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[30767] 【ネタ 習作 元ネタ多数】 転生狂騒曲
Name: 柘榴◆f3f758c4 ID:dcd4540f
Date: 2011/12/09 20:26
 何となく思いついたネタで書いてみた代物です。
 
 久しぶりに書いてみたものなので、拙い部分多々あるかと思います。
  
 それでもいいという方は↓へ
 












 戦場に響きわたる歌

 というと、ある意味物凄く場違いで、物凄くかっこいい代物なのだが

「……うん、前哨戦は互角、といったところか」

 俺の隣で、まずまずといった顔をして戦場の様子を見つめる男がそう評する。

「たしかに、ヒートアップ具合はとんとんだけどさぁ……」

 そう。お互いの眼前に広がる数を数えるのもあほらしくなりそうな大軍勢―――確か20万は超えてたか、片方だけで―――から伝わる熱気は、こちら側、相手側共に白熱している。

 気、というか、魔力、というか、そういうエネルギーが目に見えるんじゃないかというほど(というか見える、普通は見えない)、一般兵士からも滾滾と沸き上がり、開戦を今か今かと待ちわびているようだ。

「にしたって……これであがるってどうよ?」

「何が問題だ?染み入るような音楽と共に、歌声を聞くだけで力が湧き上がってくるのはお前も感じているだろう?しかも歌っているのは女性で、向こうは男性だ。その点だけで言えば、むしろこちらの勝ちだろう」

 そう。歌は向こうの軍からも聞こえてくる。お互いの歌ってる場所からは相当離れてるはずなのに、何故か聞こえてくるあたりに疑問を浮かべなくなったのは、この世界に慣れた証拠だろうか。

「……あのさ、わかってるだろう、言いたいこと」

「はは、残念ながら、テレパスの能力は持ってないからな。言ってもらわないと分からないな」

 持ってなくても、あんたの脳みそならサトリ並に読めるだろうが!!

「いやいや、そこまでは読めないさ。むしろそれが出来ていたら、もっと楽なんだがな」

 今サラっと読んでるし!!しかも、もっと楽って、若干25才で宰相兼軍統括任されてるあんたがもっと楽になったら……あ、仕事減るか、俺の。

「いや、むしろ増えるな。というか、増やす。血縁コネ使って」

「だから、心を読むなと…」

 認めたくないが、このニヤリ笑いが似合ってる人が今世の兄なのだからなぁ……。いや、これでもマトモなんですよ。向こうと違って。実際尊敬してるし。

「しかし、向こうの歌は懐かしいな。突○ラヴハートか。比較的若い世代も多いだろうに、よく通じるな」

「他にはJA○とかも歌ってるみたいだけどな、てかあの声でJA○ってある意味夢の組み合わせとも言えるわ」

 それに俺とタメ位の奴なら、この曲は知ってるだろうし、通じないことはないだろう。一般兵はそもそもそのへんの区分知らんだろうし。

「問題はこっちのほうだよ」

「いい歌じゃないか。俺は知らないが、人気がある歌だったんだろう?歌い手が転生しているんだから」

「いや、どちらかというと、ちょいマイナー。人気はあったかもしれないけど」

 言って、俺たち軍本部の後方に設置された特別ステージ(兵隊さんが頑張ってくれました)に目を向ける。

 その中心ではピンクの髪を伸ばした女性が、自らの全身全霊を込めるようにしてマイクを手にしながら歌っている……半泣きで。

 全体的にアップテンポで、恋愛要素も組み込まれた歌詞に合せ、時折ポージングとかもばっちり決めている。歌声に鳴き声が混じらない辺りはプロ根性なのだろうか?

「題名は何といったかな?」

「○け!わがままハー○、だったはず……頑張るよな、他にもヘル○ミーエー○ン歌ってたし」

「?今はタイトルをアリスンに変えてるはずだったが」

 あぁ、そうでしたね。てか、変えるなよ、居ないけどさ永○。

「バックバンドも、腕も、性格も、いいんだけどさ……」

 彼女の歌声を彩る音の源は、左手に大の大人程もあるバイオリン、右手にこれまた超特大な黄金のピアノ、更にギターとトランペット、そして何故か和太鼓が後方に設置、しかも引いてる人たちはピアノとバイオリン以外は全員トゲトゲしい鎧に身を包んでいる。

「何度見てもカオスだ……」

 しかも、あれ全員中身は男だし(精神的には)

『何でこっちなんだろうな、朱○の方なら納得できたけどさ…。私、中身は40超えてるんだぜ?ないわ、本当に…しかも体のせいか、脳のスペック落ちてるし。最近、男に告られるのにも抵抗感無くなってむしろいいかなぁーとか思い始めてるし…』

 近衛騎士の若手有望株に絶賛アタックを受けている我が国の歌姫の談である。

「…ん?」

 不意にクイクイと引っ張られる腕。

「どした?アリス」

「他の女……見たら駄目」

 ……なんでしょう、この可愛い生き物。

 金髪碧眼でやや野暮ったいゆったりとした服装の美少女が、こちらを上目遣いで睨んでくる。

「リョウが見ていいのは、私だけ」

 そう言って、俺の腕をぎゅむっとその胸に抱きしめるアリス。

 これで場所が戦場じゃなきゃ、思い切りかいぐりしてますよ、ええ。

「ふふ、相変わらずアリスはリョウ君にべったりだね」

「あ、ども、お義兄さん」

「来たか、フェニクス、クリス。状況は?」

「問題ない、兵の士気も良好。舞台の配置も徹底してある」

「何度も言っているが、奴らが出てきた場合は、即座に一般兵、将校共に下がらせろ」

「分かっている、あいつらの化け物っぷりは身にしみている」

 もっとも、うちの奴らも大概だがな。そう言って、兄と似たようなニヤリ笑いを浮かべる緑髪金眼の女性。

「…リョウ?」

 はいはい、分かってますから。てか、義理の姉なんだから許してよアリス。君にとってもそうなるんだし。

「あーあ、ルーシェもリョウ君も羨ましいな、恋人がいてさ。僕はいつになったら出来るんだろ?」

「お前は、むしろ姫君といい加減くっつけ」

「ナナ姫?なんで?」

「……気づいてないのか、この馬鹿は」

「無駄だ、ルーシェ。こいつはそういう能力を全て運動に割り振ってるんだからな」

「こいつが脳筋なのはよく分かってる」

「なんかよく分からないけど、二人とも僕を馬鹿にしてない!?」

 兄と義姉さんからの評価に、意味も分からずツッコむ義兄さん。

 本当に、ここが戦場だって忘れそうな空気ですよ。

『『で、我等はいつになったら破壊(滅び)を奴らに与えられるのだ?』』

 はいはい、分かったから落ち着いてジャバ。

「バンダー…めっ」

『『ムゥ……』』

 こいつらも、随分と仲良くなったよなぁ、出会った当初は、めちゃくちゃ殺し合いモードだったのに。

「…さて、無駄話のここまでにしよう」

 それまでの何処かのんびりとした空気が、兄の一言で断ち切られる。

「ユミナ、俺の声を飛ばせるか?」

『え?あ、うん、いけるけど、ちょっと待って…OK、皆とも同調したよ』

 兄の声に、歌姫がその歌声を止め、同時にバックバンドのメンバーも兄の声を届けるために準備を即座に終える。

『諸君!まずはこの場に集ってくれたことに再度の感謝を述べる!!』

 兄の声が戦場に響く。

『敵は強大かつ凶悪だ、おそらく何人もの死傷者が出るだろう、そしてその罪は私が背負うべきものなのも十二分に理解している』

 兄の声に隠しきれない悲痛さが混じる。実際、この大戦は起きなくてもよかった。相手に係合すれば済む話だったのだ、他国と同じように。

 けど…

『だが!それでも私は奴らに異を唱えたかった!!静かに暮らす者たちを惰弱と、平和を惰性だと言いながら、自らは傷つこうとしない奴らに!!』
『家族と笑い、友と語り、恋人と愛し合う。そんな平凡を求めて何が悪い!!力があろうと、なかろうと、静かに暮らすことを望んで何が悪い!!』
『私は何度でも言おう!殺そうとするものは、殺される覚悟も持つべきだと!!奪うものは、奪われる覚悟も持つべきだと!!』
『この戦は、それを奴らに叩きつけるためだけのもの、そう、だけのものだ。今この話を聞いたもので戦を止めたいものはすぐに剣を置き、自らの帰るべき場所に帰って欲しい。この戦の責は全て私が受けるよう、国とも話がついている。諸君らには一切被害は及ばないようにする』

 そこで、一旦話が途切れる。兵士たちの反応を待っているのだろう。

「……宰相閣下!」

『どうした。マッコイール軍曹?』

「!?俺の、名前…」

『この軍に入ってくれた者たちの名は全て覚えている。無論ただの自己満足だが』

「…閣下!!閣下なら分かってるでしょう!!奴らが呑み込んできた国がどうなったか!!兵士は皆殺し、女達は皆そんな奴らに何故か心奪われ、堕落する!!戦わなかった男だってそうだ!俺は、俺はそんなのは嫌だ!!俺の嫁や、ダチがそんな風になるなんて地獄からでも見たくない!!」

「俺だってそうだ!!俺の嫁はこの間ガキが出来たばっかりなんだ!!それがあいつらに奪われたらなんて思ったら、とてもじゃねえけど、黙ってみてられねえ!!」

「閣下!」
「閣下!!」
「「「「「閣下!!!」」」」」

 兵士たちの怒号が響く。皆分かってるんだ。今が、自分たちの尊厳を賭ける時だってことを。

『……感謝する、君たちに、出会えたことに。共に歩んでくれることに。共に、グッ、どもに……』

「……ルーシェ」

 思わず涙が出てくる兄の肩にそっと手を置くクリス義姉さん。

『ありがどう……ぼんどうに、ありがどう……グスッ、ヒグ……』

 しばらく兄の嗚咽が響く。その姿を誰も笑おうとしない。だって、兄はそういう人だから。頭もいいのに、平気で策略とか考えられるのに、根っこはどうしようもなく善人で、周りが笑ってることを物凄く幸せに感じる人だから。

『…見苦しい所を見せた……改めて、皆にお願いする!どうか、共に戦って欲しい!そして、奴らから勝ち取ろう!!静かな、穏やかな暮らし、その尊い日々を!!』

 兵士たちから届く腹から出てくる絶叫。共に振り上げられる剣。

「……リョウ」

「うん、分かってる」

 どれだけ想いがあっても、皆は普段は日々に追われる人たち。戦場で戦う力なんて微々たるものだ。

「だから、俺たちが頑張らないとね」

「うん。私たちが頑張る」

 ぎゅっとアリスの手を握る。柔らかくて、ふにふにした手。出来るなら、この手を赤く染めたくないけど、今だけは、この子にも力を借りなくちゃいけない。

「行くよ、ジャバ」
「お願いね、バンダー」

『『力が欲しいか?』』

 互いの体の中から聞こえてくる問いかけ。もう何度目になるか分からないそれに。

「「欲しい、ありったけの、皆を守れる力が!それを阻むものを破壊する(滅ぼす)力が!!」

『『欲しければ……くれてやる!!!』』

 体から力が溢れる。それは俺たちの体を駆け巡り、体そのものを人からそれ以外のものへと進化させていく。

 それを感じながら、本陣から前線へと駆け抜けていく。

 途中、何人もの兵士や仲間とすれ違う。その眼に宿るのは恐怖ではなく、信頼。

「リョウさま!!」

「アリスさま!!」

 皆、皆こんな自分たちを信じてくれてる。受け入れてくれてる。それだけで、心が熱くなる。想いが力に変わる。

 俺たちが前線に到着すると同時に、敵陣の前線も様変わりする。正面に立つのは赤い外套を纏った白髪の男性と、金色の鎧を纏った青年

「ふん、化け物風情か……まぁいい、貴様も絶望を抱いて溺死しろ」

「王の眼前である、疾く平伏せ獣」

 いきなり、この二人かよ……

 でも、負けられない。負けるわけにはいかない。

 あんな濁った眼をしてる奴らなんかに!!

『吠えたな、貴様ら。よかろう、我が名の意味をその身に刻んでやろう』

『我が母を害するものは、全て滅びてもらう』

『我が名はジャバウォック!!破壊の化身なり!!』

『我が名はバンダースナッチ!!滅びの神獣なり!!』

『ルーシェ=グランバが皆に願う!共に生き抜くことを!!』

 兄の言葉と共に、2体の異形と化した俺とアリスが駆ける。

 こうして、後に世界最大と称される大戦の幕が切って落とされた。









 これは、転生者同士とその仲間、そしてそれを楽しそうに見つめる神と、その使いたちの混沌とした物語である。



[30767] 転生狂騒曲 第2話 昨夜はお楽しみでしたか?
Name: 柘榴◆f3f758c4 ID:fef1d7d0
Date: 2011/12/09 20:28
とりあえず第2話投稿。説明会です。
目標は駆け足でもいいから完結させることで行きます。
その為ちと詰め込む形になりますが、ご容赦を。
では、それでもいいという方は↓へ






 転生狂騒曲 第2話
 昨夜はお楽しみでしたか?



 目が覚めたら、天蓋付きベットだった。

 え、なにこれ?どゆこと?

 俺の部屋こんな立派なモノないよ?築何年経ってるか分からないボロアパートだよ?おまけに布団だよ、日当たり微妙に悪くて中々干せないからペッタンコだよ?

 頭が混乱して状況に追いつけない。一体何がどうしてこうなってるの?

 コンコン

 「ひゃい!?」

 思いっきり裏返った声で、ノック音に答える。そこで改めて自分の今いる部屋に目が行く。

 どうみても、中世のお貴族様って感じの部屋です。いや、あくまで小説とかのイメージやテレビで見たそれっぽいセットに近いって意味だけど。

 「リョウ、入るぞ」

 言うが早いか、一人の少年が入ってくる。年は10歳位だろうか?ぴしっとした黒を基調にした服装をばっちり着こなしている。しかも美形。なにこれ?

 「リョウ?……おい、リョウ?」

 「は、はひ?」

 やば、また声裏返った。てか、リョウって俺の事?

 って、何を悩む必要が、俺の名前だろうに。もうかれこれ6年間この名前で呼ばれ…あれ?ちょっと待て、6年ってなんだよ。俺もっと年喰ってるだろうが。あれ?でも、この名前は俺の名前で……あれ?

 「……やっぱりな、まぁ、そうだと思った。座るぞ」

 俺の困惑を当然とするかのように、少年は慣れた手つきで俺のベットの横に椅子を引っ張って来て座る。あ、椅子もやっぱり立派な代物だ。素人目にもそれが分かるって凄いな。

 「さて……まずは確認だ。リョウ=グランバ。この名前に覚えは?」

 「え?え?」

 「聞いた覚え、あるいは記憶でいい。それはあるか?」

 え、え~っと……

 「ある、ような……と、いうか、うん、ある。呼ばれた、何度も。その名前で。うん、父様も母様もその名前で……父様?」

 「そこまででいい。まずはその名前が今のお前の名前だ。それを理解して欲しい。順に話す」

 また思考に陥ろうとする俺に待ったを掛ける少年。というか、この子何?マジで?

 「一個一個確認する。今から聞くことに聞き覚えがあるかどうか。まず、日本。聞いたことは?」

 「…ある、俺の国だし」

 「漫画、アニメ、ゲーム。この単語は?」

 「大好き」

 「目が覚める前、寝る前だな、何をしていた?」

 「えっと……久しぶりに休みできたから、ついつい○RMS全話一気読みして、寝落ち?」

 「ふむ……はっきり覚えているほど、か。だとすると、それが宿ってるな。しかも全話か……ある意味納得できるが」

 一人納得されても困るんだが。いい加減説明して欲しい。

 「あの~ルーシェ兄様、いい加減説明を……って、誰?」

 今さらっと名前出たけど、ルーシェってこの子の名前?え?兄様?

 「安心しろ、きちんと説明する」

 言いながら、俺の頭を撫でる少年。ここでふと気づく。あれ?俺、この子より目線低い?

 「俺はルーシェ=グランバ。このグランバ家の長男で、一応お前の兄でもある。そして、転生者としても7年ほど先輩だ」

 は?転生?転生ときましたか?

 「あぁ、転生者だ。元の名前は俺も思い出せない。ただ、お前と同じように漫画やアニメが好きなオタクだったのは覚えている。お前もそうだろう?」

 いや、確かにオタクですけど。周りにバレにくいよう隠してましたけど。

 「そしてお前はこの世界のグランバ家の次男、リョウ=グランバとして転生した。年は今日で6才。その間の記憶もきちんとあると思う。今は記憶がごちゃごちゃになって混乱してると思うが」

 あ~……う~……うん、何だろう。確かにあるわ、こう、記憶の中でめっさ美人なお母さんに駄々甘えしてる自分が。同時に日々の仕事に追われてヒィヒィ言ってる自分も。

 「理解できたか?」

 「あ~、うん。大丈夫。理解した、と思いたい。あんたが兄様だってのも言ってる記憶もある。うん、結構可愛がられてたみたいだね」

 何だろう、子供の頃をDVDに撮って見たような気分?そんな感じ?

 「理解が早くて助かる、こちらとしても来た甲斐があった」

 何なんでしょうね、この自分より年下に見える少年に上から目線で見られるのって。あ、でも兄だし、転生でも先輩って言ってたから、向こうのが年上?よく分からん。

 「何か聞きたいことは?」

 「えっと…転生って言ってましたし、貴方もそうだって言ってましたけど、どういうことですか?」

 「それは能力か?それとも経緯か?」

 「出来れば両方を」

 ふむ……と顎に手を当てるルーシェ、何だろう、その様が結構似合ってる。てか、この顔どっかで見た気が……

 「能力は……あまり口外しないでくれるか?」

 「はぁ、まぁ」

 「俺の能力はルルーシュのスペック、及びギアスを有している。時期的には最終回直前、ただし制御は完璧に出来る」

 ふ~ん、ルルか、ルルね、ルル………

 「ルルーシュぅ!!!?」

 「知っていたか、もしかしたら知らない世代が来るかと思っていたから、分かってもらえて助かる」

 ちょ、今さらっと言ったけど、ルルーシュって○アスの主人公の!?

 「めっさチートやん!!しかもギアス制御可能!!?どんだけ廃スペックだよ!!」

 「代わりに運動は泣けるほど出来ないがな、転生前より動けなくて、少し大変だが」

「それを補って余りあるだろうギアスは!!?……はっ!?」

 「今のうちに言っておくがお前へのギアスはもう掛けてある。内容は『俺が道を踏み外したと思ったら、即座に殺せ』だ」

 さらっと暴露したぁ!!!しかも殺せって……殺せ?

 「え?奴隷じゃなく?」

 「あぁ、ちなみに俺自身には『相手を奴隷にする、などのギアスは絶対に掛けるな』と鏡を見ながら掛けておいた」

 信じるかはお前次第だがな、と笑って言うルーシェ。

 ……ごめん、脳みそがついていけない。なんで?なんでそんな縛りを自分に?それって折角のギアス無駄にしてない?いや、でも、信じるかは俺次第って……

 「……頭がパンクしそうなんですが。貴方の行動が何一つ理解できない」

 「その辺も含めて、説明してくれる人物が来てくれてる」

 まだいるの!?

 俺のライフはとっくに0ですよ!!?

 「入ってくれ」

 『え~っと、お邪魔しまーす』

 ルーシェの声と共に、不意に人の気配が増える。頭上に。……頭上?

 『えっと、はじめまして。私神の使いAと申します。あ、Aというのは便宜上のもので名前は特にないので、適当に呼んでください』

 「……誰?」

 「本人も言っている通り、神の使いだ」

 『です』

 ゆっくりと俺と同じ視点まで降りてくる背中に羽を生やした美形な男?女?どっち?

 「……ごめん、ちょっとだけ、頭休ませて」

 もう、何が何やら分からない。多分読者も分からないと思う。

 読者って誰?と思いながら、俺は考えるのを止めた。

















 「……済まない、駆け足過ぎた」

 「あー、いや、いいです。俺もびっくりしただけなんで」

 再度眼を開けると、いつの間にかお茶セットと、サンドイッチ?(だと思う)がベット脇に準備され、俺から取りやすい位置に置かれていた。

 「とりあえず食べながら話をしよう。栄養が足りないと、頭も働かないだろう」

 「お気遣い感謝します。……えっと、Aさん?」

 『はい、なんでしょう?』

 「Aさんって食べれます?」

 『必要はないですが食べられますよ。神とも食べていますので』

 神様食べるんだ~、なんか急に親近感湧いてきたな。

 「えっと……いただきます」

 「『いただきます』」

 3人揃って両手を合せる。何だろう、見た目西洋人っぽいのに日本式の食事の挨拶って何か不思議。

 『あ、この挨拶は竜族もしてるのでこの世界では普通ですよ。むしろ、これじゃない挨拶の方がこの世界では珍しいですから』

 あぁ、言われてみれば、この体でも何度もこの挨拶やった記憶が。

 「で、え~っと、Aさん。説明してくださるそうですが……」

 モグモグとサンドイッチを食べつつ聞いてみる。これって神(の使い)に対して不敬なんだろうか?

 『はい。では、僭越ながら……最初にお詫びを。こちらの世界に貴方を呼んだのは私です。正確には私たち一派、と言えばいいでしょうか』

 いきなり頭を下げられた。滅茶苦茶申し訳ないって顔で。

 「……はぁ、そうですか」

 『……あの、怒ってないんですか?』

 「いや、怒る要因がちょっと足りないというか……何で呼ばれたんだろうと。言っておきますけど、俺、何も能力ないですよ」

 『それは大丈夫です。というか、それも謝らなきゃいけないことなんですけど、貴方は常人を超えた力を今は持ってます。具体的には……』

 『我だ』

 突然体の中から響く声。

 『これでようやく我の力も開放できるか。この6年長かったぞ。さぁ、宿主よ、力が欲しいか?』

 待て、ちょっと待て。

 「とりあえず、話の腰折るな。今はAさんの話が先」

 『な、貴様、我を誰だと…』

 「知らない。いや、もしかしたらって検討はつくけど、ちょっとだけ黙ってて。後でゆっくり話そう。折角の初会話が中途半端な気分でやるっていうのは俺も嫌だから」

 『ムゥ……』

 「ね?多分俺の中からってことは俺に一生付いてまわる奴なんだろうし、じっくりと話したいんだよ、分かってほしい。一生ものの相棒になるんだろうからさ」

 『相棒……相棒、か。ふむ、いいだろう。暫し待ってやる。早くくだらん話を済ませろ』

 納得したのか、中の気配(こういうのが分かる辺り、もう常識外チックだな~)がちょっと薄れる。ただ、まだかな~、まだかな~って気配もするので、早めに話をしないと。

 「すみません、独り言ぶつぶつ言っちゃって。続きどうぞ」

 『……順応早いですね、いや、そういう人選んだんですけど』

 「まぁ、テンプレの転生ものは何度も読んだので。で、えっと……この力をくれたのも貴方がたって話でしたっけ?」

 『あ、はい。そうです。重ね重ね申し訳ありません、そんな力まで与えて急にこちらに連れてきてしまい……』

 「前から思ってるが、そうペコペコされてもこっちが困る。何故呼んだか、何をしてほしいのか、早々に話すのが先だろう」

 うん、ずばっと言ってくれてありがとうルーシェ。

 『あ、そ、そうですね……えっと呼んだのはずばり、貴方に主人公になって欲しいんです』

 主人公、と来ましたか。

 『より正確に言うと、主人公のような行動をとって欲しいというか、何というか……』

 困ったように兄を見るAさん。上手く言えないんだろうか?

 「……ふぅ。そうだな。リョウ……あぁ、この名前で統一するぞ。元の名前は思い出せないだろうし」

 あ、それはご自由に。その通りなので。

 「リョウはアリ○ソフ○のゲームはやったことは?」

 「戦○ラ○スなら一応。派生で鬼○王もちょっとだけ」

 「ルドラサウムって知ってるか?」

 ……うん、理解した。

 「あれが神なの?」

 「正確にはちょっと違う。そうだな……能力はそれより上、性格は仮面○イダーとシンデ○ラが大好き、と言ったところか」

 合ってるか?と目線を送るルーシェに頷くAさん。

 『そんな感じです。基本的に神は格好いい、あるいは素敵な物語が大好きなんです』

 ……どゆこと?

 「つまり、ハッピーエンドが基本好きなんだ。ただあくまで基本、だがな」

 『はい、だから大々的な争いをワクワクしながら見たりもしますし、結ばれぬ恋なんかも好まれます。そちらは、最後に周囲に認められてハッピーエンドになるようにちょっと手を貸したりしますが』

 手を貸すんだ、神様。

 『貸すのは私たちですけどね。それに条件もありますし』

 「条件?」

 『その人たちが格好いい生き方をしているかどうか、です』

 「要はドラマチックかどうかって所だ。グダグダの昼ドラ展開には基本手は出さない。真剣に愛し合う二人、とかなら神の使いがほんの少し後押しをする。言ってみれば、舞台効果だ」

 『はい。そうして出来ていった物語を私たちが記録し、それを神に献上する。それが私たちの仕事です、基本的に』

 「……なんか俺たちって神の暇つぶしの道具に思えるんだけど」

 「基本はそうだな、否定はしない。ただ、神が作ったルールに『悪いことは基本成功しない』というのがある。そのせいで、根本的な悪人というのは少ないのが現状だ。そう考えると悪い世界ではない。自由意思も尊重されてるしな。悪い奴でも、突き詰めて生きれば神に認められるケースもある」

 ……う~ん、分かったような、分からんような。

 「まぁ、自分らしく全力で生きろ、が基本ルールと思えばいい。それが日々を平凡に過ごす、でもそれが俺の生き方だ!と真剣に思えば許される世界だ」

 「……ん、とりあえず納得しておく。で、最初に戻るんだけど……」

 「今も言ったが、神は人がつくる物語が好きだ。ただな、それがどうもマンネリらしい」

 『ぶっちゃけますね……まぁ、そうなんですけど』

 疲れた顔で肯定するAさん。

 『この世界の住人、まぁ種族も人種ももの凄くいるんですけど、先ほどの悪いこと云々のせいかなんなのか、あまり派手な物語が生まれにくいんです』

 「そもそもの傾向があまり派手なタイプじゃないからな。自然と物語になりそうな題材も少なくなってくる」

 あ、ちょっと読めた。

 「だから、俺たちなんだ。物語をそれこそ山ほど読んで、どういうのが面白いか知ってる」

 『です。どうも、神の思考パターンは私たちやこの世界の住人より、貴方がたの方が近いらしく……』

 「が、そこで問題も起きた」

 何か展開早いな、頑張れ俺。ついて行け。

 『本当は他所の世界の住人は基本持ってきちゃ駄目なんですけどね、そこで一足先に動こうとした一派がいたんですよ』

 「そいつらはとにかく派手に暴れ回ればいいだろ、みたいな感覚で特に考えなく、デカイ力を持たせて、この世界に転生させようとしたらしい」

 『彼らも同じ神の使いなんですけどねぇ……神への忠誠は一緒なんですけど、方向性が……』

 「つまり?」

 「俗に最低系と言われるような性格の奴を送り込もうとした」

 ……………あ~、それは……

 『はい、気持ちは分かります。私たちもこの世界の人たちに申し訳なく思ってますし』

 「まぁ、そいつはその時点では呼ばれず、別なごく一般的な、まぁオタクではあるが、そういうやつが先にこいつらから呼び出されることになった」

 『あの時は本当に申し訳ないと思いましたよ……今はある意味神の一手だったともおもいますけど』

 呼んだんだ、結局!!しかもこっちが先に!!

 『ちなみにその方は今も竜族の始祖として生きてます。ある意味、この世界最古の存在の一人ですね』

 はぁ!?え!?何それ!!?どういうこと!!!?

 「『別の世界の存在を呼んだらどうなるか、不確定すぎるからとりあえず人間の歴史がまだ浅い内に呼んで、経過を見てみましょう、それで危険だったら、以後は止めにしましょう』……だったか?」

 『はい……あの時は大変でした。もう、歴史がまるっと変わる状況になりましたし、辻褄あわせで、不眠不休で仕事しましたから』

 「ごめん、自業自得じゃない、それ?」

 『そうなんですけどね~、あははは……まぁ、そうして呼ばれた人は、こちらに対してひどく協力的だったのが幸いして、それは上手くいったんです。いや、むしろ悪いの?』

 「竜と人との大恋愛、だったそうだからな。未だに女の子の寝物語に語られてるぞ」

 ……そいつは、また…

 『で、当然神様のウケもよかったものですから、そこからはもう、転生のオンパレードで……』

 「おまけに向こうが『同じような物語はつまらないだろう』とか言い出して、原則同じ作品は2度と転生として使えないとか縛りが出来たんだったか?」

 『はい……神もそれを無邪気に了承して、その途端に、向こうは俗に最強系と言えるような能力持ちをどかどか転生させはじめて……』

 「逆にこちらはその隙間を縫うような作品からしか呼び出せない。今はそういう状況だ」

 「……え~っと……ちょっと頭整理するね……」

 つまり、現状は転生者多数、ただし向こう一派から呼ばれるのは能力は最強、但し性格は最低系、こちらはというと比較的まともと判断された人間、ただ能力はいわゆるちょいマイナー路線からの能力……

 「で、もしかしてだけど、この状況で物語ってことは……」

 『……頑張って向こうの転生者に勝ってください』

 「無理ゲーだろ!!ちなみにどんな奴いるの?」

 『えっと、最近だと幻想殺し、無限の剣製、王の財宝、闇の魔法、魔力SSSな機動六課な人、ガンダールブ、真理を見た錬金術師、卍解できる死神、ストフリ、あ、永遠神剣とかっていうのもありました』

 「果てしなく無理ゲーだ!!!何それ詰み!?詰み以外の何ものでもない!!!」

 『あ、でも、こちらもどうにか上手いこと隙を付いていいキャラ能力取れたりもしたんですよ!貴方やお兄さんの能力とか』

 「……頼んでないけどね。ちなみに、物語に参加しないっていうのはあり?」

 「おそらく無理だ。『強い力は、必然的に大きな流れに巻き込まれる』そういうルールもあるらしい。実際、力を持ったが使いたくないと各地を点々と逃げた奴が結果的に一国で済む物語を世界レベルまで押し上げたことがある」

 『この世界では金竜大戦と呼ばれてます』

 「……あはは、そうなんだ……」

 ……いっそ夢であってほしいよ、いや、夢だと思ってたから最初は冷静に聞けてたけどさ。どうも現実っぽいし、しかも逃げ場無しの無理ゲー。

 「……とりあえず考えさせて、現状いっぱいいっぱい」

 「…そうだな、少し席を外す。両親には俺から上手く伝えておくから、ゆっくりしているといい」

 『あの、こんな事言えた義理じゃないですけど…』

「A. 今は何も言うな」

 『あ、はい……では、また、今度』

 Aの気配がどこかへ消え、ルーシェも部屋から外へと出る。

 それを確認して、俺はベットに大の字に寝転がる。

 『話は済んだか?』

 あ~、そう言えば、お前忘れてた。ごめんね。

 『貴様……!!』

 ごめん……ちょっと頭いっぱいだからさ。うん、ごめん。

 『……くっ、仕方あるまい。今だけは許そう』

 ありがとう、お前優しいね。俺の予想してる奴だともっと怖い奴なんだけど。

 『我は汝、汝は我だ。そう、貴様が想い、望むからこそ、我はそう在る』

 ……はは、本当にいい奴だな、お前。

 うん、俺もさ、お前のこと、好きなんだよね。流石に一気読みしたからさ、お前への愛着すっごくあるんだわ。

 『貴様の知る我と、今の我は違う』

 そだね、一緒じゃないね。……じゃあ改めて自己紹介、軽くしようか。

 「俺の名前はリョウ。リョウ=グランバ。お前は?」

 『我が名はジャバウォック、破壊の化身なり!』

 予想通りの返答に、思わず原作のあのシーンが思い浮かぶ。

 「…誓いを立てようか。俺は何時だってお前と共にある」

 『誓おう。我が力は汝、リョウと共に』

 心の中で、何度も見たあの姿で、破壊の魔獣が片膝を付く。俺みたいな平凡な奴のために。

 「ありがとう、ジャバウォック。」

 感謝を声に出す。

 もう、頭の中はいっぱいで、この先どうすればいいかなんて分からなくて。

 「……でも、お前が居てくれるんだよな」

 それはとても心強いこと。力もそうだけど、一緒に歩いてくれる人がいるってこと。

 「…とりあえず、もう一度寝る。ごめん、大して話せなくて。何かあったら起こして」

 『いいだろう、汝に害なすものは全て破壊してやろう』

 「破壊は…止めて……」

 最後にそれだけ言い残し、起きたばかりの意識を再度俺は手放した。











 



あとがき
気が付けば地の文がほとんど無い……ちと詰め込みすぎたかも。
とりあえず、もう2、3話は過去話で行こうと思います。
第1話の大戦争は途中途中で経過を混ぜ込む予定。



[30767] 転生狂騒曲 第3話 ちょっとの日常 たくさんの異常
Name: 柘榴◆f3f758c4 ID:fef1d7d0
Date: 2011/12/09 20:31
 感想が意外と好意的でびっくりしてます。
 前回も言いましたが、目標は完結です。その為、序盤はかなり走ります。ラディカルでグッドなスピード並に(笑)
 だが、それがいいという方は↓へ




 




 転生狂騒曲 第3話
 ちょっとの日常 たくさんの異常

 「ふぁ……ん~……いま、何時……?」

 『汝が眠りに付いて、3時間程だ』

 何時と汝が掛けてあるんですねって、違うから。

 「あ、やっぱ、夢じゃないんだ……」

 転生、能力の憑依、神様とその使い、兄、そしてジャバウォック……

 「なんていうか、テンプレだけど、展開早いよなぁ……微妙に順応してるし」

 これもこの世界に転生した際に埋め込まれたのかな。ありえそう、物語の役者が役に疑問持たないようにってことで。

 『起きるのか?』

 「ん。流石にいつまでも寝てられないし」

 言って、ベットからひょいっと起き上がる。

 妙に体が軽い。確か6才って言ってたけど、こんなもんなのかな、この世界って。

 『あぁ、言っておくが今は我が全身に展開している』

 「ちょ!?」

 そりゃ軽いさ、あんたが全身展開って、常人殺せますよ。

 『主目的は修復だ、いつ何が起きるか分からんからな』

 お前ってこんな性格だっけ?滅茶苦茶甘いな、おい。

 『汝がそう望むからだ』

 ……あぁ、そうなんだ。つまりこの子、俺の考えにどんどん合わせていってるのか。破壊衝動は少なく、自己を守ることを主軸に、性格もそれに合わせる。

 「何か、本当にごめんな……破壊が本来のお前の本質だろうに」

 『それは変わらん。ただ、汝が我を信頼する限り、我はそれを裏切らない我で在り続ける』

 本編じゃそんなこと最終話辺りじゃなきゃ言わなかったろうに。あ、もしかして、最終話付近がベース?

 「ま、その辺はおいおい考えるか」

 とりあえず、今は着替えよう。

 えっと…あ、あった。

 姿見と、その脇にクローゼットらしきものを発見。

 ………少年脱衣中……少年着衣中………

 「……こんなもんかな」

 白いシャツに、黒のズボン。上着は……あんまり寒くないから、いいや。というか、どれがいいか分からん。

 で、出来上がった姿は、黒髪黒目、ややくせっ毛の少年でした。ただし全身にうっすらとなんか紋様みたいのが出てます。

「ジャバ~、もうちょい抑え目可能?」

 『む……少し待て、我も初の展開だ、慣らしの意味も含めてもう少し展開に馴染ませろ…ジャバとは我か?』

 「うい、愛称。ジャバウォックはちと長い。ジャバの方が可愛いし」

 『可愛い……理解しがたいな、我は破壊の魔獣だぞ?』

 「オタなめんな、お前の性格なら力があっても、むしろ忠犬キャラっぽくて可愛いと俺は判断する。あ、もちろん、格好いいとも思ってるぞ、物語中盤のあの誓いのシーンは俺的に超リスペクトだ」

 『……所々意味がわからんが……信頼の形と受け取っておく。済まないが、一度右手を全展開してもらえるか?反応が見たい』

 「はいはい。こりゃ着替える前の方がよかったかな」

 言いつつ、右腕をまくり上げる。

 「えっと、どうすればいい?やり方が分からん」

 『我を出すと思え、それでいい』

 「了解っと。……うぉっ!!?」

 突然右腕が何杯にも膨れ上がり、硬質なものになる。指はむしろ爪のようになり、腕の甲には砲門らしきものまである。

 「すっげ~……生で見ると圧巻だな。砲門付きってことは第2形態なのか?」

 砲弾はどっち式だろ?圧縮空気?電磁銃?

 『うむ、違和感もない。もういいぞ』

 はいはい、戻れ戻れ~って、戻るのも早いな。

 『全身展開ももう慣れた、これなら周囲に察知されず展開も可能だ』

 そう言われて姿見を見ると、確かにさっきまであった紋様みたいなのは消えている。

 「俺が言うのもなんだけど、随分早く慣れたな」

 『そうだな、こういうのも不思議な話だが、まるで汝の体が我が体のように感じる。完全展開も容易だろう』

 「あ、それは間違いだぞ、ジャバ」

 『?』

 キョトン、とした想いが向こうから伝わる。やば、マジで可愛いかもこいつ。

 「ように、じゃなく、そうなの。俺の体はお前の体で、お前の体は俺の体。お前への負担の方が大きいけど、そこは勘弁して欲しい」

 『……汝は……いや、いい』

 「何故黙るかな、まぁいいけど。とりあえず、行くか。ルーシェも心配してるだろうし」

 まくった腕を戻しつつ、部屋から出る俺でした。あ、寝巻き置きっぱだ、ま、いいか、後で片付けよう。










 「さて……ここはどこだろう?」

 とりあえず出てみたはいいが、ここが何処だかさっぱり分からん。

 いや、分からないはずはない、はず。この体で6年生きてるわけなんだし、記憶を引っ張り出せば……

 「リョウ様、どうなさいましたか?」

 「うひょぉお!?」

 びっくりした、誰!?

 「リョウ様?」

 え、え~っと……

 声の方に振り返ると燕尾服をきちんと着こなした、妙齢の男性がそちらにいらっしゃいました。

 「え、えっと……誰だっけ?」

 言ってから、ミスったと思った。おかしいだろ、明らかに知り合いっぽいだろ。

 「ルーシェ様から聞き及んでおります。今日は体調が優れないとか」

 こっちのそんな考えもどこ吹く風と、柔和な笑みを浮かべる男性。

 「ご無理はなされず、お部屋でお休みになっては。お食事もお運びしますよ」

 「や、一回は父様たちに顔を見せたほうがいい、かな~って……」

 「左様ですか。では、私がお付きいたしましょう」

 そう言って、こちらの手を取り先導してくれる。

 「あ、ありがとうございます……」

 「……」

 「な、何か?」

 何かこっちを珍しそうに見てるんですけど、またやっちまった俺!?

 「いえいえ、リョウ様が私に素直に甘える事など普段ないものですから。俗に言う手の掛からない子というものでしょうか。ですから、こうして手を引くのも初めてですし、お礼を言われるのも久方ぶりです」

 どんな子だったんだよ、俺!!?……思い出そう、早々に思い出して、違和感無くそう。

 「それに私はリョウ様に嫌われていると思っていましたから。いや、こう言ってはなんですが体調が優れなくてこうなるのでしたら、何度かなってもらいたいものです」

 「イワオが嫌いなんじゃなくて、怖いんだよ。気がつくと後ろにいるし、足音も聞こえないし」

 ……今サラっと出たけど、イワオ?この人イワオっていうの?妙に日本的な……

 「それは御無礼を、以前の仕事柄あまり大きな音を立てないよう心がけていましたので、つい日常でも」

 相変わらず柔和な笑みを浮かべる男性……ってよく見たらこの人、巌じゃん。え、何それ、単なるそっくりさん?

 「……静かなる狼(サイレント・ウルフ)……」

 「どなたかと勘違いされているようですが、私はただの執事ですよ。少々、武術の嗜みもありますが」

 はい確定―――!!!!どう考えても、あの人です!!

 おいこら使いA!この人も転生者か!!?だとしたら、こっちのチームかなり凶悪だぞ!!能力抜き三大最強の一角だぞこの人!!

 『あ、その人は違いますよ、正真正銘こっちの世界の人です』

 素早いレスをありがとう。……てか、随分さらっと返事したな。割と気まずい感じに別れたのに。

 『普通に考えれば、いきなり連れ込んで殺し合いしろ、はひどいと思いますからね……こちらとしては、出来ればこの世界を守る側に立ってくれとお願いするだけですよ。後はそちらの自由意思です。あげた力はお詫びの前倒し程度に軽く考えてください』

 確認するが、向こうは間違いなく暴れるのか?

 『そうなりそうな人狙って連れてきてますからね、十中八九そうなるかと』

 ……でもさ、こっちの世界の人も強いんだろ?このイワオさんとかもいるわけだし。

 『その人はあくまで貴方の付随品みたいなものです。貴方が来て、貴方の能力の概念を持ってきたから、周りにもそういう人を生み出せたっていうレベルです。ぶっちゃけ貴方が来なかったら、その人生まれてません』

 さらっと今ひどいこと言ったな。人をとことん舞台効果みたいに言ってるし。

 『いや、ひどい事を言ってるって自覚はあるんですよ。ただ、こう……お互いの認識のズレというか、何というか……人の思考パターンは頭では分かっても、心では理解できないんです。私たちも結局のところ舞台効果の一つでしかないわけですから。ですけど、この世界がゼロまで壊されるのは嫌だって感覚はありますので、止めて欲しいと思ってるんです』

 何というか、複雑で、面倒な在り方してるんだな……気苦労しそうだな。

 『まぁ、造られたものの宿命とでも思っておきます』

 ちなみにこの会話、脳内で行われております。喋ったら、間違いなく変人のレッテルを貼られるので。

 あ、ついでに2,3確認したい。

 『はいはい』

向こうもこっちみたいに仲間、というか似た人物生まれるのか?

『多少は生まれますけど、こっちより少ないですね。その代わり、向こうは転生者のスペックが半端ないです。無限の剣製、デメリットなし発動、とか』

死ねと言われた気がする。

『後、向こうはこんなに頻繁に連絡、というか対話はしませんね。まぁ、私もしばらくは連絡は控えますけど。裏方が表にほいほい出てきてもつまらない物語になりますし』

…う~ん、現状、こっちの利点は仲間?が多いことと、こんなふうに現状確認が出来る点か。この辺はルーシェとも相談かな。

『何だかんだ言って結構乗り気ですね、助かりますけど』

いや、やりあうかはまた別。とりあえず状況やこの世界のことをもう少し知ってから動くよ。それまではつまらないだろうが、様子見しててくれ。

『いえいえ、そういう思案シーンも意外と神は好まれるので、存分にやってください。では、私は別な仕事もあるのでこの辺で』

「リョウ様?」

おっと、脳内会話に没頭しすぎたかな?

「何?イワオ」

「いえ。あまりお話に夢中になりすぎて転ばないようお気を付けください」

…さらっと、怖いこと言うな~。うん、元のリョウが怖がるのも何となく分かる。この人どこまで知ってるんだろう?




 コンコン

 「失礼いたします、リョウ様をお連れしました」

 「うむ。入れ」

 結構な重低音が扉の向こうから返ってくる。結構デカイ扉だけど、ここ何の部屋だろ?

 「さ、リョウ様」

 促されるまま、部屋に入る。一番最初に目についたのはとにかくでかいテーブル。もしかしなくても、ここ食堂かな。

 で、その端、主賓席とでも言えばいいのか、そこに座ってるバッハ頭な男性と、両脇に黒髪の長髪の女性とルーシェが向かい合うように座ってる。ルーシェの隣には緑の髪の、女の子?

 「?どうした、座るといい」

 「あ、はい、父様」

 自然と男性の声に返す俺。この自然に返せる部分とそうじゃない部分、早く統合しないとな。

 で、えっと、とりあえず、黒髪の女性の横に座る。何かここが定位置っぽいし(ここだけ椅子がちょっと低い)。そうなると、丁度向かいに緑の女の子が来るわけで。

 美人さんだよなぁ~、年的にはルーシェとタメくらい?てか、多分あれだよなぁ。目の色金色だし。

 「体調が優れないと聞いたが、もう平気なのか?」

 「あ、はい。大丈夫です。ちょっと寝たら楽になりました」

 「無理はするな、お前の場合ルーシェ以上に手が掛からなすぎるからな」

 いや、結構甘えた記憶があるんですが。しかし、父様……あぁ、もういい、どこぞのブリタ○ア皇帝な声で、気遣いされると違和感しか湧かない。あの顔で気遣わしげに見られても、どうせいっちゅうんじゃ。

 「それは暗に私が手の掛かる子だということですか、父上?」

 「そうではない……むしろお前の場合、別の気疲れが多くて困るが」

 ルーシェ、あんた一体何をしてるんだ。気になるが今はスルー……「現に、その別の気疲れの要因を連れてきているわけだからな」出来ないのね。

 「ん?それは私のことか、義父上」

 「まだ認めた訳ではないのだが……」

 「しかし、彼女なら私の相手に適任では?カルナバル家と言えば、隣国の伯爵。位的にも十分ですし、年齢も近い。彼の地方は山間のため、我が地方の海産物の交易は向こうも望むものでしょうし、彼女自身非常に聡く、またエルフの血も引いているため、魔力も高い。次代の子も優秀な子が生まれるでしょう。隣国との同盟の強化、交易による利益、血統、どれを見ても公爵家の正妻として、ふさわしいかと」

 「それは普通、売り込む側が並べる利点だ……受け入れる側が並べてどうする」

 ……え?どゆこと?何の話?

 「これで、政略のためだけに結婚などというなら、殴ろうものだが……」

 「無論愛しております。今のところ彼女以外を娶ろうとは考えておりません。いずれは父上や母上のような家庭を築きたいと思っております」

 「……マリア」

 「いいんじゃないかしら?ルーシェが選んだ子ですし」

 「感謝するぞ、義母上」

 にっこりと笑って了承する母。同じく笑みで返す女の子。疲れた顔の父、ニヤリ顔の兄。

 ねぇ、何この混沌。俺転生してまだ数時間よ?展開早すぎない?グラサンのどっかの兄貴なら大喜び?

 「さて……自己紹介がまだだったな」

 言って、こちらを見る少女。

 「私はクリス=カルナバル。ルーシェの妻になる予定のものだ。なんなら今から義姉さまと呼んでもいいぞ?」

 とりあえず、一言。

 父様、こんなのが毎回なら、そりゃ疲れますね、えぇ。

 どうでもいいことを思う俺でした。














 「いや、済まなかったな。あそこまで驚かすつもりはなかったんだが」

 「一応聞いとく。転生の記憶って何才位に思い出すんだ?」

 「俺は6才だったな、だからこそもしかしてと思い、お前の顔を久しぶりに見に来たんだから」

 「そうですか……だったら明らかに狙ってんだろう!!!どこどうしたら、そんな俺的一代イベントある日に婚約許可貰いに彼女連れてくるんだっての!!!」

 「いや、お前が本当に転生者かどうかはその時にならないと分からないだろう?だから、主目的は婚約発表、お前の方はあくまでそうなるかも、といった程度だよ」

 「……それなら、仕方ないか……」

 「まぁ、生まれた時から常人の数十倍の魔力を持って生まれたお前が転生者じゃないとはとても思えなかったがな。おまけにお前が生まれた頃にあのイワオが執事として仕えるようになったから、ほぼ間違いなく転生者と当たりはつけたが」

 「殴っていいか!?殴っていいか!!?今ならジャバ最終形態でも殴れるぞ俺!!!?」

 「いつの間にかそこまで仲良くなったか。いや、話が早くて助かる」

 「こ、こいつ……」

 あっはっはと笑うルーシェに割と殺意が芽生えてきてるんですけど。

 『力が欲しいか?』

 ………………どうしよう、今真剣に悩んだ俺がいる。

 うん、出なくていい。凄くムカツクけど、今はその時じゃない。

 『……チッ』

 舌打ちしな~い、いや、むしろ俺がしたいくらいか?

 ちなみに今は俺の部屋で、ルーシェとまったりお喋り中。外はてんやわんやも収まってようやく静かになりました。

 なんでてんやわんやかって?そりゃあ……

 「公爵次男の誕生日会が突如長男の婚約発表会だからな。それは大騒ぎにもなるさ」

 「分かってるなら、状況カオスにするな!!あんた、本当にこっち枠か疑問に思えるぞ!!?」

 「こっち枠さ、間違いなくな。こちらだからこそ、こういう行動を取る」

 不意に真面目な顔になるルーシェ、だから、この思考の切り替えの早さが怖いんだって……

 「神は物語が大好きだ、それも大騒ぎな。それなら用意してやればいい、ひたすらに可笑しく、滅茶苦茶に出鱈目で、誰もが笑うハッピーエンドを」

 ……確かに。物語が作られる、それが決まっているなら、ある程度こちらで操作は出来る。

 「今回の件も間違いなく神は使いから聞くことになるだろう。きっと目をキラキラさせながら聞くだろうな。そして、一定の満足を得て、こちらに対して、少しばかりの手助けを用意するだろう。向こうにとってもいい演者は、長くいてほしいだろうからな」

 「いやらしいな、その考え」

 「そうか?ちなみに俺はこの世界が割と気に入っている。俺自身騒がしい物語は好きだし、それを自分で作れるなら尚いい。しかも、その出来が良ければ、観客はしっかりと俺に報酬をくれる。ギブアンドテイク、最高じゃないか」

 そういうルーシェは確かに楽しそうだ。だとすると、余計に疑問なのが例のギアス。

 「だったら、何で自分にあんな変なギアス掛けたんだ?変な制約掛けなければもっと好き放題物語を作れるだろう?」

 「人形劇は趣味じゃない……いや、違うな……」
「単純に俺は楽しいのが好きなんだ。人が怒ったり困ったりしながら、最後には笑ってる。そういうハッピーエンドが俺も好きだ。そのためにあれこれ考えて、ちょこまか動くのが楽しい。思い通りにいかないのを多少のアドリブで切り抜ける、納得できないのを頭フル回転させてどうにかする。そういうのは、相手も生きてなきゃ、考えてなきゃ出来ないだろう?」
「俺にギアスを掛けたのはそんな理由さ。とどのつまり、人を好き勝手に操る奴は俺は嫌いで、そんな奴になりたくないから、そうしたんだ。俺がいつ力に酔って、そんな最低人間になるか分からないからな。そうなるくらいなら、殺されてもいいとも思う」

矛盾してるか?そう聞いてくるルーシェ。

「ん~……矛盾、はちょっとしてるかも。なら今のお前の策略はいいんかい、とか言いそうな理論だし。ただ、お前が根はいい人なのはよく分かった。偽悪者タイプって感じ?」

「偽悪者、か……自分は悪党だと思ってたが」

「悪人は自分を悪人とは言いません。これ、割と基本。ま、いいんじゃないの?周囲を騒ぎに巻き込む、けど着地点はしっかりとしてるってのは、巻き込まれる側は大変だけど、見てる方は楽しいだろうし」

そう考えると、確かにこいつはこっち側だわ。少なくとも、オチをきちんと見定めてる。

 「で、だ。その着地点が定まってない奴の話をするが……」

 「ルーシェ、入るぞ」

 言うが早いか、返事も聞かず入ってくるクリス「義姉様、だろ」……クリス、義姉さん。「まぁ、今はその辺りで許してやるか」いや、だから、心の中読まないで。「読んではいないさ、お前の顔がそう言ってるだけだ」……さいですか。

 「で、どの辺りまで話が進んでるんだ?」

 「丁度あちら側の話をしようとしていたところだ」

 「なら始まったばかりか、丁度いい、私も混ざるぞ」

 言いつつ、人のベットにごろりと寝転がる義姉さん、いや、ちょっと、フリーダム過ぎ。

 「えっと、いいの?喋って」

 「クリスには俺が知っていることは大概は話している、問題ない」

 「そうだぞ、義弟。お義姉さんに存分に悩みをブチ撒けるといい」

 何このどSカップル、これが俺の兄夫婦になるの、マジ勘弁して。

 「さて、話を戻そう。リョウ、あれからお前自身が知ったこと、気づいたことはあるか?」

 「えっと……」

 どSだろうが、間違いなく頭脳は高いだろう二人に、ジャバウォックの能力、Aさんとの会話、そこから思ったことを話してみる。

 「……ふむ……味方が多い、か……確かにな、クリスもその分類に入るだろう」

 「だろうな、お前からの話だと私のそっくりさん?だったかがお前の知る話に出てくるんだったか」

 「あぁ、フェニクスもそれだと思う。だとすると、これからは祝福持ちを探すのは楽になるな。能力を持っているものの周囲を探せばいい」

 「逆も言えるな。祝福持ちの周囲は相当高い能力持ちがいることになる。その辺の根回しをやっていくべきか」

 「そうだな、前に見つけたと言っていた能力持ちは、どちらだと思う?」

 「おそらく祝福持ちだろう。後で資料を渡す。お前たちの知っている物語かどうか、知っているなら他にどんな人物がでていたか、教えてくれ」

 「分かった。後は、北の奴らだが……」

 「情報だと、無数の魔剣を扱う男がいるらしい。そいつは祝福持ちか?付近に、数名の女の影もあるそうだが……」

 「間違いない、今日の話でも無限の剣製は出てきている。しかし、デメリット無しか……奴らの場合、性格的に誰かと組む、従えるがあまり考えられないから、対軍としては使って来ないだろうというのはありがたいが、女……下手すると、能力者がいる可能性があるな。あいつらの能力でただ落とされてる女性であればいいが、期待はしないでおこう」

 「女の身としては落とされるだけでも驚異だがな。一応密偵には情報集めのみに集中してもらっている」

 「妥当だ。間違っても、手出し、近づくのも出来るだけ避けるよう厳命してくれ。あいつらの人誑しは尋常じゃない。ある種、俺以上だ」

 「例の奇妙なゴーレム使いでそれは懲りている。後のフォローが大変だったからな、情報が漏れなかったのが幸いだ」

 ……ついて行けません。何話してるの、この方々。

 「えっと、ごめん、説明プリーズ……」

 「どこが分からなかった?」

 「あ~、全部、と言いたいけど……祝福持ちって何?」

 「簡単に言えば俺たち転生者だ。この世界ではそういう異常な力の持ち主は神の祝福を得たとされて、祝福持ちと言われる」

 「扱いは、国にもよるが大抵は受け入れられる。神からの祝福だからな、人としては恐れられることもあるが、戦力として国に保護されることも多い」

 ルーシェの談に、義姉さんが補足する。

 「次。北って何?」

 「後で地理を教えるが、俺たちの国は大陸の一番南。大陸で一番種族が豊富だ。反対に一番北の国は人以外の種族はほぼ皆無だ。俺とクリスの個人的な密偵の調べで、どうもその国に相手側の転生者が多く生まれるようだ」

 「人の国に化け物が一番生まれるというのも笑える話だがな」

 ククッと笑う義姉さん、あぁ、そう言えばこの人エルフも混じってるんだったか。

 「現状の推測として、おそらく転生者はこの国とその北の国に集中する。つまり、北と南を真っ二つにした大戦が考えられる」

 そ、そこまで行くの?

 「恐らくな、敵の配置的にそうなるだろう。現状確認されてる転生者の力を考えれば、その規模にならない方が可笑しい」

 無論、お前の力も含みだが、と付け加えられる。……確かに、ジャバヴォックの力だとそこまで行くか。

 「そこで、リョウ。お前に取ってほしい行動がある」

 お、俺!?何をしろと!?

 「一つ、俺とクリス共通の友人にフェニクスという奴がいる。そいつには妹がいるそうだが、その子も今年で6才らしい。偶然とは思えない、その子にあって欲しい」

 「軽く聞いた話だが、その子は中に何かいるらしい。精霊憑きかとも考えたが、魔力が異常だ。かといって純然な祝福持ちとも思えない。それらも踏まえて君に会って欲しいんだ。中に別の存在を宿すもの同士、話が合うだろう」

 な、何かいきなり重大な事言われてるぞ。

 「二つ、お前に学校に行ってもらいたい。俺たちも行っている学校だ。そこは能力があるものは平民、貴族問わず門戸を開いている。恐らく、お前と同年代に生まれた祝福持ちも通ってくるだろう」

 「教師陣にも何人か祝福持ちは見かけている。そこがこの南の祝福持ちの集う場所、とお膳立てされているのだろう、そこで生徒たちと親睦を深めて欲しい」

 ……………マジですか、どんだけ舞台用意してんだよ、神様。

 「てか、いいの?そんな学校行って。聞いてる感じだと、遊んでる暇ないんじゃ……」

 「無い。だからこそ、遊んでもらう」

 どゆこと?

 「さっきも言ったが、神は大騒ぎが好きだ。当然そんな能力持ちが集まれば、騒ぎはでかくなる。よくあるファンタジーものの学園編と思え、あれを端から見てたら、と考えるんだ」

 「そりゃ、おもしろ……あ、そっか」

 「そう。面白い。俺も今在学してるが出来るだけ、様々な事件を起こすようあれこれ奮闘している。それをお前にも手伝って欲しい。出来るだけ騒がしく、出来るだけ賑やかに、神の注意を引くように」

 ……ゴクリ

 「いいか、真剣に遊ぶんだ。真剣に学園生活をドタバタコメディーにして、お前の在学中はこれを見ていたいと思わせる。幸いお前は俺より力が強い、それだけ神も注目する。その学園生活を送ってる間は、他の大きな物語は見たくないと思わせるんだ」

 「その間に、先に卒業した私たちは起こるであろう戦争に向けて最大限の準備をする。私たちの世代は能力者は少ないが、貴族の嫡子や王族が多い。そいつらと手を組み、大々的な連合を組む」

 「……これが今の俺たちの作戦だ。質問は?」

 「あのさ、俺まだこの世界で戦うって決めてないんだけど」

 「それでもいい。それなら学園で楽しむことだけを考えてくれ。さっきも言ったが、お前が騒げば騒ぐほど、戦争は伸びる、可能性が高い。戦うかどうかは、その後決めてもいい」
「人を殺せと言ってる訳じゃない。お前が遊ぶことで、人が救われる。そう言ってるんだ」

 ……本当に、何なんだ。この超展開。俺が読者なら、ドン引きだぞこれ。

 何で転生してほんのちょっとで大戦争の対策取らにゃいかんのさ。

「現状、戦争は回避不可能だと俺は思ってる。だからこそ、取れる手は最速で取りたい。リョウにはきついかもしれない。けどあえて言う。頼む。手伝ってほしい」

 そんなさ、真剣な顔されて頭下げられたらさ……

 「OK。やるよ、戦うかは別として、学園生活?全力で騒ぎを起こしてくる」

 「感謝する。俺ももう2、3年は在学してるから、その間は基本こっちで騒ぎを起こす。済まないが巻き込まれてくれ」

 あんたが起こす騒ぎってだけで、凄く怖いんですけど……

 「義姉さんはいいの?」

 「私ははなからこの世界の人間だ、神が見てるなら大いに盛り上げるし、戦争も先延ばし出来るならそうしたい」

 「そっちじゃなくて、兄さんといると嫌でも戦争に参加だよ?いいの?平凡な生活とかは望まないの?」

 「元々平凡は好かん。何より惚れた男が文字通り歴史に名を刻む瞬間を特等席で見れるんだ、相応の対価は払うさ」

 ……この人、本当にこっちの世界の人?滅茶苦茶割り切りいいな、おい。

 「彼女は変り種だ。だからこそ惚れたんだが」

 「そう言えば、告白はお前からだったなルーシェ。いや、あの時も中々大騒ぎで楽しかった。ああいうお祭り騒ぎなら何度でも巻き込まれたいな」

 「お望みなら、幾らでも。退屈な人生が恋しくなるほどに」

 「……全く。どこまで私を喜ばせたいんだかお前は……」

 ちょ、お前ら、俺がいる前で盛り上がるな、ルーシェベットに近づくな、それ俺のべッあががががががががががががががががががががが

 「と、トイレ!!!」

 とりあえず、この場から逃げ出す。童貞なめんなコンチクショウ!!(涙)

 『……よく分からんが、逃げねばならんのか?』

 逃げなきゃ駄目なの!!ああいうのは人が見ちゃダメなの!!

 『………汝の邪魔なら、我が滅ぼすが……?』

 いいから!!逃げる……あぁ、もう!出来るだけ遠くに行くだけ!!アレ自体はいい……事?よく分からんが、仲がいいのはいいことなの!!!

 『……全く分からん』

 そうだね、プロテインだね!!(自分もよく分かってない)もういいから、ついでだからお前の能力試す!!全身展開よろ!!超高速の動き出来るか試したい!!

 『!!よかろう、我が力汝にくれてやる!!!』

 力が発揮できるのが余程嬉しいのか嬉々として展開してくれるジャバ。もう、こいつも忠犬だな、コンチクショウ!!!

 行くぞ、ジャバ!!!とりあえず走る、全力で!!全力で、奴らを見逃す……もとい奴等から離れるんだ!!!

 『おぉ!』

 初の全力展開は兄の情事から逃げるために使いました。

 これも見てるんだろうな、神様……やっぱ、これ見て笑ってるんだろうか?

 窓から見える月がちょっとだけぼやけて見えた夜でした。




追記

 夜遅くもういいかと戻ろうとしたら、ギシアンな音が聞こえて(この時はARMSの能力で上がった聴覚をちょっと恨みました)撤退、両親の部屋に行ってみましたがこちらも何故かギシアン(後に兄が何やら一服盛ったらしい事を聞きました、何してんだよ本当に)
が聞こえ撤退、結局、イワオさんの所で一晩過ごしました(ちなみにイワオさん、やっぱり奥さんいました。メイド長らしいです。その前の職は怖くて聞けませんでした)





 『~~~~~~~~~~~(バンバンバン)』

 『え~っと……我が主よ、楽しいですか?』

 『……!!(腹抱えながらGJのポーズ)』

 『……そうですか、何よりです(本当にすみません……こんな主で。後でまた向こうの目をごまかしてそちらに有利になるよう、神に言っておきます。頑張ってください)』














 あとがき
 何というか、酷い話だな(笑)
 とりあえず、こんな感じで書いていきます。基本ドシリアスは書けない人間なので。
 次々回辺りから学園編かな?ペース早めに書いて、転生者ガンガン出したいと思ってます。



[30767] 転生狂騒曲 第4話 不思議な国のアリス?
Name: 柘榴◆f3f758c4 ID:fef1d7d0
Date: 2011/12/10 09:23
 今回はちょっと?壊れ展開が多めです。
 それでもいいぜ!という方は↓へ



 転生狂騒曲 第4話
 不思議な国のアリス?



 ガタゴト……ガタゴト……

 え~、あれから3日程経ちました。気分的にキングクリムゾンした感じ。

 メタ?何を今更、この世界でメタなんてツッコムだけ無駄ですよ、ええ。

 只今俺は、先日兄に言われた、兄の友人の妹さんなる方に会わんと馬車で移動中。

 本当なら、転移魔法?なるものもあるらしいのだが、何故か使えないらしい。どうも向こう側が受付拒否してるそうだ(ケータイかよ)。

 この時点で嫌な予感しかしないんだが、兄曰く。

 「向こうとはどうにか連絡が付いた。どうも、向こうの大気の魔力が不安定になっているそうだ。まぁ、あいつなら滅多な事では死なないだろうから、その辺は心配するな」

 とのことだが、その滅多な事がありますよ~と言わんばかりのニヤリ顔を止めて。正直怖い。

 ちなみに馬車ではなく、俺が高速移動する(この世界、魔法は普通にあるらしい。その中には身体強化のものもあるらしく、戦士などはよく使うとか。この辺もテンプレ?)などして、早く行けばいいのでは、と思いましたが。

 「俺を殺したいのか?」

 肉体貧弱、魔力はあれどその方面には一切の才能無しの兄が、そうおっしゃるので、普通な移動手段しか使えないわけです。

 「俺だって、出来るなら使ってるっての……魔力全部ギアスに持ってかれるってどんな縛りだよ……あいつもあいつで『ルーシェ、もっと鍛えないとダメだよ』とかほざきやがるし、何でそんなところは元キャラそっくりなんだよ……鍛えられないんだよ、鍛えても付かないんだよ肉が、そもそも筋繊維の本数が常人以下ってどうしろってんだよ、頭使うしかないだろうが……」

 ぶつぶつ呪詛紛いのオーラを出しながら呟くルーシェ。気にしてたんだ…。

 ちなみに、今のところ俺は運動も脳みそもスペックが落ちてると思うようなことはない。この辺は元キャラになった高槻涼君に感謝(彼の場合、普通にどっちも良スペックな感じだったしな)周囲から聞く限りでも、このリョウ=グランバという体は中々に飲み込みも良く、いい感じのスペックみたいだし。

 あ、クリス義姉さんはコードはないみたい、寿命もエルフの血は混じってるけど、常人並みだろうとのこと。ただ、他のスペックは元キャラ譲りか何なのか、かなり高いらしい。

 「夫婦喧嘩になったら間違いなく勝てる、というのも選んだ理由の一つだ」

 クックックと笑うあの顔は、何処まで本気だったのか…というか、ルーシェの場合そういう状況に陥った=勝ちな構図を作ってそうなんだが……あ、それはクリス義姉さんも一緒?……サド夫婦怖い!!

 さて、そんなこんなで、今は馬車でえっちらおっちら件の友人宅に移動中。馬車は一応公爵家らしいので、何か立派なのに乗ってます。どう立派かというと、まず広い。乗ってるのが俺とルーシェ、クリス義姉さんの三人なせいか余計にそう感じる。

 座席の部分もやたらとフカフカで、外から聞こえる振動音からすると結構尻が痛くなりそうなんだが、全くそういうのは無し。この辺は謎のファンタジー技術なんだろうか?

 そんな馬車の御者はイワオさん。えぇ、あの人、どうも俺付きの執事になったそうです。奥さんもメイド長から俺付きにランクダウン?なのに本人たちは気にしてなさげでした。これもやっぱりフラグなんだろうか?

 と、まぁ、あれこれ考えてみたものの、まだまだ向こうに着くには時間があるわけで。

 「ところでさ、聞きたいことがあるんだけど」

 「……こうなったら俺専用のゴーレムでも……いや、無理だ操縦出来ん……ん、どうした?」

 あ、一応こっちの声は聞こえるレベルだったか。

 「あのさ、これから行くフェニクスって人の家ってどんな所?」

 「……あぁ、そういえば話してなかったな……ついでだ、地理と歴史も触り程度話しておこう。クリス」

 「ほら、これがこの大陸の地図だ」

 言うなり、向かい合う座席の真ん中に簡易テーブルと地図を広げるクリス義姉さん。どうでもいいが阿吽の呼吸すぎるだろ。

 「え~っと……」

 広げられた地図に視線を落とす。あ、一応言っておくと、座席は俺の向かいに兄夫婦が座ってます。まだ夫婦じゃない?……いいんだよ、もう。というか、義姉さんがそう思えってガンガン押してくんだよ、もうそれでいいよ、好きにして。

 「俺たちの国はここ。この前も話したが、この大陸の一番南に位置する。というか、この世界には今のところこの大陸しか見つかってないから、世界最南端の国だ」

 言って、楕円形みたいな形の大陸の最南端を指さす。地図で書かれた国の線引き的には結構大きいな。

 「歴史は大体1,500年位か。領土としては、南方では随一、世界的に見れば3位といったところか。人種は様々、というかこの大陸で見かけることが出来る友好的な種族は、ほぼ全てといってもいい程集まってる」

 「理由はあるの?」

 「端的に言えば、前話した始祖竜。それが我が国にいることだな」

 あぁ、例のお話ね。

 「やっぱりそういう竜族のトップがいるってデカイんだ」

 「厳密には違うがな。で、その竜が住むのが王都傍のこの山、この麓に街を作り、竜族、純粋な竜や半竜などの竜人族が暮らしている」

 地図上の山と思しきマークを指差す。何かその横に名前らしきものが書かれてるが……えっと……コ……―…セル……?

 「名前はコーセルテルだそうだ」

 「意外と普通にファンタジー……っておい」

 俺も詳しく覚えてないけど、そんな名前の漫画あったよな。

 「始祖竜がこの地に来た時、『名前?竜の里2でいいじゃん、駄目?何でもいいじゃん、住めば都、住めば都……都、あ、んじゃ、コーセルテルで行こう』と言うことで名付けたそうだ。ちなみに、幼い竜族は何人かでまとめて保育園みたいな感じで、人間に面倒をみてもらう風習もその頃に作ったらしい。その甲斐もあって、人族と竜族の中は結構いいぞ」

 軽っ!?始祖竜軽っ!!?つか、ネーミングセンス微妙!!ツッコミした人GJ!!!

 「ちなみに竜の里の1もある、というか、あった。その辺はここの説明が終わってから話す」

 き、聞きたいような、聞きたくないような……

 「我が国は王都を中心に東西南北の四つで分けられ、それぞれを公爵家が管理し、その中で更に領地を分割し、他の爵位の者が治めるという形を取っている」

 最南端の、正方形を45度傾けてダイヤ型にしたみたいな国に×を引く。

 「東西南北にはそれぞれを守護する精霊がいる。この精霊は、建国時、竜と共にこの地を安住の地と決めたそうだ。その精霊に敬意の意味も込めて、東西南北の公爵家はそれぞれの精霊の名を家名として使っている」

 出たよ、精霊。まさにファンタジー。

 「北は地の精霊ザムージュ、東に水の精霊ガッド、南に火の精霊グランバ、西に風の精霊サイフィス。俺たちの家名、グランパはそこから来ている。そのためか、それぞれの公爵家はその属性に拠った魔法が得意となる……あぁ、もしかしたらお前がグランパに生まれたのもその関係かもしれないな。うちの家系は炎、破壊が主の血統だからな」

 おぉ、そういう捉え方も出来るか。確かにジャバに属性付けろって言われたら、火属性っぽいし。

 「最も、俺は関係ないがな。魔法はからっきしだ」

 やさぐれないでくれ、ルーシェ。

 「で、これから行くのが東の公爵家、ガッド家だ。フェニクスはそこの嫡子でもある」

 「前から思ってたけど、名前だけ聞くと水っぽくないよね。フェニックスみたいに聞こえるし」

 「知らん。その辺はむしろ付けた親に言え。付けたのはむしろ神か?だとしたらヒネリが無理すぎる。いっそ和名もありなんだから、和名使え」

 ……なんか、色々ありそうだな。

 「あ、そういえば、国名って何ていうの?今のところ、出てきてないけど、まさか竜の国~とかじゃないよね?」

 そう聞いたとき、ルーシェがまたあのニヤリ顔を浮かべる。え?何?地雷?

 「国名……か、あぁ、安心しろ、意外と普通の名前だ。意外と……な」

 だから怖いんだっての!!!

 「で……何なの、名前?」

 「まぁ、知らなきゃ大して分からんだろうが……ラングラン、だ」

 「あ、意外と普通……ラングランか、ラングラン、ラングラン……………はぁああああああああああ!!!!!????」

 「お、知ってたか。こうしてみると、元の世界では随分と趣味が合いそうだな」

 「え!?ラング……ぇええ!!??」

 「あぁ、ちなみにうちの国は錬金術も盛んだぞ」

 「何造る気だ、錬金術師!!!」

 というか、何故気付かなかった俺!!!明らかに途中の精霊の名前で気づけたろう!!!……いや、普通気づかないか?

 「……一応聞くけど、もう出来上がってる?」

 「いや、まだだ。ただ、その案というか発想を持っている人間が学園にいる。恐らくは大戦までには完成するだろう」

 「と、なると……いますね、転生者」

 「ストフリが出るんだからな……こちらもロボ人員は来るだろうさ」

 うぁ~……何か大戦のルビが嫌な文字出てきたよ。

 「さしずめ大惨事スーパー人外大戦EXか?」

 「思っててもスルーしたこと口にしないで!!」

 「……少し確認するが、今の話題は例の新型ゴーレムの件か?」

 俺らしか分からないネタで話していたため、クリス義姉さんちょっと置いてけぼりになってました。

 「そうだ、北の国で見つけたゴーレム使い、それに対抗するための例の新案だな」

 「ゴーレム使いか……本当に、北の国はやってくれる」

 何か嫌な思い出でもあるのか、宙を見上げぼやくクリス義姉さん。

 「何か、あったの?」

 「ん?あぁ……前に何人か調査のために送り込んでいるというのは言っただろう。それで妙なゴーレムを使うという奴の噂が入ったんだがな……まだ潜入初期ということもあって、近づけすぎたらしい。潜入員、全員かっさらわれた」

 「はぁ!?」

 何があった!!?

 「こっちが聞きたいよ、聞いた話では数ヶ月後に女は全員色街、男は全員廃人になっていたらしい。余り突っ込むと第2、第3の被害が出そうだから、深くは調べなかったが。幸いそいつらからこちらの情報が漏れるほど繋がりはなかったが、人員補充は慎重にせざるを得なかったよ」

 「向こうは俺たちでいうニコポ、ナデポのフル装備と思ったほうがいい。まぁ、主人公の能力持ちだからな。当然付属してくるだろうさ」

 ……また、詰み要素が一個増えた気が。

 「あぁ、言い忘れてた。お前専属になってもらったが、イワオとミサをこれからも時々借りるぞ」

 借りるって、え?何それ?

 「今までもあの二人には何度も諜報をしてもらってる。思い出してみろ、あの二人居ないことが多くなかったか?」

 ………そう言われれば。そうだ。いきなり居なくなったと思ったら、急にひょっこり帰ってくるから、余計に怖かったんだ。おまけに狙ったように、僕の後ろ取ってきて……

 「イワオ……お願いだから、暗闇から肩叩くのやめて……ミサ……ねぇ、その弓、何?何でこっち向いてるの?ねぇ?……(ガクガク、ブルブル)」

 「お、おい、大丈夫か?」

 「に、兄様……」

 「(何をやったんだ、イワオ!!?ミサ!!?)と、とりあえず、落ち着け、な。よしよーし」

 あぁ、兄様、優しいな……そうだ……俺、あの二人が来たときはいつもこうしてたんだ……







 「お、落ち着いたか?」

 「はい、落ち着きました……ありがとう、兄様……うん、なんか、しっくり来る。兄様、兄様、兄様……」

 これまでの他人行儀な感じが抜けた気がする。うん、兄様は兄様だ。……それにしても……

 「イワオ、あれ今だから思うけど、軽く虐待だよね?」

 「あぁ、ようやくいつものリョウさまに戻られましたね。ここ数日淋しかったですよ」

 「嘘だ!!こっちの反応見て危機管理抜けてないか試してただろ!!」

 御者をやっているイワオに毒づく。この前の泊まった時も、妙に恐怖感あったのはこれが原因だ。いつ襲われるかと恐怖してたんだ。

 「あの時も、隙あれば襲ってただろ……あれ?だとすると、初日は……あぁ、ジャバか」

 ジャバが展開しててくれたから、イワオも攻撃してこなかったのか。ありがとう、ジャバ。お前が居てくれた事に今、本当に感謝してる。

 「おい、イワオ……お前、リョウに何をしていたんだ?」

 「いえ、御命令通り『少し』鍛えていたのですが」

 「あれは少しじゃない!!兄様から頼まれたって言われなかったら、僕は絶対に逃げ出してた!!!」

 「はははは、リョウ様の飲み込みが早いもので、ついつい張り切ってしまいましたよ」

 「お~い、イワオ。笑ってないでこっち向いて話そ~。ジャバ~、良かったな、全力展開しても良さげな人物がここに居るぞ~。やっても勝てるか微妙だけど」

 「落ち着けリョウ!イワオ、お前も乗り気になるな、馬を止めるな、リョウ!!服を脱ぐな~~!!!」

 「おい、何があったか知らないが、本題はフェニクスの家に行くことだろう。頭を冷やせお前ら」

 ……少年冷却中………

 「お騒がせしました」

 「……いや、止まったなら、いい……」

 死にそうな顔で荒い息を吐く兄様。本当に体力無いんですね。

 「ルーシェ様、なんでしたら私が『少し』鍛えましょうか?」

 「やめてくれ……リョウの反応を見る限り、お前に鍛えられたら、俺は一日で死ぬ。あの神だぞ、ギャグパートなら平気で殺しそうだ……」

 「そうですか、では『今まで通り』リョウ様を……」

 「それも却下だ!!……とりあえず、もう少し手加減して鍛えてやってくれ。後、さっき途中で言いかけたが、これからは諜報により力を入れてもらいたい。現状、お前以上の諜報員はいないからな、よろしく頼む」

 「承知しました」

 「……あの、兄様、少し疑問なんですが、イワオなら暗闇からの奇襲で向こうを殺せたりしないんですか?」

 今だから余計に感じるが、イワオは強い。というか、殺気が見えない。正直、訓練であれなのだから、本気になったイワオに闇討ちされたら、生き残れるかどうか。

 「……あぁ、それは俺も考えたが、例の『大きな力は流れに巻き込まれる』が効いてくるみたいだ。闇討ちみたいな舞台裏での死亡は出来ないらしい。特に向こうは主人公の能力持ちだからな、その補正も強いだろう。同様に『悪人は基本成功しない』も主人公能力で弾き飛ばしてる。だからこそ、こうして地味な根回しや、大舞台までの寸劇で場を引き伸ばしてるんだがな」

 疲れた顔を浮かべる兄様。

 「……兄様、僕……」

 「ストップ」

 言いかけた俺の言葉を、兄様が止める。

 「多分、今のお前は『リョウ=グランバ』が強く出てる状態だと思う。言動も昔に戻ってるしな。だから、もう少し時間を置いてから答えを聞こうと思う。『リョウ=グランバ』でもなく、『どこかのオタク』でもなく、『どこかのオタクでもある、リョウ=グランバ』の答えを」

 「……はい……」

 うん、自分でも何かおかしいというか、さっきと別の部分が違和感を感じてる。この感覚は兄様も味わったのだろうか?

 何というか、遠い物語を聞かされた感覚。それが落ち着くまで少し待ったほうがいいだろう。

 「まぁ、少し休もう。まだフェニクスの家まで時間が掛かるからな」

 その言葉で、また馬車の中に静けさが戻った。
























 「3人ともよく来てくれたね」

 来て早々、来客室で待っていた僕たちの下に、件の友人らしき人が挨拶に来てくれた。

 「……えっと、ルーシェ。なんか弟さん元気ないみたいだけど、大丈夫?」

 「心配するな、ただ遠出するのが初めてだから、はしゃぎすぎただけだ」

 まぁ、たしかにはしゃぎましたけど……それが原因じゃないんです、兄様。

 「…大丈夫?辛いなら、休む部屋を用意するよ」

 「いえ、大丈夫です。……あの、挨拶遅れました、リョウ=グランバです」

 「え?……あぁ!そう言えば、まだ自己紹介もしてなかったね。僕はフェニクス=ガッド。君のお兄さんの親友……なのかな?」

 「そこで疑問符を付けるな、馬鹿」

 「あ、ひどい!そりゃあ、僕はルーシェと違って頭は良くないけどさ、いきなり馬鹿はないだろう!」

 「だから馬鹿だと言ってるんだ。親友、だろうが。少なくとも俺はそう思ってる」

 「……ルーシェ……」

 「おい貴様、まじまじと人の夫に熱視線向けるな、男色か?言っておくがルーシェにその気はないぞ」

 「ちょ、ひどいよクリス、僕だってそんな気持ちはって夫?」

 「お前……俺がクリスを実家に連れていった理由は話しただろうが。正式に婚約した。両親も納得済みだ」

 「嘘!?本当に報告したんだ!!?」

 「何だと思ってたんだ……?」

 「いや~、てっきりまたルーシェのどっきりかと……」

 「駄目だこいつ、早くなんとかしないと……」

 「ルーシェ、無理だな。こいつの馬鹿はエリクサーでも治らん」

 「二人の普段の行いが悪いのに!!?」

 兄様、一体学園で何してるんですか……

 あ、後兄様が言っていたネーミング云々、意味が分かりました。フェニクスさん、クル○ギさんにそっくりでした……確かに無理して捻った感じがあります。

 「……さて、そろそろ本題に入ろう。フェニクス、何があった?」

 「……正直話しづらいんだけど…」

 「お前の妹に何かあったか?」

 「!?……やっぱりルーシェは凄いね、何でもお見通しだ」

 「俺の弟も声が聞こえるようになったそうだ、幸いこっちの方は上手く会話が出来ている。何か手助けが出来るかもしれない」

 「……分かった。3人とも付いてきて。途中で話す」





 「念のため、家の者は一旦避難してもらったんだ。今いるのは僕と、アリスだけ」

 「アリス?」

 「僕の妹の名前、アリス=ガッド。この間6才になったんだ」

 アリス……6才……条件は揃ってるけど……

 どう思う、ジャバ?

 『……』

 ……ジャバ?

 『……近い、我と、同じ………』

 ……当たり、かな。

 (…ルーシュ、いいのか?リョウの精神も今は安定してないだろう?)

 (……いや、むしろ今の状態の方がいいかもしれない。下手に年上の状態より、同年代の方が話が上手くいくと思う。それにあいつは見た目以上に聡いからな)

 (……だといいのだが)

 「――で、事が起こったのはこの前の6才の誕生日の朝、だそうだよ。最初の目撃者は妹を起こしに行ってくれたメイド。元々アリスは魔力が高いっていうのは周知の事実だったんだけど、それが、その日暴走した」

 「具体的には?」

 「……見てもらった方が早いかな。もうすぐだよ」

 そう言って、進めていた足を止める。目の前にはまだまだ続く廊下、があるはずなのに―――――

 「……なに、これ……」

 白い。壁も床も燭台も飾りの壺も、何もかもが白い。

 『……やはり、やはりか……ク、ククク、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!』

 キ―――――ン

 金属音のような甲高い響き。

 それと同じくして、僕の右腕が膨れ上がる。

 「じ、ジャバ!!?」

 これって……まさか、共振!?

 『いたか、いたのか!!!我と同じく在るものよ!!!!』

 歓喜?憎悪?どちらとも思えるような声と共に、僕の体は凍りついた廊下を駆け出す。

 ジャバ、待って、待ってくれ!

 『感じる!感じるぞ!!汝の憎悪を!!汝の憤怒を!!!』

 前に、僕の体はジャバの体そのものって言った。それは嘘のつもりじゃなかった。けど、どこかで勘違いしてたんだろうか?

 ジャバ……ジャバウォックの体に僕の意識が間借りしている。そう思える位、あっさりと僕の体はジャバウォックの意識に奪われる。

 僕の体全てが、僕の体じゃないものへと変わっていく。

 パキン―――

 『……お前だな』

 ドアなんて関係ないとばかりに、完全にARMSの姿と化した右腕で打ち払い、目の前に座るモノを睨みつける。

 『……貴様も我が宿主を害するか?』

 『笑止。貴様の憎悪が我が宿主の害悪となる。故に我は貴様を破壊する』

 『戯言を。貴様の恐怖が我が宿主の害悪となる。故に我は貴様を滅ぼす』

 目の前の少女の体も変質していく。その姿は、記憶にあるあの姿で――-―――

『吠えるか!我こそは破壊の魔獣、ジャバウォック!!全てを破壊するものなり!!』

 『戯け!!我こそ滅びの神獣、バンダースナッチ!!全てを滅ぼすものなり!!』

 (……や、やめろ、ジャバウォックーーーーー!!!!!)

 僕の止める声も届かないのか、魔獣と神獣は互いの拳をぶつけ合った。




















 








 (………あれ?……ここ、どこ?)

 白い、ただ広い空間が広がる。真っ白で何もない。有るのは僕一人。

 (確か……僕は……)

 思い出す。魔獣と神獣の闘いを。

 (ジャバウォック!!!?)

 思わず右手を見る。けど、それは見慣れた自分の手で。そこで、初めて気づく。

 (いない……)

 そう、あれだけ近くに感じた気配が全く感じられない。

 そもそも、ここはどこなんだ?

 考えろ、考えてみろ。似たような記憶はないか?知識はないか?

 (……ここが、精神世界っていうものなのかな……)

 どこか遠い記憶にそんな描写があった気がする。……この記憶も、正直違和感が取れない。

 自分じゃないのに、自分がいて。その人も人生を歩んでいて……

 (………今は、それを考える時じゃない)

 頭を振って無理矢理押し出す。

 とにかく、ここが何処なのか辺りはついた。次は行動。

 (……探すしかないかな)

 ここに来た意味、というのがきっとあるはず。なら、それを見つけないと。

 地面も無い空間を歩くのも変な感覚だったが、ともかく僕は歩きだした。

 歩いてすぐにそれを見つけられたのは、偶然だろうか?

 周囲をキョロキョロとしてみる、女の子……裸の。

 (何で、そういうこと考えるかな!?)

 向こうが裸ということは、自分も裸なわけで。そう思うと、急に恥ずかしくなってくる。

 (うぅ、声、掛けづらい……)

 かといって、話しかけないわけにもいかない。……良し!!

 「あ、あの……」

 「……え?」

 気づいていなかったのか、こちらの声に反応するのに少し間が開く。

 「えっと……こんにちは」

 「……こんにちは」

 ペコリ、と互いに頭を下げる。……どうしよう、何話せばいいの?

 「……あなた、だれ?」

 「僕?僕は……」

 名前を言おうとして、何故か言い淀む。僕は、誰なんだろう?

 僕はリョウ。それは分かってる。じゃあ、『俺』は?

 どちらもそれまでの人生を歩んできて、それが急に混じり合って、おまけに別な存在も体の中にあって……

 「……誰なんだろうね?」

 「?」

 きょとんとされる。僕もそんなこと言われたら困ってしまうと思う。

 でも、本当に僕は誰なんだろう?俺は誰なんだろう?

 「……名前」

 「え?」

 「あなたの、名前」

 「え、えっと……なまえ……リョウ、かな…?」

 「違うの?」

 「いや、違わない、けど……」

 「アリス」

 「え?」

 「私の、名前」

 「あ、うん。アリス、ね」

 すっと手を出される。

 「え?」

 「よろしく、お願いします」

 「……握手?」

 「うん」

 「……よろしく」

 差し出された手を、握り返す。

 「初めて会った時から、決めてました」

 「それ絶対違う挨拶だから!!!」

 誰、そんなの吹き込んだの!!?




 そんな風に挨拶をして、さりとて何をすればいいのかも分からず、とりあえず僕たちは歩きだした。

 どの位歩いただろうか?疲れも感じないから、時間の感覚もなく、ただ白い空間が広がるばかり。

 やがて、どちらからともなく、お互いの事を話し出す。

 兄弟のこと、両親のこと、家で何をして遊ぶか、周りにどんな人がいるか、自分はどう思ったか―――――

 アリスはあまり外で遊べないらしい。そう家族に言われたそうだ。それが凄く残念だと。出来るなら、外で遊びたいと。

 僕は、とにかくあれこれ話した。『僕』が感じたこと、『俺』が感じたこと、行ったり来たりしながら。

 アリスは『僕』の話も、『俺』の話も、面白そうに聞いていた。特に物語が面白いらしく、彼女の気に入りそうな物語を思い出しては語った。

 「リョウは、物知り」

 「そうかな?」

 「うん。どの話も素敵。それを知ってるリョウもすごい」

 「……ありがとう」

 心の中、だからなのか。本当に、区別なく、考えなく、話せた。

 「私も、外に出たら物知りになれる?」

 「なれるよ、アリスなら」

 「……うん……出たいな」

 「出られるよ……きっと」

 「本当?」

 「本当」

 出られるさ、俺だって出られてるんだ。アリスだって出られる。

 「原因は、もう、何となく分かってるし」

 「?」

 「アリスが外に出られない原因」

 「凄い……本当に、物知り」

 「そんなんじゃないって」

 「エスパー○藤?」

 「どこからそんなネタ仕入れてくるの君は?」

 「『ずっと前から愛してました~~~!!!』著者、サモ=ハン=キン=ポー(始祖竜)」

 「PN明らかに意味ないよね、むしろそれどんな話!?何がどうしたらエスパー○藤が出てくるの?」

 「心を読む力を得てしまったさえない中年男性、エスパー○藤が、生き別れの妹と前世の恋人の板挟みになって苦悩する話。最後は同僚の伯爵家の娘を救い出し、ハッピーエンド。全6巻」

 「ツッコミ所多すぎて、一周して読んでみたくなるねそれ!!」

 「只今絶版中」

 「売れなかったんだ……」

 「ネタ元に怒られて、再版中止」

 「いるの!?あったの!!?むしろ生きてるの!!!?」

 「『……ということにしろと奥さんに怒られました。ごめんなさい。
   追伸
   今度はもっとぼかして書くね、ピーター(後書)』」

 「いっそ神様専従の物書きやったほうがいいよ始祖竜!!!」

 こっちの世界の物語、今度あさってみようかな、本気で。

 「……リョウは面白い」

 「ごめん、今俺の中ではアリスの方が面白い」

 「どっちのリョウも面白い」

 「……アリスも面白いし、可愛いよ」

 「……ジゴロ白桃(ハクトー)?」

 「それも物語?むしろ俺を何だと思ってるの?」

 「伝説の白桃と呼ばれる美尻の女性を追い求めるジゴロたちの、壮絶な肉弾戦バトルロワイヤル。キャッチフレーズは『君の拳に、完敗』著者ア=バ=オ=アクー(始祖竜)既出17巻、外伝3巻、なおも続巻中」

 「君の家の蔵書管理してる人と後で話し合おうか」

 何だろう、アリスと話してると、いろんな意味で自分が何なのかと悩んでいたのが馬鹿らしくなる。

 「リョウはリョウ。物知りで、面白い。それでいい」

 「アリスもそのままでいい……のか?うん、もっと外に出よう。そしてきちんとした知識を身につけよう」

 そのためにも……

 「こいつら、どうにかしましょうか」

 歩いて歩いて、ようやく見つけましたよ。

 『中々やるではないか、滅びを自称するだけはある!!』

 『貴様も破壊などとほざくだけの力はあるようだな!!!』

 『『だが』』

 『『真の破壊(滅び)の代行者は我のみでいい!!!』』

 灼熱と吹雪の吹き荒れる中、2体の獣は互いに殴り合っていた。

 「は、はは、ハハハハハハハハ……」

 「リョウ?」

 俺の手を握る力をちょっと強めるアリス。あぁ、怖いのかな?

 そうだね、怖いよね、こんな炎やら氷やら散々出しまくって、巨体で殴り合いまくって、宿主のことなんか綺麗さっぱり忘れて、楽しそうに男と男の友情チックな殴り合いやって、終わったら、夕暮れの川岸で「やるな」「お前もな」ですか、そうですか……

 「テメェら、2体とも正座ぁあ!!!」










 「何か言うことは?」

 『わ、我は滅びの化身であり、存在理由であって…』

 「ぁあ゙?」

 『ごめんなさい』

 「そっちは?」

 『わ、我は宿主を守ろうと……』

 「ん~?(ニコニコ)」

 『すみませんでした』

 吹雪も炎もない空間で、俺とアリスの前で正座するジャバとバンダー。

 体?小さくさせましたよ?正座できるのか?させてるんです。

 「なぁ、ジャバ。俺さ、お前信頼してるっていったよな?感謝してるっていったよな?それ嘘じゃないんだぜ?でもさ、忠義の証がサーチアンドデストロイってどゆこと?」

 『……はい』

 「バンダー?さっき宿主うんたら言ってたけど、その宿主放り出して殴り合い始めるのが君の宿主への愛な訳?」

 『……はい』

 「リョウ?」

 「何、アリス?まだOHANASHIの途中なんだけど」

 「剣山と重石って効く?」

 「やってみるか」

 『『ちょ!!?』』

 精神世界だから多分効くだろうな~。人格変わってる?残念。『僕』と『俺』の蓄積した怒りなめんな。溜まってるんだよ、俺らだってなぁ!!!

 『『本当にすみませんでした』』

 2体揃って、土下座する。ARMSに土下座させたのって俺たちが初?

 「……はぁ、まぁ、暴走の原因も何となく分かるけどさ」

 こいつらの原動力はやっぱり憎悪や憤怒、そして恐怖。

 「バンダーはアリスの憎悪、ジャバは俺の恐怖、だろ?ごめん、迷惑かけた」

 何だかんだいって、こいつらは俺たちのそういう想いを感じ取って反応してしまうんだろう。まして、ジャバはこの間目覚めたばかりで溜まってる。呼応するようにバンダーも完全に目覚め、開放した。

 「アリス」

 「ん?」

 「アリスはバンダーの事は知ってた?」

 「……なにか、いるとは思った」

 「……怖い?」

 「……ちょっと」

 「なら、忠告。怖がらなくていい、というか、怖がると余計にこいつら手がつけられなくなる。周りに迷惑かけるのは駄目、それ以外は頼りにしてる。そう思ってれば、多分、収まる」

 収まるって言い方もあれだな。どう言えばいいのか。

 「……心配症?色んな意味で」

 「……そう捉えても、いいのか?」

 ぶっちゃけどうなんだろう、聞いてみるか。

 「どうして欲しい?俺はジャバを前にも言ったけど、相棒でもあり、友達でもあり、二心同体というか、そんな風に捉えてる」

 『我は汝、汝は我だ』

 「こちらが望んでないのに、しっかり暴走してましたが」

 『……それは、すまない』

 「……バンダー?」

 『……我は、宿主を守る。悪意から、憎悪から、悲しみから』

 「……暴れてとは、お願いしてない」

 『……では、どうすればいい?我はそれ以外のやり方を知らぬ』

 ……うん、方向性見えた。

 「よし、じゃあそれを探そう」

 『……は?』

 「バンダーは暴れる以外の守り方を模索。この辺はジャバも一緒だな。その間バンダーは無闇やたらに力を出さない。俺とアリスはもっとジャバとバンダーを知っていこう。そのためにも、ここみたいな内部会話をちょくちょくする。これで」

 これは俺にも言える。結局、俺が知ってるのは『ARMS』のジャバであり、『この』ジャバではないんだ。その辺もう少し考えなきゃいけない。

 「この中ならさっきみたいに暴れられるだろうから、溜まってきたら無理せず言う。そしたら、バンダーならジャバが、ジャバならバンダーが相手できる。いいか、言うんだからな。特に俺もアリスもお前たちと違って、言われなきゃ、完璧には分からないんだから」

 こんなところかな?

 「アリスはそれでいい?」

 「……自己紹介」

 「……そう言えば、そうだったね。じゃあ、改めて……『俺』はリョウ。リョウ=グランバ」

 言って右手を差し出す。

 「『私』はアリス。アリス=ガッド」

 そこにアリスの手が乗り。

 『……『我』はジャバウオック』

 『………』

 「バンダー……大丈夫」

 『……『我』はバンダースナッチ』

 ジャバとバンダーの右手が、おずおずと乗る。

 「よろしく」「……よろしく」『……よろしく』『よろしく……』

 何ともぎこちない挨拶を交わし合う二人と二体でした。

 「……我等生まれし日は違えど……」

 「始祖竜あんた幾つネタ散りばめてるの!!!??」















 「……ぃ、おい、リョウ!」

 「んぁ……」

 パチパチと目瞬き。えっと……どうなったの?

 「起きろリョウ」

 「ん…にぃ、さん……?」

 「起きたか。どうなった?話せるか?」

 んあ~……ここ、何処?

 「場所はアリスの部屋、時間はお前がアリスの部屋に乗り込んで、強い光が出てから30分後、アリスはまだ寝てる。冷気は止んだ。で、何があった?」

 起き抜けに大量の情報ありがとうございます……

 「えっと……暴走は収めてきました……ただ、俺もアリスも、これから、もっと、お互いに話すってことになって……」

 「え!?ちょっとそれ」

 「お前は黙ってろ。どういうことだ?」

 「ん~……具体的に……お互い裸になって、腹割って話す?俺とアリスで?」

 「……この場合、フェニクスが弟なのか?俺が弟なのか?」

 「ルーシェ!!?」

 「いや、聞く限り、これは弟に責任を取らせるしか……」

 「やっぱりそういう話なの!!?ねぇ、ちょっと、リョウ君、何をしたの!妹に、アリスに何したの!!!?」

 「あ~……フェニクスさん、蔵書係殴っといてください……原因はそいつです……」

 「本当にどういうこと!?」

 眠い……精神世界って意外と疲れるのね……。

 「俺は眠いので、寝ます……御休みなさい……」

 「ルーシェ~~~~!!!!」

 「……公爵家同士の婚姻、国内の結束を高めるとしては、ありなのか?いや待て、ガッドから嫁を貰うとなると国内のパワーバランスが崩れる可能性も……フェニクスに爵位、魔力、他国とのバランスを考えた相手を見繕って、いや、しかし、リョウとアリスの子はガッドに再度婚姻?リョウにはもう一人側室を娶ってもらって……それとも、俺が?」

 「……屋敷の者を呼んでくる(訳:付き合いきれないので、帰ります)」

 「ムニャムニャ……(……あったかい)」

 「ん~……(抱き枕?あったかいな~……)」

 兄達の喧騒を他所に、幸せそうに眠る弟妹たちでした。















 『我が主、ご所望のジゴロ白桃最新刊、持ってきましたよ』

 『―――――――――!!(早く読ませろ、とせがむポーズ)』

 『はいはい……いかがですか?』

 『(読書中)……wwwwwwwwwwwwww(爆笑)……!!!!!(読み終えた後、床に叩きつける)』

 『(何故毎回怒るのに、新刊は買ってこいとおっしゃるのか……)』








 後書き
 これはひどい。何故こうなった。
 書き出す→何故かどシリアス→筆止まる→書き直す→アリス出ない→出るまで頑張る→始祖竜一本勝ち→気が付けば13000文字超え。
 ……うん、私らしい作品だ。
 とりあえず、プロローグ部分はここで終了です。
 次回から学園編、ようやく他の転生者出せます。
 今のうちに言っておきます。今回よりきっとひどいネタ作品です。
 それでもいいという剛の方、お待ちしております。



[30767] 転生狂騒曲 第5話 カオスな「初めまして」
Name: 柘榴◆f3f758c4 ID:fef1d7d0
Date: 2011/12/11 07:55
 今回はいつもより文章料+自重が少なめです。
 私は一向に構わん!という方は↓へ







 転生狂騒曲第5話
 カオスな「初めまして」


 早いもので、あの出会いから数ヶ月が経ちました。その間をダイジェストでお送りします。

・起きてから
 「リョウ、とりあえず責任取ろうか」
 「意味が分からないよ、兄さん」
 「アリス、何があったんだ!?」
 「…ジゴロ(白桃)……」
 「「さぁ、責任取ろうか?」」
 気が付けば婚約(ただしあくまで仮約束。流石にまだ6才ですから)

・読んでみた
 「……これ、ジゴロ白桃」
 「これが例の……(少年読書中)……ぶふぉお!!?……(パタン)……死にたい……」
 面白いんだけど、あれに笑った自分に怒りを覚えました。しかも何故か続きが気になる自分に、死にたくなりました。

・お外
 「……広い、ね」
 「そうだね」
 「……空が、青いね」
 「……うん」
 「……もう、ゴールしていいよね?」
 「それは駄目」
 「……アイ キャン フライ?」
 「偶にアリスがこっちの世界の人と思えないよ」

・兄の心、弟(妹)知らず
 「最近溜まってないか(ジャバ)?」
 『出来るなら、戦わせて欲しい』
 「……だって。お願いしていい?」
 「…(コクリ)」
 ~3時間後~
 「ルーシェ、アリスがリョウ君と一緒の部屋で二人っきりにしてって言ってから、まだ戻ってこないよ!!?どうすればいいの、どうすれば!!?」
 「……本格的に婚姻関係、策謀するか……?」

・分かり合いたい
 「……っていうことがあったんだ。あ、俺ばっかでごめんな、ジャバは何か話したいことある?」
 『いや、聞いているのも楽しい』
 「……そっか」
 「……什麼生」
 『説破』
 「……」
 『……』
 「『結構なお手前で(ペコリ)』」
 「あのコンビはあれで何がわかるんだろう?」

・大魔王からは……
 「ん~、今日は何しようかな?」
 「リョウ様?お暇なら私と『少々』手合わせしましょうか?」
 「……(全力ダッシュ!!!)」
 「そう行くと思って、落とし穴を少し……あぁ、遅かったですね」

 ……余計に分かりづらくなった。まぁ、とにかくこの数ヶ月はジャバと俺、アリスとバンダーが互いをよく知る為に費やしました。アリスと俺は……どうなんだろう?面白いけど、よく分からない。よく分からないから、面白いのか?

 あぁ、例の精神世界は一人でも、二人でも行けました。なんかARMSが覚えたみたいです。……こうして考えるとARMSって学習能力高いよな。

 「リョウ」
 
 「ん?どうしたの、アリス?」

 「見えてきた」

 お、どれどれ……

 馬車から石畳の先を見ると、そこにそびえ立つのは巨大な煉瓦で出来た白い城。

 「あれが……ラングラン国立学園」

 遠目からでも分かるその大きさに驚かされる。

 「まぁ、近隣諸国からも生徒集めてるって言ってたしな……」

 「私たちも、生徒」

 「そうだね、俺たちも今日から生徒だ」

 そう。今日から俺たちはあの学園で生徒として過ごすことになる―――――――――。





 結論から言おう。

 殺されるかと思った。

 「……リョウ、大丈夫?」

 「死にそうです」

 「……貴方は?」

 「私は平気。バラドルは死亡」

 「だから、バラドルはやめて、もといやめろ~……」

 今は、入学式も終え、教室に案内され、席にへたりこんでるところです。

 「……レンジ先輩?あれ、先輩でいいですよね……」

 「言うな~……聞くな~……」

 「いや、別の事が聞きた……まぁいいや」

 教室の中を見渡してみるが、俺と同じようにへたりこんでいる人が多数。

 だいたい30人位のクラスなのに、10人近くがそれってすごいな。

 「…リョウ、たくさん殴られた。面白かった」

 「あれは狙いすぎだろ、兄さん……てか、明らかにそれだと分かった人とそうじゃない人の扱いの差が激しすぎる」

 ……何があったか?端的に言うと『笑ってはいけない入学式』

 例
 ・『ぅわ~たしが~、この学園理事長の、ア~ンゼロットで、あ~るぅ~(若本ボイス)』
 ・『くたばれ、地獄で懺悔しろ♪後援者のシャルル=グランバです(小暮ボイス)』
 ・『レンジ、アウト~』→金属バットフルスイング→退場(ボタンで数回)
 ・式の最中の着席でブーブークッション(これは普通の生徒もアウトを食らう)
 ・『新入生の諸君!私はゼロ、君たちを全力で歓迎する!!!(あの格好で登場、某音楽に合せ、腰振りダンス。途中で腰を痛めて動けなくなる所で負けて吹いた)』
 他、多数。

 ネタで受けた人→ハリセン(なぜか痛い)

 つられ笑い等→『頑張りましょう』のハンコを額に押される(特に女子)

 ……文面だと分かりづらい?生で見てみろ、笑い堪えるの無理だから。

 あれ、絶対に転生者狙いでやったよね!?途中司会の義姉さん、なんかメモってたし!!

 ……まぁ、そんな訳で、今このクラスにいるのはその『ウケていた』面子が多く集められてる。

 これは、あれか?特別クラス的なイベントか?

 「……私、アリス」

 「私はアリューゼ。村一番の美女。ラブレター大募集」

 「……食べる?(飴取り出し)」

 「!!……生涯の友と呼ばせて!」

 ……隣ではよく分からない友情?が出来てます。

 「へっ。どいつもこいつも弱そうな奴ばっかだな」

 おぅっと、何やら隣から物騒なお言葉が。

 「あんた何失礼なこと言ってるのよ!!」

 「へっ、実際弱そうじゃねぇか。俺の隣の奴だって見るからに弱そうだし」

 随分と自信満々だな……誰だ?

 ムクリと顔を上げてみる。

 勝気そうな少年がこちらを見下した笑みを浮かべている。……見た目、同い年位か?

 「お?何だよ?文句あるのか?やるか?」

 「や、止めようよ、ハヤト……」

 「うるせぇぞタケシ!!また殴られてぇか!!」

 「ひっ……ご、ごめん」

 別の席に座っていた少年が、止めようとするが恫喝ですぐに泣きそうになる。

 ……あ~、あれか、そういうイベントか。まぁ、初期のあいつなら喧嘩っぱやいだろうし、まだ子どもだしな。

 「……いいよ、やっても」

 「……へぇ。弱そうな癖にいい度胸してるじゃねぇか」

 「ちょっと、ハヤト!!?」

 「はいは~い、とりあえず喧嘩始めま~す。席動かしてくれると嬉しいで~す」

 「……分かった」

 「手伝う、生涯の友」

 アリスとアリューぜ、他数名が協力的になって俺とハヤト?の周りの席を動かす。

 「……お前、勝てるのか?」

 「今のところはね。一応『高槻 涼』ですから」

 「!!……やっぱ、そういう展開、か。やりすぎるなよ」

 名前はまだ聞いてないが、おそらく転生者だろう、手伝ってくれる人にそう返す。

 最低系はやりたくないけど、こういう殴り合い、分かち合いイベントはやっぱ王道だろうし。

 「てめえ…俺を馬鹿にしてるのか?」

 「いや?むしろ結構強いだろうなとは思ってる。まぁ、特設リング出来るまで待とうよ」

 「……ねぇ、貴方あの子の知り合いなんでしょう?止めてあげてよ、ハヤト、口だけじゃないのよ」

 「…リョウが負けたら、皆にお菓子をあげてもいい」

 「!!そこの生意気な男子!全力で勝ちをもぎ取れ、私が応援する!!!」

 「……生涯の友は?」

 「友情とは、壊れるもの。具体的にはお菓子の前では」

 ……おいこら。

 「そこの青玉葱、気持ちはなんとなく分かるが、酷過ぎだろ」

 「貴方のことは忘れない。大事なお菓子の生贄として」

 「……こいつの保護者いるか~?どういう教育してんだ~?」

 「済みません、村でもこうなんです……」

 苦労してそうだな、赤髪。まぁ、お前に免じて許す。

 そんな無駄話してる間に、俺たちを囲うように机が配置される。

 「始める前に聞いといてやる、てめえの名前は?」

 「リョウ、だよ。そういうお前は?」

 「へっ、俺はハヤトだ。言っとくけどな、俺は村じゃ大人より強かったんだからな」

 「そう。ま、強かっただろうね。鍛えてるみたいだし」

 言いつつ、軽い半身を取る。握りは軽く、左手は下、右手は顎へ。全身から力を抜く。

 「……いつでもいいよ」

 「……上等っ!!!!」

 一足飛びにこちらへと踏み込み、左拳を振るってくる。スピードは結構早い、踏み込みも中々。

 ……イワオよりは遅いけど。

 向かってきた左拳を避けつつ、懐へ。

 相手の左腕を右手で軽く下に払うと同時に、相手の体重の乗っていない足を払う。

 空いている左手で、相手の腹部を押すようにして上へ。

 後は、相手の勢いがそのまま相手を地面へと叩きつける。

 「……がはっ!!」

 「……出来てしまった」

 イワオに似たように何度もやられたからな~、体が覚えてた?

 「……て、てめえ、なんで爺みてえに……」

 「あ、居るんだやっぱり。俺も似たように何度も教育という名の虐待受けたから。ハヤトもそうだろ?」

 「……嘘……」

 「ハヤトが……」

 「立て!立つんだ!私のお菓子!!」

 ぶれないな、青玉葱。

 「へ、へへへ……やって、くれるじゃねぇか……」

 笑いながら立ち上がるハヤト。ダメージは結構来ているのか、足はふらついてるが。

 「そのダメージはそのまま君の力量だから。結構パワーあるね」

 「随分と、余裕そう、だな……けど、これ見ても、その顔出来るか!!!」

 ハヤトの左手が爆発的に膨れ上がる。その手は硬質化し、腕からはブレードが、他の部分には刺らしきものが生えた盾のような形になる。

 「ハヤト!!!あんた、それは出すなってお父さんたちに」

 「るっせぇ!!!このまんまなめられっぱなしでいられるかよ!!!」

 知り合いの少女の声にハヤトは怒鳴り返す。

 第2形態か……怒ってこれってことはまだ完全形態は行ってないな。

 まぁ、あのARMS的に怒りで目覚めることはないだろうけど。

 「へへ……見ろよ、この左手。これでも、まだ、やるか……?」

 そう言いながら、こちらに剣を向けるハヤト。けど、刃先は震えてる。

 「……これで、誰か斬ったこと、ある?」

 「!!だ、だったら、どうだってんだよ!!お、お前も、これで斬られたいのか!!?」

 ……ふむ。斬ったことはあっても、事故っぽいな。これ見せればビビるって考えで出しただけっぽいし。

 「斬られるのは痛そうだから……俺も出しとく」

 制服の袖をまくり、右腕を変化。

 と同時にこれまで抑えていたのか、急に互いの腕が共振を起こす。

 「な!?」

 「ええ!!?」

 「痛ぅ!!」

 「……おぉ」

 あ、やば、他の面子にも影響いったみたい。

 「な、何で、お前、その腕……」

 「え?嘘?僕の足も!?」

 「な、何なのよ、この痛み……あんたも、そっちの子も何か出してるし!!!」

 「……リョウ、制服弁償」

 「ごめんなさい」

 出すことに慣れてるアリスからの文句にまず謝る。

 「えっと、まぁ、俺もハヤトと同じような事が出来るんだ」

 「うそ、だろ……だって、俺とタケシとケイしか……」

 「俺もアリスしか知らなかったから、ちょっと驚いた」

 「凄……生ARMS……」

 「オリジナル揃い踏み?しかもアリスってもしかしてバンダースナッチ!?やべ、ちょっと俺感動!!」

 あぁ、その気持ちは分かるかも。俺だって壮観だと思うし。

 漫画の中のあのARMSが生で展開だよ?ファンなら触りたくなる……うぉお!!?

 「悪い、ちょっと触らせて!!!凄ぇ、マジで硬い!!」

 「これが騎士のブレード……あぁ、騎士には憧れたな……ミストルティン超格好よかったし。コウ=カルナギ戦は最高でした!!」

 「いやいや、やっぱ白兎だって。藍空市篇のあれは武士輝いてた!!」

 「そこに待ったと言わせてもらうわ!…じゃない、言わせてもらう!!一番はジャバウォックと涼の誓いのシーンでしょ!!」

 「馬鹿野郎!!一番は巌と崖のシーンだろ!!あ、さっき鍛えてもらったって言ってたけど、それってやっぱり巌?」

 いつの間にか、俺たちARMS持ちはもみくちゃにされ、何故か始まるARMS談義。

 こいつら、俺が言えた義理じゃないが、転生隠す気無いだろ!!自重しろ!!!

 「い、いい加減にしろてめえらぁ!!!」

 ペタペタと左腕に触られていたハヤトが、遂にキレる。

 「お前ら、これが怖くねえのかよ……こんな、化け物みたいな……」

 「「「「「「え?全然?」」」」」」

 「……へ?」

 「だって、なぁ……背中に羽とか生えてる奴いるわけだし」

 「後、竜人?あんなのいるしなぁ」

 「そ、それでも、普通人族はこんなの生えないだろう!!?」

 「いや……ねぇ?」

 「だよね……じゃない……ん?いいのかな?……ん、まぁ、私も変な力持ってるし……じゃない、俺、俺!私は男!!」

 「いや、どう見ても女だから。変なのっていったら、俺だってほら」

 「おぉ!こっちも右腕が!!白い右腕?やべ、元ネタ思い出せない!!」

 「あ、俺も出せるよ。光の翼~(ピカーン)」

 「この流れはあれか?俺も着なきゃ駄目か?」

 「あ、やっぱ着るのね。明らかに狙ってただろ、その鞄」

 ……え~、見事にカオスになっております。まぁ、元は皆オタだろうしな……

 「……あ~、ハヤト?」

 「……へ?お、おぉ……」

 「後、タケシとケイ、で合ってる?」

 「え?う、うん」

 「な、何?」

 「まぁ、同じようなのは俺たち5人みたいだし、これからも仲良くしようよ」

 言いつつ、ハヤトの左手に俺の右手を傷つけないように乗せる(下手に傷つけてARMS殺しとか笑えません)

 「……あ……」

 「ん。私、アリス=ガッド」

 言いつつ、机を乗り越えて、アリスが更に右腕を乗せる。

 「ほら、そっちも」

 「え?」

 「えっと……」

 手招き、手招き。

 少し考えて、おずおずと机を越えてこちらに寄って来る二人。

 「はい、乗せて乗せて」

 「お、おい、お前」

 「いいから。あ、俺、リョウ=グランバ」

 「僕は……タケシ、タケシ=トモエ、です」

 「ケイ=クルマよ」

 それぞれ名乗って、右手が乗せられる。この二人は部位が手じゃないしね。

 「……で?君は?」

 「……お、俺は、別に……」

 「……空気読め~」

 「アリス、普段は君が一番空気読めてないよ」

 「……空気嫁?」

 「いい加減その辺の微妙なネタは自重しよう」

 なんて、寸劇やりながらも乗せた手は外さない。

 「さ、元気良く行ってみよう!」

 「ちっ……ハヤト……ハヤト=シングウだよ……」

 照れたような、いらついたような、何とも子供らしい挨拶。

 「うん、ハヤト、タケシ、ケイ、改めてアリス、これからよろしく」

 「……う、うん!よろしく!」

 「よ、よろしく…」

 「しかたねぇ……よろしくしてやるよ」

 「……よろしく」

 うん、何かいい感じ。これからこの5人の挨拶これにしようかな。

 「ワタシ、アリス!コンゴトモヨロシク!!」

 「ねぇ、本当にそれ始祖竜の本に載ってるの?マニアック過ぎない?」

 始祖竜、お願いだからこれ以上本出さないで。アリスがどんどん遠くになっていくから。見た目は金髪碧眼のお人形みたいな顔なのに。

 「ちょ!!ARMS5体の誓いのシーンっぽいのが!!」

 「だ~!!何でこの世界写メないんだよ!!永久保存だろこれ!!!」

 「いや確か転写魔法みたいのあったはず!!誰か使えないか!!?」

 「無理!そういう才能ゼロ!!」

 「同じく!そんな便利魔法は使えない!!」

 「才能は全て歌に持っていかれた~~~!!!」

 「欲しいときに使えない自分の能力が恨めしい~~~!!!」

 喧喧囂囂とするクラス。なんていうか……楽しそうでは、あるかな?

 入学初日から、そんな事を思う俺でした。













 『……我が主、何をしてるんですか?』

 『!!(何かの紙を見せる)』

 『……はぁ……以前転生させた人の能力ですね……は?この部分?……はぁ……は?いや、それはちょっと……え?大丈夫……いや、まぁたしかにそれなら……本気、みたいですね……』

 『!!!!(神様がアップを始めたようです)』




 後書き
 予想外に長くなりそうなので、詳しい自己紹介は次話で。
 しかし、転生者自重しないな……。
 何名か、元ネタがギリギリ分かりそうな人もいますが、これだけで分かる人がいたら凄いです。
 まだ書いていないので、次話は間が空くかもしれません。
 それでは、また


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