学長の逮捕(連載第5回)
朝日新聞朝刊に連載中の「プロメテウスの罠」の本日(2011年12月13日)掲載分を以下に引用します。
プロメテウスの罠
学長の逮捕:5
森のキノコ食べても
「キノコもベリーも食べている。死んだりしないよ。90歳とか86歳の人だっているし」
チェルノブイリ原発の西約60キロのジトミール州ナロジチ地区の村で、主婦のガーリャ(78)は、森のキノコやベリーを採って食べる昔からの生活を、今も続けている。
放射線量が高いため、旧ソ連時代に移住が義務づけられた地域だ。ガーリャも一度は避難したが、移住先になじめずに6年前に戻ってきた。事故から25年、周りには屋根も落ちたような廃屋が多い。
地区の人口は原発事故にともなう移住で大きく減り、約3万人から約1万人に減った。
地区保健所の放射線技師ビラデーミル・ミハイルビッチは嘆く。
「森のキノコの汚染度は許容値の5〜6倍。イノシシなどの野生動物は原発30キロ圏にも入るからでしょう、8〜9倍です。食べないように指導しているが、住民は聞き飽きたという顔をするだけなんです」
もっとも、放射線の害ばかりでなく、移住のストレスなどの要因も考えたほうがよい人もいるようだ。ナロジチ地区の診療所で33年間住民を診続けてきた医師のビクトル・ゴルディエンコ(62)は言う。
「移住した人と残った人を比べると、むしろ、移住した人のほうが早く亡くなる傾向もある。移住した人だって事故の時すでに被曝(ひばく)しているんです。新しい環境に対応できるかどうかも考えたほうがいい」
しかし統計的に見れば、住民の健康悪化は明白だ。
医薬品などの支援をしている日本のNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)へのナロジチ地区中央病院からの報告によると、児童の呼吸器系疾患が急増しているという。人口当たりの発生率は、1988年の11.6%が08年には同60.4%と、約5倍になった。大人の場合、心臓血管系疾患が最近の10年で急増している。98年の1.2%が08年には3.0%と、3倍近い。
ベラルーシ当局に逮捕された経験を持つゴメリ医大元学長のバンダジェフスキー(54)はいう。
「放射能の影響には個人差がある。汚染されたものを食べて何でもない人もいるが、みんなが大丈夫なわけではない。キノコやベリーを食べて元気な人がいても、それは希望を持てる材料ではないのです」
では、食品の放射能に対する姿勢は、そのウクライナと日本でどう違うのだろうか。(松浦新)
これは大変興味深いことが書いています。
つまり、
①
>「移住した人と残った人を比べると、むしろ、移住した人のほうが早く亡くなる傾向もある。移住した人だって事故の時すでに被曝(ひばく)しているんです。新しい環境に対応できるかどうかも考えたほうがいい」
これは、統計的に妥当な話かどうか。
前回、こう書いてありましたね。(参照)
> 受け持つ住民は約1300人。18歳未満は230人で、小中学生は134人。若者は出て行くため、高齢化が進む。
18歳未満は受け持っている住民の約18%、若者は出て行って、高齢化が進んでいるのです。つまり、この意見にはかなりバイアスがあると考えられます。
②
> しかし統計的に見れば、住民の健康悪化は明白だ。
医薬品などの支援をしている日本のNPO法人「チェルノブイリ救援・中部」(名古屋市)へのナロジチ地区中央病院からの報告によると、児童の呼吸器系疾患が急増しているという。人口当たりの発生率は、1988年の11.6%が08年には同60.4%と、約5倍になった。大人の場合、心臓血管系疾患が最近の10年で急増している。98年の1.2%が08年には3.0%と、3倍近い。
これが有意差検定をして、有意差があるのかこれだけではわかりませんが、有意差があるとしたら、とんでもないデータです。
③
>ベラルーシ当局に逮捕された経験を持つゴメリ医大元学長のバンダジェフスキー(54)はいう。
「放射能の影響には個人差がある。汚染されたものを食べて何でもない人もいるが、みんなが大丈夫なわけではない。キノコやベリーを食べて元気な人がいても、それは希望を持てる材料ではないのです」
つまり、放射線に対する影響は個人差がある。もちろん、子どものほうが、高齢者よりも影響を受けやすいだろう。そして、汚染されたものを食べても平気なのは、高齢者であるからということも一因と考えられるでしょう。
参照:
2011年11月11日当ブログ記事:学長の逮捕(連載第4回)
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