日本では明治以降、多くの学校で英語を教えていましたが、どちらかと言えば対訳法の翻訳中心の教室における学習形態でした。しかし発音を重視した英会話の教育はNHKのラジオが始まりでした。そして1950年代にはテレビが各家庭に普及して、NHKの教育テレビでも英会話番組が人気を博していました。ネイティブが英語を話してくれる番組で英会話教材のネイティブの画像と発音が聞ける画期的なものでした。
日本において英語の音声教材はリンガフォンが最初でそれは1961年に日本の有名書店18店にてコンサルティング販売開始したのが始まりです。この頃の媒体はレコードでした。媒体のコストが安いこともありペラペラのソノシートも多く使われ雑誌などの付けられるのはすべてソノシートでした。レコードタイプの教材は高価だったので誰もが購入できるものではありませんでした。
1960年の始めには高価で重量が8Kgくらいありましが個人用のテープレコーダーが販売されています。このテープレコーダーの出現により英会話学習者は好きな時にネイティブの発音を聞き、自分の発音を録音して自分の発音を聞いたり、ネイティブと比較できたりする時代を迎えました。
1966年LL教室用のオープンリール方式のオーディオテープの教材が提供されるようになりました。当時、オープンリールは主に学校や業務用に使われており、一般家庭で音声教材を使って語学の学習を実現する手段はまだありませんでした。この時期に大学や英会話学校でLLが導入され広く使われました。このLLはその後コンピュータと組み合わせたCALLシステム(Computer
Assisted Language
Learning)となりました。これらのシステムはワープロソフトやインターネットなど、パソコンを利用した効果的で効率の良いシステムとなっています。
1970年代に入り、カセットテープ市場が急速に伸びカセットテープデッキが一般家庭に普及すると、語研の音声教材も時代に合わせてカセットテープへと形を変えました。語学学習専用のテープデッキなども発売されていました。さらに、カセットテープデッキはポケットに入るサイズになり、一人に一台の時代を迎えます。いわゆるヘッドホンステレオの時代です。好きな場所で学習する、語学学習のスタイルが大きく変化した時代でもありました。ソニーによって開発されたウォークマンなどの携帯型のカセットテープデッキが有名です。本来は音楽を持ち運んで聞くものですが、語学の学習に関して言えば机に向ってという学習スタイルを「いつでもどこでも」に変えた功績は非常に大きいと思います。
1980年代に入り、CDがオーディオ市場の中心となります。CDはカセットテープに比べ音質や多機能な再生プログラムなどにおいて優れていましたが、取り扱い容易さに関してはカセットテープが勝っており、語学学習においてはまだまだ欠かせないアイテムでした。
1990年代の半から書籍や雑誌にCD-ROMやCDが付くようになりました。語学の音声教材もテキストと一体化した、いわゆるCDブックが増えてきました。パソコンの普及と共にパソコンを使いインターネットやCDを使う英語学習が急速に進みました。この頃、持ち歩くための音声媒体はMDが中心になっていました。学習用として根強い人気を誇っていたカセットテープは徐々に姿を消していきました。またこの頃にはビデオテープもVHSが事実上の統一規格となり英語教材にも広く使われるようになりました。
1990年代の後半になるとパソコンとインターネットが普及して英語学習にも広く活用されました。パソコンで英語をデジタルデータとして検索、編集、登録ができるようになりました。またインターネットのサイトでは各種のネイティブの発音の音データがほぼ無料で無尽蔵に使える時代がきました。
またこのころには音素を音やビデオ画像と共にビデオテープやCDやDVDで提供する教材も急増しました。21世紀になり、パソコンやインターネットの普及が思いもよらぬ形で音声教材を進化させることとなりました。DVDが普及することのよりCDよりは保存データ量が大幅に増えたことにより、音のデータに画像が付くようになりました。ビデオテープもDVDも映画などを繰り返し見ることができるようになった功績は大きいのですが、英語の映画は映画館でもまたテレビなどで見ることができたので新しい学習方式と言えるものではありませんでした。
しかしDVDプレーヤーはテープデッキと違い多くの機能を持っているため英語の映画を英語学習に取り入れには非常に良い教材になると思います。DVDにしてもテレビなどで見られた映画が好きな時に好きな状態で見られるだけで、画期的な新しい学習方法とはいえないと思います。
2000年を過ぎるとフラッシュメモリーを使ったMP3プレーヤー、ICレコーダー、iPodが普及しました。これにより胸のポケットに入るような機材でどこでも、いつでもネイティブの英語を聞いたり、自分の発音を録音したりする機材を手にいれました。
メディアをうまく活用した、効率の良い英会話の学習手法が確立されるべきだと思っています。
そして現代の我々はPC、インターネット、ビデオ、DVD、ICレコーダー、iPodのような文明の利器を活用することにより、必要な英語の発音や表現を必要なだけ手元に入れて、好きなだけ勉強できる環境を手に入れたのです。
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