在沖米海兵隊の撤退論者で米民主党の重鎮バーニー・フランク下院議員が重要な発言をしている。
沖縄での海兵隊の機能を「今や日本の政治を不安定化させることでしかない」と指摘し、その存在が実際に「民主党政権が誕生して以降、日本の政治を混乱させ続けている」と疑問を投げ掛けた。
米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」12月号が米外交問題評議会(CFR)でのフランク氏の講演、質疑応答として紹介した。
注目すべきは、中国の軍事的台頭に対する認識だ。在沖海兵隊の戦略目標として「中国を封じ込めることだと私は聞かされていた。だが、少しやり過ぎではないか」とし、シーレーン(海上交通路)防衛で「中国が近海のシーレーンを封鎖して、経済的自殺をするとは思わない」との見方を示した。
米軍のプレゼンス(存在感)に関し、北朝鮮に対する抑止、台湾の安定は正当な戦略利益としたが、「考えられているほど大規模なものである必要はない」と述べた。
これは日米両政府が唱えてきた在沖海兵隊の抑止力や沖縄の地政学的優位性が誇張、虚飾にまみれたものであったことを物語る。
米国防総省に近いシンクタンクや大学の研究者が提起する在沖海兵隊の県外移転論、米本土への「後方展開論」とも通底する。
米側には1996年の普天間返還合意当時から、在沖海兵隊のオーストラリア移転論が存在した。元米国防次官補のジョセフ・ナイ氏も県内移設を絶望視し、オーストラリアへの海兵隊移転を「賢明な選択だ」と提唱している。
安保環境の変化に適合するよう米軍戦略や兵力配置が見直されるのは当然で、辺野古移設に固執する日本の対応が異様だ。一刻も早く思考停止から抜け出すべきだ。
米上院のレビン軍事委員長(民主)ら米議会の重鎮でさえ辺野古移設は「非現実」とし「怪物」「幻想」と表現する。日本側はいつまで日米合意を聖域視するのか。
鳩山由紀夫元首相は普天間は「最低でも県外」との公約をほごにし、菅直人前首相は「沖縄だけ負担軽減が遅れていることは慙愧(ざんき)に堪えない」(施政方針演説)との空疎な言葉だけを残した。
県内移設の断念こそが日米関係の劇的改善につながる。野田首相は、この信念でオバマ大統領と真剣に交渉を仕切り直してほしい。
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