「今回の問題はきちんとケジメをつけないといけない。このままで済ますというのでは、これ以上ＯＢ会長を続けることはできない。とても心から応援する気持ちにもなれない。責任を取って駒沢大学野球部ＯＢ会長を辞任する。野球部員やその親御さん、これから入ってくる選手に対しても申し開きができない。野球部監督は指導的な立場の人間だ。大学野球部は人間教育の場でもある。自分で自分の身を処せない人は監督をやるべきではないです」
　駒沢大学野球部のＯＢ会長・中畑清氏が沈痛な表情でこう話す問題が同大野球部で起き、いま、大揺れに揺れている。小椋正博野球部監督（５８）がスピード違反、酒酔い運転の交通違反を起こし、７２０日の免許停止処分を受けていたのだ。
　小椋監督は長野の松商学園から駒大に進学。現役時代は捕手。東芝をへて駒大コーチになり、０６年から監督を務めている。中畑会長とは同期である。
　小椋監督が酒酔い運転とスピード違反で２年間の免停（他に減点）の行政処分を受けたのは２年前の０９年６月２９日。沖縄に大学の仕事で滞在していたときのことだ。６月末といえば春のリーグ戦も終了。翌年に向けての高校生の視察、スカウト活動のため沖縄に滞在していた。小椋監督の運転する車がスピード違反で警察の検問に引っかかり、酒の臭いがしたためアルコール検査をしたところ酒酔い運転も発覚したという。
　交通違反、特に酒酔い運転は今、大きな社会問題になっている。企業や官公庁では解雇や一定期間の免職など厳しい処分が下されるのが普通だ。
　ところが大学側の処分は厳重注意と野球部活動の謹慎１０日間だけ。しかもペナルティーが下されたのが、違反を起こしてから１年半近くたった今年の１月になってからだ。この処分の甘さ、そして時期。違反をあいまいにして隠蔽しようとしたのでは、と疑われても仕方がなかろう。
　野球部ＯＢを中心に学内でも問題視され、先月２６日に行われた野球部ＯＢ総会でも同監督の責任、去就を巡って厳しい意見が出されたという。中畑会長も自ら乗り出して小椋監督に辞任を説得した。

＜大学にモラル、当事者能力はないのか＞

　日刊ゲンダイ本紙の取材に同大学の藤野広報課長はこう答えた。
「小椋監督が沖縄で酒気帯び及びスピード違反を犯し、７２０日の免停処分を科せられたことは報告を受けています。沖縄に行ったのは大学の仕事です。処分は厳重注意と野球部の謹慎１０日です。処分が甘いとか、そのあたりのことは、学生課が決め、大学当局も了承したと報告を受けていますから……。監督から辞任したいと申し出たという話はありませんでした。監督がそのまま指揮を執ることに関しては、子供さんを預かる立場ではありますが、厳重注意と謹慎ということで……。処分に時間がかかった？　そのことは報告がないので……。（大学にこうした違反の）処分の規定はなく、その都度ケース・バイ・ケースで決めています」
　また野球部長の猿山義広教授もこう話す。
「小椋監督の交通違反については報告を受け、野球部として大学に連絡しました。野球部としては処分はしていません。大学側の処分についてはどのようなものであれ、受け入れることにしていました。処分は大学側が総合的に判断して決定したと。小椋監督が監督を続けることについては、監督が反省し、大学側が処分をし、その上に立って指導してもよろしいと判断したのだと思います」
　大学といえば最高学府。しかも野球部監督といえば選手を指導する立場である。より厳しいモラル、ケジメが求められるはずだ。それなのに大学側も野球部もいかに深刻な事態なのかをきちんと理解していないようだ。モラルも当事者能力もないと言わざるを得まい。それとも何かしかるべき処分を行えない理由でもあるのだろうか。
　駒沢大学野球部といえば最近は成績不振だが、東都大学リーグ１部で優勝２６回を誇る名門。ＯＢでは森繁和、石毛宏典、中畑清、野村謙二郎、現役では新井貴浩、武田久、高橋尚成など多くのプロ野球選手も輩出している。１９７１年から３５年間にわたり同野球部を指導、多くの選手を育て、小椋監督にとっては恩師でもある太田誠前監督はこう言う。
「飲酒運転、スピード違反は今は非常に重い罪です。コトの大きさをしっかりと認識しなければいけない。人に言われてやるのではなく、小椋監督はよく内観し自らの処分をしっかり考えるべきだ。本来ならもっと早く対処しなければいけない問題です。遅きに失した感はあるが、自らにペナルティーを科して監督は辞任すべきです」
　小椋監督には取材を申し入れたが、締め切りまでに連絡がなかった。
　いずれにしてもこのまま放置すればコトは一野球部監督の問題では済まなくなる。