起因するとみられる福島県浜通り(原発立地付近)を震源とした最大震度3程度の地震が多数回観測された。
3月24日、3号機タービン建屋(側面図 (2))建屋地下の溜まり水に浸かりながらケーブル敷設作業をした作業員3人が被曝した。この水は濃度390万 Bq/cm³の放射性物質を含み、表面から約400 mSv/hの放射線を発していた[79]。また3月26日には1号機の溜まり水から380万 Bq/cm³の放射線を検出、翌3月27日には2号機の溜まり水の表面で1,000 mSv/h を超えた(針が振り切れて測定不能となった)。
さらに、3月28日には1 - 3号機の海側にある立て坑(ピット)(側面図 (3))の溜まり水からも放射線が検出され、うち2号機の立て坑の水表面からは1,000 mSv/hを超える放射線量が検出された。立て坑は冷却用の海水などの配管が通っているトンネルであるトレンチ(側面図 (4))に通じている。
3月15日に圧力抑制プールが爆発破損した2号機から、核燃料の混じった冷却水が漏れてこれらに流入しているとみられる[17]。冷却水を循環できず外部注水している現状では、注水量が多すぎれば蒸発しきれない分、汚染水漏出量が増え、少なすぎれば温度や圧力が上がってさらなる炉心溶融や爆発の危険が増すという微妙な問題が発生した。
4月2日には2号機海側の立て坑に亀裂があり、高濃度の放射性物質汚染水が海に流出しているのが発見されたが、コンクリートでは固められず、新聞紙やおがくずを投入してみるという試行錯誤の末、水ガラスの導入によって4月6日に止めることができた[80]が、その後、地下水の放射性物質濃度が高くなった。
東京電力は、高濃度汚染水をタービン建屋やトレンチから緊急に排出するために、集中廃棄物処理施設中の6.3 Bq/cm³の低濃度汚染水(実測値9,070トン)を海に放出して空けてそこに入れるしかないと判断した。さらに、5号機・6号機のサブドレンピットに増してきた貯留地下水(実測値1,323トン)もそれぞれ16 Bq/cm³、20 Bq/cm³[81]で設備水没の危険もあるので同時に海に放出するとした。東京電力は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づいて政府の承認を受け、発表を行った。放出は4月4日から10日にかけて実施された。放射能レベルは約1,500億 Bqで[82]、「原発から1 km以遠の魚や海藻を毎日食べた場合の年間被曝量は0.6 mSvであり、年間に自然界から受ける放射線量の4分の1」とされたが[83]、この処理には日本国内外から抗議の声が上がった[84]。
一方、2号機からの高濃度汚染水だけで2万5000トンあって、そのセシウム137の濃度は300万 Bq/cm³で、ヨウ素131の濃度は0.13億 Bq/cm³と発表されている[59]。国際原子力事象評価尺度マニュアルの大気放出時ヨウ素換算係数[85]を準用し40を掛ければ、セシウム137のヨウ素等価濃度は1.2億 Bq/cm³で、この2核種だけで合計濃度は1.33億 Bq/cm³なので、2万5000トンの2号機汚染水に含まれる2核種の放射性物質総量はそれらの積で、330京 Bqと単純計算される。
(比較:4月5日までに(実際は主に3月14日 - 3月15日に)大気に漏れた放射性物質の量は、ヨウ素131とヨウ素131に換算したセシウム137の合計で、原子力安全・保安院は37京 Bq、原子力安全委員会は63京 Bqと推算したことを4月12日に公表した[86]。チェルノブイリ原子力発電所事故の放出量は520京 Bq。六ヶ所再処理工場におけるクリプトン85の1年間あたり放出申請量が33京 Bq[87]。チェルノブイリ事故との比較#福島第一原発事故との比較も参照)
4月6日以前に毎分2リットルで海に流れ出てしまった高濃度汚染水中の放射性物質は、上記濃度を仮定すれば、10日間あたり0.2京 Bqと計算される。東京電力は独自仮定に基づき、IAEAのヨウ素換算係数を適用しない単純合計ベースで、放射性物質放出の総量を0.47京 Bqと推算した[88]。この発表では「原発から1 km以遠の魚や海藻を毎日食べた場合の年間被曝量」についての言及はなかった。
炉を冷温停止させるための冷却水循環系を修理または外部接続するには、タービン建屋の高濃度汚染水を除去して作業環境を整える必要があったが、タービン建屋の水を減らすと新たに炉から放射性物質を含む汚染水が流入し、炉内の冷却水量が保てないというジレンマが発生した。
そこで、日本国内外の提案や援助を得ながら、主に以下の対策が実施されている。
- 汚染水の復水器・集中廃棄物処理施設・メガフロート(巨大人工浮島)等への移送
- 汚染水収納用のタンクの新設
- 高放射線量環境でも作業できるロボットの投入
- ロシアの液体放射性物質処理施設「すずらん」の投入[89]
- 仙台産ゼオライト(沸石)や活性炭などによる放射性物質および海水由来塩分の浄化
- タービン建屋の汚染水を原子炉に戻すことによる汚染水減量
- 浄化フィルター設備および海水による冷却機の新設・接続による、安定的な循環冷却系の構築
4月12日、汚染水の一部移送が始まった[90]。
上記対策などを織り込んで6 - 9か月後の冷温停止を目標とする収束工程表が、4月17日、東京電力から発表された[66]。
6月3日、東京電力は、1 - 4号機および集中廃棄物処理施設建屋の地下にたまっている放射能汚染水の放射能が推定で72京 Bqに上ると発表した[91]。
| 核種 | 放射能 (PBq) | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1号機 | 2号機 | 3号機 | 4号機 | 集中廃棄物処理施設[注 4] プロセス主建屋 |
集中廃棄物処理施設[注 4] 高温焼却炉建屋 |
合計 | |
| ヨウ素131 | 2.01 | 290.52 | 14.72 | 0.099 | 124.8 | 2.44 | 434.59 |
| セシウム134 | 1.61 | 70.98 | 33.45 | 0.179 | 29.76 | 5.55 | 141.53 |
| セシウム137 | 1.74 | 69.00 | 35.68 | 0.186 | 28.8 | 5.92 | 141.33 |
| 合計 | 5.36 | 430.50 | 83.85 | 0.46 | 183.36 | 13.91 | 717.44 |
[編集] 日本国内外における放射性物質の拡散
「福島第一原発事故による放射性物質の拡散」を参照
[編集] 日本の食品・水道水・大気・海水・土壌等への放射性物質の拡散
本項目群では、その影響度や規制内容が多岐にわたるため、全体として重要と思われるもののみを記載した。また、実際に行われた判断、措置、報道された主張を妥当性の如何にかかわらず記載した。よって読者は、本項目に記載された内容が影響や規制対象の全てではないこと、相対的ないし確定的なデータに基づかない判断、措置および客観性を欠く主張、矛盾をきたす表現を含むことに留意する必要がある。
3月17日、厚生労働省は食品衛生法上の暫定規制値を発表し、規制値を上回る食品が販売されないよう対応することとして、各自治体に通知した。詳細は食品衛生法参照。
枝野官房長官は21日の記者会見で「今回の出荷制限の対象品目を摂取し続けたからといって、直ちに健康に影響を及ぼすものではありません[93]」、「仮に日本人の平均摂取量で1年間摂取した場合の放射線量は牛乳でCTスキャン1回分、ホウレンソウでCTスキャン1回分の5分の1[94]」と述べ、冷静な対応を求めた。
[編集] 土壌と海洋汚染
3月21日、東京電力が福島第一原発南放水口付近の海水を調査した結果、安全基準値を大きく超える放射性物質が検出されたことが明らかとなった[95]。22日には、原発から16 km離れた地点の海水からも安全基準の16.4倍の放射性物質が検出された[96]。
3月23日、文部科学省は、原発から北西に約40 km離れた福島県飯舘村で採取した土壌から、放射性ヨウ素が117万 Bq/kg、セシウム137が16万3,000 Bq/kg検出されたと発表した[97]。チェルノブイリ原子力発電所事故では55万 Bq/m²以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となったが、京都大学原子炉実験所の今中哲二によると、飯舘村では約326万 Bq/m²検出されている[98][99]。
3月31日、国際原子力機関 (IAEA) は、原発の北西約40 kmにある避難区域外の福島県飯舘村の土壌から、修正値で10倍の20 MBq/m²のヨウ素131を検出したと発表した[100]。
5月の東京都内各地の一日単位の平均値は、東京都健康安全センターが地上18 mでおこなっている環境放射線量測定によると、0.068 μSv/h〜0.062 μSv/hであった。5月5日から5月25日まで日本共産党東京都議会議員団が地表1 mで測定した結果では、同程度の濃度だった地域は大田区、杉並区、町田市など、都内全域で見るとごく限られた範囲であった。比較的高い地域は、青梅市・あきる野市・練馬区が0.09 μSv/h台、江戸川区〜江東区の湾岸地域が0.1 μSv/h台、最も高い地域が足立区〜葛飾区で0.2 μSv/h台〜0.3 μSv/h台であった。また、新宿区内約3.5 kmという限られた範囲内の測定でも、0.066 μSv/h〜0.116 μSv/hと大きな開きがあり、狭い範囲でもバラつきがみられた[101]。東京都の5月の調査によって、東京都大田区にある下水処理施設の汚泥の焼却灰から10,540 Bq/kgの放射性セシウムが検出された[102]。
[編集] 農産物および畜産物
福島県の原子力センター福島支所の緊急時モニタリングの検査によって、3月17日に採取された福島県産の原乳で1,510 Bq/kgの放射性ヨウ素が、茨城県放射線監視センターの検査によって18日採取された茨城県産のホウレンソウから最大15,020 Bq/kgの放射性ヨウ素が検出された[103]。3月19日から22日にかけて、農林水産省は福島県産の原乳、茨城県、福島県、栃木県、群馬県産のホウレンソウ、カキナ、福島県飯舘村の水道水などから食品衛生法上の暫定規制値を超える放射能が検出されたと発表した[16][103]。これを受け、政府は21日に一部地域・品目に関して食品の出荷制限の指示を出した[104]。また、出荷制限に従わずそれが顕在化した事例では、3月26日に千葉県香取市の農家10戸が、ホウレンソウの出荷制限に従わず、7885束を同県匝瑳(そうさ)市の八日市場青果地方卸売市場に出荷していた事例がある[105]。
[編集] きのこ類
- きのこ類から高い汚染が確認され、広範囲に広がった。
- 福島県
2011年8月:相馬市で4600ベクレル(露地栽培の原木ナメコ)、古殿町の野生チチタケ(菌根(きんこん)菌類)で3200ベクレルを検出。
- 長野県
(長野県佐久市)10月26日 野生キノコから1320ベクレル/kg検出。
- 茨城県
(鉾田市:990ベクレル/kg(10月4日 しいたけ)、土浦市(同 510ベクレル/kg)、小美玉市(同 890ベクレル/kg)、行方市(同 830ベクレル/kg)検出。
[編集] きのこ原木(きのこ栽培の材料)とおがくず(木材の小粒(同きのこ栽培))
- 宮城県
宮城県は11月30日、県内のキノコ原木から国の指標値(1キロ当たり150ベクレル)を超える最大2492ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。
※尚、放射性のきのこ原木と、おがくずが流通すると、同材料(木材)で栽培したキノコ類が汚染され、全国に汚染されたキノコ類が広がる事となる。
[編集] 大豆
大豆においても、お米と同様に放射線が確認されている。
※( 但し、食品加工され、流通されるのに1年近く掛かる為、市場に出回るのにタイムラグが発生する。)
- 福島県
二本松市:400ベクレル/kg、いわき市:240ベクレル/kg、西郷村:216ベクレル/kg、天栄村:190ベクレル/kg 須賀川市:184ベクレル/kg
- 宮城県
登米市:240ベクレル/kg、山元町:99ベクレル/kg
- 群馬県
渋川市:111ベクレル/kg
- 岩手県
一関市:96ベクレル/kg、盛岡市64ベクレル/kg、陸前高田市:25ベクレル/kg
- 栃木県
那須塩原市:78ベクレル/kg、日光市:59ベクレル/kg、塩谷町:38ベクレル/kg、大田原市:32ベクレル/kg
- 茨城県
日立市:99ベクレル/kg
[編集] 茶
5月初旬に神奈川県の茶葉(生茶550 Bq/kg〜570 Bq/kg、荒茶約3,000 Bq/kg)の放射性セシウムが検出され、加工食品の基準値の扱いについて、生産者の立場の農林水産省と消費者の立場の厚生労働省で、意見が分かれた。農林水産省は、お茶は薄めて飲むものであるし、生茶規制値が500 Bqで、乾燥された荒茶も500 Bqでは科学的ではないと主張した。厚生労働省は、数千 Bqの製茶が店頭販売されることは消費者が容認しないとして5月16日、茶の生産地がある14の都県に生茶と荒茶の放射線量の測定を命じた。しかし静岡県知事の川勝平太をはじめ殆どの自治体は荒茶の測定を拒否した。政府は6月2日、荒茶・生茶とも500 Bqを超えたものは原子力災害対策特別措置法に基づき出荷停止対象とする判断を下し、その後に茨城県全域、神奈川県6市町村、千葉県6市町、栃木県2市において、実際に出荷停止命令が出された[106][107]。 その後に静岡県は県内製茶工場ごとの測定を開始し、6月9日に県内茶工場の製茶から国の基準を超えるセシウムが検出、業者に対し商品回収と出荷自粛を要請した。6月14日には別の2つの工場の製茶も基準を超えたと発表、同様の要請を行った。6月14日の記者会見で川勝知事は「風評被害はNHKや全国紙など報道の責任が大きい」と強く抗議した。6月17日にフランスのドゴール空港で静岡産の乾燥茶より1,038 Bqの放射性セシウムが検出され、当局により廃棄処分決定がなされた。これによりフランス当局は、静岡県産の全ての農産物を線量検査対象とすることを決定、EU委員会にもこれをEU基準とするよう上申した[108][109][110][111]。6月20日、JA静岡中央会とJA静岡経済連は地域農協向け説明会において、お茶の放射能被害について東京電力に損害賠償請求する方針を発表。風評被害分については現行法では賠償請求できないため、国に法改正を促すともコメント[112]。
9月に入り厚生省は、千葉産、埼玉産(狭山茶を含む)からも、抜打ち検査や自主検査により基準超のセシウムが検出されたと発表した[113][114][115]。
[編集] 魚介類1(海産物)
北茨城の沖合で4月1日に採取されたイカナゴの稚魚から、4,080 Bqの放射性ヨウ素が検出され、北茨城市の近海では4月4日には526 Bqの放射性セシウムおよび1,700 Bqの放射性ヨウ素が検出された。当初、はさき漁協が3月下旬以降、茨城県に何度か魚の検査を行うよう要請したが、茨城県は検査をせず、漁協に要請を出しイカナゴ漁および出荷を自粛すると発表した。漁協は県担当者を呼び、検査しない理由を組合員に説明するよう求めた。県担当者は「県産の水産物から基準を超す放射性物質が出れば、今後に影響する。当分は様子を見た方がいい」と説明したという。茨城県日立市の河原子漁協は独自検査を当面見送る方針を示した。県からは「漁協単独の結果が出るたびに騒ぎになって、風評被害につながる」といった懸念が示されたという。これらの経緯について、水産庁幹部は4月5日、茨城県の魚介類検査への対応について「検査をやって公表してもマイナスになるだけだから、と言っている。めちゃくちゃだ」と苦言を呈していた。この幹部は、漁協が独自に行ってきた検査についても「ぜんぶ国の施設でやり直すべきだ」と不信感をあらわにした。こうした不信が、今回の国の検査につながり国が県沖の水産物検査に踏み切った形となった。7日午前、水産庁の依頼でサンプル捕獲にあたる漁船が那珂湊漁港を出港した後、茨城県漁政課の担当者は、事前に国との協議はなかったと語った[116][117]。
[編集] 魚介類2(川魚)
川魚からも多量のセシウム検出されている。 アユ(阿武隈川(福島県伊達市 )2011年7月24日:セシウム 1240 Bq、同ヤマメ 2011年5月17日:セシウム 990 Bq 、ワカサギ(群馬県前橋市 (赤城大沼))2011年9月9日:セシウム 650 Bq
[編集] 学校給食
小学校・中学校・幼稚園等において、福島原発事故以降に、福島県産の牛肉から高濃度の放射性物が検出されてからも、 学校側が、福島県の応援として、福島県等、原発事故地点の近県の食材を積極採用すると言う方針を貫いた為、 子供を心配した父兄から、自宅から弁当を持たせると言う事態が多く発生した。 その為、学校給食の食材を放射線測定する学校が急増した。
- 東京都:武蔵野市10月以降(牛乳14.4ベクレル/kg・さつまいも19.2ベクレル/kgなど、市立小中学校はマイタケ115ベクレル/kg・ナメコ17.1ベクレル/kg)が確認され、公表されている。
[編集] 水道
福島県及び近隣各県において、放射性物質による水道水の汚染が相次いだ。3月17日に厚生労働省が策定した放射能の「暫定基準値」は飲料水の場合300 Bq/kg以下、乳児の場合100 Bq/kg以下である[118]。大気中を漂う放射性物質が雨と共に地上に落下し水源に混入するとみられるため、厚生労働省は3月26日、全国の水道事業者に対し、降雨後の取水を一時中断するように通知した[119]。その後放射能の数値は低下し、3月29日15時には福島県以外での飲用制限がなくなり、4月15日までは福島県飯舘村のみ乳児に対する飲用制限が成されていたが、5月10日にはそれも解除された[120][121]。
[編集] 福島県
3月17日から20日にかけて南相馬市、いわき市などの水道水で暫定基準値、または乳児に対する暫定基準値を上回るヨウ素131を検出。その後22 - 23日には多くの市町村で暫定基準値を下回った。比較的高いヨウ素131が検出された飯舘村も、4月1日からは摂取制限を解除。ただし前述の通り降雨時に濃度があがる可能性があるため、乳児に関しては摂取を控えるように広報を続けた。その後一か月程度観察を続けたが基準値以上の放射性物質は検出されたなかったとして、5月10日には全ての制限が解除された[122][123][124][125]。
[編集] 東京都
東京都葛飾区の金町浄水場で、22日午前9時、水道水に210 Bq/kgの放射性ヨウ素131が検出された。この給水範囲である東京都23区、武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市、三鷹市では乳児の水道水摂取を控えるように呼びかけた[126][127][128]。これを受け、東京都は1歳未満の乳児およそ8万人に、1人あたり550ミリリットルのミネラルウォーター3本を配布すると発表した[129]。24日の検査分は79 Bq/kgと、暫定基準値を下回ったと発表した[130]。
[編集] その他
千葉県、茨城県の一部浄水場においても、3月23日頃から26日頃にかけて相当量のヨウ素131等が検出され、乳児の飲用を控えるよう呼びかけるなどの措置がとられた[131][132][133][134][135][136][137][138][139]。
[編集] 食品に関する日本の規制
「食品衛生法」を参照
[編集] 風評被害
この原発事故により、様々な分野で風評被害やデマが発生した。ここで取り扱う「風評被害」の中には、産業界や地元住民などに実際に発生している、または、発生の蓋然性が高いと予想される実害をも含む。本事故による社会的影響は、サプライチェーン(供給連鎖)など、放射性物質と直接的関係のない分野にまで及んでおり、本事故によって発生した実害の軽視に加担しないため、本節では「被災した産業等」のみにかかるものではなく、「実害を訴える人々」をも対象とした包括的な内容を記述する。
[編集] デマ
主なデマとしては、放射性ヨウ素の体内摂取を阻止するための内服薬「安定ヨウ素剤」の代わりに、ヨウ素入りのうがい薬や昆布など海草類も有効であると、根拠が無く、かえって健康被害をもたらしかねないデマ情報が流布したこと[140][141]や、中国において「海水が放射能汚染されたので今後は安全な塩が入手できなくなる」というデマ情報が流れて実際に塩の買い占めに発展したことが挙げられる[142][143][144][145]。また「震災や原発事故の被災地で強盗や性犯罪が多発」などといったデマもインターネット上に多発し、またそれ以降は便乗犯と思われる犯行も相次ぎ(原発作業員もTwitterで自宅に空き巣が入ったと報告)、送電網の断線や各地の原発停止などに起因して夜間停電の続く被災地域および高線量に起因する立入禁止区域の治安が悪化したため、警察が取締まり強化に乗り出す事態となった[146][147][148][149]。
[編集] 人々の言動
この事故に関連し、トラックの運転手が被曝を恐れて事故現場周辺地域への物資輸送をためらうため[150][151]、例えば南相馬市(福島県北東部)やいわき市(同じく南東部)のような原発事故現場からはやや離れた地域にすら救援物資のみならず一般物資さえも届かないという孤立状況が生まれたり[152][153]、「身体等に付着している放射性物質の持ち込み」を警戒して宿泊施設が避難者の受け入れを拒否する[154][155]、児童が避難先の学校等で「放射能がうつる(感染する)」などといった非科学的な理由を主な動機としたいじめを受ける[156]などといった、風評被害および差別的対応が見られたが、その反面、福島県および近隣地域に点在するホットスポットが危険地帯であることも事実であり、当該地域への人的役務の対価が高騰していることを悪用した人材派遣会社も現れた。具体的には、女川町へのトラック輸送役務契約と偽って派遣労働者に福島第一原発での瓦礫の撤去作業を行わせた等の事例があり、被災地外の人々への被害も出始めている。
韓国北西部の京畿道では、放射性物質を多く含む可能性を懸念して事故後最初の降雨である2011年4月7日に学校の臨時休校措置が採られた。政府機関は人体や環境に影響がないとして、教育当局に過敏にならないように配慮を求めた。臨時休校としなかったソウル市教育当局のウェブサイト上では、親たちからの不満が徐々に増えたが、授業を中止することはせずに、親たちに平静さを保つように呼びかけた[157]。
[編集] 生産物の取り扱い
農産物に関しては、3月21日に食品衛生法上の暫定規制値を超えたとして一部の野菜に出荷停止措置がとられたが、翌22日には、出荷停止されていない茨城県産のチンゲンサイやレタスが小売業者から敬遠されて返品される、などといった被害も確認されている[158]。菅直人総理は4月15日、福島県産のキュウリ、イチゴを自ら口にし、農作物の安全性をアピールした[159]。その一方で、ジャーナリストの青木理と宮台真司は、「僕は福島の野菜は絶対に買いませんよ。」、「(中略)政府の言うことを信じて福島の野菜を買うというのは、はっきり言ってアホでしょう。」と発言している[160]。
また、鋼材の輸出に関しても風評被害が出ているとの報告が、日本鉄鋼連盟からあった[161]。このほか、工業など多分野にわたる輸出製品が、取引先に表面線量の自主検査を依頼されるか、相手国で公的検査を受けるなどして打撃を受けた[162]
[編集] 各国の評価
チェルノブイリ原子力発電所事故と並ぶ、史上最悪の原子力事故の一つであり、旧ソビエト連邦よりも格段に原発の安全対策の水準が高いと目されていた日本でこのような事態が生じたことは、各国のエネルギー政策に大きな影響を与えた。ヨーロッパでもドイツとイタリアは、脱原子力への方向を加速した[163][164]。
4月15日、ロシアの放射線に関する政府機関・医学生物学庁のウラジーミル・ウイバ長官は、東京都内の大使館において、同館敷地内で観測された放射線量が0.07 μSv - 0.10 μSvであり、これはモスクワの水準(0.17 μSv - 0.20 μSv)の約半分にとどまるとの調査結果を公表した[165]。医学生物学庁から東京に派遣されたチームは大使館員や在日ロシア人の健康調査等を行った上で、「東京の放射線量は人体に悪影響はない」「現時点で放射能汚染はない」と述べ、これを受けてウイバ長官は「観光を目的とした渡航制限を解除」するようロシア外務省に勧告する意向を明らかにした[165]。
[編集] その他の社会的影響・反応
福島原発事故を動機に、以前から原子力技術関係者達の閉鎖性を指して使われてきた「原子力村」という語を、推進派と撤廃派の双方が再び使い出している。
- 原爆投下との並列
- 福島原発事故を動機にして、マスコミや市民運動家の間では、「ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ」というように、福島原発事故を広島と長崎への原爆投下と並列する論調が増えている。しかし、日本を巻き込んだ原子力災害は、長崎への原爆投下(1945年8月9日)の次は、福島原発事故(2011年)ではなく、焼津の第五福竜丸が巻き込まれた水爆実験(1954年)である。
- 東京都目黒区の目黒区美術館では、2011年4月9日から5月29日まで、広島と長崎への原爆投下にまつわる絵画やポスター、建築物などを展示する「原爆を視る 1945-1970」を開催する予定であったが、この福島原発事故が起きたために中止になった。運営主体の目黒区芸術文化振興財団は「イメージ的に原発事故などを思い出させる面があり、時局柄、実施しない方がいい」と述べたが、被爆者らは「過剰反応だ」などと指摘。また、『はだしのゲン』の作者である漫画家・中沢啓治も、お役所的発想であると区の姿勢を批判しており[166]、これも一種の風評被害と見ることもできる。
- パフォーマンス
- 東京都渋谷区にある渋谷マークシティの京王井の頭線渋谷駅コンコースに設置している岡本太郎の壁画作品『明日の神話』に、2011年5月1日午前9時半ころ、この事故を思わせる絵を描いたベニヤ板が貼り付けてあったことが判明し、同日夜に撤去された[167][168]。この違法行為は、東京の芸術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」のパフォーマンスであったことが、当人らによって同月18日に公表された[169]。なお、岡本太郎記念館館長でもある平野暁臣は、「(このような時世にあって)悪戯と切り捨てられない」との見解を示し、経緯を静観した[170]。
[編集] 反原発に対する批判
- 日本経済団体連合会会長の米倉弘昌は、事故発生から4日後(2011年3月16日)に、福島原発事故について「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と発言し、原子力行政を擁護した[171]。
- 事故発生時の政権与党である民主党の支援団体の一つである全国電力関連産業労働組合総連合は、「原子力発電は、議会制民主主義において国会で決めた国民の選択。もし国民が脱原発を望んでいるなら、社民党や共産党が伸びるはずだ」(内田厚事務局長)と原子力行政を擁護し、脱原発論に反論した[172]。
- 事故発生時の野党である自民党の石原伸晃幹事長は、「大きな事故があったので集団ヒステリー状態になるのは心情としては分かる」「脱原発というのも簡単だ。しかし生活を考えたときどういう選択肢があるのか示さなければいけない」と発言した[173]。また、石原幹事長は自民党の河村建夫衆議院議員のセミナーで日本各地の反原発運動について、「アナーキーで代替エネルギーのことを考えていない」「公安関係者から聞いたが、(6月11日に東京で起きた原子力発電所反対デモの)バックにいるのは革マル派、中核派、原水協。そういう人たちがいるのに普通の人が多く集まっている」と指摘した[174]。
[編集] 科学的影響
- X線画像
[編集] 人体の吸収と健康に与える影響
「#専門家による指摘」も参照
3月12日に1号機原子炉建屋に入室し、手動ベント弁を開操作してドライベントを実行した作業者の男性が、累積106.3 mSvの急性被曝をし、急性被曝症状である吐き気とだるさを訴えて病院に搬送された[177][178] 。当時の炉心は、後日の東京電力発表によれば[179]すでにメルトダウンが進行していた可能性があり、また当時は施設内で人体貫通性(染色体破壊能力)が高い中性子線が検出されており、原子炉建屋内での本作業は命をも脅かされかねない危険な行為であったが、切迫した状況の中で、現地判断により、開所当時から手順書が整備されていなかったベント作業[39]を、既存の設計図や配管図など各書類を頼りに考案し即時行うしかなかったと見られている。大阪大学の宮崎慶次名誉教授は「炉心溶融後にベントを行えば、放射性物質の漏出が増える。もっと早い段階で行うのが定石だ」と着手も含めた対応の遅れを指摘した[178]。
一方、3号機タービン建屋地下階で3月24日、同月14日の原子炉建屋の水素爆発により破損した配電系統の再敷設工事を行っていた電工系企業の社員および下請け作業員が、現地にあった水たまりに一般的な靴を履いた状態で侵入し、これが高濃度放射能汚染水であったために靴内浸水時に被曝した。
同日、作業員3名の自己申告により靴内浸水が発覚、ベータ線被曝が疑われた。3名は福島県立医科大学へ救急搬送され、除染処置を含む緊急治療を受け、翌日には千葉県にある放射線治療研究専門機関、放射線医学総合研究所へ移送された[180]。
3月28日には放射線医学総合研究所が記者会見を開き、25日から研究所に入院していた作業員3名が無事に退院したと発表した。3人とも被曝内容はベータ線熱傷(ベータ線は表皮から先へ貫通できず、重症へ至るのは負傷部位から放射性物質がしみこんでの内部被曝被害のみ。臨界現場付近と違い、福島第一原発の当時の汚染水(たまり水)はほぼヨウ素とセシウムの同位体つまりベータ線源が占めていた)であり、3名とも記者会見時点で健康状態に特に問題はなく、うち2人は足のくるぶし下に2 Sv〜3 Sv程度の高線量ベータ線被曝をしているが会見時点では皮膚症状はまったくなく、今後も被曝部位が赤みを帯びる程度であろうと診断されたため、しばらくは経過観察を行う予定であることが発表された(被曝症状は、気が遠くなるほど忘れた頃に、徐々に、あるいは急に、発現することもあるため。参考:放射線障害、身体的影響の項目)[181][182]。
4月3日、官房長官枝野幸男は記者会見で、福島第一原発から30 kmの周辺で、甲状腺の被曝調査を行った15歳以下の子ども946人について、問題となる値は見つからなかったことを明らかにした。政府の原子力災害現地対策本部(福島市)によると、調査は3月28〜30日に、福島県川俣町と飯舘村で保育園などを通じて検査を呼びかけ、のどの放射線量を測定した結果、対象者には20 km圏内から避難してきた子ども7人も含まれていたが、最高値は毎時0.07 μSvで、国の原子力安全委員会が示した基準値である同0.2 μSvを全員下回っていた。3月26、27日には、いわき市で同様の調査を137人を対象に実施したが、こちらも基準値を上回った子どもはいなかった[183][184]。
4月21日には、市民団体である「母乳調査・母子支援ネットワーク」[185]が、3月下旬に福島県および関東地方で暮らす生活協同組合員の授乳婦9名の母乳を検査した結果、4人の母乳から6.4 Bq/kg - 36.3 Bq/kgのヨウ素131を検出したと発表した[186]。これを受けて厚生労働省も福島県および関東地方にて同様の調査を行い、4月24- 25日に採取した23名の母乳から検出されたヨウ素131は検出限界以下から最大8.0 Bq/kgに分布し、セシウム137は1人だけ検出されて2.4 Bq/kg、セシウム134は全員が検出限界以下であったと発表した[187]。
一方、原子力関連施設から廃棄される放射性廃棄物のうち、放射能レベルが自然放射線量よりもさらに低く、健康影響が無視できるレベルは、ICRP、IAEA等の考え方を取り入れ、個人線量で年間約10 μSvとされている(参考:クリアランスレベル)。
このような人体への影響を踏まえた放射線量の設定もあるなか、食品安全委員会は、生涯被曝100ミリシーベルト未満という答申を発表した。一方、年間100ミリシーベルトの被曝量で帰宅させてもよいのではないか、という意見も日本原子力技術協会に掲載されている。
7月28日には、政府の原子力被災者生活支援チームが、福島第一原発の周辺で放射線量が比較的高い福島県浪江町、飯舘村、川俣町山木屋地区の住民109人を対象に、福島県が6月27日〜7月10日にホールボディーカウンター (WBC) を使って全身から放出されるガンマ線を測定し内部被曝状況を調べた結果、計58人から微量のセシウム134やセシウム137が検出されたが、全員が1 mSv未満だったと発表し、内部被曝の程度は「相当に低い」とした[188]。
南相馬市における同様の調査では、1名の預託線量が1 mSvを超えた[189]。
[編集] 国会質疑における東京大学教授児玉龍彦の発言
2011年(平成23年)7月27日、東京大学アイソトープ総合センターセンター長[190]兼[191]先端科学技術研究センター教授[192]である児玉龍彦は、衆議院厚生労働委員会に参考人として出席し、「厚生労働関係の基本施策に関する件(放射線の健康への影響)」について、双葉町や大熊町などで除染などの現地対応に追われた経験を踏まえた発言を重ねた[193][194]。
福島第一原子力発電所事故による被曝の危険性について
- 母乳からの検出放射線量は、すでにチェルノブイリ事故時のガン発症患者の体内検出量(6 Bq/L)と互角であり、外部被曝と違って低線量でも健康被害は甚大である
- 放射性物質の1年後残存量は、核爆弾爆発後は1/1000だが、原発事故後は1/10に過ぎない
- 福島第一原発の放出量は、熱量換算で広島原爆30個分、ウラン換算で20個分(政府8月発表では、6月時点の放出総量は168個分[195])
- 単にWBCで内部被曝計測するだけでは、特定臓器に集約される特定線源を把握しきれないので不備
- 遺伝子は個々人によって300万カ所が異なるので、全員同一の対処法はナンセンス、パーソナライズが重要
- 内部外部の被曝を問わず、被曝病発症と被曝を関連づけるには世界でも前例が乏しいため、チェルノブイリの場合も20年分のデータがそろうまで無理だった
- 非線形で、非常に狭い区画で点在するマイクロ・ホットスポットの脅威が、行政対応には反映されていない、除染も補償もそのルール作りもいっこうに進んでいない。20 km圏とか30 km圏という円状のくくりは無意味で、地域毎や学校毎などで細かく計測し調査しないと不備
などと発言、政府と国会の対応を厳しく非難した。詳細は膨大であるため、公式議事録を参照[注 5][193]。
政府への提案として以下の3点を発言した。
- 国策として(機器導入向けの補助金制度及びその宣伝や指導を指していると思われる)食品、土壌、水の線量測定には、安価なGM管方式ではなく高価格帯シンチレータを投入し、高い精度で、土壌と水の除染、食品製造ラインへのシンチレータ計測ライン増設により線量基準超の不良品を排除、などを可能にすること[196]。
- 子供を守ることを最重要視し、実用的な新法を早急に制定する。現行法では、取り扱うことを許可される放射線量、核種が許認可によって厳密に規制されており、セシウムは認可をもらっておらず、除染作業も東京へ持ち帰って行っており、すべて法律違反の行いである。高価な最新鋭測定機器を有する各研究施設も、これでは活躍できず、現行法は実態に合っていない。
- 除染技術の開発や事業化について、既に様々なノウハウを有する各民間企業の力を結集し民主導とすること。官主導でパフォーマンスの悪い公共事業化で予算肥大化する余裕が、財政難の政府にあるとは到底思えない。
[編集] 住民の避難・影響
事故を受けて、3月11日20時50分に、半径2 km以内の住人に避難指示が出された。その後、事故が深刻化するにつれて避難指示範囲も拡大し、3月12日18時25分には半径20 km以内に避難指示が出された[197]。3月15日11時には半径20 kmから30 km圏内に屋内退避が指示され[197]、これにより、圏内の住民は避難を余儀なくされた。福島県双葉町は3月19日に役場機能を埼玉県さいたま市に移し、避難住民のうち約1200人も数日中に移動した[198]。さらにその後、同月の30日から31日にかけて、同県の加須市に再び移動した[199]。また、避難指示を受けた福島県大熊町の双葉病院には3月14日時点で病状の重い患者146人が残されていたが、移動を余儀無くされ、14日と15日に自衛隊によって3回にわたる搬送が行われたが、21人が搬送中や搬送後に死亡している[200]。避難指示の出た区域内では人影がなくなり、取り残された多くの家畜が衰弱したり死亡したりしている。ただ、身内の介護や家畜の世話などのために避難指示の出された地域に留まる住民もいて、避難するよう自衛隊や消防組織が説得にあたった[201]。
事故の影響が長引いてくると、政府の対応も長期避難に備えたものに切り替わっていった。3月25日、屋内退避を指示されていた半径20 kmから30 km圏内の住民に、枝野幸男官房長官が自主避難を要請した[202]。4月22日には、半径20 km圏内が災害対策基本法に基づく警戒区域に設定され、民間人は強制的に退去され、立ち入りが禁止された[203]。半径20 km圏外では、飯舘村の全域と川俣町の一部、半径20 km圏内を除く浪江町と葛尾村の全域、南相馬市の一部が「計画的避難区域」に指定され、約1か月かけて避難することになった。また、半径20 kmから30 km圏内のうち計画的避難区域でない地域の大半が、緊急時に屋内退避や避難ができるよう準備しておくことが求められる「緊急時避難準備区域」に指定され、屋内退避指示は解除された[204]。5月10日からは警戒区域内の住民の一時帰宅が行われた。原発から3 km以内へは一時帰宅できなかったが、8月26日から実施された。
政府はさらに、警戒区域や計画的避難区域外でも局地的に放射線量の高い地点があるとして、事故発生後1年の推定積算放射線量20 mSv(3.2 μSv/h)を目安に「特定避難勧奨地点」を設定した。特定避難勧奨地点は、地区単位ではなく住居ごとに放射線量を測って指定され、避難することを選択すると支援が受けられる。6月30日に福島県伊達市の113世帯、7月21日に福島県南相馬市の59世帯が指定された。しかし住民からは指定方法などに反発が上がり、地区単位で指定するよう要望した[205][206][207]。
なお、6月16日衆議院総務委員会で、経済産業省の松下忠洋副大臣は、指定された区域外に避難した人は11万3,000人に上ると答弁した[208]。これは、内閣府が6月2日現在の数字として発表した、東日本大震災の避難者や転居者の数(12万4594人)に、ほぼ匹敵する数字となっている[209]。
このような住民避難の実態として、7月23日のNHK特集「飯館村〜人間と放射能」が放映された。このなかでは、村内の汚染が数十 mSv/hに上ったことから避難に至る様子や、原子力委員会が、村内に汚染土壌の処分場を設置してはどうか、と提案している様子などが放映されている。なお、放射性廃棄物の処分場は地層処分のように多くの手続きや検討を経て選定される[210]。
政府は原発が「冷温停止」した段階で警戒区域の縮小を検討するとしている。一方、警戒区域の一部では高い放射線量が観測され、事故後1年間の積算放射線量の推計は最高で508.1 mSv(大熊町小入野)となっている。そのため政府は、一部地域では警戒区域の解除を見送る方針で、避難が長期に渡る可能性があるとしている[211][212]。
[編集] 福島第一原発での事故発生に関するリスク評価
(用語としてのリスク評価についてはリスクアセスメントを参照)
[編集] 福島原発事故前の、事故リスク評価と、これに対する政府・東京電力の答弁及び対応
東京電力は、2006年9月に日本の原子力安全委員会の耐震設計審査指針[213]が改定されたことを受けて、2002年7月の地震調査委員会の三陸沖から房総沖にかけての日本海溝付近でマグニチュード8クラスの地震が起きる可能性がある評価結果を踏まえ[214]、福島県沖での地震発生を想定し津波の高さは10 mを超えると結論付け、2008年に津波の想定を従来の試算5.7 mから10 m以上に引き上げていたということを2011年8月事故調査・検証委員会の委員長畑村洋太郎に明らかにしている[215]。この試算では明治三陸地震と同規模の地震が起こると仮定し、海水取水口付近で津波の高さ8.4 m〜10.2 m、津波遡上高さは1〜4号機で15.7 m、5号機・6号機で13.7 mとした[216]。また、この試算後産業技術総合研究所の貞観地震の津波被害も評価し、取水口付近に8.7 m〜9.2 mの津波が襲来するものの陸上への遡上は無いとした報告を2009年9月に原子力安全・保安院へ行っている[216]。
一方、2011年8月25日東京電力は記者会見において、2008年6月の時点でこれらの試算は原子力・立地本部副部長へ、2010年6月には副社長原子力・立地本部長へと報告していたと述べた[217]。これらの試算は東北地方太平洋沖地震の4日前の2011年3月7日に原子力安全・保安院に報告されたが、東京電力は速やかな改修を保安院から指示されていなかったとしており[217]、東京電力はこれらの試算を基にした具体的な津波対策を執っておらず、15 mを超える津波の遡上も予測や想定されていたこととなる[216][218][219][220]。これらを受けて8月25日枝野幸男内閣官房長官は「十分に対応する時間的余裕があった」と述べた[221]。
当事故を調査した、国際原子力機関 (IAEA) の調査団は、2011年6月1日、日本の政府に査察の結果を提出し、事故の要因は高さ14 mを超える津波によって、非常用電源を喪失したことであると結論し、「日本の原発は津波災害を過小評価していた」とコメントし、日本の原子力発電所は安全対策の多重性確保を行って、あらゆる自然災害のリスクについて、適切な防御策を講じるべきだと述べた。事故後の対応については、厳しい状況でベストを尽くしたと評価した[222][223]。
1999年までIAEAの事務次長を務めた原子力工学専門家ブブルーノ・ペロードは、1992年に東京電力に対して、福島県に設置されているMark I型軽水炉の弱点である格納容器や建屋を強化し、電源や水源を多重化、水素爆発防止の装置をつけるように、などと提案したが、東電側の返答は「GE社から対策の話が来ないので不要と考えている」というもので、以後も対策はとられなかったという。2007年のIAEA会合で東電に対し、福島県内の原発は地震や津波対策が不十分だと指摘した際も東電は「対策強化する」と約束したものの、その後も津波対策と逆行するような送電線敷設を行うなどしていた。ペロードは「この事故は天災ではなく人災」て「チェルノブイリ原発事故はソ連型事故、福島原発事故は東電の尊大さが招いた東電型事故」と指摘した[224]。 2006年10月27日、吉井英勝(京都大学原子核工学科卒業、日本共産党)は、国会質問で当時の原子力安全委員会委員長の鈴木篤之に対して、福島第一原子力発電所を含む43基の原子力発電所は、地震によって送電線が倒壊したり、内部電源が故障したりすることで引き起こされる電源喪失状態、または大津波に伴う引き波によって冷却水の取水が不可能になると言った理由で炉心溶融にいたるのではないか、そうなった時どう想定しているのかと質問した[注 6][225]。これに対し鈴木篤之は、電源喪失状態となり燃料溶融に至る事故は非常に低い確率論としては存在すると答え、吉井に対して、電力会社には、さらに激しい地震の影響を想定させると約束した[226][225]。 吉井は同年12月13日にも、「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」[227]を内閣に提出し、原発の最悪の事故を念頭に、津波の引き潮により冷却水が喪失する可能性の指摘や、非常用ディーゼル発電機の事故によりバックアップが機能停止した過去事例の提示要求などを行ったが、当時の内閣総理大臣安倍晋三は、「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」と回答した[228][229]。また、吉井は2010年4月9日にも衆議院経済産業委員会で同じ問題を取り上げたが、当時の経済産業大臣の直嶋正行(民主党)は、「多重防護でしっかり事故を防いでいく、メルトダウンというようなことを起こさせない、このための様々な仕組みをつくっている」[230]と説明した。
産業技術総合研究所活断層・地震研究センターの岡村行信センター長らは、2004年頃から貞観津波が残した地中の土砂を調査し、痕跡が宮城県石巻市から福島第一原子力発電所に近い福島県浪江町まで分布し、内陸3 km - 4 kmまで入り込んでいることを確認した[231]。2009年の国の審議会(原発の耐震指針の改定を受け電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告書について検討する審議会)で、大地震や津波を考慮しない理由を東京電力に対して問い質したが、東京電力は「まだ十分な情報がない」「引き続き検討は進めてまいりたい」と答えるにとどまった。震災発生後、岡村センター長は、警告されたデーターが完全でないことを理由にリスクを考慮しないという姿勢はおかしいと述べ、「原発であればどんなリスクも当然考慮すべきだ。あれだけ指摘したにもかかわらず、東京電力からは新たな調査結果は出てこなかった。『想定外』とするのは言い訳に過ぎない。もっと真剣に検討してほしかった」と話した[232][233][234][235]。
福島第一原発事故発生以前、原子力安全基盤機構が製作したシミュレーションアニメが存在する[236]。当時の政府・経済産業省のメルトダウン・メルトスルーに対する認識度がうかがえる。
[編集] 福島原発事故後の、事故リスク評価に関する報道
2011年3月15日の米ABCによると、米ゼネラル・エレクトリック (GE) 社の技術者Dale G. Bridenbaugh(和表記:ブライデンボー)は、1975年の時点で「Mark I」型原子炉では冷却装置が故障した場合に格納容器に動的負荷がかかることを勘案した設計が行われていないと次第に認識しつつ退社に至ったと語ったとのことである[237]。その後は米原子力規制委員会と協力しながらMark I原子炉の廃止を訴え続けたと一部で報道されている[238][239]。
同日の米ニューヨーク・タイムズによると、福島第一原発など日本にも9基ある「Mark I」型軽水炉について、アメリカ原子力規制委員会 (NRC) は1972年、格納容器が小さいことを問題視した。水素がたまって爆発した場合、格納容器が損傷しやすいとして「使用を停止すべきだ」と指摘していたことを報じた[240][241]。
2011年3月16日のブルームバーグによると、アメリカ原子力規制委員会 (NRC) は20年前に、GE社製Mark I型を含むいくつかの原子炉は、地震被害により付帯設備(非常用ディーゼル発電機、貯水タンクなど)の故障が起きて、高確率で冷却機能不全が起こると内部文書「NUREG-1150」で警告しており、2004年6月に原子力安全・保安院が公表した資料「リスク情報を活用した原子力安全規制の検討状況」の中でもその内容が紹介されているという。この記事中インタビューにおいて、元日本原子力研究所研究員で現在は核・エネルギー問題情報センターの事務局長を務める舘野淳は、NRCのリポート(NUREG-1150)が提示したリスクへの対応策について「東電は何も学ばなかったのか?天災が非常に希であり、想定外の規模であれ、言い訳は許されない」などとコメントした[242]。
また同日の読売新聞によると、露独占事業研究所の研究員は報道各社のインタビューに応じ「2004年のスマトラ島沖地震など強大な地震が起こったのに、事業者は原子炉だけでなく、冷却装置などの関連施設の強化を怠った」と地元の新聞に述べた[243]。
2011年3月17日、チェルノブイリ原子力発電所事故の被害者団体「チェルノブイリ同盟ウクライナ」(キエフ)代表の元原発技師のユーリー・アンドレエフは共同通信など報道各社のインタビューに応じ「チェルノブイリ原発事故では、4号機爆発の影響で漏れた冷却水が隣の2号機に入り込み、冷却装置やバックアップ電源のシステムが故障したが、辛うじて連鎖事故を回避した。福島第一原発は電源装置がチェルノブイリ同様に原子炉の直下にあり、津波などの水が入り込めば電気供給やバックアップシステムが壊れる。チェルノブイリ事故後も電源供給体制を見直さなかったのは残念」と述べた[244][245]。
2011年3月22日の読売新聞によると、2007年2月、静岡地方裁判所での証人尋問で非常用発電機や制御棒など重要機器が複数同時に機能喪失することまで想定していない理由として「割り切った考え。すべてを考慮すると設計ができなくなる」と証言した内閣府原子力安全委員会委員長の班目春樹は、「当時の原子力安全委員会としての見解ではあったが、今は個人的に責任を感ずる」と答弁し謝罪した。3月22日の参議院予算委員会での社民党党首、参議院議員の福島瑞穂の質問に対するものである[235]。
2011年3月23日付の東京新聞で、1970年 - 1980年頃に4号機を除く5機の設計や安全性の検証を担った東芝の元技術者達は、「事故や地震でタービンが壊れ飛び原子炉を直撃する可能性を想定し、安全性が保たれるかどうかを検証した。M9レベルの地震や、航空機墜落で原子炉に直撃する可能性を想定するよう進言したが、『千年に一度のことを想定する必要は無い』と一笑に付され、起こる可能性の低い事故は次々に想定から外された。当時は『M8以上の地震は起きない』と言われ、大津波は設計条件に与えられていなかった」「今回のような大津波やマグニチュード9の地震は、想像もできなかった」等と語ったと報じている[246]。なお1980年代の米国内、原子力規制委員会(NRC)でも同様に、電力業からの圧力でNRC技術者の災害リスク提言は委員会内で相次いでもみ消されていったとのことであり、当時の国際的な流れであったことがうかがえる[247]。
2011年6月9日付のしんぶん赤旗によると、日本共産党の吉井英勝議員は2011年5月27日の衆院経済産業委員会で、福島第1原発事故に伴うGE社の製造者責任を追及。外務省の武藤義哉審議官は「現在の日米原子力協定では旧協定の免責規定は継続されていない」と答弁し、協定上は責任を問うことができるとの見解を示した[248]。しかしながら米国側の反応としては3月15日付のNYタイムズに見られるように「GEの責任は限定的」という論調が目立っている模様である[241]。
[編集] 専門家による指摘
[編集] 原子力工学
米国の原子力専門家らが報道陣向けに電話会見し、その中で物理学者のケン・バージェロン (Ken Bergeron) は「福島第一原発は、非常用ディーゼル発電機も使用できなくなったため、原発に交流電流を供給できなくなるステーション・ブラックアウト(station blackout、全交流電源喪失)と呼ばれる状況に陥っている。ステーション・ブラックアウトは、実際に発生する可能性は極めて低いと考えられていたが、地震と津波により想定外の事態になったのだろう」と述べた[249]。
マサチューセッツ工科大学 (MIT) のJosef Oehmen(工学系の博士だが、原子力専門家ではない)とMITの原子力理工学科 (Department of Nuclear Science and Engineering) が共同で発表したドキュメント[250][251](和訳)によると、
- 炉心の核分裂連鎖反応は既に停止しており、現在の発熱源は定格出力比約7%の核分裂生成物の崩壊熱によるものである。
- 核分裂生成物のうちには放射性のセシウムとヨウ素の同位体が含まれる。
- 炉心付近で起こっている爆発は水素の燃焼によるものであり、核爆発によるものではない。
2011年3月16日、京都大学原子炉実験所原子力基礎工学研究部門教授の宇根崎博信は、UNN関西学生報道連盟に対し次のように述べた[252]。
- 当該事故発生の原因について、「様々な情報を総合すると、地震ではなく津波が原因」であり、「(津波の)水が原子力施設に与えた影響が想定」を超えていたためこのような事態を招いた。原子炉は「外部からの電力供給が断たれた時の非常用発電設備」を持っているが、「津波によってその機能」が損失したため、このような状況に陥った。
- 「(2011年3月16日の)時点で考えうる最悪の場合は部分的に燃料が溶け、水蒸気爆発が生じ、部分的に格納容器や圧力容器を破損させ、今まで以上に放射性物質を放出させる事態」だが、「その可能性は極めて低い」と言える。
- 住民の健康への影響については、「退避圏の外で(2011年3月16日時点までに)観測されている(放射性物質の)値を見る限り、健康に影響が出る値」ではないので恐らく大丈夫であろう。
- 「原子炉の設計に津波の影響」は考慮されていたが、「それをはるかに超えた津波」であった。「(既存の原子力)施設の安全設計が妥当か」を考え直していくことが必要である。
[編集] 放射線医学
「被曝#放射線量の大きさに対する人体の影響」も参照
事故直後より放射線医学についての専門家から一般に向けたコメントが発表されている。
東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一は、今回の原発事故に関連してTwitterにおいて「100ミリシーベルト以下の被曝はほぼ安全」などと発言、これをまとめて病院のWebサイトに掲載[253]。
慶應義塾大学医学部講師の近藤誠(放射線治療科)は4月7日、日刊ゲンダイに対し「100ミリシーベルト以下なら安全はウソっぱち」「「100mSv以下の低線量被曝のデータは少なく、いまのところ発がんリスクはゼロでなく、正確に分からない」と言うべき」と述べ[254]、サイエンス・メディア・センターにおいて小論を公開した[255]。
[編集] 日本政府の対応
- 2011年3月11日16時36分 - 電源喪失の報告(原子力災害対策特別措置法第15条1項2号)を受けて、官邸は原子力緊急事態宣言を発令し、対象区の国民に対し、屋内待機を命じた[256]。
- 2011年3月11日21時23分 - 半径3 km以内の住民に避難指示を、半径3 km〜10 kmの屋内退避の指示を発表する。12日5時44分に、ベント操作が必要になったため、避難対象地域を半径10 kmに拡大する。12日20時20分に、ベント・水素爆発によって放射性物質が漏れたため、避難対象地域を半径20 kmに拡大する[257]。
- 2011年3月12日3時5分 - 官邸は1号機の格納容器の破裂を避けるためにベントの意思決定を発表し、ただちに東京電力に指示を行った。しかし、操作マニュアルが電源喪失を想定しておらず、現場が混乱した[258]ことから、ベント操作がただちに行われなかったため、同日7時11分、状況把握のため菅首相が事故現場に到着して直接ベントを指示した。ベント操作の開始は同日の9時04分に始まった[259]。
- 厚生労働省は、急遽、食品と水道水を含めた飲み物の被曝許容量の暫定基準値を決定して発表。人体の被曝許容量の暫定基準値を年間20 mSvと定めた。
- 3月15日午前3時 - 清水正孝東京電力社長から海江田万里経済産業大臣へ事故現場から作業員の全面撤退の意向の申し出があり、大臣に拒否され、枝野幸男内閣官房長官に再び申し出があった。午前4時17分に清水社長を官邸に呼び真意を聞いたが今後の対応を明言しなかった。午前5時35分菅直人首相は東京電力本店に乗り込み勝俣恒久代表取締役会長ら約200人が出迎のもと、菅首相は「撤退などあり得ない」と迫った[260][261]。なお、清水社長は当時を振り返り、直接作業に係わらない者達の退避の意向であった[262]、また東京電力は2011年9月8日の記者会見で社長が振り返った内容であったと認識しているとした。
- 2011年5月6日 - 当事故の影響で菅直人首相は海江田万里経済産業大臣を通じて、中部電力に対して、東海地震の発生予想率をもとに、静岡県の浜岡原発の運転を中長期的に対策が立てられるまでの間、全て停止するように求め[263]、5月9日、中部電力は政府の要請に従って、浜岡原発を停止させた[264]。
- 2011年5月24日 - 原因を究明するための調査・検証を行うため、内閣官房に東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の設置が閣議決定され[265]、6月7日初会合が行われた[266]。
- 2011年6月22日 - 原子力安全委員会は、当事故を重く見て、原子力発電設備の安全の基準となる「安全設計審査指針」と「耐震設計審査指針」の抜本改正に着手した。班目春樹委員長は改定には2〜3年かかると述べた[267]。
[編集] 事故調査・検証委員会
2011年(平成23年)5月24日に、内閣官房に東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会を設置することが、 閣議決定された。その後畑村洋太郎を委員長、柳田邦男を委員長代理、尾池和夫、吉岡斉などを委員として活動中である。この委員会は、内閣総理大臣を含むすべての行政機関・職員および規制対象事業者に対して、資料提供と委員会への出席を求めることが出来る(辞任・退職した菅直人首相、枝野幸男官房長官、海江田万里経済産業大臣、寺坂信昭原子力安全・保安院長、清水正孝東京電力社長などに対して強制力は持たない)。
[編集] 原子力安全・保安院の対応
事故直後の原子力災害特別措置法第十条、同法第十五条による通報に伴い、事故の対応や住民の避難などの対策拠点として機能すべく位置づけられた「オフサイトセンター[268]」と呼ばれる施設は、停電などで機能しなかったと報道されている[269]。 原子力安全・保安院が、本原発に通常7人いる、安全を監督する立場の保安検査官を3月17日までに全員福島県庁に移動させ、本原発に人員を残さなかったこと[270]も報道されている。
この事故の教訓として、経済産業省は、緊急安全対策[271]、非常用ディーゼル発電機の措置[272]、ストレステスト[273]などを全国の原発に反映することを表明した。
[編集] 日本の国会の対応
[編集] 事故調査委員会
2011年9月30日、第178回国会は「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」を設ける「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」を可決・成立し[274][275]10月より施行され、 2011年12月1日に事故調査委員会のメンバーは両院議運合同協議会から推薦され、翌2日衆参両院本会議で承認された。委員長は黒川清、委員は田中耕一ら9人[276]。
この法に基づき設けられる事故調査委員会は2011年5月24日の閣議決定により政府の内閣官房に設置される「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」とは異なり、国会が主体となり独自の調査を行う。
事故調査委員会は東京電力やその関連事業体、また政府・内閣を含む関係行政機関などから聞き取り調査や資料などの提出を求める事ができ、行政としての内閣が設ける事故調査・検証委員会とは異なった立法の国会が設ける事故調査委員会となる。調査委員会は委員長と9人の委員任命した日から起算しておおむね6か月後に調査結果報告書を衆議院議長および参議院議長に提出しなければならない。なお「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法」は施行から1年で効力を失う。調査への協力拒否には議員証言法による罰則もあり得る。委員会の会議は原則公開することとされる。
[編集] 国際原子力機関の動き
日本政府は3月12日、本事故について国際原子力機関 (IAEA) に対して報告した。これに対し、国際原子力機関の事故・緊急センターは、日本や加盟国と24時間の連絡体制をとることで状況把握に努める方針を示し、日本政府からの要請があれば技術支援を行う用意があることを表明した[277][278]。
国際原子力機関の事務局長天野之弥は日本時間3月13日未明、国際原子力機関の声明としては異例の日本語でビデオ声明を発表し、「日本の当局は必要な情報の収集と安全の確保に当たっている」と一定の評価を示したが、引き続き懸念が存在しているとの認識を示し、海水を注入して炉心を冷却するなどの一連の作業が成功することを期待すると述べた[279]。
国際原子力機関には加盟国から事故に関する問い合わせが殺到し、日本時間3月14日深夜に緊急説明会を開くことを決めた[280]。
天野事務局長は14日の記者会見で日本政府から専門家チームの派遣を要請されたことを明らかにした。また、チェルノブイリ原子力発電所事故のような大事故に発展する可能性については、原子炉の構造が異なること、既に運転を停止している状態であることを指摘し、原子炉建屋の爆発についても核分裂反応によるものではなく、化学現象によるものであって、放射線量も限定的なものだ、と述べた[281]。
しかし3月15日、天野事務局長は、日本政府からの詳細な情報提供が滞っているため国際原子力機関の対応が限定されてしまうと述べた[282]。その証左として、国際原子力機関が報道機関にも後れをとっていることを明かし、日本政府の対応の遅れに不満を示したうえで迅速で詳細な情報の提供を求めた[283]。国際原子力機関の加盟国からも情報提供の遅れに批判が集中している[284]。一方、国際原子力機関は独自に行動を開始し、天野事務局長は日本の地方自治体に配置されているものよりも高精度の国際的放射性物質監視網を持つ包括的核実験禁止条約機構 (CTBTO) のティボル・トット事務局長と接見し、放射性物質監視態勢を築く意向を示し、世界保健機関 (WHO) 、世界気象機関 (WMO) 、国際連合食糧農業機関 (FAO) などとも情報共有する方針も示した[285]。
また、3月16日の記者会見で事故の状況は非常に深刻と強調して述べ、17日にも訪日して第1次情報を直接収集することを明らかにした[284]。
3月30日、IAEAのフローリー事務次長はウィーンの本部で記者会見し、事故を起こした福島第一原発の北西約40キロにあり、避難地域に指定されていない福島県飯舘村について、高い濃度の放射性物質が検出されたとして、住民に避難を勧告するよう日本政府に促した[286]。
3月31日、IAEAの勧告に対し、枝野官房長官は「直ちにそうしたもの(状況)ではない」「長期間そうした土壌の地域にいると、その蓄積で健康被害の可能性が生じる性質のものなので、しっかり把握し対処していかなければならない」と否定的見解を述べた[287]。また、経済産業省原子力安全・保安院も独自に試算した数値を公表し、「避難の必要はない」とIAEAの勧告を明確に否定した[288](その後の4月になって、政府は、福島県飯舘村などを計画的避難地域に指定した[289][290]。)
[編集] 原子力事象評価尺度の判定
日本政府は、国際原子力機関 (IAEA) が定める原子力事故または事象の深刻度である国際原子力事象評価尺度 (INES) を「4」(施設外への大きなリスクを伴わない事故)と認定し報告した[278]。国際原子力事象評価尺度の最高は「7」(深刻な事故)で、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故がこれにあたり、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故は「5」(施設外へのリスクを伴う事故)、1999年の東海村JCO臨界事故は「4」である[291]。
日本政府が国際原子力事象評価尺度をレベル「4」としたことについて、フランス原子力安全機関 (ASN) のラコスト総裁は3月14日、日本からの情報に基づき、チェルノブイリ原子力発電所事故よりは深刻ではないものの、スリーマイル島原子力発電所事故と同じかより深刻な、レベル「5」あるいはレベル「6」(大事故)との感触がある、と述べた[292]。その翌日の3月15日には「事故の現状は前日(14日)と全く様相を異にする。レベル6に達したのは明らかだ」と述べた[293]。また、アメリカの科学国際安全保障研究所 (ISIS) は3月15日に「レベル6に近く、レベル7に到達する恐れがある」との見解を発表した[294]。それでもなお、3月16日の時点において、日本の原子力安全・保安院は3月12日に認定したレベル「4」との見方を変えなかった[295]。
国際原子力機関は3月16日現在、国際原子力事象評価尺度判定を保留しており、フロリダ州立大学の核物理学者カービー・ケンパーも影響を評価するには時期尚早であり、十分な評価材料がない、とした[296]。
3月18日、原子力安全・保安院は、国際原子力事象評価尺度判定をレベル「5」に引き上げた[297]。これにより、日本国内で起きた原子力事故としては史上最悪の評価となった[298]。
3月25日、原子力安全委員会のSPEEDIシステムを使った放射性物質の放出量は、3万 テラベクレル - 11万 テラベクレルと推定された。これは国際原子力事象評価尺度のレベル「7」の基準1には該当する。
4月1日、米科学国際安全保障研究所 (ISIS) は原子力安全・保安院が国際原子力事故評価尺度でレベル「5」と判断していることに関し、さらに深刻なレベル「6」に引き上げるべきだとの見解を示した[299]。
4月12日、原子力安全・保安院は国際原子力事故評価尺度の暫定評価をレベル「7」に引き上げたことを発表した。ただし4月12日時点で環境への放射性物質排出量は、事故発生から4月5日までの間で、チェルノブイリ原子力発電所事故の1割程度(37京 Bq)であるとしている[86]。
一方では、3月12日の東京電力の松本純一・原子力立地本部長代理の記者会見では「福島第一原発は放射性物質の放出を止め切れておらず、(放出量は)チェルノブイリ原発事故に匹敵、または超える懸念がある」との認識が示されている[3]。ただし、「言い過ぎたかもしれない。依然として事態の収束がまだできておらず、現時点で完全に放射性物質を止め切れないという認識があるということだ」とも補足している[3]。
[編集] 経済等への影響
「東日本大震災による電力危機」も参照
東北地方太平洋沖地震及びそれにより発生した津波被害により、同事故で破損した福島第一を含む、多くの発電設備が被害を受けたため[注 7][300]、東京電力の発電能力は大幅に低下し、需要を満たせなくなる可能性をはらむことになり、電力の使用状況によっては予期しない大規模停電が起こる可能性が出てきた[301][302]。そのため、電車を運行する鉄道会社では大幅に運行本数を削減するなどして、電力不足に対応している[303]。
また、福島第一原子力発電所からの放射性物質の飛散を懸念し、同発電所の周辺地域や同発電所に比較的近い関東地方、場合によっては日本からの退避を自国民に対し勧告する国もあり[304][305]、東京の大使館業務を縮小したり、ドイツやオーストリアなどが一部業務を大阪などに一時移転する動きも見られた[306]。
[編集] 事故処理にかかる費用
日本経済研究センター[307]は、今後10年間で20兆円の処理費用がかかるとの試算結果を7月19日公表した。一方、政府は事故処理には数十年必要との見通しを発表している[308]。
[編集] 満期米国債償還金の活用
2011年9月27日の衆議院予算委員会で江田憲司は、「毎年毎年十五兆円レベルで米国債が満期になって戻ってくるんですよ」「為替スワップをして円にかえて、それでその円を復興財源に使っていく」と述べた。これに対し安住淳財務大臣は15兆円ではなく14.5兆円であると指摘し、「外貨で保有をしっかりして、介入等のときに適正に使わせていただくというのがこのお金の使い方」と答弁した[309]。
[編集] 商業への影響
このような状況の中、余震や電力不足による混乱、放射性物質の拡散への懸念などを理由に、東京の社員や業務機能を西日本や第三国に退避する企業も現れている[310][306]。
- H&M:アルバイトを含む国内従業員とその家族、法人業務を一時大阪に移転。
- タタ・コンサルタンシー・サービシズ:インド人社員の本国への帰国と日本人社員及び家族の関東からの移動準備。
- BNPパリバ:東京在住の社員を香港及びシンガポールに配置転換。
- IKEA:正社員の約半数と本社機能を神戸に移転。
また放射性物質による汚染の懸念から農産物から工業製品に至る日本製品が、海外の市場において隠避される傾向が垣間見られる地域も出てきた。輸出に際して、EU諸国をはじめ放射能の環境基準に敏感な地域などでは検査証明などの検査結果の明示が必要になるケースも出てきている[311]。このことから東京港や横浜港、川崎港、神戸港など日本の主な港湾施設では事前にコンテナの放射線検査を実施するところもある他、検査施設への放射線量測定の依頼が増加している[312][313][314]。また中華人民共和国では日本産の食品輸入が事実上差し止められるなど過剰な措置があるとし、日本政府が日本産食品の安全性についての働きかけを行った[315][316]。
福島市の福島競馬場でも、芝コースやダートコースで除染を行うため一部の芝を張り替えたり、砂を入れ替えるなどの処置がされた。
海外ではそれまで人気の高かった日本産食材の売れ行きが落ちたり、客足の伸び悩みで日本食レストランが閉店するなどの影響があるとの報告もある[317][318]。
また事故直後、各国政府の退避勧告や、個人や各企業の自主的な敬遠指向などが影響し、外国人観光客の来日数が激減した[319]が、震災後初めての大型連休となったゴールデンウィークには、安近短の傾向ではあるが徐々に国内の観光客数は連休中に回復の兆しを見せた[320]。しかし福島県内でも福島第一原発から距離が遠く放射線量が小さめの会津地方[321]などでも観光業収益の落ち込みが激しい状態が続くなど、原発周辺地域では9月時点でもなお死活問題となっており、地域によって明暗分かれた格好となっている[322][323]。
[編集] 交通への影響
「常磐自動車道#東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響」も参照
- 鉄道
- 福島県浜通り地方を通るJR常磐線で、警戒区域を含む広野駅 - 亘理駅間は福島第一原子力発電所の事故後は放射線汚染の懸念があるため、運行再開の目処が立っていない。この区間は津波被害で軌道や鉄道施設の被害が甚大であったこともあり、回復の見込みが全く立っておらず、復旧工事も被害調査等含め手付かずのままとなっている。JR東日本では路線の経路変更も視野に入れた復興を目指すとし、工事が長期化するとの考えを示している[324][325]。常磐線は関東地方と東北地方を結ぶ旅客輸送のみならず貨物輸送にとっても重要な幹線の一つであるが、この区間を境に南北に分断されている状態である。このため、福島県を経由して東京-仙台間を直通する鉄道幹線は東北本線および東北新幹線のみとなっている。
- また、首都圏の主に東京電力から給電を受けている私鉄や地下鉄路線を中心に、節電の一環として優等列車の運転を中止したり、需要に合わせて運行本数を削減するなどの間引き運転が行われ、利便性が損なわれている。
- 高速道路
- 高速道路では、福島第一原子力発電所周辺を通る常磐自動車道は広野IC - 常磐富岡IC間が警戒区域に指定されており、原子力事故以降、通行止め解除の目処は立っていない。また、避難区域に指定されている建設中の常磐富岡IC - 相馬IC間が2011年度に開通予定、楢葉PAが2012年度に開業予定であるが、建設は凍結状態となり、原発周辺の工事再開の目処は立っていない。ただし、南相馬市の一部などで建設が再開され[326]、原町IC - 相馬IC間は2011年度中に先行開通させることが発表された。
- なお、常磐富岡IC - 原町ICは警戒区域のため工事再開の目処は立たず、開通の見通しは立っていない。
- 航空
- 航空路線では、放射性物質の飛散による影響を鑑み、自国民の本国への退避のためにチャーター便を出したり、東京国際空港(羽田空港)や成田国際空港発着便を休止、または、関西国際空港や中部国際空港、第三国経由とし、乗務員をそこで交代させて東京都内や千葉県成田市周辺に滞在させないようにする航空会社も現れた[327][注 8][328][329][330][331][332][333][334]。
- また、福島第一原子力発電所事故の放射能汚染による懸念からの需要減といった、間接的な理由によって経路設定の変更を行ったり、減便や運休する航空路線も相次いでいる。
- 国土交通省は航空法に基づき、3月16日に福島第一原子力発電所の周囲半径30 km圏内の上空を飛行禁止にしている[335]。なお、国際民間航空機関 (ICAO) は3月19日時点で、日本への渡航制限はないとしているほか、旅客への放射線検査も不要としている[336]。
| 福島第一原子力発電所事故における各航空会社の対応 | ||
|---|---|---|
| 国内線 | ||
| 国 | 航空会社 | 対応 |
| スカイマーク | 茨城発着の国内線全便を3月30日から4月6日まで、機体洗浄と整備及び検査のため運休[337]。 | |
| スターフライヤー | 4月中に羽田 - 北九州線の一部の便が、運航乗務員の要員不足となったため運休[338]。 | |
| 国際線 | ||
| 国 | 航空会社 | 対応 |
| アメリカン航空 | 羽田発着のニューヨーク線など、日米間2便の運航を4月7日から4月26日まで運休。 | |
| デルタ航空 | 日本発着便の輸送能力を、最大で20パーセント削減。 | |
| ブリティッシュ・エアウェイズ | 成田・羽田発着のロンドン線を香港や仁川を経由とし、経由地で乗務員を交代。 | |
| ルフトハンザドイツ航空 | 成田発着便を当面運休。中部、関西発着に振り向け。 | |
| アリタリア-イタリア航空 | 成田発着便を当面、関西発着に変更。 | |
| エールフランス | 関西からチャーター便を運航。成田発着便をソウル経由とし、ソウルで乗務員を交代。 | |
| エジプト航空 | 関西からチャーター便を運航。 | |
| KLMオランダ航空 | 成田発着便を関西経由とし、関西で乗務員を交代。 | |
| エティハド航空 | 成田発着便を中部経由とし、中部で乗務員を交代。 | |
| カンタス航空 | 成田発着のシドニー線を香港経由とし、香港で乗務員交代。成田発着のパース線を5月8日から運休。 | |
| タイ国際航空 | 成田発着のバンコク線を4月25日まで減便。 | |
| マレーシア航空 | 成田発着のクアラルンプール線を一部運休。 | |
| ガルーダ・インドネシア航空 | 成田発着のジャカルタ線を一部運休。 | |
| キャセイパシフィック航空 | 香港への旅客が急増したため、東京に乗務員が滞在しないダイヤで成田発着の臨時便を設定。 | |
| 香港エクスプレス航空 | 新千歳発着の香港線が3月末まで運休。 | |
| マカオ航空 | 成田と関西発着のマカオ線を6月末まで運休。 | |
| チャイナエアライン | 新千歳発着の台北線を運休。宮崎発着の台北線を運休[339]。 | |
| エバー航空 | 成田と新千歳発着便の運航を当面休止。 | |
| マンダリン航空 | 台湾から石垣へのチャーター便運航を、6月4日まで休止[340]。 | |
| 中国国際航空 | 成田・羽田発着の北京線と上海線の運航を当面休止。 | |
| 中国東方航空 | 新潟から上海への臨時便を設定。福島発着の上海線を当面休止[341]。 | |
| 中国南方航空 | 富山発着の北京線を減便[342]。 | |
| 春秋航空 | 茨城発着の上海線の運航を3月30日まで休止。 | |
| 大韓航空 | 秋田、青森、函館、大分発着のソウル線を運休、静岡発着のソウル線を減便[343][344]。 | |
| アシアナ航空 | 福島発着のソウル線を当面休止。茨城発着のソウル線の運航を10月29日まで休止、水戸支店を営業休止[345][346]。 | |
- その他、3月16日に成田発の全日本空輸 (ANA) 貨物便が中国・大連で、貨物から中国国内の規定値を超えた放射線を計測したとして、荷降ろしができずにそのまま折り返して日本に帰国するという事例も発生している[347]。
[編集] 脚注
- ^ 原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書の添付IV-2 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析 (PDF)では、「約84万テラベクレル」としている。
- ^ 倒壊した鉄塔は福島第一原発西側の、夜ノ森線 第27号鉄塔である。
- ^ 1 mSv/hは1 μSv/hの1,000倍
- ^ a b 原典では、「集中RW」で「集中環境施設」・「集中廃棄物処理建屋」とされることがある。
- ^ YouTubeなどにも質疑の動画が公開されている場合がある
- ^ 大津波による敷地や施設の冠水については特に大きな問題とはしていない。
- ^ 東京電力の施設だけでも、福島第二原子力発電所、6箇所の火力発電所などが被害を受けた。
- ^ なお、表立って同事故を理由としないものの、成田発着便を第三国経由とする航空会社も存在。
[編集] 出典
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[編集] 関連項目
- 福島第一原子力発電所関連記事
- 福島第一原子力発電所
- 福島第一原子力発電所事故の経緯 - 事故発生から2011年3月末日まで
- 福島第一原子力発電所事故の経緯 (2011年4月以降)
- 福島第一原発事故による放射性物質の拡散
- フクシマ50
- 大熊町(爆発を起こした1〜4号機の所在都市)
- 浜通り(福島第一原発の所在地域)
- 東北地方太平洋沖地震
- 東日本大震災
- 輪番停電(計画停電)
- 福島県原子力損害対策協議会
- 東日本大震災の被災地の原発
- 原子力発電所に関する総合記事
- 原子力発電 - 原子炉 - 沸騰水型原子炉
- 原子力事故 - 冷却材喪失事故
- 炉心溶融
- 被曝
- 放射性物質
- 放射性降下物
- 放射性廃棄物
- 放射性廃棄物処理設備
- 廃炉‐この事故の影響で1号機から4号機が廃炉になる。
- 原子力発電所事故、原子力発電所訴訟など
- スリーマイル島原子力発電所事故
- チェルノブイリ原子力発電所事故
- 国際原子力事象評価尺度
- 浜岡原発訴訟
- 原子力撤廃
- 2011年バーデン=ヴュルテンベルク州議会議員選挙 - この事故の影響で、同盟90/緑の党が第2党に躍進し、ドイツ社会民主党と連立与党を組むに至った。
- 日本を巻き込んだ大規模被曝
[編集] 外部リンク
日付においては、年が2011年であるときは、年の記述を省略している。
[編集] 政府・各省庁の報道発表へのリンク
- 首相官邸 - 総理指示、官房長官会見、原子力災害対策本部「福島第一・第二原子力発電所事故について」など。更新:「…事故について」は毎日1 - 2回の模様。
- 原子力安全・保安院 原子力安全のお知らせ - 更新:5月は毎日1回程度。発表時刻と実際の掲載時刻は数時間から1日ある。下記「緊急時情報」に要約だけが先に掲載されていたこともある。
- 原子力安全・保安院 緊急時情報 - 要約。メールサービスあり。
- 原子力安全委員会
- 気象庁 福島気象台 - 地震関連情報等。
- 海上保安庁 海洋情報部 - 海洋速報、海流推測図など。
- 消防庁 災害情報 - 写真含む。また、福島原子力発電所(東日本大震災)に関連する消防の対応の報告もある。
- 自衛隊 地震関連 - 自衛隊の活動状況情報。
- 環境省 東日本大震災への対応について
- 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会
[編集] 事業者の報道発表へのリンク
- 東京電力 地震による影響【xx時現在】が1日1回 - 3回。海水からの放射性物質の検出(第xx報)が1日1回など。
- 事故の収束に向けた道筋 4月17日
- 福島第一原発、同、3月31日以前分 プラント状況【xx時現在】が1日1回 - 3回。
- 東北地方太平洋沖地震・福島第一原子力発電所の状況 - 日本原子力産業協会
[編集] 用語集へのリンク
- 原子力防災用語集 - 原子力安全・保安院
- 原子力防災基礎用語集 - 原子力安全技術センター
- 炉心シュラウドの健全性評価に関する用語集 (PDF) - 東京電力等
[編集] 図面へのリンク
[編集] 食品・水道水・海水・大気・降下物の安全性情報へのリンク
- 首相官邸 モニタリングデータ 福島第一周辺および各県モニタリングデータなど(見やすい)。更新:半日に一度。そこからのリンク先に、健康や退避等への影響の「評価結果」(原子力安全委員会)。
- 経済産業省 (各機関、事業者の)放射線計測値 - モニタリングデータ類への公式で豊富なリンク集。
- 厚生労働省 地震関連情報 - 地震関連の報道発表、水道水中の放射性物質の検出について(第xx報)、食品中の放射性物質の検査結果について(第xx報)、雇用・労働関係の特例措置など。
- 食品安全委員会 - 本地震の本原発への影響と食品の安全性など。更新:随時。
- 水産庁 - 水産物の検査結果など。
- 産業技術総合研究所 つくば市での放射線量
- 文部科学省 全国の放射能濃度一覧 - 都道府県別環境放射能水準調査結果を元に、平常時と当日の最高線量を比較して表示。
[編集] 被曝関連情報へのリンク
- 放射線医学総合研究所 放射線被曝に関する基礎知識(第xx報)、除染方法、放射線被曝の問合せ窓口など。
- 放射線は「甘く見過ぎず」「怖がりすぎず」 - 慶應義塾大学 八代嘉美助教
- よくわかる原子力:ヨウ素剤Q&A
- 福島第一原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく日本原子力産業協会
- 低線量被ばくの人体への影響について サイエンス・メディア・センター
- 原子力資料情報室 低線量放射線の影響をめぐって
- 医学のあゆみ“チェルノブイリ膀胱炎”―長期のセシウム137低線量被曝の危険性
[編集] 事業者の本原発の地震・津波対策情報へのリンク
- 福島の原子力 - 科学映像館
- 黎明──福島原子力発電所建設記録── - 記録映画
- 東京電力 もっと詳しく原子力 地震対策
- 東京電力 福島第一原発(2009年記録) - Internet Archive
[編集] 提言・解説・講演・資料等へのリンク
- 2011年7月13日に原子力安全委員会から公開された『原子力発電所における全交流電源喪失事象について、1993年(平成5年)6月11日付け、原子力施設事故・故障分析評価検討会全交流電源喪失事象検討ワーキング・グループ)』(PDFファイル)
- 高木仁三郎 (1995). “核施設と非常事態 : 地震対策の検証を中心に”. 日本物理學會誌 50 (10): 818-821. 日本物理学会.
- 日本原子力技術協会最高顧問 石川迪夫「緊急提言 福島第一原子力発電所事故対応に向けて」 (PDF) 4月13日
- 日本学術会議 声明、緊急提言、水道水の摂取について、「放射線の健康影響には2つのタイプがある(4月28日)」など。
- NPO 失敗学界 今、福島で何が起きている? 何故起きたのか? これからどうなる? - 「臨界事故が起きたらどうなるか?」の計算結果などデータに基づく考察。
- 日本科学者会議 福島原発問題について(科学者の眼)
- 元原子力工学技術者、大前研一の解説
- 福島原発半径20km以内の住民に避難指示(動画)(3月13日20時)
- 福島第一原発で何が起きているのか――米スリーマイル島原発事故より状況は悪い Nikkei BP Net, 15日 (上記動画の文章化)
- 地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後(動画)(3月19日13時頃)
- 福島第一原発 現状と今後とるべき対応策(動画)(3月27日20時頃)
- 政府、東電の対応と東北再生のシナリオ(動画)(4月3日20時頃)
- 炉心溶融してしまった福島原発の現状と今後 Nikkei BP Net, 4月4日(上記動画の文章化)
- 福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか (PDF)チームH2Oプロジェクト, 10月28日
- MIT原子力理工学部による本事故の解説(3月)
- 事故解説 16日
- 1・3号炉の水素爆発解説 17日
- 16日夜時点での状況解説 18日
- 崩壊熱の解説 19日
- 最悪のシナリオ予測 19日
- 元東芝原子炉担当設計者 後藤政志による福島原発の現状と、今後予想される危険 3月17日
- 福島県災害対策本部「放射線と私たちの健康との関係」講演会 3月21日 ラジオ福島
- 西部 邁ゼミナール 「低放射線をめぐる嘘の数々」 10月15日 東京MXテレビ - 稲恭宏・西部邁・秋山祐徳太子
- 京都大学 小出裕章 講演「隠される原子力」3月20日
- 福島原発の炉心はどうなっているのか - 伊東良徳弁護士
- 週刊朝日 危機続く福島第一原発 「GEスリー」元設計者が米メディアで告白 「原子炉構造に欠陥あり」4月1日号
- 原子力安全研究グループ - 原子炉実験所 - 京都大学
- 日経ビジネス 日本の「被曝限度」は厳しすぎる 私が「月間100ミリシーベルト」を許容する理由 – ウェード・アリソン
日本社会学会会員・宮内紀靖(みやうちとしやす) 社会学会発表資料。2011/9/17・於関西大学・「脱原子力社会の到来」
[編集] 関連法令等へのリンク
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