開催地がカナダではなく日本だったら高橋が優勝……。
高橋本人は、淡々とこの結果を受け入れた。
「パトリックはミス3つ、自分は1つでもまだ勝てないんだなと思った。それが今のジャッジの評価なんだな、と受け止めました」
もっとも今シーズンを通しての全男子でもっとも高い5コンポーネンツは、高橋がNHK杯で出したものだ。
「あれは(開催が)日本でしたから」と、高橋は謙遜して苦笑する。確かにどの試合でも開催国の選手に少し甘い目の点が出るというのは採点スポーツでは珍しいことではない。
「でもそれを言うなら、ここはカナダですよね」と私は返した。
この試合の開催地が、カナダではなく日本だったら高橋が優勝していたかもしれない。
だがそれを論じてみても不毛なだけである。ジャッジの顔ぶれと開催地など、不利なこともあれば有利なこともある。運も含めたすべてを受け入れてこその、採点なのである。そう割り切らないと、採点スポーツはやっていけない。
今回はこういう結果になったが、これで勝負は終わりではない。高橋がこのまま今季の残りも安定した演技を続けていけば、結果は必ずついてくるはずである。
日本チームの健闘を、浅田匡子さんも誇りに思ってくれるのでは。
一方17歳の誕生日を迎えたばかりの羽生結弦も、初出場のシニアGPファイナルで会心の演技を見せた。フリーでは出だしの4回転を軽々と成功させ、3アクセルも2回降りた。唯一、最後の3サルコウで手をついたが、観客は熱狂的な拍手を送り、総立ちとなった。
総合4位と健闘した彼は、本来まだジュニアGPに出ている年齢である。だが高橋に「ここでは羽生選手が素晴らしい演技を見せたので、自分は全日本選手権では今回以上の滑りをしないと勝てないと思った」と言わしめるほどの演技だった。
試合全体の感想を聞かれた羽生は、「ほとんどの選手が4回転を降りていて、みんなが笑顔で終わるというレベルの高い試合だった。その中でこれだけの演技ができたことを誇りに思います」と素直に喜びを表現した。
どの選手もそれぞれの立場から、自分にできる精いっぱいの演技を見せた。日本チームの健闘を、フィギュアスケートが大好きだった浅田匡子さんも誇りに思ってくれるのではないだろうか。
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