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調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロイン43【悪堕ち】

1 :名無しさん@ピンキー:2011/09/23(金) 20:41:09.40 ID:fkvEGKVY
調教や洗脳などで悪の奴隷に堕ちるヒロイン達・・・
【ヒロイン悪堕ち】シチュ全般に激しく萌える心優しき同志がまったりと過ごすスレッドです。

◆前スレ
調教や洗脳などで悪の奴隷になるヒロイン42【悪堕ち】
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1309510478/

 ◆注意事項
◎ウザイ広告阻止のため、sage進行にご協力を
◎dat落ちは最終書き込み時間で決まるので、age保守しなくても大丈夫
◎「教えて」と聞く前にまずググル(ttp://www.google.co.jp/)
◎ふたばのことはふたばでやれ
◎荒らし、煽り、広告は無視の方向で
◎気に入らない属性や話題もNGワード使用を推奨します。マジレスしても得るものはありません
◎うpろだの使いすぎには注意
◎レス数が970を超えたら次スレを立てましょう

 ◆関連スレ、関連サイトへのリンク
悪堕ちするヒロインを語るスレ
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/feti/1254322952/
MC関連ページ リンク集 (実写非対応)
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/MCGAME.htm
MC関連スレ保管庫(画像掲示板へのリンクあり)
ttp://marie.saiin.net/~mcharem/MClog.htm
悪堕ち作品情報まとめWiki
ttp://wiki.livedoor.jp/akuoti/d/FrontPage

844 :178 猟血の狩人12回:2011/11/30(水) 23:11:30.63 ID:AkZk1eG8
こんばんわです。本当に久しぶりにアップローダーを使わないでの投下です




「あそこか…」
タオファが留まることで屍鬼の追撃を振り切り、ティオはようやっと灯りがともる村長の屋敷の前まで辿り着いた。
出来ることならこのまま屋敷の中に飛び移れればよかったのだが、あいにく村長の屋敷は周囲を垣根でぐるりと覆っており、中庭のような敷地まであってとても飛び移ることなど出来そうにない。
そうなるとこのまま下に降りて一階から目的地に辿り着かなければいけないことになる。
幸い月明かりに照らされる下にリビングデッドの姿は見られないが、ここまで暗いと死角はいくらでも存在しておりどこからいきなり現れるか見当も付かない。
正直、一人で進むには余りにも危険が過ぎる。しかし
「それでも…、いくしかない」
なにしろ後方ではタオファが一人で屍鬼を食い止めているのだ。この貴重な時間を無駄にする訳にはいかない。
もちろんティオはタオファの真意も後ろで何が起こっているかも知らない。闇夜はティオの視界を著しく狭め、剣戟斬撃の音も僅かに耳に止まる程度だ。
それでも普段のティオなら後ろの異変に気がついたのかもしれないが、生存者を助けるという焦りと昼間からのリビングデッドとの戦いで疲労した心身は周囲の異変を感じる力を損ねてしまっていた。
だからこそ、無謀な単身突入をあっさりと決意してしまったのかもしれない。
「…それっ!」
ティオは屋根から地面に飛び降りると周囲を一瞥し、リビングデッドが現れないのを確認した後村長の屋敷へと足早に近づいていった。


「さて、どこから…」
屋敷は例の部屋以外からは灯りが全く灯っておらず、全体がシィンと静まり返っている。
出来れば声を出して生存者に自分の存在を知らせたいが、そんなことをしてリビングデッドを呼び寄せてしまったらまさに薮蛇だ。
となると必然的に自分があの部屋まで行くほかはない。
「外壁からは……無理か」
外壁を伝っていけば一番早いのだろうが、加工石を積み上げた外壁は思った以上につるりとしていて手をかける場所に乏しい上、ティオのぞろりとした冬服はよじ登るのにはいかにも不向きだ。
だったら服を脱ぎ捨てればいいという考えもあるが、ティオの武器である長剣のスペアは服の裏地に縫いこんであるのでそれを捨ててしまったらただでさえ心もとない戦闘力が大幅に落ちてしまう。
おまけに灯りがついている部屋は四階なので、服を着たまま辿り着くのはどう考えても不可能だった。
つまり、一階のどこかから進入して地道に上を目指すしかない。
「となると…どこか入れるところは……」
なるべく目立たないよう、ティオは慎重に気配を消しながら入れそうなところを物色してみた。
進入する際は出来るだけ音がしない方がいい。音がしたその時点でリビングデッドを引き寄せてしまう可能性があるからだ。
となると、ぴっちり閉められた玄関を開けるわけにはいかない。下手に軋みでもしようものならその後の収拾がつかなくなる。

845 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:12:49.45 ID:AkZk1eG8
「うまく窓が開いていたりしてくれたらいいんだけど……」
これだけリビングデッドの大規模な襲撃があった以上、まさか無用心に窓を開けていることはあるまい。と、ティオは考えていた。が、玄関から少し離れた部屋の窓がなんと無用心に開いているではないか。
「……うそでしょ」
はっきり言って都合がよすぎる気がするが、ティオは思わぬ僥倖に目を輝かせた。これなら大して音もしないで屋敷の中に入れる。
「やった!これも日頃の行いの賜物賜物!」
喜び勇んでティオは大して考えることの無く庇に手を掛け、ふわりと跳んで部屋の中へと入り込んだ。


この時ティオが少しでも頭を働かせていたら、窓が開いている=リビングデッドが中に進入している=生存者がいるのがおかしい。という考えが思いついたかもしれない。
が、上記の通り今のティオは極端に心身が疲労しており、そこに思い至ることがなかった。
そのため、ティオはタオファが張った罠にみすみす飛び込む羽目になってしまった。





「やっぱり、真っ暗ね…」
屋敷の廊下に通じるドアを開いたティオは、月明かりすらほとんど入らない真っ暗な廊下を見てぼそりと呟いた。
これではどこに何が潜んでいるのか見当もつかず、不意打ちに常に警戒しなければいけない。
だからと言って懐にある携帯ランタンなど使おうものなら自分の存在をリビングデッドに知らせてしまうことに他ならず、第一片手がふさがれる状況というのは即命取りになりかねない危険を孕んでいる。
幸い廊下にリビングデッドや屍鬼の気配を感じることはない。それどころか鼠一匹動くものは見当たらず、この屋敷全体が死の静寂に包まれているとさえ錯覚させられてしまう。
「まあ、リビングデッドに隠れるなんて知恵はないから動いているものさえいなければ大丈夫、なはず…」
『はず』なのはティオがリビングデッドに関する明確な知識を持っていないからである。吸血鬼狩りを専門にしていたティオは恥ずかしいことだがそれ以外の人外に対する知識は甚だ心もとない。
本来なら対吸血鬼以外のこともきちんと学習していなければいけないはずなのだが、学科があまり好きではなかったティオは自分にはいらない知識だと疎かにしてしまっていたのだ。
こんなことならもう少し真面目に勉強しておくべきだったと今さらながらに後悔したが、今となってはまさに後の祭り。
今ある知識と武器でこの局面を乗り切るしかない。
「なんにせよ…上に行くしかない、か」
ティオは出来るだけ足音を立てないよう、そして周囲への警戒を怠らないよう慎重に一歩づつ足音を殺して進みはじめた。
視界が殆ど利かない木製の廊下がキィ、キィと軋むたびに緊張が走り、その都度ティオは顔を左右に振って怪しい動きをしている者がいないかを警戒していた。
初秋に差し掛かってきているとはいえ外気温はまだまだ高く、ましてや屋内ともなれば夜になっても蒸し風呂のように蒸し暑い。
異様なほどの緊張と熱気でティオの額からは冷や汗と普通の汗がダラダラと流れ、湿気を逃がさない冬服のせいで服の下はサウナの如く蒸しあがっていた。
あまりの蒸し暑さと緊張からティオの意識は幾度となく途切れかけ、飛びそうになるたびに一息ついて心の緊張を解していく。
そのため普通に歩けば五分と掛からないであろう四階の問題の部屋までの道のりを、ティオは十五分も掛けてしまった。

846 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:14:04.72 ID:AkZk1eG8
「やっと…、ついたわ…」
部屋に来た頃は体はともかく心の方はヘトヘトであり、出来ることなら今すぐ横になって何もせずにボーッとしていたい気分に駆られる。
が、今はそんなことをしている暇はない。ようやっと目的地に辿り着くことが出来たのだ。
ここに辿り着くまでに相当な時間をかけてしまった。にも拘らずタオファが後から追いついてくる気配がない。
もしかしたらティオが見つけた入口を見つけられずに難儀しているのかもしれない。最初にタオファのために入口を知らせる目印を置いてこなかったのは迂闊といわざるを得ない。
が、それならまだいいほうだ。
もしかしたら、こっちに来たくても来られないのかもしれない。
屍鬼の退治に手間取っているか、それとも屍鬼に…
「…そう、よ。ここでボーッとしているわけにはいかない…」
生存者をすぐにでも安全なところに誘導し、然る後にタオファを助けに行かなくては。
何も知らないティオは自分を殺そうとしているタオファのことを気にかけ、さして考えることなくドアを開けた。
「…うっ」
それまで殆ど灯りがない場所から弱いとはいえ急に灯りの灯る部屋に入ったため、ティオの目は眩しさで少々眩んでしまった。
ティオが眩しさで細めた視界に入ってきたものは
壁に掛けられた弱々しいランプの光。窓側を向いた巨大なクラシックチェア。
そして、その椅子の肘掛から見える少女のものとみられる細い服の袖だった。

「!!」

やっぱり生存者がいた!
ティオはここまでの苦労が無駄ではなかったことにことのほか喜び、それまでの慎重さを忘れたかのようにどたどたと床を駆けて椅子に座っている少女の元へ近づいていった。
あの子に聞けば一体この村に何が起こったのかがわかるだろう。
これだけの大きな村がほぼ全滅するような事態がなんなのか、聞き届けないわけにはいかない。
そして、一刻も早くこのリビングデッドの巣窟と化した村から脱出しなければならない。
へとへとになっている体で少女一人抱えて逃げるのは困難極まりないが、やらなければいけないのだ。
まあ、いざとなったらニースに托せば大丈夫だろう。
「大丈夫?!もう心配な…」
ティオは窓側を向いている椅子の正面に周りこみ少女を安心させようとして……凍りついた。

「え……?!」

ティオの視界に入った少女…
いや、それは少女『だったもの』だった。
服こそ真新しいものだが、その顔面は腐りはて腐汁が襟首を赤黒く染めている。
半開きになった唇は一部が崩れて黄色く変色した歯が覗き、袖口から出ている手の片方には掌がなかった。
これみよがしに灯りの付いた部屋にいたものは、生存者ではなくかつて生きていた者のなれの果てであった。
「…なんで……?」
思わぬ事態にティオは呆然となった。

847 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:15:20.15 ID:AkZk1eG8
灯りが付いている以上少なくとも一日以上この部屋に誰もいないということはない。そのまえにランプの油が切れてしまうからだ。
となると、この少女の死体は灯りを消す前にリビングデッドに襲われて殺されたというのだろうか。
が、それにしては死体の腐敗が酷すぎる。これはどう考えても一日二日経ったものではない。
少なくとも一ヶ月以上、あるいは死体蘇生術で墓場から蘇らされたリビングデッドか……
「ッ?!」
その時、少女の死体の指がピクリと動いたのをティオは見逃さなかった。

「ガアアァッ!!」

それまでピクリとも動かずただの死体だと思っていた少女は突如立ち上がって唸り声を上げるとティオ目掛けて残った手を突き出してきた。
その腐りかけた爪先には相手を麻痺させる毒がたっぷりと染み込んでいる。
「くっ!」
咄嗟にティオは横へと跳ね飛んでリビングデッド少女の突きをかわし、反射的に長剣を振るってリビングデッド少女の手をスパン!を斬りおとした。
が、当然痛覚など持たないリビングデッドは怯むことなくボロボロになった歯をクワッと剥いてティオに噛み付こうと突っ込んでくる。
「……ごめん!」
別に謝る必要などないのだが、なんとなく心が痛んだティオは一言謝るとリビングデッド少女の腹目掛けて渾身の蹴りを放ち、突進してきたカウンターで蹴りを食らったリビングデッド少女は窓まで吹っ飛びガラスを派手に叩き割って外へと消えていった。
窓の外からぐしゃりと肉が潰れる音が聞こえ、ティオは心の中で十字を切るとすぐさまドアへと取って返した。
いったい何が起こっているのかティオには把握できない。
しかし、今ここに留まることは非常に危険だと戦いで培った勘が警告を鳴らしていた。
そして、一歩廊下に出たときティオは自分の勘が正しかったということを身をもって理解した。
「…これって、どういうこと…?!」
どこに隠れていたのか、ここに来るまでは一体も現れなかったリビングデッドがわらわらと湧き出し、ティオがいる部屋に近づきつつあるではないか。
部屋での喧騒に反応して寄って来たのは理解できないこともないが、その数はとてもティオで対抗できるものではないほどのものだった。
「クッ!」
ティオは慌てて踵を返し、ドアをバタンと閉めると部屋の中の椅子やら机やらをどかどかとドアの前に置き即席のバリケードを作った。
そのバリケードがなんとか形を作った直後、ドアの向こうからリビングデッドが部屋に突入しようとドアや壁をガンガン叩きまくってきた。
が、どうやらバリケードは功を奏しているようで今のところドアが破られる気配はない。
「はぁ…はぁ……。とりあえずは大丈夫そうか…」
ひとまずの安全が確保され、ティオはへたりとしゃがみこんだ。
なにしろただでさえ疲れている上にここまでくるまでの張り詰めた精神的緊張、そしていまの即興のバリケード作りである。体がまともに動く方がおかしいかもしれない。
今のうちに少しでも体を休めて体力を回復させねばならない。のだが、いつまでもこうしているわけにもいかない。
リビングデッドの怪力を考えるとそれほどバリケードが持つとも思えないからだ。

848 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:16:34.48 ID:AkZk1eG8
廊下がリビングデッドで埋めつくされている以上、ティオは唯一の脱出路といえる窓に近寄って外を眺めてみた。
かなりの危険は伴い昇るのは断念した方法だが、ここの壁に手を掛けて降りる以外に降りる手段は思いつかない。
一気に…はさすがに無理だが、外壁にいる以上リビングデッドに襲われる心配はないから時間をかければ…
と思ったティオだったが、階下を見てその顔は真っ青になった。
「うそ…」
さっきリビングデッド少女を落としたからだろうか、階下の中庭にはリビングデッドがわらわらと集まり辺りをうろうろと徘徊していた。
どうやらティオのことには気が付いていないようだがこのまま下に降りたら間違いなく襲い掛かられてしまい、その時のティオは石壁を降りてくることで体力を使い果たし長剣を握る握力すら残ってはいないだろう。
このまま降りたらリビングデッドの餌食になってしまうのは確実であり、とてもではないが降りることは出来ない。
しかし、こうしている間も廊下側のリビングデッドはバリケードを力ずくで排除しようとガツンガツン体をドアや壁にぶつけてきており、ドアがギシギシと悲鳴を上げてきている。
これではここに留まっていても下に降りてもティオの運命はそう変わりはしない。
「ど、どうすれば…。どうすれば……!」
切羽詰って焦りが出始めたティオが何か手はないかと部屋をぐるぐると見渡し…
窓にかけられている古びたカーテンが目に入った。
「っ!これなら……!」
一計を思いついたティオは長剣を法衣に仕舞いこむとカーテンを掴んで一気に引っ張り下ろし、二枚のカーテンをつなぎ合わせて一本のロープ状にした。
それを窓枠に縛りつけ窓からポイッと放り投げると、なんとか直下の三階の窓まで届くくらいには垂れ下がった。
地面まで降りることは出来ず、さりとて廊下に飛び出るわけにもいかない。
なら、下の階に逃げ込むのが唯一の逃走経路だ。
それしか方法はないのだ。だが、まだ不安要素は残っている。
「あとは……生地が持ってくれればいいんだけど……」
そう、ティオを支えるこのカーテンは相当年月が経ったもので日に焼けて色は褪せしなやかさも全くなく、縛っている時も所々で糸が解れたり切れたりしていた。
ティオ自身の体重は一応適性体重だと自分では思っているが、何しろ懐には四本の長剣といくつかの対吸血鬼用の備品が備え付けられているのだ。
それらを合わせた重さは決して軽いものではなく、万一カーテンが支えきれなかった時はティオの体はリビングデッドが無数に蠢く中庭に叩き落されることになる。
そうなると当然リビングデッドの餌食に、いやその前に落下の衝撃で即死してしまうだろう。
だからと言ってそれ以外の方法はない。このカーテン以上に長くティオの体を支えられそうに頑丈なものはこの部屋にはないのだ。
「………」
窓から身を乗り出したティオは夜風に当たって軽く揺れているカーテンとその下の中庭を徘徊するリビングデッドを見た。
うまくいけばよし。失敗すればリビングデッドの餌食。だが留まっていてもリビングデッドの餌食。
「……よし!」
覚悟を決めたティオは両手でしっかりとカーテンを握り締めるとひょいっと窓枠と乗り越え、石壁に脚をしっかりと押さえつけた。
上の方で『ピッ』という糸が解れる嫌な音がしたがもう引き返すことは出来ない。
「よっ…、よっ…」
カーテンに余計な負荷をかけないよう、ティオはゆっくりじんわりとカーテンを握る手の力を緩めたり強めたりしてそろそろと三階の窓目掛けて降りていった。


849 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:17:49.04 ID:AkZk1eG8
その時、四階でメリメリと木が破れる大きな音が響いた。どうやらドアが破壊されてバリケードが破られたようだ。
まさに間一髪と言ったところだろう。
知性のないリビングデッドに窓の外にいるティオを探すことは出来ないし、よしんば見つけたとしてもカーテンを伝って降りてくるなんて芸当はできやしない。
後は余計な音を立てずに三階に逃げ込めば…
と、ティオが算段だてていた時。

『ピッ!』

「!!」
カーテンがティオの手と窓枠に縛ってある丁度真ん中の辺りで大きく解れた。
ガクン!とティオの体は大きく揺さぶられ、その拍子で解れはますます大きく広がっていく。
(ま、まずい!!)
このままではそう遠くない先にカーテンは完全に破れ、ティオの体は地面に叩き付けられてしまう。
三階の窓まではまだティオの脚までしか達しておらず、体を入れるにはまだ早すぎた。
が、悠長に降りていたらとても間に合わない。
ティオは右足をガツン、ガツンと窓に当てて窓をこじ開けようとした。開けてしまえば後は体をそのまま飛び込ませればいい。
しかし、窓は鍵が掛かっているのかティオが蹴った程度では開きもせず、逆にその衝撃で解れはどんどん酷くなっていく。

(音は立てたくなかったけど……仕方がない!)

大きな音を立ててしまってはそれにつられてリビングデッドが寄って来る可能性が大きい。が、今は当面の危機をどうにかしなければならない。
ティオは脚を曲げて壁につかせると、そのまま思い切り壁を蹴り上げた。
その反動でティオの体は大きく後ろに飛び、振り子の原理で加速度がついて窓の方へと体が突っ込んでいくようになった。
脚でこじ開けることが出来ないなら、体ごと窓に突っ込むまで。
その試みはうまくいき、ティオの体はそのまま窓に飛び込むかと思われた。が、

”ブチッ!”

その動きはあまりにもカーテンに負担をかけすぎ、とうとうカーテンは解れたところから二つに千切れてしまった。
「げっ!!」
それまで体を支えていた力が急になくなり、ティオの上半身はがくりと下に引っ張られる。
しかし、ティオの体はそのまま慣性の法則に乗っ取って斜め下にまっすぐ進み、当初の思惑通り窓をブチ破って部屋の床にドシン!と派手な尻餅を付いた。
「いたたた……」
固い床に思い切りお尻を打って、ティオは痛むお尻をなで擦りながら部屋の中をさっと見渡した。
中はしんと静まり返り、とりあえずリビングデッドが潜んでいる気配はない。
その代わりといっては何だが、天井からは大勢のリビングデッドの足音が聞こえてくる。
が、その足音がいくつか廊下のほうへと出て行くのが聞こえてきている。
恐らく窓を破った音に反応し、こちらに来ようとしているのだろう。

850 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:19:04.09 ID:AkZk1eG8
「っ…。ぐずぐずしてもいられないか!」
まだ痛むお尻を片手で抑えながら、ティオはすっくと立ち上がって部屋を飛び出した。
ぐずぐずしているとまたリビングデッドに囲まれてしまうかもしれない以上即座に行動するのは正しい。
が、ティオ本人は気がついていないがこの屋敷にティオを入れるようにタオファが仕向けたのはティオを抹殺するためだ。
当然、ティオが窓を使って脱出するということも考慮の内には入っている。

「え?!」

ティオが部屋の外に一歩踏み出した瞬間、ティオの体はガクン!と前につんのめった。
廊下は殆ど月明かりが当たらず真っ暗なため気づけなかったが、ティオのいた部屋の前の廊下の床板は取り外され階下まで剥き出しになっていた。
「う、うそっ?!」
慌ててティオは踏み留まろうとしたが時既に遅し。
ティオの体は重力に引かれ、ぽっかりと開いた空間を落下していった。
「きゃああぁっ!!」
ティオは頭から落下する体をなんとか空中で立て直し、くるりと体を回転させて二階の廊下にどさりと着地した。
しかし、あまりに突然のことだったのでしっかりと受身を取ることが出来ず『ぐきり!』という嫌な音が体の中で響き、直後左足首から痺れるような痛みが湧き上がってきた。どうやら脚を挫いてしまったようだ。
「くぅっ…。しまったぁ……」
ただでさえ危険な状況だというのに足を負傷してしまっては逃げることすら覚束なくなってしまう。
ティオはとにかく応急処置をと靴を脱ぎ、懐から救急用の包帯を取り出した。
だが、いざ痛めた足首に巻こうとした時
「っ!」
背後から強烈な殺気を感じたティオは包帯を手から離しバッとその場から前に跳んだ。
その刹那、ティオがいた空間を唸りを上げた掌がぶぅん!と薙いだ。
「ちっ!!なんて都合のいい!!」
まさか落下したその場所に都合よくリビングデッドがいるとはなんという悪い偶然か。
ティオはそのまま体を反転させて殺気の元から間合いを離しつつ体勢を整えようとした。が、

”ズキン!”

「ぐぅっ!!」
着地した際に挫いた左足首に千切れるような鋭い痛みが走り、ティオはがくりと片膝をついてしまった。
その隙を察したのか、ティオを襲ったモノは間髪いれずにティオ目掛けて飛び掛ってきた。
「っ?!」
その速さにティオは戦慄した。
なぜなら、リビングデッドにはこんな素早い挙動は絶対に出来ないからだ。
リビングデッドは所詮は死体であり、力こそ強いが動きそのものは非常に緩慢である。
少なくとも、ここまで素早い動きをするリビングデッドなんて聞いた事がない。
「くそっ!!」
顔面目掛けて突き出される鋭い突きを長剣で辛うじて防ぎ、ティオは左足を引きずりながら辛うじて立ち上がり謎の相手に対して身構えた。

851 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:20:19.48 ID:AkZk1eG8
異常に真っ暗な中、吹き抜けになってしまった三階から入ってくる月明かりで辛うじて見えた相手は、腐敗して崩れた死体ではなかった。
死体とは思えないほど整った形。しかし吸血鬼のように血色をなくした肌を持つそれは、先ほどタオファに教えてもらった『屍鬼』だった。
「タオファさん…、まさか…」
先ほどタオファと別れた時、タオファは相当な数の屍鬼と戦っていた。
もちろん、あそこにいた屍鬼がこの村にいる全部だとは思えない。
が、屍鬼がここにいていまだにタオファがティオと合流できない、ということは…
想像したくはないが、つい想像してしまう。タオファが、屍鬼の餌食になってしまったのではないか、ということに。
「…ううん、そんなことない。そんなことない!」
嫌な予感を必死に振り払い、ティオは痛む脚を引きずりながら襲い掛かってくる屍鬼に立ち向かった。
びゅんびゅんと素早く繰り出されてくる屍鬼の突きをティオは一筋の傷も付かないよう長剣と上半身の体捌きでなんとかやり過ごした。
屍鬼の攻撃はリビングデッドよりはるかに洗練されてはいるものの、所詮は自分での思考能力を持たない死体であり攻撃そのものは非常に単純である。
それゆえティオも相当なハンデを負っていながら攻撃をかわし続けられているのだが、何しろ相手は死体であり疲れ知らずだ。このまま攻撃を受け続けたらいつか絶対スタミナ切れを起こして致命傷を負ってしまう。
いや、すでに踏ん張りが利かなくなっているのか、ティオの体はじりじりと後方に圧されその体捌きにも余裕がなくなってきている。
カィン、カィンと硬い物同士が当たり続ける音がしている中、ティオの背中が『どすん』と何かに当たり、動きが一瞬止まった。
わざわざ後ろを見なくても分かる。これは廊下の木壁に当たった感触だ。
「………」
その一瞬の隙を見逃さず、屍鬼の手刀がティオの顔面目掛けて猛スピードで襲い掛かってきた。
が、この状況こそティオが狙っていたものだった。
「そこだぁ!!」
それまでの余裕のない動きからは予想も付かないような素早さでティオは右横へと跳ね飛び、結果屍鬼の手刀はティオの後ろの木の壁にざっくりとめり込んでしまった。
めり込んだ手刀はそのままに屍鬼はぐるりとティオのほうへと顔を向け再攻撃を試みるが、ぐっさりとめり込んだ屍鬼の右腕は屍鬼の怪力を持ってしても即座に外れるものではなかった。
そして、その隙を見逃さずにティオは長剣を大きく振りかぶると、屍鬼の首目掛けて叩き込んだ。
「……!!」
その時、ティオの目には表情がないはずの屍鬼の顔に明らかな動揺の色が見えた様な気がした。

「でぇぇい!!」

ティオが渾身の力をこめて振り切った長剣は屍鬼の首をばっさりと切断し、屍鬼の頭は廊下にごろりと音を立てて落ちた。
が、その代償としてかなり『がた』がきていた長剣は根元からぼっきりと折れてしまった。
これでティオが持っていた四本の長剣のうち二本が折れ一本が使いものにならない状態になってしまい、まともに使えるのが一本だけという危機的な状況に陥ってしまった。
「………」
廊下に落ちた屍鬼の虚ろな目はじっとティオを睨みつけ、屍鬼の体は頭の最後の命令である腕を壁から抜こうとする動作を繰り返していた。

852 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:21:34.18 ID:AkZk1eG8
とはいえ、この状態で首と胴を繋ぐ手段はなくこの屍鬼は無力化したも同然であり、これ以上この屍鬼に時間を割くわけにもいかない。ぼやぼやしていたら上の階のリビングデッドに退路をふさがれてしまう。
ティオは屍鬼を無視して痛む足を引きずりながら歩き始めた。さすがにこの負傷した足で走ることは不可能である。
が、下の階に降りるのも簡単にはいかない。
「さて…、どこから行くか…」
上の階のリビングデッドがティオを目掛けてくる以上階段は使えない。もし鉢合わせたりした場合、今のティオの脚では逃げ切れない。
となると、どこかの部屋から下へと降りるしかない。
ティオは適当な部屋の扉をそっと開くと中に忍び込み、静かに扉を閉じた。これで派手な音を立てなければ暫くの間はリビングデッドをやり過ごすことが出来るだろう。
部屋の中は相変わらず真っ暗で窓の月明かりのみが中を照らしており、外には相変わらずリビングデッドが徘徊している。
その数たるや時間を追うごとに増えているようにも見え、まるでこの屋敷全体を包囲しているかのようだ。
これでは屋敷を脱出できたとしても、無事に村の外に辿り着けるかどうかわかりゃしない。
「本当に…どこから湧いて出てきたのよ。私が入る前は一匹もいなかったくせに…」
思わずティオは外のリビングデッドに毒づいてしまった。
自分の意思など持っていないくせに、偶然にもこっちの意図を汲んで妨害するような手口に苛立ちを隠せないのだ。
もっとも、これが単なる偶然ではなく自分に対する明確な悪意が働いていることにティオは気が付いていないのだが。
「ニース…、どうしているかしら…」
こうなるとニースと袂を別っているのはいかにも辛い。もしニースが傍にいたらリビングデッドが何体いても何の問題もなかったであろう。
もしニースが今の自分の窮状を知れば息せき切って駆けつけてくれるかもしれない。
この状況でニースを頼ってしまうのはティオのニースへの信頼と甘え、その両方の気持ちが出てしまっているのだが現状を考えると仕方がないのかもしれない。
それほど今のティオは追い詰められているのだから。
「…なんにせよ、今私がどこにいるのかというのをニースに見せないとね…」
ティオは窓をギィッと開くと、少しだけ身を乗り出してあたりをキョロキョロと見回した。
頼りない月明かりに照らされている外にニースの姿を見ることは叶わないが、もしニースが近くにいたら自分の姿を捉えている可能性はある。
「あとは、どうにかして下に降りないと……」
一人で降りるのはいかにも自殺行為だが、ニースと合流できさえすれば、もしくはニースが駆けつけてくれればこの場を切り抜けることは出来るであろう。そうすれば、タオファを救援に行くことも出来るはずだ。
きっと…いや間違いなくニースは怒るだろうが、この状況ではそんな我侭は通用しない。
とにかく、全員無事にこの村から脱出しなければいけないのだから。
その時、ティオの背後の天井がベキッと嫌な音を立てて割れ、空気が揺らぐ感触がティオの背中を撫で擦った。
それが意味するものは二つ。敵が来たか味方が来たか。
そして、当然ティオは後者を選択していた。

「ニース……!!」

が、振り向いた時ティオの鼓動は一瞬跳ね飛んだ。
そこに立っていたのはニースではなく屍鬼だったからだ。

853 :猟血の狩人:2011/11/30(水) 23:23:04.12 ID:AkZk1eG8
ただ、その屍鬼はそれまでの屍鬼と違い、着ている服は黒を基調にしているタオファのような東方の服で、頭には頭部をすっぽりと覆う大きい帽子と目元を隠すような黒い布。そして大きなお札を顔面にぺたりと貼られておりその顔を窺い知ることは出来ない。
が、ティオは最初その屍鬼を見て逆に安心した。
その顔に貼られているお札は、先ほどまで散々見たタオファが使っていたものと同じものだったからだ。
それはつまりタオファがまだ生きていることを意味している。
「よかった…、タオファさん無事だったんだ…」
多分この屍鬼はタオファがティオの窮状を悟り、自分に先駆けてティオを救援するために差し向けたのだろう。
そうとわかれば恐いことなど何もない。
無表情で何の反応も示さない屍鬼だが、こうして見ると愛嬌があるようにも見えてくる。
「…ありがと。あなたが来てくれたら何とかなりそうだわ」
ティオはあまりの嬉しさからつい屍鬼相手に手を差し出してしまい、その直後、相手が命令したことだけを忠実にこなす屍鬼だということを思い出した。
「おっと…、こんなことしても何も反応しないんだっけか…」
苦笑してティオは手を引っ込めたが、驚くべきことにそんなティオの前で屍鬼がスッと右腕を伸ばしてきたではないか。
「あら?」
まさか屍鬼が会釈をすることが出来るなんて思っていなかったティオは、にこにこと笑みを浮かべて屍鬼の手を握ろうとした。

「っ?!」
ビュッと空気を切り裂いて突き出された屍鬼の右手はティオの右手ではなく左胸を正確に狙ってきており、ティオは慌てて身を捩って屍鬼の突きを回避した。
「ち、ちょっと……!何をするの……?!」
ティオはいきなり自分に攻撃をかけてきた屍鬼に憤慨し…そして戦慄した。
眼の前の屍鬼は明らかにティオに対する殺気を放っており、暗闇の中でも見えそうなどす黒いオーラはそれまで相対したリビングデッドや屍鬼とは比べ物にならないほど強大で、爵位を持つ吸血鬼に匹敵するほどだ。
「えっ…ちょ、ま……」
どういうことだろう。この屍鬼はタオファが寄越したものではないのだろうか。
なんで自分を攻撃してくるのだろうか。一体全体訳がわからない。
そんな困惑するティオに対し、屍鬼は再び突きを繰り出してきた。それも単発ではなく無数に。
「な、なんで!なんでぇ?!」
ひゅんひゅんと空気を切り裂く音がティオの耳音でいやらしく唸る。その風斬り音は異様に鋭く、当たっていないはずなのにティオの皮膚がぴんぴんと突っ張り、赤い血の筋が幾本も描かれていたりする。
止むを得ずティオは唯一まともに振るえる長剣を取り出して屍鬼に向かい合ったが、これ一振りだけで立ち向かえる相手ではないことは明らかだ。
「まずい、まずい……!!せめてニースがいれば……!」
ティオはニースと喧嘩別れしたことを改めて心底後悔した。あの時ニースと離れ離れになっていなければ、ここまでの窮地に陥ることはなかっただろう。
もう少しニースの言い分にも耳を傾けていたら…とはいえ、今となってはもう遅すぎるのだが。

「……ガアアァッ!!」

明らかに劣勢にたたされたティオに、屍鬼は一気に止めを刺すべく一声吼えて飛び掛ってきた。
その大きく開いた口には、人間の死体とはとても思えない長い牙が四本伸びていた。
が、後悔と窮地で平静さを無くしているティオに、それに気づく余裕はなかった。

第12回終

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