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コマンドール



『シャドール帝国の戦闘服を身に着けた気分はどうだ? ガードピンク、風見舞(かざみまい)』
「何のつもりか知らないけど、よりにもよってコマンドの戦闘服だなんて、最悪な気分よ」
『確かに、お前ほどの逸材にそのスーツを着せるのもどうかと思ったがね… ククク…』
シャドール帝国地球侵略軍司令官ワルサーが含みのある顔で笑った。
「どうせ何か処置を施して私を操るつもりなのでしょうけどムリよ。 諦めなさい」
『その前に自らの命を絶つ、と言うことだな。 ククク… それはそれで結構』
「………」
風見舞は怪訝な顔で目の前に仁王立ちしているワルサーの顔を見上げた。
「ワルサー、何を企んでいる」
『ククク… 推察のとおりだよ。 お前はシャドール帝国の一員となり、地球侵略の先兵となる。 いや、なったのだ』
「ッ! なったですって?」
ワルサーの言葉に舞は驚き、もう一度自身の体を見やる。
光沢のある黒いスーツが体にピタリとフィットして首から下をすべて覆い、不気味な生物を思わせる赤紫色のシャドール帝国の紋章が胸に大きく描かれている。
一見シャドール帝国の戦闘員コマンドに似ているが少し違った。
肘と膝から先がグローブとブーツを着けたように紋章と同じ赤紫色になっていることと、真っ黒な全頭マスクを着けていないことがコマンドとは違っている。
「コマンドみたいな姿にされているけど、でもそれは外見だけで」
『さて、それはどうかな? ククク…』
「な、何が言いたいのッ!」
不敵な笑みを浮かべるワルサーの手が小さく合図を送ると、舞の傍らに立っているコマンドが目の部分が蝙蝠の羽のように赤紫色に彩られた全頭マスクを舞に見せる。
「これを被せてコマンドに仕上げるわけね。 でもそれだけで、私を操れると思って?」
『ククク… マスクを着ければ、植え付けた新しい意志と記憶が目覚める。  お前はシャドール帝国のコマンドールに覚醒するのだよ』
「コマンドール?  植え付けた新しい意志、記憶ってどういうことなの!!」
『ククク… お前が眠り続けていた5日間で、帝国の超高度催眠洗脳処置を施した。  風見舞、すでにお前はシャドール帝国の兵士に生まれ変わっているのだよ』
「催眠…洗脳…」
『そうだ。 お前を次元獣に改造してレンジャー共と戦わせるよりも、洗脳して帝国に従わせた方が、ガードレンジャーを確実に葬れる』
「私がお前たちの言いなりになることは絶対にない!! それに5日も連絡がつかない私を、仲間が疑わないはずが」
『ほんの5分程度のことだ』
「!? 5分? それはどう言うこと」
『ククク… この次元要塞がある次元層の1日は地球では1分程度。 レンジャー共はお前が捕らえられていることにも気づいてないだろう』
「そんな話、信じるとでも思ってるの?  私はガードピンクよ、操られて仲間を危険に陥れる前に」
『命を絶つか? ムダだ。 お前が自爆できるのは敵であるガードレンジャーに敗北するか、俺の命令があったときだけ。 すでにお前は帝国の支配下にあるからな』
舞の手足を拘束している金属の枷が鈍い音とともに外された。
『ククク… 試してみるがいい』
「なんのつもりか知らないけど、後悔しても…!?    な…なぜ……体が…動かない…」
拘束を解かれた舞は玉砕覚悟の攻撃を仕掛けようとしたが、椅子から立ち上がるどころか、指一本動かすことが出来なかった。
『俺の許可があるまで動くなと命令してある。  ククク… 自分がシャドール帝国の兵士になっていることを理解したか?』
「くっ…   私はガードレンジャー、ガードピンクよ!  最後まで諦めないわッ!!」
『ククク… 自らを奮い立たせてもムダなこと。 そのマスクを着ければ全てが終わる。  いや、はじまるのだ。 風見舞の記憶と意思は、任務遂行に必要な情報と認識し、刷り込んだ記憶と意志に従い行動するようになる』
「絶対にならない!! 絶対にお前の思い通りにならないッ!!」
『クク… もういいだろう。  風見舞、そのマスクを着けるのだ。  そしてシャドール帝国に忠誠を誓え』
「だ、だれがこんなモノ…  ぐっ…  うぐっ…  か…体が… 手が…勝手に…」
舞の手はコマンドが持っている艶のある黒と赤紫のマスクを受け取っていた。
「体を操られても… 心は… 心は操られたりしない…」
自分の意思に反して動く体に、さすがの舞も恐怖に駆られた。
「ムダよ…  私は… 絶対に……   い…いや…… やめなさい…」
マスクの首の部分を大きく広げて頭を中に入れると、舞の手は迷うことなくマスクから離れる。
『ンンッ!! ンンッ… ンンンッ!!』
舞の顔にピタリと張り付いたマスクは目の部分にある赤紫の模様が妖しく輝き、スーツとマスクの重なった首の部分が綺麗に同化する。
『ンンンッッッッッッ!!   ンッ!!  ンッ  ンンッ… ンッ… ン………』
全身が痙攣し、マスクで口を塞がれて声にならない唸り声をあげる舞が次第に大人しくなり、マスクの口元が微かに膨らみ赤紫色の唇模様が浮かび上がった。
『ンフゥ… フゥ… フゥ…  フゥ………』
シャドール帝国の戦闘員コマンドのようになった舞が呼吸を整えながらワルサーを見上げると、ゆっくりと立ち上がる。
『キッー!! シャドール帝国に忠誠を誓います』
指先まで綺麗に伸ばした右手を胸の前に水平にかざしたあと、高々と掲げるシャドール帝国の敬礼の姿勢と奇声を発して忠誠を誓う舞。
『ククク… 自分が何者か理解しているな』
『キッー!! 私はシャドール帝国地球侵略軍 特別攻撃兵コマンドールHB01です』
『お前の任務は』
『キッー!! シャドール帝国の敵、障害となる地球防衛機構ガードレンジャーの排除。 ガードレンジャーピンク風見舞として潜入し、ガードレンジャーを道連れに自爆することです』
敬礼の姿勢で刷り込んだ使命を返答する舞に満足の笑みを浮かべるワルサー。
『そうだ。 お前はこの次元破壊爆弾でガードレンジャーを殲滅し、帝国の礎となるのだ』
帝国の紋章が刻まれた黒銀のアームレットを舞の左腕に嵌めと、それはスーツに同化して体の一部と化してゆく。
『キッー!! 有難き幸せ』
上げていた右手を下してアームレットに触れると、黒いスーツの表面がゆらりとなみうち、全裸の風見舞が邪悪な笑みを浮かべ佇む。
その唇は妖艶な赤紫に染まり、目元も同じ色で染められ吊り上ってみえた。
『行け、風見舞。 シャドール帝国にその身を捧げよ。 ガードレンジャーを殲滅するのだ』
「ハッ! 必ずや、ワルサー様のご期待に沿う働きをご覧に入れます。  シャドール帝国に栄光あれッ!!」



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聖騎士戦隊テンプルナイツ 第19話『由香里がヤミーコマンド?』



女性が失踪する事件が相次ぎ、世間を騒がせている。
その事件の影に異空間からの侵略者『ヤミー帝国』の気配を感じた聖騎士戦隊テンプルナイツは調査を開始していた。

「コホンッ…  ケホッ…  ケホッケホッ……」
「なんだ? どうした薫(まゆずみ)。 風邪か? 気が緩んでっぞ!!」
テンプルレッドとペアを組み、調査していたテンプルピンク黛由香里(まゆずみゆかり)が紅く熱った顔をむける。
「ご…ごめん… ケホッ…ケホッ……」
「ったく! これじゃ調査にならねッ!」
「ケホッケホッ……ゴメン…」
「ん? オイッ、黛 あそこでマスク配ってるみたいだぞ。 貰って来いよ」
「マスク?…  ケホッ…ケホッ…」
レッドが指差す方向を見やると、試供品のマスクを配る妖精のような格好をした数人の女がいた。
「タイミング良すぎ… コホッ… 貰ってくるからちょっと待ってて…」

「口元のお化粧が落ちにくい新製品ですぅ。 コホッ… 良かったらどうぞぉーだって… 仕事とは言え、私には出来ない…  ケホケホッ…」
愛想笑いでマスクを配る女からマスクを受け取り戻って来た由香里が苦笑いを浮かべながら、よく見かける立体構造になったマスクを着けていた。
「普通のとあまり…? なんだろう… いい香りがする…」
頭がスッキリする心地よい香りを吸い込んだ瞬間、マスクの表面に濃緑の怪しい紋様が一瞬浮かび、由香里の瞳も同じ濃緑に輝いたことに、マスクを配っている女に見惚れていたレッドは気づいていなかった。
「ンふぅぅ… なんだろう… 少し楽になった気がする。  お待た…   嫌らしい眼…」
女たちを眺めて鼻の下を伸ばしているレッドに、由香里は軽蔑する冷たい眼差しを向けていた。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


「やっぱりお前たちの仕業かッ! ヤミー帝国!!」
テンプルグリーンからの通信を受けて駆けつけたレッド、ブルー、イエロー、由香里が合流し、怪しい人影が出入りする廃工場に飛び込んだ。
≪カメカメカメーッ! お前たちはテンプルナイツ!≫
人間サイズの昆虫、濃緑色をしたヤミー怪人と緑色をした複数の影が、飛び込んだ5人を出迎える。
「ヤミー怪人! いまここに連れて来た女の人はどうしたッ! 連れ去った女の人たちはどこだッ!!」
≪カメカメカメーッ! いまはまだお前たちと戦うつもりはないッ!!≫
「ふざけるなッ!!」
憤り突撃するテンプルナイツの前に、緑の人影が立ちはだかる。
「なんだッ! 新しいヤミーコマンドか? どいつも女みたいな体しやがっ……  オイ、まさかっ!!」
≪カメカメカメーッ! 今頃気づくとはのろまめ。 それがお前たちの探している女たちだ。 そいつらはオレ様に絶対服従のカメムシヤミーコマンドに生まれ変わっているがなッ! カーメカメカメーッ!≫
緑の模様が描かれた女たちの顔は、目と口元が邪悪につり上がり、人とは思えない紅い瞳で5人を睨んでいた。
「カメムシヤミーコマンドだと! ふざけるなッ!!」
「私たちがお前を倒して、彼女たちを解放するわ!! 覚悟なさいッ! ヤミー怪人!!」
醜い姿に変えられた女性を見たテンプルナイツの紅一点、由香里の怒りが爆発する。
「みんな! 彼女たちには手を出さないで! 一気にあのヤミー怪人をッ… コホッ…コホコホッ…」
≪カメカメーッ? テンプルピンク、お前が付けて…   カーメカメカメーッ!≫
マスクを付けて咳き込んでいる由香里を見やったカメムシヤミーの口が小さく歪んだ。
「黛、お前は下がってろッ!!  ブルー、イエロー、グリーン行くぞッ!」
「ちょっと! これくらいで病人扱いしないで!!」
「「「「「 鎧着装ッ!! 」」」」」
赤青黄緑桃の輝きに包まれ、5人の体に各々のカラーとシルバーのテンプルナイツのコンバットスーツが装着された。
≪カメカメカメーッ! 言っただろう! まだお前たちと戦うつもりはないとッ! カハァァァァ≫
ヤミー怪人カメムシヤミーの口から緑のガスが吐き出され、カメムシヤミーコマンドと対峙しているテンプルナイツを包み込む。
「なんだッ! 煙幕か!!  !? ク、クセェ!!! なんだこの匂いは!!」
「有害なガスでは無さそうですが… この匂い…ひどすぎます…ゲホゲホ…オェッ…」
「みんな、ヘルメットの外気フィルターを閉じるんだ!!」
「エッ、なに! どうしたの、みんな!! 何がくさ…  すぅぅ…… この香り……は………」
カメムシヤミーの吐き出したガスで悶絶する4人の隣で、由香里の両手はダラリと体の横に下ろされた。
≪カーメカメカメーッ! やはりそうか。 カメカメーッ!≫
カメムシヤミーの頭部にある触角の先端が怪しく明滅しはじめると、テンプルピンクのヘルメットの中、由香里が付けているマスクの表面に濃緑の紋様が浮かび、由香里の瞳も濃緑に染まった。
【カメカメカメーッ! テンプルピンク、オレ様の声が聞こえるか… スーツを解除して顔を見せろ】
触角の明滅で語りかけるカメムシヤミーにテンプルピンクは小さく頷き、コンバットスーツを解除していた。
【カメカメカメーッ! テンプルピンク、お前もオレ様の】
「黛ッ! 何してるんだッ!! 具合が悪いなら下がれって言ってるだろッ!!」
「…レ…ド…   !?   な…なに…どうして私…スーツを…    鎧着装ッ!」
カメムシヤミーの支配下に堕ちそうだった由香里をレッドの声が救ったが、ボンヤリする頭を左右に振っている由香里を見やるカメムシヤミーが邪悪に微笑んでいるように見えた。
≪カメカメカメーッ! テンプルナイツ! 次に会うときがお前たちの最後だッ!! カメカメーッ!≫
さらに濃いガスを吐き出して、カメムシヤミーは5人の前から姿をくらました。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


「熱もそれほど高くない。 心配することはないよ。 由香里クン」
「でも私、ヤミー怪人の前で…」
「かなりの悪臭だったとレッドたちから報告を受けている。 その悪臭で本調子でなかったキミはホンの一瞬、意識を失っていた。 スーツの脳波モニターの反応からもそう判断できる」
「そ、そうですか…」
「気になることがあるのかい?」
「もしかしたら誘拐された女性たちのように、私もヤミー怪人に操られたんじゃないかって…」
「メディカルチェックも体温が少し高いくらいで、他に異常は見当たらないよ」
「気にし過ぎですよね…」
「気になるのなら、精密検査をしてみるかい?」
「いえ、大丈夫です」
「うむ。 司令から今夜は自宅で待機するようにと命令があった。 明日の朝、もう一度検査して問題なければ、復帰を認めるとのことだ」
「ハイ。 ご迷惑をお掛けしました」
カメムシヤミーが吐き出したガスが付着して汚れたマスクを待機していた科学部に渡した由香里は、テンプルナイツ専属医から新しいマスクを受け取り、一礼して部屋をあとにした。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


「見つけたわ」
「エッ!? あ、あなたたちはマスクを配っていた…」
帰宅途中の由香里を試供品のマスクを配っていた女たちが取り囲む。
「テンプルピンク黛由香里。 カメムシヤミー様がお呼びよ」
「カメムシヤミーですって!! まさか、あなたたちは!!」
「ウフフフ… 私たちはカメムシヤミー様のドレイ」
女たちがコスチュームの端を摘み脱ぎ放つと、カメムシヤミーと一緒にいたカメムシヤミーコマンドへと変貌する。
「やめなさい! あなたたちは… この…匂いは……  か…体が…」
女たちからカメムシヤミーと同じ匂いが漂い、由香里の自由を奪った。
「ウフフフ… 私たちが配っているマスクには、カメムシヤミー様の服従フェロモンが染み込んでいるのよ」
「ふ、服従…フェロモン…」
「フェロモンに反応するのは、カメムシヤミー様に従順に従える優秀な女だけ。 選ばれた者だけが、カメムシヤミー様のドレイに生まれ変わることができるのよ。 体の自由が利かないのは、あなたの体が服従フェロモンに反応しているからよ」
「あ…あなたたち… 怪人にあやつられて…いるのよ… 目を…醒まして……」
「ウフフフ… あなたこそ、早くカメムシヤミー様のドレイになりなさい」
カメムシヤミーコマンドの1人が内側が濃緑に染まったマスクを取り出して、由香里の顔に近づけた。
「や…やめて……」
「ウフフフ… 怖がらなくてもいいのよ。 すぐにカメムシヤミー様の事しか考えらない、従順なドレイにして頂けるから…」
由香里が着けている普通のマスクが外され、カメムシヤミーのマスクが着けられた。
「やめてっ… うっ…  あっ… はぁっ…… あぁ………」
かすかに首を動かして抗う由香里の顔から表情が消えて行く。
「配っているマスクには数万倍に薄められた服従フェロモンが染み込ませてあるけど、このマスクには…  ウフフフ… もうそんな事はどうでもよくなったようね…」
虚ろな目をした由香里が大きく息をして、邪悪な香りを吸い込んでいた。
「ウフフフ… 黛由香里。 カメムシヤミー様がお待ちかねよ」
「…ハイ… ただいま参ります… カメムシヤミー様…」
カメムシヤミーコマンドに誘われ、由香里は夕闇に消えて行った。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


「ヤミーッ!! カメムシヤミー様 テンプルピンクを捕獲して参りました」
指先まで綺麗に伸ばした右手を斜め上に掲げて奇声を発するヤミー帝国の敬礼の姿勢で、カメムシヤミーコマンドがヤミー怪人カメムシヤミーに任務完遂を報告する。
≪カメカメカメーッ! テンプルピンク、オレ様の前に来い!≫
「ヤミー…」
カメムシヤミーに呼ばれた由香里は力なくヤミー帝国の敬礼の姿勢で応えると怪人の前に歩み寄る。
≪カメカメカメーッ! さすがにテンプルナイツの女だな。 他の女どもは匂いだけで、ドレイ紋が浮かび上がったが、お前にはまだ表れていない≫
由香里の顎を掴み無理やり首を左右にひねり、顔に変化が表れていない事を確認するカメムシヤミー。
≪カメカメカメーッ! まさかとは思うが、妙なことにならないよう念入りに仕上げてやる。 カーメカメカメーッ! テンプルピンク、跪け!!≫
「ヤミー…」
命令に応えた由香里が両膝をついて跪くと、カメムシヤミーの股間の位置から赤黒い管が迫出し、先端から濃緑の粘液が滴り落ちた。
≪カメカメカメーッ! お前に服従フェロモンを飲ませてやる。 舐めろッ! オレ様がいいと言うまでフェロモンを飲み続けるのだッ!」
「ヤミー…」
悪臭を放つ濃緑の粘液、服従フェロモンを由香里は舌先で舐めとった。
≪カメカメカメーッ! そうだ、口を付けて吸えッ!≫
「…ャ…ヤミー……」
管の先端に唇をつけてフェロモンを吸い摂る由香里。
粘液が先端だけでなく、管の表面からも滲み出していることに気づくと喉の奥深くまで管を銜えて、頭を前後させてフェロモンを飲み続けた。
そしてしばらくすると由香里の額に緑の痣が表れ、それは顔全体へと広がり緑色のヤミー帝国の紋様に変化していた。
≪カメカメカメーッ! ようやくドレイ紋が表れたか。 カーメカメカメーッ! オイッ、コマンド11≫
「ヤミーッ!!」
呼ばれたヤミーコマンドが緑の塊を運んで来る。
≪カメカメカメーッ! テンプルピンク、服従フェロモンはもういい! 次はそのスーツを着るのだッ!≫
「ヤミー… カメムシヤミー様… 仰せのままに…」
顔面に緑色のドレイ紋、ヤミー帝国の紋様を刻まれた由香里が抑揚のない口調で返事すると、運ばれてきた塊が開かれた。
カメムシヤミーコマンドたちが身に着けている腕と脚の部分が濃緑のロンググローブとブーツを着けたような艶のある淡緑のピタスーツと同じデザインのウェットスーツ様のゴツゴツしたスーツ。
その中にライダースジャケットとブーツインしたデニムパンツを着たままの体を入れると、装着用に開かれていた背中の割れ目が閉じられ、ヤミー帝国のエンブレムが付いたベルトが腰に取り付けられた。
「うぅっ… うぐぅッ… あぁぁぁぁッ…」
ベルトを装着するとすぐにスーツが緑に発光し、由香里が頭を押さえて苦しみ出した。
≪カーメカメカメーッ! お前の意志は、オレ様への絶対服従とヤミー帝国の邪悪な意志に作り変えられるのだッ!!≫
「…ャ… ャ… ャ…ミ… ャミッ…  ャ、ヤ、ヤミーッ!!!」
大声で絶叫し、目を見開いた由香里の瞳が紅く染まり、そのまま床に崩れ落ちるとピクリともしなくなる。
≪カメカメカメーッ! テンプルピンク、これでお前はオレ様の命令に絶対服従のドレイ、カメムシヤミーコマンドに生まれ変わった。 起きろッ! テンプルピンクッ! いや、忠実なドレイ、カメムシヤミーコマンド0(ゼロ)ッ!!≫
カメムシヤミーの命令に従いユラリと起き上がった由香里がヤミー帝国の敬礼の姿勢で止まる。
ウェットスーツ様のゴツイスーツは由香里の体にピタリとはりつき、他のカメムシヤミーコマンドと同じ姿に変化し、唇と目の周りがドレイ紋より濃い緑に染まり吊り上げられ、眼は紅に輝いていた。
「ヤミーッ!! 私はカメムシヤミーコマンド0。 カメムシヤミー様、何なりとご命令を」
≪カメカメカメーッ! テンプルピンクはオレ様のドレイ。 これでテンプルナイツも終わりだッ! カーメカメカメーッ!!≫


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


「薫、そっちはどうだ」
テンプルレッドが別の建物を調査しているテンプルピンク黛由香里を通信機で呼ぶ。
『こっちも異常ないみたい。 レッド、次のエリアに移動しましょう』
「そうだな。 合流するぞ。 みんな聞こえたか! 移動するぞ!!」
『了解 レッド、すぐにそっちに行くから待ってて』
「フフフ…」
通信機を切った由香里の唇が濃緑に染まりつり上がった。
「こちらコマンド0。 カメムシヤミー様。 テンプルナイツを別のエリアに移動させました」
【カメカメカメーッ! よくやったコマンド0】
「ヤミーッ!! このエリアの反応者の捕獲を開始いたします」
イヤリングの通信機でカメムシヤミーに報告をいれた由香里は、一緒に居たコマンドに小さく頷き捕獲開始の合図を送るとレッドが待つ建物に向かった。


数日後
自分たちの裏をかくように次々に女性を誘拐して行くヤミー帝国と、由香里の様子の変化に疑問を抱きはじめたテンプルナイツは、本人に気づかれないよう由香里の監視と調査を開始した。
そして、由香里が街中で受け取ったマスクの秘密を発見し、由香里がヤミー帝国に操られていることを突き止めた。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


≪カメカメカメーッ! カメムシヤミーコマンドもこれだけ揃えば十分だ!≫
由香里を先頭に綺麗に整列して立っているカメムシヤミーコマンドを見やりほくそえむカメムシヤミー。
≪カメカメカメーッ! テンプルナイツのバカどもは、テンプルピンクがヤミーコマンドになっていることに気づきもしてない。 カメカメーッ! このままテンプルナイツを葬り去れば、オレ様はヤミー帝国三将の仲間入りだ! カーメカメカメーッ!≫
「ウフフフ… それはカブトヤミーに代わり、甲虫軍団を統べると言う事なのかしら?」
コツコツと足音を響かせながら、別のヤミー怪人がカメムシヤミーに歩み寄る。
≪カ、カメカメーッ!! は、羽虫軍団、クイーンビーヤミー将軍ッ! ど、どうして、こんなところに!!≫
「ウフフフ… テンプルピンクがドレイにされたって噂を耳にしたのでね。 それを確かめに来たのよ」
巨大なカメムシにしか見えないカメムシヤミーとは異なり、人間の女と蜂を融合したようなクイーンビーヤミーが由香里の傍らに移動すると、妖艶な口元を微かに吊り上げ、黒長手袋を嵌めたような手で由香里の頬を撫でる。
「カメムシヤミー、どうせ失敗するんでしょう。 だったらその前にテンプルピンクを私に譲らない?」
≪カメッ!! こ、ここはオレ様の、甲虫軍団の砦! クイーンビーヤミー将軍と言えども、無礼な振舞いは許されませんぞ!!≫
「ウフフフ… だったらどうするの? まさか私を排除するつもり?  お前ごときに出来るのかしら…」
≪カッ! カメッ! カメカメカメーッ!!≫
「ウフフフ… 冗談よ。 用は済んだわ。 精々頑張りなさいな…」
≪カメカメカメーッ!! このことはカブトヤミー将軍に報告させて貰うッ!!≫
「ウフフフ… 好きになさい。  それまでお前が………」
姿を消したクイーンビーヤミーの声は、最後まで聞き取ることが出来なかった。
≪カメカメーッ!! クイーンビーヤミーッ! テンプルナイツを葬り去れば、お前などッ!!≫
怒りで冷静さを失ったカメムシヤミーが、由香里の耳の後ろに表れた黒い蜂の形をした痣に気づくことはなかった。
≪カメカメカメーッ!! 邪魔が入ったが準備は整った! テンプルナイツを葬る力をお前たちに与える。 受け取るがいい、我ら甲虫軍団の力を!!≫
カメムシヤミーの口から無数のカメムシが飛び出し、整列して立っている由香里たちの体に止まってゆく。
≪カメカメカメーッ!! これでお前たちは完全な甲虫軍団のコマンドとなれるのだ!!≫
「「「 ヤミーッ!!! 」」」
由香里たちの体に止まったカメムシの群れがゆっくりと変化し、頭部は口元だけが露出した兜に、肩、腕、胸、腰、脚もそれぞれを覆う鎧へと変容していた。
≪カメカメカメーッ!! 行けッ! オレ様の忠実なドレイ、カメムシヤミーコマンドたち! テンプルナイツを葬りさるのだッ!!≫
「「「「「 ヤミーッ!!! 」」」」」



だが、服従フェロモンの成分を分析したテンプルナイツは中和剤を開発し、カメムシヤミーコマンドにされた女たちをカメムシヤミーの支配から開放した。
そして、正義の戦士テンプルピンクに戻った由香里の怒りの拳が、カメムシヤミーを粉砕し勝利をつかんだ。


⇒⇒⇒ 早送り ⇒⇒⇒


ヤミー帝国皇帝の間。

部下の失態の責めをうけるヤミー帝国三将の1人、甲虫軍団カブトヤミー将軍の背後で、勝利を喜び仲間とハイタッチする由香里の映像を見つめるクイーンビーヤミーは微かな笑みを浮かべていた。



身も心も捧げる者 −アナザーストーリー −



「わ、わかったわ… あなたの言うとおりにする。 だから子供たちを解放しなさい」
《ウクク… さすがのジャスティスピンクも、子供を人質に捕られると何も出来ないようね》
子供を人質に捕るダーク怪人ダークイーンの作戦が、ジャスティスピンク一条千鶴の動きを封じた。
「私にどうしろと言うの…」
《ウクク… そうね まずはそのブレスレットを外して、裸になりなさい》
「なッ!  くッ…わかったわ… 裸になればいいのね…」
《ウクク… 妙な事は考えない事ね》
妖しく口角を吊り上げるダークイーンが、破壊光線を放つ芽が付いた手の平を子供たちを閉じ篭めたバスに向ける。
「大人しく従います。 だから子供たちには手を出さないで…」
千鶴は唇を噛み、苦渋の表情を浮かべる。
《命令に従っていれば、子供は開放してあげるわ。  外したブレスレットはこっちに投げなさい。  次は服よ。 身に着けている物すべて脱ぐのよ》
ダークイーンに命じられるまま、ブレスレットを投げ、服を脱いだ千鶴が胸と陰部を手で隠した。
「これでいいかしら… 次は何をすればいいの…」
《ウクク… このバトルスーツを着て、ビッグダーク総帥に忠誠を誓って貰おうかしら》
ダークソルジャーが黒いケースを持って千鶴に近づき、中に入っているダークの紋様が付いたスーツを取り出す。
「わたしにダークの一員になれと、仲間と戦えと言うことね」
《ウクク… 簡単に言えば、そう言うことになるわね》
「そんなこと…」
屈辱的な事だったが、子供を助けるためにいまは素直に言うことを聞き、チャンスを窺うしかない。
自分にそう言い聞かせて、千鶴はダークイーンの命令に従順に従う。
「このスーツを身に着ければいいのね」
全身が黒いダークソルジャーの物とは異なるバトルスーツ。
背中が割れた首から下を覆い尽くすダークグレーのゼンタイスーツを身に着ける千鶴。
ゴムのような素材は体に吸い付くように密着し、着けると背中の割れ目は癒着して継ぎ目も残らない。
身に着けたスーツの上から、腕と足以外を覆う黒いボディスーツを着けると、ウエストに内蔵されたベルトの、ダークの紋様が描かれたバックルからカチりと音がして、体がきつく締めつけられた。
敵のバトルスーツを着けることで、姿だけでなく心までもが、ダークにされてゆくように感じた千鶴の手が止まる。
《ウクク… どうしたの まだグローブとブーツ、それに…》
「わかってるわ…」
ダークソルジャーが誘うように広げて持っている、肘と膝までを覆う長さの黒いグローブとブーツの袖口にも、ダークの紋様が付いており、それが千鶴の不安を煽り躊躇させる。
《早く着けなさい。   ウクク… そう、子供たちがどうなっても…》
「待って  ブーツを… いまブーツを履きます…」
意を決した千鶴が両足をブーツの中に入れると、膝にある紋様からカチりと音がし、密着するように足が締めつけられた瞬間、体に微弱な電気が走った。
「ッ!!   い…いまのは…」
全身が微かに痺れ、言いようのない不安に駆られる千鶴。
それを嘲笑うかのように、ダークイーンの命令口調が千鶴の耳に飛び込んでくる。
《次はグローブよ  早く着けなさい》
「ダ…ッ  !?   いま私…」
ダークイーンの命令に体が反応し、出て来る短い声に戸惑う。
それはダーク帝国に忠誠を誓う奇声。
《グローブよ  早くグローブを着けなさい》
「まさか、このバトルスーツには… 何か仕掛けが…」
《ウクク… 一条千鶴 命令に従いなさい》
「ぅッ…   教えなさい… このバトルスーツで… 私をどうするつもりなの…」
《ウクク… 言ったはずよ。 バトルスーツを身に着けて、ビッグダーク総帥に忠誠を誓って貰うと…   早く、グローブを着けなさい》
「ぐッ…  で…出来ないわ…  本当のことを…  このスーツの秘密を聞くまでは…」
奇声だけでなく、右手を掲げるダークの敬礼の姿勢で、ダークイーンの命令に応えようとする体を、必死で抑える千鶴の手が強く握られた。
《そう 子供がどうなってもいい… ってことね》
「まッ、待って!」
手の平の芽をバスに向けようとしたダークイーンの手が止まる。
《これが最後よ。 グローブを着けなさい》
「着けるわ… 着けるけどその前に… このバトルスーツの秘密を…」
《ウクク… 着けたら教えてあげるわ》
「くッ…   わかりました…  命令に…従います…」
千鶴の手が解かれ、ソルジャーたちが袖口を広げて持っているグローブの中へ侵入する。
だが、着けることで自分が自分でなくなってゆく恐怖で体がすくむ。
「だめ… 出来ない…  これを着けたら私は…」
《ウクク… 仕方ないわね。  ソルジャー!》
途中まで手を入れて躊躇う千鶴を見かねたダークイーンの命令で、ダークソルジャーがグローブを引き上げ、千鶴の両手に黒いグローブを装着する。
「なッ、何を… うッ! キャァァァァッ!」
無理やり嵌められたグローブを外そうとした瞬間、袖口にあるダーク紋様がカチリと鳴り、ブーツのときとは比べ物にならない衝撃が全身を駆け巡る。
「キャァァァァァァ!!  うッ… うぐッ…」
膝から崩れ落ちる千鶴が頭を押さえて苦しむ。
《ウクク… ダーク洗脳スーツの着心地はいかがかしら》
「せ…せんのう…すぅうぅッ… うぐぅッアッ… キャァァァァァァァァ!!」
苦しむ千鶴の額に、黒いアザが薄く浮かび上がる。
《ウクク… そのスーツはナノダークマシンで出来ているのよ。 装着者はダークパルスでダークの忠実な兵士に洗脳される》
「はァッ…はァッ……はぐぅッ! うッ…ン…んぐぅッ…」
ダークパルスに支配されまいと、千鶴は眼を瞑り必死に堪える。
「みんなが… みんなが…  来るまで…」
《ウクク… 来るわけ…   まさか!》
「ハッ…ハッ…   ブレスレットを…外すと… エマージェン…うぐぅッ…」
千鶴の額に浮かび上がったアザが、次第にダークの紋様へと変わってゆく。
《小癪なマネを…   ウク…ウクク…  でも 仲間が来るまで耐えられるかしら… ジャスティスピンクでいれるのかしらね…》
「たえて……うっ…うぅ… うぐぅッ!」
千鶴の目が見開かれ、これまでかと思われたそのとき、廃工場の扉が派手に破壊された。
「千鶴ッ!」
「大丈夫ですか、千鶴さんッ!!」
千鶴の名前を叫びながら、赤青緑黄のパワースーツを装着した4人が煙の中から抜け出して、苦しむ千鶴を見つけた。
「千鶴ッ! 無事かッ!!」
「レ…レッ…うッ… うぐッ……  イヤァァァァァァァッ… アッ… アァァ…」
助けに来た仲間を見やった千鶴が、悲鳴を上げるとそのまま地面にうつ伏せに倒れる。
「千鶴ッ!」
千鶴に駆け寄ろうとするレンジャーの行く手をダークイーンの破壊光線が阻む。
《ウクク… 助けに来たのに残念だったわね》
「ふざけるなッ、千鶴を還してもらうぞ!!」
《ウクク… あなたたちに取り戻せるかしら…》
「チッ、いちいち腹が立つ!! 千鶴、大丈夫か千鶴ッ!!   ダーク怪人ッ、千鶴に何をしたッ!!」
《ウクク… それは自分たちの目で確かめなさい。  ダークの忠実なるシモベ、一条千鶴》
「なにッ!」
手を突いて起き上がった千鶴が、右手を掲げるダークの敬礼と忠誠を誓う奇声をあげる。
『ダーク…』
「ど、どうしたんだ、千鶴ッ!」
レンジャーの呼びかけに、千鶴がゆっくりと振り返る。
虚ろな目で4人を見やる千鶴の顔は、鼻と口が黒いマスクで隙間無く覆われ、額にはダークの紋様がはっきりと浮かび上がっていた。
「千鶴さんの顔にダークの模様が!!」
「どうしたんだ、千鶴ッ!」
表情一つ変えず虚ろな目で仲間を見つめる千鶴。
《ウクク… ビッグダーク総帥に忠誠を誓うダークの戦士になった。 そうよね》
『ダークッ…』
「うそだろう…」
《ウクク… 彼らは信じられないみたいだから、あなたにとってジャスティスレンジャーがどんな存在か、教えてあげなさい》
ダークのエンブレムが付いた黒いヘルメットを差し出すダークイーン。
『ダークッ… ジャスティスレンジャーは… ダーク帝国にとって邪魔な存在… 倒すべき敵…』
「千鶴! どうして敵の言いなりになるんだッ!!」
「レッド、あれ! 子供が人質に捕られているから、千鶴さんは僕たちと戦うしかないんですよ」
《ウクク… それはどうかしらね》
『うぅっ…』
ダークイーンから受け取ったヘルメットを被った千鶴が苦悶の声をもらす。
「千鶴どうしたッ!」
『…ダークッ… かしこまりました… ビッグダーク様…  仰せのままに…』
ヘルメットから聞こえる指令に従順に応えた千鶴が、スモークシールド越しにレンジャーを睨む。
《ウクク… 殺れるわね》
『ダークッ! 私はダークの戦士 ダークエンジェル  ダーク帝国総帥ビッグダーク様がしもべ』
千鶴の瞳に邪悪な輝きが宿り、黒く染まった目元がつりあがる。
「レッド、千鶴さんの様子が…」
「わかってるッ!  ダーク怪人、千鶴に何をした!!」
《ウクク… 千鶴? それは誰のことかしら》
「てめェ、ふざけるなッ!!」
ダークイーンが目配せすると、千鶴は小さく頷き、ダークソルジャーが持っている短剣を奪う。
『ジャスティスレンジャー お前たちを抹殺する』
短剣を構えながら、千鶴はゆっくりと間合いを詰めはじめる。
「止めろ千鶴、止めるんだ! 俺たちは敵じゃない、仲間だッ! お前もジャスティスレンジャーだッ!!」
『仲間… 私がジャスティスレンジャー…』
「そうだ! 俺たちは」
『黙れッ! 私はダークエンジェル ダーク帝国に永遠の忠誠を誓うしもべ!  ジャスティスレンジャーは敵だッ!!』
敵意をあらわにする千鶴の攻撃をレッドが受け止めた。
「止めるんだ千鶴!!」
『ジャスティスレッド! お前を倒すッ!!』
「レッド、千鶴さんはダーク怪人に操られているのかもしれません。 ダーク怪人を倒せば千鶴さんは…」
「わかった。 千鶴はオレが抑える。 ブルーたちはダーク怪人を頼む!」
「「「 ジャスティスッ! 」」」





《ウッ…ウゥ… たった3人に…  どうして…》
「お前のような卑劣な怪人、5人揃ってなくても倒せます」
《ウゥッ…   ウク…ウクク…… これで勝ったと思うな…  ビッグダーク総帥ニ栄光アレッ!!》
青緑黄の千鶴を救いたい想いが、いつも以上の力を発揮させ、ダーク怪人を粉砕した。
「ダーク怪人 勝ったと思うな って言いましたよね…」
「気にするなグリーン 負けイヌの遠吠えってヤツさ」
「レッド、ダーク怪人を倒しました。 これで千鶴さんも…」
「カハァッ…」
振り返った3人の目の前で、短剣で腹を貫かれたレッドが崩れ落ちる。
「レッドッ!!」
「どうして… どうして千鶴さんは元に戻らない」
『ジャスティスレンジャー よくもビッグダーク様の大切な怪人を…』
レッドを行動不能にした千鶴が、ダークイーンを倒した3人を憎悪の眼で睨む。
「グリーン、どう言うことだよ。 千鶴さんはダークエンジェルのままじゃないか」
「そんなこと言われても…   他にも怪人がいて、千鶴さんはそいつに操られているのかも…」
「イエロー、グリーン いまはふたりを助けることに集中して下さい!!」
「ふたりを助けるって言われてもな…」
「手荒なことをしてでも、千鶴さんを大人しくさせて、ベースに連れて帰ります」
倒れたままピクリともしないレッドを気にしながら、ブルーは緑黄に千鶴を方位するよう合図を送る。
『フフッ… レッドに止めを刺す前に、お前たちから始末してあげる』
冷たく微笑みレッドの傷口を踏み躙りながら、レッドから奪い取ったJブラスターをソードモードで構えた。
「千鶴さんは操られているんです! ボクたちは仲間です。 千鶴さんはジャスティスピンクです!!」
『私はダークエンジェル それ以外の何者でもないッ!!』
「もしかしたら…」
「どうしたグリーン」
「あのバトルスーツが、千鶴さんを操っているのかも…」
「そう言えばさっき、あのヘルメットを被った途端、千鶴さんはダークエンジェルに… ん!?」
ソードを構える千鶴の背後で空間に歪みが生じ、そこから現れた黒い影が千鶴を守るように取り囲む。
「ダークソルジャーです!」
「くそッ! 一気に方を付ける気か!!」
「待って下さいイエロー  ソルジャーたちの様子がおかしい」
ソルジャーは短剣を構えて牽制するだけで、攻め掛かって来る気配はなく、最後に現れた他とは違う紅いダークソルジャーが2体、千鶴の両脇に控えた。
「何をする気だ」
「わかりません…」
「もしかしたら、千鶴さんをダークに連れて帰る気じゃ…」
「なにッ!! 何でだ!!」
「わ、わかりませんよ…」
「イエロー、グリーン!! ソルジャーを殲滅して、ふたりを救出します!!」
青緑黄が駆け出すと、千鶴を囲んでいたソルジャーも動き出し、激しい戦闘が展開された。
千鶴も戦闘に加担しようとしたが、両脇に控えていたソルジャーに抑えられ、しばらく抵抗していたが、背後の空間に再び歪みが生じると大人しくなり、右手を掲げる敬礼の姿勢を見せる。
『ダークッ! かしこまりましたビッグダーク様 仰せのままに…』
敬愛の表情で応えた千鶴は、青緑黄の制止に耳も貸さず、踵を返すと歪みの中へと消えていった。







≪ダークエンジェルはどうか≫
黒い術着のダーク科学者が壁のダーク紋様レリーフに敬礼の姿勢で応える。
『ダークッ! 予想を上回るスペックでございます。 ジャスティスレンジャーに葬られたダークデビル将軍と互角 いえ、それ以上の能力ではないかと…  ビッグダーク総帥のご期待に添う働きを致しましょう」
施術台の上に洗脳スーツとは異なるスーツを身に着けさせられた千鶴が寝かされている。
黒い邪悪なメイクを施され、腕と太股の中ほどまでを覆うグローブとブーツ、そしてノースリーブハイネックレオタード。
黒い艶のあるそれらは、薄暗い照明の中で妖しい光沢は放っていた。
『万全を期すため 能力を十分に発揮できるようにするために、ジャスティスピンクはおろか、人間としての意志、記憶の消去を行い、現在、ダーク帝国の意志、記憶の植え付けを行っているところでございます」
千鶴の頭に取り付けられた装置のランプが明滅を繰り返し、鈍い動作音を響かせている。
≪一条千鶴 我が片腕として仕えるに相応しい女≫
『ダークッ! 必ずやお気に召して頂けるダークの女将軍に仕上げてご覧に入れます』
≪期待しているぞ≫
「ダークッ!」


そして数時間後、ビッグダーク総帥の自室には…
漆黒の西洋風甲冑を半ば脱ぎ捨て、総帥の足元に傅くダークエンジェル、千鶴の姿があった。



鬼巫女



古より鬼を狩ることを生業とする一族がいた。
主家である守り人衆、八神家の若き当主となった八神神楽は分家の鬼斬衆、鬼薙衆と協力し、人間界に住み着いた鬼を狩り続けていたのだが…



鬼頭財閥ツインビルの最上階。
窓のない暗い部屋、その中央に神聖な巫女装束に身を包む鬼狩の当主、八神神楽が捕らえられていた。

「まさか分家の手駒を守る為に、当主自らが囮になるとはな。 その手駒たちは手当たり次第に鬼を狩り、お前の行方を捜しているようだが…」
「鬼を狩ることが斬、薙の務め。 斬、薙を守護することが当主である私の務め」
結界の中で目を瞑り正座したまま、神楽は静かに応えた。
「しかし、鬼狩の当主らしくない判断だったな」
黒いスーツを着こなし、高座の椅子で脚を組んで座っている鬼頭財閥総帥、鬼頭鬼丸が余裕の笑みを浮かべた。
「人のフリをしている鬼のほうが、らしくない と思いますが…」
「フフッ… 人の姿でいるほうが何かと都合いいからな。 お前たち鬼狩の目も欺ける。 いや、欺けた…だな」
「狡猾な鬼め…」


数時間前、神楽たち鬼狩衆は鬼に襲われている女性と遭遇した。
だがしかし、それは鬼の首領鬼丸が神楽たち鬼狩衆を葬るために仕掛けたワナだった。
鬼の気配を消して人に化けているが、それを見分けることはできた。
だが、帰宅途中のOLが鬼の餌食になる事件が連続して起きていたことが、神楽たちの心を逸らせ、鬼丸の仕掛けたワナにまんまとはまり、女性に化けていた鬼から鬼薙、鬼斬をかばおうとした神楽が囚われてしまった。



「ヒッヒ… あの神楽の名を継いでいるので、どれ程の者かと思うておりましたが…」
神楽の結界の周りをウロウロしていた老人が鬼丸を見やり、ニヤリと怪しい笑みを浮かべる。
「鬼狩の当主、八神神楽よ。 そろそろはじめるとしようか。 その結界を破り、楽にしてやる」
人の姿に化身している鬼丸の眼が紅く染まり金色の縦長の瞳が現われると、3本角の赤黒い鬼の姿に変容してゆく。
「なるほど… わざわざ私を生け捕りにしたのは、自らの手で葬り去りたかった…と言うことね。 くッ…」
本来の姿に戻った鬼丸から放たれる瘴気に圧された神楽が小さく声を漏らす。
「鬼狩の当主と言えども、我が瘴気に触れれば…  フッ…フフッ…」
途中で言葉を止め含みのある笑いを漏らす鬼丸。
その態度にあやしい胸騒ぎをおぼえた神楽の目がゆっくりと開かれる。
「鬼、一体何を企んでいるのです… うっ…」
「フフッ… それを知ったところでどうする。 フンッ!!」
鬼丸のドス黒い瘴気が増し、神楽の結界と干渉し白と黒の電撃が交差する。
「鬼が…  うぐっ…」
交差する電撃が激しくなり、神楽を護る結界が徐々に圧され小さく萎んでゆく。
「なんとたわいない ヒヒッ… もう限界のようですな」
「な…なにを…戯言を…  これしきの瘴気…」
「ヒッヒヒッ… ご当主殿の意識があるうちに、これから何がはじまるのかを、教えてやろうかのォ…」
そう言うと老人は、大事そうに持っていた鬼のしゃれこうべの口から、紫色の液体を床の上に垂らした。
「ヒッヒッ… 鬼狩の当主よ、御覧なされ」
床に垂らされた液体が妖しく輝きながら五芳星を描き、桃色の梵字が浮かび上がる。
「こ、これは… 禁呪!」
「ヒヒッ…いかにも。 これは人を鬼に化身する秘術、鬼人転生の禁呪」
「鬼人転生の禁呪?  どうして鬼が… 鬼ごときが呪術を… ン!? これは…鬼狩の梵… ちがう…逆梵字…    まさかこれで私を鬼に化身させると?  クスクス…何の冗談か知りませんが…」
「ヒッヒヒ… 鬼狩の当主は鬼巫女をご存知ではありませんかな」
「鬼巫女?」
「フッ… やはり知らぬようだな」
「ヒヒッ… 鬼狩にしてみれば身内の恥、でしょうからな」
「それはどう言う意味です。 その鬼巫女とやらと、われら鬼狩にどのような関係があると… くッ!」
床に描かれた五芳星が紐解かれるように一本の紫帯となり、結界を包み込み巻きつく。
そして結界の周囲にたちこめる鬼丸の瘴気も黒から紫の霧へと変化しはじめていた。
「ヒッヒッ… では、先代神楽のことは、ご存知でしょうな」
「鬼が何を…  神楽様は稀代の当主、私も神楽様にあやかりたいと… ぅッ…」
巻きついた紫帯が結界を締めつけ、その範囲をさらに小さくしてゆく。
「フフッ… 鬼巫女とは、その神楽と血を分けし妹」
「なッ! 神楽様にご姉妹? 誰がそのような戯言を」
「ヒヒッ… 姉への憧れが、いつしか強い嫉妬に変わり、鬼へと奔らせたのでしょうな」
「鬼となることを望んだ鬼巫女は、自らを鬼に変える転生の禁呪を生み出した。 だが…」
「黙りなさいッ!?  アッ!」
心の乱れに乗じて結界を破った紫帯が神楽の腕に絡みつく。
「ヒヒッ… この程度で心が揺れるとは… まだまだお若いですな 鬼狩の当主」
「くッ! こんなも…うっ… か…体が……」
巫女装束の上から神楽の腕に巻きついた紫帯が、結界の外にある紫の霧を吸収し、装束を禍々しい紫に染めていた。
「いかがですかな。 瘴霧に染められた装束の着心地は? ヒッヒッ… 瘴気と違って命を落とすことはありませんが、体の自由と思考を奪われ、何も考えられなく」
「バ…バカに…しないで…」
虚ろになりはじめた目を瞑り、小さく口を動かした神楽の額に破魔の輝きが集まる。
「ホホゥ…破魔の呪禁… まだそんな力を残して… ヒッ…ヒヒッヒヒィ…  がしかし」
その神々しい輝きは紫帯の梵字と同じ桃色に変えられると、染み込むように神楽の頭の中へと消えてしまった。
「な…なにが… どう…して…  うッ…  うぁぁ… あぁぁぁぁ…」
輝きが染み込んだ額にうすい桃色の模様が現れ、神楽の瞳が桃色に染まる。
「ヒッヒッ… 鬼丸様、鬼舟斎の勝ちですな」
「チッ まんまと老いぼれに誘導されよって…  極上の肝を喰いそびれたか」
「な…に…が…… おき…くぅあぁぁぁ…」
結界が消滅し、紫の霧と帯が神楽の体を包み込む。
「ヒヒッ… 鬼狩の当主よ、誤りましたな。 この程度の瘴霧ならば、解毒の術法でこと足りたはず。 しかし、施されている術が禁呪と知り、より強力な破魔の呪禁でなければ、と思われたのでしょう。   ヒッヒッ… がしかし、この転生の禁呪は破魔の呪禁があって成される禁呪。 当主ではない鬼巫女は呪禁が使えず、完全な鬼には生れなかったようですが…」
「…こ……こざか…しい……おに…め… うッくぅあぁぁぁぁ…」
神楽の額に円状に浮かび上がる模様の色が濃くなり、その中央が縦に裂けた。
「ヒッヒヒッ… その憎悪も転身の禁呪には不可欠。 オォォ… 当主の躰に鬼道が開きますぞ」
裂け目が口を開くように少しずつ広がり、女性の陰唇のような様に変化してゆく。
「あっ…  あぁ……  はあぁぁぁぁ…」
瞳の桃色が眼全体へと広がり紅に変わってゆくと、神楽は心地良い夢見心地の表情を浮かべたまま反応しなくなった。
「どうだ 鬼舟斎」
「恐らく問題ないかと。 あとは… ヒヒィヒヒッ…」
鬼舟斎が神楽の額に開いた穴を覗きながら、満足の笑みを浮かべる。
「フッ… そこに挿れてやればいいのか」
「さようです。 鬼道から鬼丸様の力を注ぎ、当主の心を導いて下されば…」
紫の霧に包まれて宙に浮いていた神楽の体が鬼丸の前に引き寄せられ、正座するように跪かされる。
「フフッ… 我らを狩る鬼狩の当主が我がシモベ、鬼巫女にか…」
両手で神楽の頭を押さえた鬼丸の口元が微かに緩み、額の穴にゆっくりと魔羅が捻じ込まれた。
「ホホォ…」
神楽の頭を貫いたであろう魔羅は不思議と貫通せず、彼女の頭の中に納まり、それを味わうかのように穴がヌチャヌチャと隠微な音をたてる。
「フッ…フフッ… 自ら求めるか」
深々と魔羅を押し込んだ鬼丸の顔に残忍な笑みが浮ぶ。
「ヒヒッ… お気に召して頂けましたかな?」
鬼舟斎の言葉に頷くと鬼丸はゆっくり抽送をはじめた。





意志のない紅い眼をした神楽が紫の霧に包まれて仰向けで宙に浮いている。
「ヒヒッ… そろそろですかな」
「フッ… ようやくか」
紫の巫女装束が風に靡くように揺れ、その様相が変化しはじめる。
襦袢(じゅばん)が妖艶に変化し、胸元と肩を露出する。
巻きついた紫帯がガーターベルトのように脚だけになった袴を吊るすと、血色をした大きな数珠が霧の中から現れ、露出した神楽の胸元を彩る。
巫女装束の変化が治まると神楽の体にも変化が現れる。
黒髪は青紫へと変色し、白い肌は日焼けしたような浅黒い肌へと変わる。
紫に染まった爪は鉤爪状に伸び、派手な化粧を施したような紫の模様が神楽の顔を彩ると、鬼丸の白濁で満たされた鬼道から白い棘が現れ、瞬く間に1本の強大な角へと成長した。
「ン…… ンン…」
すべての変化が治まった神楽が小さく身じろぎ瞬きすると、その眼は紅く、縦長の黒い瞳が開いていた。
「ンフゥ…… ここは…」
ゆっくりと上体を起こして床に脚を下ろした神楽が眼を細めて変わり果てた己の姿をみつめた。
「ンフ…  ウフフフ…」
「ヒヒッ… 気分は如何ですかな?」
「ウフフ… 鬼舟斎殿 悪い夢から覚めたような、とても清々しい気分… と申し上げたいところですが…」
「神楽、鬼巫女神楽よ」
「あぁ… 我があるじ…鬼丸様… ご無礼をお許し下さいませ…」
髪と衣をなびかせて振り返った神楽が恭しく跪き頭を下げる。
「鬼巫女殿、何かご不満がおありのようじゃが…」
顔を上げて眼だけを鬼舟斎に向けた神楽が、舌先で唇を舐めながら額に生えた角に両手を添える。
「いいえ、不満などございませんわ。 わたくしごときを鬼へと導いて下さったことに感謝しております。 ただ…」
鬼丸に一礼して立ち上がった神楽が変わり果てた装束の中に、唯一、そのまま残されている操を守る純白に指を滑らせた。
「わたくしの中に残されている この忌々しい鬼狩の力が… 残された人の部分が不快でなりません」
「ヒッヒッ… それはじゃな」
「鬼狩の力を似て、鬼狩を滅する。 わたくしがこれまで犯してきた罪を償う機会を与えて下さった」
「フフッ… なぜ鬼狩の力が残されているのか、理解しているようだな」
「ハイ いますぐ、この力で鬼狩のクズどもを…」
微笑んだ神楽の手の平に鬼狩守護の梵字が妖しく輝いていた。






「神…楽…さま…  どうして…」
神楽と交わした主従の契りが刻まれた腕を押さえながら鬼薙と鬼斬、ふたりの女手練が膝を落とす。
「これからは仲間…ではなく、手駒として働いてもらいますわ。 ウフフ…」
ふたりに向けてかざしている神楽の手の黒い邪悪な輝きが増すと、手練たちの腕がメリメリと隆起し、黒味を帯びた青と赤の鬼の腕へと変容してゆく。
「ヒッ… ヒィッ… お…おやめ…ください… 神楽… ギャヒィ…」
「お…お気を… お気を…確かに… ギヒッ…」
神楽を説得するふたりの口から不気味な声が発せられると腕に起きていた変化が全身へと拡がる。
「ウフフ… もうすぐ終わるわ」
「ッルル… カ…グ…ラ……サ…マ… ユ…ル…サナイ…」
「ウラ…ギリ…モノ…カグ…ラ… グルル…」
紅く染まった目で神楽を睨むふたりの額に黒い角が現れ、口元に鋭い犬歯が生えると。
「ウフフ… お前たちの獲物はわたくしじゃなくて人間… 鬼狩の一族よ」
「オニ…カ…リ… ニン…ゲン… ッルル…  ッルルル…コロス…」
「グルル…オニ…カリ…コロス… グルルル… ニンゲン…コロス…」
「ウフフ… お前たちは鬼、わたくしの可愛い手駒…」
ともに鬼を狩り続けてきた仲間が鬼へと変貌する姿を、神楽は冷たく微笑みみつめていた。



短い読み物



「ッ… いつまでも… わたしを利用できると… 思わないことね…」
白のライダースジャケットとミニスカート、膝下までのブーツを身に着けた女が苦渋の表情を浮かべる。
「まだそのようなへらず口を…  これで何度目だ、また自我を取り戻しているではないか。  もとより、敵であるこの女を部下にすることなど…」
「クックッ… ご心配には及びません。 サディースト殿下」
白衣のようなマントを纏う小柄な影が、まるで臣下の礼をとるかのように片膝をつき、漆黒の鎧を纏う騎士の足元に視線を落としている女の顎に指をかけ、羞恥と怒りがにじむ顔を覗き込んだ。
「なかなか意志の強い人間でしたが…  クゥックックッ… 殿下、いましばらくのご猶予を」
マゾーン帝国科学者ラテックは紅い眼を細めて不気味に笑うと、数人の部下に運ばせてきた装置に向かう。
「オイ! お前たち、サイバーブルーを装置に繋ぐのじゃ!」
『『ルゥッ!』』
全身がぬめぬめした黒い光沢を帯びているマゾーン帝国戦闘員スレイバーがラテックの命令に敬礼の姿勢で応えると、サディーストの前で跪いたまま動こうとしないサイバーブルー蒼野瑠海(あおのるみ)の腕を掴み、ラテックが調整している装置のところまで連れて行くと、彼女が身に着けている衣服を脱がせた。
「や、やめなさい…」
口だけで抵抗する瑠海の体はスレイバーたちと同じ黒の袖のないレオタードで覆われていた。
「クックッ… どれ、新しいスレイブスーツに着替えさせてやろうかの」
瑠海が装置の中央にある椅子に座らされるとレオタード部を覆い尽くすカバーが取り付けられ、そこに装置から伸びるチューブが繋がれる。
「何回繰り返してもムダよ、わたしはお前たちの…」
頭に黒いフルフェイスタイプのヘルメットを被された瑠海の言葉が遮られる。
「クゥックックッ… 今回は5マゾボンデージで調整じゃ」
ラテックが装置を調整しボタンを押すとゴキュゴキュと不気味な音が響き、装置と瑠海の体を繋いでいるチューブが小刻みに振動する。
そしてヘルメットの黒いバイザーにマゾーン帝国の紋様が明滅し、内部は黒いガスと怪しい音で満たされた。
「クゥックッ… スレイバーどものスーツの5倍のマゾボンデージじゃ。 洗脳レベルが格段に上がるじゃろう」
レオタードが取り除かれると黒い粘液が体を覆っているカバーに送り込まれ、瑠海の体に先ほどまでの物よりもピタリと密着する黒いレオタードが新たに形成された。
異臭を放つガスと音、そして体をきつく締めつける不快感と恐怖で瑠海の頭が左右に振れる。
「抵抗してもムダじゃわい。 すぐに植え付けた帝国への忠誠心が呼び覚まされる。 クックックッ…」
その言葉どおり瑠海の動きは次第に鈍くなり、力も抜けて装置に身をゆだねていた。
「クゥックックッ… サイバーブルー、ワシの声が聞こえるか」
ラテックの質問に応える瑠海の頭が小さく前後する。
その仕草に紅い目を細めたラテックも小さく頷き、装置の両脇に控えるスレイバーに瑠海に被せたヘルメットとカバーを取り除かせた。
「クゥックッ… サイバーブルー、お前はラバーラ陛下にすべてを捧げるマゾーンの兵、そうじゃな」
「…ルゥ…  私はラバーラ陛下に忠誠を誓う…マゾーン帝国の兵士です」
ラテックを見つめる眼差しは敵意のない尊敬する上役を見るものに変わっている。
瑠海の心と体に繰り返し刻まれた邪悪な意志が正義の心を抑え、マゾーン帝国の従順なスレイブへと変えていた。
「クゥックックッ… 何をしておる。 殿下への報告はどうした」
「ル、ルゥッ!」
ハッと驚いた表情を浮かべ玉座のサディーストを見やった瑠海は装置から立ち上がると敬礼の姿勢で応え、スレイバーたちが口を広げて持っているレオタードと同じ黒の腕と腿の中ほどまであるグローブとブーツを装着した。



「クゥックッ… 前回までと違い、今回は自我を取り戻した状態で課せられた任務を遂行しております」
瑠海から受け取ったデータチップを手にして話をするラテック。
その少し後ろで、瑠海は頭を下げて跪いていた。
「クックッ… この装置とスレイブスーツで調整してやれば、容易に再洗脳も完了致します。 これを繰り返すことで、サイバーブルーの洗脳はより完全なものとなり、揺るぎない忠誠心を持つ帝国の兵へと生まれ変わるのです。 恐らくそれも…」
「フフッ…よかろう、いましばらく時間をやろう。  スレイバーシャドー」
「ルゥッ!」
スレイバーシャドー。
サディーストにそう呼ばれた瑠海は指先まで綺麗に伸ばした右手を高々と掲げるマゾーン帝国の敬礼の姿勢で宣誓の奇声を発し、足早にサディーストの前に移動する。
「ルゥッ! マゾーン帝国に忠誠を」
「フッ… その証を見せろ。 スレイバーシャドー、サイバーナイツの施設を破壊して見せろ」
「ルゥッ! サディースト殿下の仰せのままに…」
自信と誇りに満ち溢れる瑠海の口元に邪悪な笑みが浮かんだ。


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Author:孫作 ( magosaku )


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