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原発不明がん

★★★渡辺亨チームが医療サポートする:原発不明がん編-1

取材・文:林義人
(2006年06月号)


安藤正志さんのお話

*1 首のリンパ節の腫れ
[頸部リンパ節の主な4グループ]
図:頸部リンパ節の主な4グループ
(1)顎下リンパ節  (2)後耳介リンパ節
(3)頸部リンパ節  (4)鎖骨上リンパ節

リンパ節の腫れは、感染の危険があるとき免疫細胞のリンパ球が集まって外敵と戦おうとする反応です。首には片側だけでもリンパ節が数10個以上あり、リンパ節結核や扁桃炎、外耳炎、ウイルス感染症、虫歯など、いろいろな病気が原因で腫れます。大きくは(1)顎下リンパ節(2)後耳介リンパ節(3)頸部リンパ節(4)鎖骨上リンパ節の4つのグループがあり、病変の場所によってどのグループが腫れるかがおおよそ決まっています。

一方、首のリンパ節が腫れているのに、発熱や扁桃の腫れ、痛みなどの炎症所見がない場合は、悪性の病気を疑うことが必要です。

耳・鼻・のどの隣接領域からのがん転移の場合や、肺・食道・乳腺などの胸部臓器や胃・大腸・肝臓・胆管系・膵臓・泌尿生殖器などの腹腔臓器からの遠隔転移、あるいは悪性リンパ腫など全身性疾患の場合もあります。とくに胸腹部のがんの遠隔転移は、鎖骨上リンパ節の腫れと結びつきがちです。


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*2 リンパ節腫大

転移したがんの症状として、首の周りだけでなく、鎖骨の上、わきの下(腋窩部)、太もものつけ根(鼠径部)などのリンパ節が腫れて、痛くないしこりとして現れることがあります。身体の表面にあって触れやすいため、がんを発見する機会になることが少なくありません。


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*3 リンパ節の腫れと原発巣の部位
[リンパ節の腫れと原発巣との関係]
図:リンパ節の腫れと原発巣との関係

鎖骨の上のリンパ節のしこりは、左右どちらにあるかによって、しばしばどこにがんがあるかを伝えることがあります。左の鎖骨の上のリンパ節が腫れている場合は、肺、消化器、泌尿器、生殖器のがんが疑われます。右の鎖骨の上のリンパ節なら、右の肺がん、右の乳がん、食道がんなどです。一方、あごの下の首のリンパ節が腫れている場合は、口腔、咽頭、喉頭など頭頸部のがんが疑われる場合があります。


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*4 血液検査

血液中からがん細胞の目印(マーカー)になる物質である腫瘍マーカーを探します。腫瘍マーカーはがん細胞自身がつくりだす場合もあり、またがん細胞と反応して体内の正常細胞がつくる場合もあります。腫瘍マーカーを検査することで、身体のどの部分にできたがんか、がんの細胞はどんな性質か、どの治療が有効かを調べることができます。しかし、多くの腫瘍マーカーには、がんに関係なく増えるなど不確実なところがあり、これだけでがんの有無を診断することはできません。


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*5 細胞診

腫れたリンパ節などの一部を切り取って、そこの細胞や組織を顕微鏡でのぞいてがん細胞の特徴を調べて、そこにがんができているかどうかを判定する検査です。また、がんには腺がん、扁平上皮がん、未分化という組織の種類がありますが(*9)、特殊な染色法で染め出してどのタイプなのかを判断し、どんな治療がいいかを判断します。


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*6 CT検査

いろいろな方向から輪切りの画像をとらえることによって、腫瘍の大きさや形をレントゲン撮影より正確に把握できます。


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*7 バリウム検査

バリウムを入れた胃や大腸などの消化器の形をレントゲン撮影することによって、そこに腫瘍があるかどうかを調べる検査です。


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*8 ガリウムシンチ

腫瘍や炎症に集まる性質があるガリウム-67というアイソトープを含んだ薬を飲んでもらい、全身の画像を撮って腫瘍の広がりを診断する方法です。


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*9 腺がん

がん細胞の種類には、胃、大腸、膵臓、乳腺など消化管や腺組織等に見られる構造を持った腺がんのほか、食道や肛門、体表を被っている扁平上皮細胞の構造を持った扁平上皮がん、そのどちらにも類似していない構造をした未分化がんなどの種類があります。がんが転移したリンパ節の病理検査で腺がんと診断された場合は、胃、大腸、甲状腺などのがん、扁平上皮がんなら、皮膚、口腔、肺などのがんが疑われます。

[扁平上皮がんと腺がん]
図:扁平上皮がんと腺がん

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*10 PET検査

がん細胞が糖をエネルギーとしていることを利用し、放射性物質を含む糖でできた薬剤を注射し、がんに集まる放射線を検出してがんを発見する装置。「陽電子放射断層撮影」とも呼ばれます。

「全身の小さながんが一度に発見できる、がん検診の切り札」と期待され、急速に普及してきました。

1994年ごろから使われ始め、現在は全国で100近くの医療機関で導入されています。ところが、最近、国立がんセンターの「がん予防・検診研究センター」で、PET検査ではがんがないとされても、他の方法でがんが発見される人がとても多かったことが発表されました。PET検診の意義は思ったほど大きくないのではないかといわれるようになっています。

[PETで発見しやすいがん、しにくいがん]
発見しやすいがん 発見しにくいがん
甲状腺がん
肺がん
大腸がん
乳がん
大腸腺腫内がん
悪性リンパ腫
膵臓がん
食道がん
卵巣がん
子宮体がん

※太字は従来の検診では見つけることが容易ではないもの
・ 生理的集積に埋もれる臓器 ・ 膀胱・尿管のがん
・ 腎がん(小さいもの)
・ 前立腺がん
・ 胃がん(小さいもの)
・ 子宮頸部のがん(小さいもの)
・ 小さすぎるがん
(分解能×2以下のものは検出困難な場合が多い)
・ あらゆる臓器
・ 進行の遅いがん ・ 前立腺がん
・ 肺がんの1部(高分化型)
・ 甲状腺がんの1部
・ 細胞成分の少ないがん
(大きくても陰性になる)
・ スキルス胃がん
・ 嚢胞性がん
・ 粘液性がん
・ G-6-Paseを有するがん ・ 肝細胞がん(高分化)
・ 腎がん(高分化)
(出典:西村恒彦ほか クリニカルPET−望千里メジカルビュー社2004;129.より一部改変)

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*11 原発不明がん

全身の十分な検査をし、注意深く経過観察をしても原発巣が確認できない転移性のがんを原発不明がんといいます。がん全体の3〜5パーセントを占めていて、それほど稀ながんではありません。

原発巣がわからないために、患者さんや担当医にとくに不安を与えやすいがんです。原発不明がんは一般には予後の悪いがんですが、そのなかには治療によく反応するサブグループというものも存在します。ですから、原発不明がんはできるだけ早く、どんなタイプなのかを診断をつけて治療に取り掛かるが大切です。

医師の中にも、「原発巣がわからないためにどういう治療をしたらいいかわからない」と考える人が少なくありません。が、そうした疾患概念があり、それに対する治療法が検討されていることを、ぜひわかっていただきたいと思います。


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