今月5日に福島県が水田や畑の除染について目標や具体的な方法を示したことを受けて、県の担当者が、13日、農家を集めて、汚染された土を捨てずに表層と中の土を入れ替える除染方法を実演しました。
水田や畑の除染方法の実演は、福島県桑折町の農地を使って行われ、県内の農業団体や農家、それに農機具メーカーの社員などおよそ90人が参加しました。福島県は、今月5日「すべての農産物から放射性セシウムが検出されないよう除染をする」という目標を掲げ、今後、進める具体的な除染方法を定めた基本方針を示しました。13日は基本方針に盛り込まれた「反転耕」という除染方法が実演され、まず農地の表面に「ゼオライト」と呼ばれる放射性物質を吸着する鉱物を散布したあと、特殊な器具を付けたトラクターで表層の土と、中の土を大規模に入れ替えました。この除染方法は、表面の土を取り除く方法と比べて、汚染された土を捨てずに済み、新たに土を運び込む必要もないのが特徴です。福島県によりますと、農地の表面から高さ1メートルの放射線量は、除染前には1時間当たり1.05マイクロシーベルトだったのが、除染のあとには0.35マイクロシーベルトに下がったということです。参加した農家の男性は「有効な方法だとは思うが、トラクターなどを持っていない農家や、機械が入れない小さな水田もあるので、作業を進める際には心配もあります」と話していました。福島県農業振興課の佐藤清丸主幹は「除染に必要な機械については、国や県が市町村や農業団体ごとに用意したい」と話していました。福島県は今後、県内の7か所でも除染方法の実演を行うことにしています。
福島県の一部の自治体では、住宅などの生活圏の除染が始まっていますが、県内のおよそ8割を占める農地と森林の除染についてはほとんど進んでいないのが現状です。このため福島県は、今月、各自治体に対し、農地や森林の除染に関して「県内のすべての農産物から放射性セシウムが検出されないこと」を目標に、農地については、放射性物質の吸着資材を散布し土の上下を入れ替えたり、表面の土を削り取ったりする具体的な手法を記しました。しかし、住宅などの除染に比べ、農地や山林は面積が非常に広大で、作業量が膨大になることが予想され、いつまでに作業が完了するか、めどを示すことはできていません。さらに、除染によって大量に出る土や放射性物質を洗い流す水などを保管する「仮置き場」についても、多くの自治体では、依然として住民の同意が得られず決まっていないため、どのような方法で除染で出る土などを効果的に減らすことができるか、国や各自治体で実験が進められています。