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12年度税制改正:大綱決定 景気底上げ、見通せず 自動車業界、「中途半端」に不満

 12年度税制改正大綱では、税と社会保障の一体改革に伴う消費税増税などの議論を控えて大型増税を先送りする一方、東日本大震災や円高の影響で税収が大きく伸びることも考えにくいため、既存の政策減税の延長や一部拡充など小粒の減税項目が並んだ。どこまで景気底上げにつながるかは見通せない。

 「現下の厳しい経済状況を勘案して、特に基幹産業である自動車産業とユーザーに対し減税幅を広げた」。安住淳財務相は10日未明の臨時閣議後の記者会見で、1500億円の重量税減税を盛り込んだ意義を強調した。大綱にはエコカー減税の延長が盛り込まれたほか、11年度第4次補正予算案に3000億円のエコカー補助金復活費用が盛り込まれることが固まった。

 しかし、2税廃止を求める民主党税制調査会に押し切られ、苦し紛れにひねり出したというのが実情だ。減税額は7200億円の税収の一部にとどまり、「消費税との二重課税」との批判があった自動車取得税は手つかず。延長されるエコカー減税も、現行より対象車種を絞り込むため、国内販売をどこまで押し上げるかは未知数だ。

 日本の自動車メーカーは、震災や円高、タイの洪水の影響などで、ドイツや韓国など競合メーカーに苦戦を強いられており、「国内製造業の崩壊が既に始まっている」(トヨタ自動車の豊田章男社長)と危機感は強い。今回の税制改正論議では「国内の生産拠点や雇用などを維持するうえで、自動車関係税の負担軽減は不可欠」と、業界一丸となって2税の廃止を求めてきたが、中途半端な減税しか引きだせなかったことで、「痛み分けといったところ」(大手自動車幹部)との不満の声も漏れる。

 住宅関連では、親などから住宅取得資金の援助を受けた際の贈与税非課税枠拡大や省エネ住宅向けの住宅ローン減税の拡充を盛り込んだ。こちらも1年ごとに非課税枠を減らす措置を先送りするとの内容が目立ち、大きく拡充したという実感には乏しい。企業向けでは、研究開発費の一部を法人税額から控除する措置や中小企業の投資減税も、基本は現行措置の延長で、拡充は一部にとどまった。【小倉祥徳、米川直己】

 ◇「ねじれ国会」の克服課題

 12年度税制改正大綱には、11年度税制改正に含まれながら野党の反対で成立していない地球温暖化対策税(温対税)などが再度盛り込まれた。安住淳財務相は10日未明の記者会見で「コンセンサスを得られるものをピックアップした」と述べ、野党の歩み寄りが見込めるとの期待感を示した。しかし、「ねじれ国会」の下で協議の先行きは見通せない。

 温対税については公明党は導入に理解を示しているが、自民党は「対策の全体像が不透明で、単なる財源あさりと断ぜざるを得ない」と批判し、反対姿勢を崩していない。

 政府・与党は「税と社会保障の一体改革」実現に向け、年明け以降、野党に協議を呼びかける方針。12年度大綱で与野党の意見が分かれる増税案を盛り込んだことは、与野党協議に微妙な影響を与える可能性もある。【赤間清広】

毎日新聞 2011年12月11日 東京朝刊

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