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【スポーツ】

市民ランナー川内 五輪見えた 日本人最高3位

2011年12月5日 紙面から

◇福岡国際マラソン

 ▽4日▽福岡市平和台陸上競技場発着の42・195キロ▽来年のロンドン五輪代表選考会を兼ねる▽スタート時の気象 晴れ、気温13・7度、湿度49%、西の風2・4メートル

 “市民ランナーの星”川内優輝=埼玉県庁=がロンドン五輪代表に手を掛けた。“山の神”今井正人=トヨタ自動車九州=とのデッドヒートに競り勝ち、日本人トップの2時間9分57秒で3位に食い込んだ。レース3日前まで事務仕事をこなし、調整レースのつもりでも、市民ランナーが実業団の有力選手をねじ伏せた。今後は2レース挟み、同じく五輪選考会の東京マラソンに出場する予定。五輪選考会の日本人トップ選手が再び五輪選考会に挑んだ例は過去にない。ケニア出身のジョセフ・ダビリが初マラソンを2時間7分36秒で制した。

 叫んで笑って、最後は倒れた。川内は20キロすぎに先頭集団から脱落。頭の中に突然「日の丸」が浮かんできたのは、一度視界から消えた前方の選手たちが再び見えたその時だった。世界陸上の団体戦で獲得した銀メダル。もう一度世界の舞台に立ちたい−。38キロすぎの給水所で水を浴びて絶叫、そしてニヤリと笑った。まるで漫画の主人公のように、最大23秒もあった差を逆転した。ゴール直後は倒れ伏し、“恒例”の医務室直行。とことん「川内劇場」だった。

 「よく一人で公園を走っていて、『チキショー、負けてたまるか!!』と叫んで、気合を入れてます。笑ったのは思い通りのレースだったからかな」

 この男、すべてが型破りだ。「川内の常識は陸上界の非常識」と言ってもいい。今回の五輪選考会は川内にとって、相性のいい東京マラソンへの調整にすぎないのだ。

 「今はまだ東京(マラソン)に向けての調整段階。東京の過程としてはいいタイム。3位は予想外でいい順位です」

 普段は埼玉県職員で平日の練習は出勤前の2時間、約20キロを走るだけ。月間走行距離600キロは実業団選手のおよそ半分。それを補うのはレースしかない。今年に入り20レース以上に出場(<2>面に別表掲載)。これは逆に、平均的な実業団選手の倍を軽く超える。

 「40キロ走を試合でやるか、練習でやるかの違いだけ。なぜ騒がれるのか分からない」。これぞ、逆転の発想。今後も2週間後に防府読売マラソンに出場する予定。弟の鴻輝さんは「兄は決めたレースは絶対に出ます」と断言する。

 実は1週間前から風邪をひき、体調は万全ではなかった。大会前々日まで喉の痛み、胃腸の具合に苦しんでいた。レース直前の2日間で24時間も寝たという。

 「世界と戦えないヤツは、五輪に行かなくていい。東京で最低でも自己ベストを更新します」

 市民ランナーの視界にはくっきりとロンドンへの道が見えてきた。“本番”はあくまでも東京マラソン。有給休暇を取る5日は博多に残り、楽しみにしていたラーメン店巡りをする。(森合正範)

 

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