国民年金の財源不足を国の借金で賄う年金債について、一橋大・高山特任教授の解説です。
社会保障と税の一体改革で、年金の問題が相次いで取り上げられています。
11月、「年金債」という文字が新聞の見出しを飾りました。
国民年金の財源不足を国の借金で賄おうという年金債について、一橋大学の高山憲之特任教授の解説です。
(年金債というほどであるから、債券、国の借金になるわけだが、年金の財源はひっ迫しているのか?)
まず、年金の構造をおさらいしておきたいと思います。
1階が基礎年金、2階が厚生年金や共済年金、そして3階が企業年金や個人年金です。
今回のこの年金債は、1階の基礎年金の財源として構想されたものなんです。
基礎年金は、制度発足以来、その3分の1を国の税金や借金で賄ってきました。
2009年の段階になって、この国庫負担割合を3分の1から2分の1に引き上げたんですけれども、その際に、財源としての増税は行いませんでした。
国の特別会計の剰余金、いわゆる「埋蔵金」を充てることができたからです。
(2009年の段階で、すでに増税などをして、穴埋めをしておかなければならなかったのでは?)
おっしゃる通りです。
ただ、小泉政権のあと、日本の政権は短期間で次々に交代しておりました。
非常に不安定な状況が続きました。
さらに、2008年の秋に、リーマンショックが起こりまして、増税どころではなくなってしまったんです。
(今後も埋蔵金頼りになるか?)
ただ、埋蔵金にも限りがあります。
特にことしは、震災の復興財源として、埋蔵金をかなり使いましたので、財務省によりますと、もうないということになってしまったわけです。
(いよいよ増税しかない?)
ただし、増税には痛みが伴います。
そのために、反対も強うございます。
すぐに実現するという状況ではございません。
そこで、2012年度については、国の借金で賄おうということなんです。
(国の借金も限界だと言われているが?)
2012年度の国債発行額は、44兆円とする方針でして、これを上回るということはできません。
そこでやむなく、国庫負担の土台部、これについては年金債という、赤字国債とは別の財源で賄おうというわけです。
その償還財源として考えられているのが、消費税なんです。
消費税で年金債を補った場合だが、年金の国庫負担分の差額は、およそ2兆5,000億円だという。
実はこの金額は、消費税を1%増税した場合のほぼ1年分にあたるという。
(どうしても増税が必要で、国民の負担で年金を支えていこうということになるのか?)
おっしゃる通りでして、消費税を含む増税は避けられません。
将来の安心、これを確保するためには、国民全員で支えるということが必要になります。
今の若い人の中には、年金の保険料を納めない、未納の人が増えていますけれども、この未納な人も、実は基礎年金の2分の1については、消費税等で負担しているんです。
年金は、一定期間保険料を納めないと、将来受け取る権利を失ってしまう。
例えば年金給付が月額6万円の場合、そのうちの半分の3万円は保険料負担分、残りの半分は税金などになる。
例え年金保険料は払っていなくても、消費税など税金は徴収されているので、その税金負担分を年金受給者にプレゼントする形になり、年金として税金を取り戻すチャンスも失うことになる。
(保険料を払ってないと、もらえるべきものまでもらえなくなってしまう?)
おっしゃる通りですね。
(12/11 20:32)