河村たかし名古屋市長が率いる首長政党「減税日本」が振るわない。3月の名古屋市議選(定数75)で28人が当選し、第1会派に躍進。4月の愛知県議選(定数103)でも名古屋市内で13議席を獲得した。しかし、市長の側近だった則竹勅仁・元名古屋市議団長が公約違反の責任を取って議員辞職するなど、その後は混乱ばかりが目につく。減税日本の市議、県議は現状をどう見ているのか。この先どのような活動を目指すのか。座談会で5人に意見を交わしてもらった。【司会・長沢英次】
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<座談会出席者>
富口潤之輔市議
宇佐美汝久愛市議
玉置真悟市議
三宅功県議
東裕子県議
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--3月市議会の反省点は。
富口 議会のルールを教えてもらえないまま全員がスタメン出場し、打ちのめされた。議員間でも連絡が足りなかった。
宇佐美 新人なので、いろいろ教えてもらえると思ったが、なかった。
三宅 (議会)事務局がついて(アドバイスして)いるんでしょ。
玉置 それは県議だけで市議はない。
富口 訳が分からないまま、いきなり議会に座って。
--なぜそうなったのでしょうか。
富口 ベテランがいればいいが、いなかった。党議拘束がないことをはき違えて、「何でも自由」というのがあった。委員会は会派として考えを述べないといけないが、個人でやりたいことをやるから支離滅裂になった。
玉置 3月に報酬削減案を提案するのは無謀だったかな。ただ結果として特例ながら(年)800万円になったことは一定の成果があった。
--則竹氏の辞職をどう受け止めますか。
富口 会派として非常に申し訳ない。則竹さんに一番教えてもらったので残念でならない。
三宅 僕が河村市長に則竹氏を紹介した。彼は明るく真面目まじめ。1人会派で頑張ってきた。お金が必要でつい魔が差したというか。公表して使えばよかった。僕は則竹氏に「辞めるな」と言った。しかし彼は責任感が強く「迷惑をかけられない」との認識だった。
--減税日本の現状について、支持者から「期待外れだ」と言われたことは。
宇佐美 報酬800万円を決める総務環境委員会がニュースで出た瞬間、「何、あのざまは」と電話でお叱りを受けた。
富口 報道がちょっとね。
宇佐美 どの放送局も答弁に詰まったところを何度も流すから。
玉置 悪いところばかりというかね。
三宅 振り子の法則だから仕方がない。
玉置 3月の市議選は河村たかしと共に闘う28人の軍隊ができたスタートに過ぎない。期待との乖離(かいり)は当然ある。批判されるが、それも予定に入っていると僕は思っている。即戦力としての期待はあるかもしれないが。
--減税日本の議員の仲が悪く、バラバラなんじゃないですか。
富口 そんなこと言う人います?
宇佐美 (候補者として)声がかかった時期がそれぞれ違うわけですから。私は3次公認で(他の候補を)誰も知らない状態だった。全く知らない中から、忙しいスケジュールが始まって、全くコミュニケーションを取れないまま進んでいった。
玉置 冒頭からは無理じゃないですか。自分の小・中学校時代を思い出してください。いきなりクラス一丸ってできます?
宇佐美 クラスとは違う。一人ずつが歩み寄るという気持ちがあったら、もっと早く団結できた。
富口 委員会は六つに分かれているから、自分の委員会に必死で、他が分からない。最近は週2回きちんと報告し合ってるけど、それがなかったのも原因かな。
三宅 市議はスタートが違うから。現職がいて、河村サポーターズの公募に応じた人、署名を一生懸命やった人もいれば、減税日本の一本釣りで出た人、最後に公認された人も。それがいきなり一緒になった。まとまれと言われても無理だわね。
--党が分裂することはないですか。
富口 ないと思う。方向性が見えてきた。ある程度修正され、大きい筋ができた。
--報酬年800万円でやっていけますか。
富口 やれる、やれないと議論するよりも、やる、というのが我々のスタンス。その質問は愚問ですよ。
玉置 市長の考え方は、800万円を生活給に充て、議員活動にかかる経費は明確に分離すべきだ、ということ。それなら他会派の人でもできる。
--政務調査費の制度を見直すということですか。
玉置 そうなるものだと解釈している。800万円でこれまでのスタイルを維持するのは無理かもしれない。工夫が必要だ。
--河村市長と大村秀章愛知県知事に対する評価は。
富口 我々は河村たかしの看板を背負って当選した。100%イエスというわけではないが、基本的には市長を支えなくちゃいけない。
玉置 一党員として市長と接する時と、市議として接する場合では違う。立場の違いで苦慮することはある。
東 県議だと、市長に会う機会が全然ない。知事にもまだ会っていない。もっといろいろ話し合えればいい。
--河村市長は最近元気がないのでは。
三宅 そんなことはないですよ。タフですから。「どうしてそんなに頑張れるんですか」と聞いたら「好きだから」と言われた。好きなんですよ、政治活動が。
--減税日本は全国展開を目指すんですか。
三宅 減税「日本」というからには、あくまで減税という考えを全国に広めたい。大村知事の日本一愛知の会は、愛知県を日本一にしたいと。愛知県にこだわる。2人の考えはそういう意味では違うわね。
東 減税日本は全国に広まってほしいと思うけど、体制をもうちょっと整えないと広がっていかない。そういう懸念はある。
富口 急に大きくなりすぎた。
三宅 本部とか県連がないとね。既成政党並みとは言わんにしても。
東 土台がきちんとしていないと家は建たない。そのためには皆を統率する力のあるリーダーがいないと。
富口 国政も増税ムードになっている中、疎ましい存在であり続けなくてはいけない。ポリシーを変えずに減税路線を貫く。
玉置 国政政党に衣替えしようとしてる感じがする。ホームページを見ると「地域政党・減税日本」と書いてある。名古屋では地域政党という認識が強い。それならまず軸足を名古屋に置いて頑張ってみるのもいいんじゃないか。その上で主張に賛同してくれる人を募るというのは十分ある。ただ減税日本が自民や民主と同じようになってほしいとは誰も思っていないのでは。市長は今までの政党がやってきたことにノーを突きつけた。例えば、党議拘束はいかん、議員の家業化はいかんと。既存政党と同じ道を歩むことには違和感を感じる。
--県議会ではどう存在感を出していきますか。
東 市議のように掲げていることを出すのはなかなかできない。
三宅 愛知の会が自民、公明(の県議選候補)に推薦を出したでしょ。その方々にもう少し自覚を持ってもらいたい。選挙の時だけ名前を借りて、後は自分たちの考えで行くんだというのはないと思う。我々(減税日本、愛知の会)は18人しかいない。自公と連携を取らないと何ともならん。
--2期8年で議員を辞めて他の人に代わると掲げています。
玉置 「2期8年」は非常に重要だ。経験を積み重ねていく、というのと全く逆で、誰でも議員になれるという河村政策の具現。2期8年で入れ替わっても大丈夫な組織を作らなくてはいけない。1期生である我々にかかっている。
富口 4年後の前に、市長の任期満了である2年後にどうなるのか(笑)。1期ではなく、2期8年でできることがある。そのために選挙に勝たないと。今は余裕はないが、ある程度地力がついた時には「どぶ板選挙」もやらないと、4年後には議席がどんどん減ってしまう。私自身も生き残れない。
東 ただ、今までの議員を見ていると、選挙のためには興味がなくても地元の行事に出ているようなところがあるのでは。それってどうなのか。政策をきちんと評価してもらいたい。ジレンマがある。
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3・13 名古屋市議選(定数75)で28議席を獲得。過半数を逃すも、最大会派に
4・10 愛知県議選(定数103)で13議席を獲得。大村秀章知事の地域政党「日本一愛知の会」の5議席と合わせ18議席の会派に
4・27 3月市議会で市議報酬を「当分の間」年800万円とする条例案が可決。年800万円の根拠を他会派に示せず「800万円恒久化」は実現せず
5・15 長野県で減税日本の懇親会。県議は全員出席したが、市議は28人中17人の出席にとどまる
6・ 2 市議団の則竹勅仁団長が、公約で受け取りを拒否していた費用弁償360万円を借金返済などに使っていたことが発覚。則竹氏は団長を辞任
6月市議会に報酬年800万円の恒久化条例案を提出することを断念。河村たかし市長は「まだ勉強を積まないと」と説明
6・ 3 則竹氏が政務調査費を不適切処理していたことが発覚。
6・ 6 則竹氏が議員辞職
6・ 8 名古屋港管理組合議会の報酬廃止条例案を6月議会に提出することを断念。会派内で意見まとまらず
6・21 金城裕市議が役員を務める健康器具販売会社が、商品効能を不適切に宣伝。市が薬事法違反で行政指導
6・22 中村孝太郎・市議会議長が則竹氏の不適切な政調費処理を「問題ない」と発言。その後、議員総会などで謝罪
6・28 東裕子県議が社長を務める化粧品輸入販売会社が、商品効能を不適切に宣伝。市が薬事法違反で行政指導
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■減税日本・名古屋市議
中村孝太郎 (65)呉服店経営▽昭和区
鹿嶌敏昭 (64)学習塾経営▽西区
荒川和夫 (64)公認不動産コンサルタント▽瑞穂区
浅井康正 (60)土木建設会社社長▽名東区
片桐栄子 (59)書店経営▽熱田区
園田晴夫 (59)不動産仲介業▽北区
黒川慶一 (57)フリーアナウンサー▽千種区
中村孝道 (54)僧侶▽南区
舟橋猛 (53)建築内装業▽名東区
田山宏之 (53)広告会社執行役員▽北区
金城裕 (51)空手道場代表▽瑞穂区
冨田英寿 (51)電化製品販売店経営▽中村区
鈴木孝之 (50)高速道路料金収受会社員▽天白区
山崎正裕 (50)行政書士▽中川区
大村光子 (50)元マーケティング会社課長▽昭和区
湯川栄光 (49)パチンコ経営研究所長▽南区
林直樹 (49)元コンピューター関連会社員▽中川区
近藤徳久 (48)段ボールケース製造販売会社員▽東区
宇佐美汝久愛(47)デイサービス職員▽港区
河合優 (46)経営コンサルタント▽緑区
松山豊一 (42)事務機器会社役員▽守山区
加藤修 (38)飲食会社社長▽中村区
堀田太規 (36)事務機器会社員▽天白区
富口潤之輔 (36)薬剤師▽守山区
余語冴耶香 (33)法律事務所員▽緑区
済藤実咲 (32)タレント▽中区
玉置真悟 (26)名古屋大生▽千種区
山田真奈 (25)東京大院生▽西区
■減税日本・愛知県議
岡江智子 (59)表千家茶道教授▽南区
三宅功 (56)河村サポーターズ代表▽名東区
加藤喜久江(54)珠算塾経営▽昭和区
半田晃士 (53)コンサルタント会社社長▽西区
宮地美角 (51)税理士▽緑区
荒深久明臣(49)一般社団法人理事長▽北区
東裕子 (47)美容健康サロン経営▽千種区
広沢一郎 (47)ソフト開発・販売会社社長▽瑞穂区
安藤雅彦 (44)電気通信工事会社経営▽東区
佐藤敦 (38)広告会社社長▽中区
野田留美 (37)農業▽守山区
平岩登 (37)元衆院議員秘書▽港区
錦見輔 (30)元日本テレビディレクター▽天白区
※敬称略、年齢順、肩書は選挙時
毎日新聞 2011年7月3日 地方版
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クルマの最先端が集結
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