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どぶからできた油、食卓へ 中国の疑惑、捜査で裏付け

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食卓に出回った「地溝油」が作られていた現場。大きなかめの中に残りかすが放置されていた=寧海県、林望撮影

 どぶからできる油が食卓に出回っている――。

 10年ほど前から重慶、西安、福州など各地で報じられ、消費者を不安に陥れた疑惑の一端が9月、公安省の捜査で裏付けられた。

 浙江省寧波から車で1時間あまり。寧海県郊外の新興住宅地に近い畑の一角で、「地溝油(ティーコウユー)〈どぶ油〉」は作られていた。

 「鼻にツンと来る、何とも言えない臭いだった」

 近くの農業、楊朝雨さん(42)はそう言って、すすまみれのれんがを積んだかまどの跡を指さした。直径2メートルほどの大釜は警察が持ち去ったが、残りかすをためた大きなかめがそのまま放置されていた。

 「見てみろ。ありとあらゆるものが入っている」

 白い気泡を立てる泥の表面を楊さんがくわでほじくり返すと、黄ばんだ液体に混じってニンニク、唐辛子、菜っ葉のほかに、ストローやペットボトルのキャップなどが現れた。

 油を作っていたという本人が、釈放されて自宅に戻っていた。

 「建築用の油だと聞かされていた。やましいことは何もない」。葉金捧さん(42)は夫と1カ月ほど地元の警察に勾留されたが、起訴を免れた。

 寧海県から約50キロ離れた村で農業をしていた夫婦は7年前、知人から「もうかる仕事がある」と誘われた。深夜、ホテルやレストランを回り、調理室につながる排水溝のゴミを集めた。狙いは、捨てられた調理油や残飯の肉や魚から出る油分だ。雑多なゴミを釜で4時間ほど煮詰め、浮いてくる油をすくい取った。

 同じようにゴミを集める「ライバル」が10人以上いた。毎日、大量のゴミがでる排水溝は競争が激しく、「優先権」に月500元(約6千円)の値がついた。

 公安省によると、葉さんらが作った油は山東省済南のバイオディーゼル工場に運ばれた。この工場で不純物を取り除き、河南省鄭州の業者が食用油の容器に入れて販売。周辺の四つ星ホテルなどにも納められた。

 警察は工場経営者ら32人を逮捕し、70トンの地溝油を押収。中国紙によると、経営者は月平均500トン前後を生産し、25万元(約300万円)ほどの利益を上げていた。原料となる油を各地から買い集めたが、香辛料の風味は取り除けないため、四川省や湖南省など辛い料理の多い地方からは買い付けなかったという。(広州=林望)

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