2011年12月13日01時18分
JFLの松本山雅は12日、Jリーグの臨時理事会で来季からのJ2昇格が正式に承認された。信州・長野県から初めてのJチームの誕生に、チームやサポーターは大いに沸いた。既存のJ2チームに引けを取らない集客力では優等生の松本山雅。一方で、経営や実力の面では、乗り越えなければならない壁が立ちはだかっている。
12日午後4時37分、松本市役所3階の応接室で連絡を待っていた松本山雅の大月弘士社長の携帯電話が鳴った。相手はJリーグの大東和美チェアマン。J2昇格を伝えると、「松本山雅のサポーターはものすごく熱く、Jリーグ自体にも刺激になる。そのサポーターのために素晴らしいクラブを作ってほしい」。
その後、記者会見した加藤善之監督は「現時点で松本山雅はJリーグの中で40番目の位置。1日でも1年でも早くJ1を目指せるようなチームを目指したい」と抱負を語った。
会見後、市役所西側の松本城公園では昇格報告会が開かれた。大勢のサポーターを前に須藤右介主将は「みなさんの力があったからこそ、ここまで来ることができた。来季は厳しいシーズンの中、戦い続ける。引き続き応援をよろしくお願いします」とあいさつ。サポーターたちは試合会場と同様、選手の名前を何度もコールし、応援歌を歌って喜びを分かち合った。
「松本山雅」としてクラブ設立以来、経営面で赤字を出したことがない。しかし、J2昇格に伴い、いままで以上の経営強化や選手の環境改善が求められる。
収入の3本柱は、広告料と入場料、グッズ販売などの物販費。今季の予算3億円強の約6割を占めるのが広告料だ。スポンサーは、大口から小口まで約230社ある。J2昇格で、広告料を増額するスポンサーもあり、来季は約5億8千万円の予算を見込む。しかし、昨年度のJ2の平均営業収入は9億2600万円、J1は平均30億3千万円。松本山雅の来季の見込み額とは大きな開きがある。
「多くの市民やスポンサー、ボランティアに支えられ、市民球団という『山雅らしさ』を維持しつつ、J1を見据えながらチーム力を上げるため収益を上げていく」と上條友也営業部長は意気込む。J2昇格という追い風を使って南信や東信地域で、新規スポンサーの獲得に力を入れる。
また、入場料も従来のS席(大人当日2千円)、A席(同1200円)の2種類から、席の種類を増やして収入増につなげることも検討しているという。
11日の試合後の会見で加藤善之監督は「J昇格に満足せず、高いハードルを設定し、さらに高い満足度を満たすために頑張る」と語り、「基本は6位以内」と来季の目標を掲げた。
だが、練習施設や選手の待遇といったチームを取り巻く環境は、他のJクラブに比べて厳しい。Jリーグで活躍している選手を獲得したくても、予算も含めた今の環境の中では難しいのが現状だ。Jリーグの監督は公認S級ライセンス取得が必要で、無資格の加藤監督に代わる監督も新たに探さなければならない。
来季からJ2は22チームになる。J2とJFL間の入れ替え制が導入される見通しで、昇格1年目でも成績次第では降格もありうる。市民球団としてJリーグで強いチームを作るために、クラブの経営強化はもとより、スポンサー企業、サポーターなど地域を挙げたさらなる支援が必要だ。(田中正一)