韓国の排他的経済水域で中国漁船の取締りに当たっていた韓国の警察官が漁船の船長に刺されて死亡した事件を受けて、韓国海洋警察庁は、取締りでの銃の使用をこれまでより柔軟にする方向で検討することになりました。
この事件は、12日朝、朝鮮半島西側の黄海にある韓国の排他的経済水域で不法操業をしていた中国漁船を取り締まるため、韓国海洋警察庁の警察官が漁船に乗り込んだところ、操だ室付近で船長に刃物で刺されて死亡したものです。海洋警察は、特殊公務執行妨害の疑いで、船長と船員8人の合わせて9人を夜遅くまでに韓国西部のインチョンに移送し、船長については、殺人の容疑も視野に13日から取り調べるほか、残りの船員についても不法操業の手口などについて追及することにしています。一方、韓国海洋警察庁では、取締り中の警察官が中国漁船側の暴力により死亡したことを重く受け止め、これまで自己防衛のときに限って認めてきた銃の使用について見直すことになりました。これについて、海洋警察庁の幹部は、韓国のメディアに対して「制圧の初期の段階から銃を使える方法を検討する」と述べ、不法操業の漁船に接近する段階から銃などの武器の使用を可能にする方向で検討する考えを示しました。
韓国の排他的経済水域でここ数年、中国の漁船による不法操業が続く背景には、経済成長に伴って中国での水産物の需要が増えていることや、取締りが十分な効果を挙げていないことがあると指摘されています。中国では、高い経済成長を背景に水産物の消費が拡大し、近海での漁獲量が増加したことから、近海の海洋資源が減少してきています。このため中国の漁船は、新たな漁場を求め、冬にはタチウオやイシモチなどが豊富な漁場として知られる韓国の排他的経済水域を狙うようになったとみられています。黄海にある韓国の排他的経済水域について、中韓両国は、許可を得た船だけに操業を認めているほか、毎年、船の数や漁獲量を決めています。韓国の漁業当局によりますと、この水域では、ことしは1700隻の中国漁船が操業できるということですが、これ以外におよそ2000隻が無許可で操業しているとみられています。韓国の海洋警察庁は、ここ数年、不法操業の取締りを強化しており、ことしはこれまでに過去最多の500隻近くの中国漁船を摘発しました。ところが、その取締りにも限界があると指摘されています。不法操業には罰金が科されますが、中国漁船は、時には数十隻が船団を組んで移動するため、すべての船を摘発するのは極めて困難です。また、両国の取り決めにより、漁船から押収できる魚介類は甲板の上にあるものに限られており、船倉の中にある魚介類については、合法的な海域でとったという可能性もありうるとして押収の対象にはなっていません。このため、不法操業をする側としては、摘発を受けた漁船が罰金を支払っても、それを帳消しにするだけの十分の利益をあげられるため、不法操業が後を絶たないわけです。