第148回患者塾が3日、福岡県水巻町の遠賀中間医師会館で開かれた。今回のテーマは「医療と報道 正しい情報の選択のコツ」。RKB毎日放送と毎日新聞社の報道責任者が出席し、健康や医療の情報の伝え方について医師と共に考えた。
◆「あるある」捏造
小野村さん フジテレビ系で放送された「発掘!あるある大事典2」(関西テレビ制作)で07年、納豆のダイエット効果について捏造(ねつぞう)が発覚しました。食べ物については、多くの人が何かいい物がないかと思っていて、テレビで放送されたりすると飛びつく傾向があります。「フードファディズム」と言いますが、「あるある」の問題をどう考えていますか。
永守さん 捏造の誘惑は報道現場にはあると思います。極端な話、捏造しようと思えばできるからこそ、報道機関はモラルを持たなくてはならず、教育も必要です。「あるある」のように、データを捏造したり、談話を作ることはあってはならず、にわかに信じられないような話でした。でも逆に言えば、私たちの現場でもありうるかもしれない。非常に怖い落とし穴です。
神戸さん 分かりやすい報道のためにCG(コンピューターグラフィックス)などを使うこともありますが、基になるのは取材したデータや話です。報道では、なかったデータをあることにすることは100%ありません。捏造する方が勇気が必要と思います。
野沢局次長 新聞記者の取材は相手と1対1のことが多く、捏造が生まれやすいと言えるのかもしれません。それでもマスコミの世界では捏造は「想定外」。原稿を見るデスクや校閲の段階でチェック機能が働いていると思っています。
◆情報の伝え方
原田さん 「今日感テレビ」を担当しています。伝えたいことを分かりやすく伝えられるか、いかに楽しんでもらうかに腐心して番組を作っています。健康や医療の情報は、行き過ぎたとらえられ方をされると危険なものになります。極端なダイエットを続けて健康を害したりすることなどがないように、番組のホームドクターである小野村さんと密に相談し、チェックしながら放送しています。
小野村さん ある物を食べたらすごく元気になるということもないし、逆に効果が全くないということもありません。ショウガは冷たい時はジンジャオールという成分を含み、熱を通すとショウガオールという成分に変化し、体が温かくなる効果が出てきます。だから単に「冷えにショウガがいい」というのは間違いです。報道でも本当のところはこうなんだという説明を詳しくしないと間違いにつながります。
永守さん 情報を分かりやすくしようとするあまり、「これを食べると認知症が治る」なんていう表現につながる怖さが常にあります。分かりやすくすると落とし穴にはまりやすい一方、分かりやすくしないと視聴者に見てもらえないというジレンマも報道機関は抱えています。だから受け手側も情報を見極め、選択していくことが必要と思います。
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◇出席された方々
永守良孝さん=RKB毎日放送社長
神戸金史さん=RKB毎日放送報道部長
原田俊哉さん=RKB毎日放送社会情報部長
西野憲史さん=西野病院院長(北九州市)
伊藤重彦さん=北九州市立八幡病院副院長(外科)
津田文史朗さん=つだ小児科アレルギー科医院院長(福岡県水巻町)
槙原正人さん=まきはら歯科医院院長(北九州市)
野沢俊司・毎日新聞西部本社編集局次長
小野村健太郎さん=おのむら医院院長(福岡県芦屋町、内科)
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〒807-0111 福岡県芦屋町白浜町2の10「おのむら医院」内
電話093・222・1234
FAX093・222・1235
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2011年12月13日 地方版
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