きょうの社説 2011年12月10日

◎2閣僚問責決議 党内融和より国益優先を
 一川保夫防衛相と山岡賢次消費者担当相に対する問責決議案が参院で可決されたことに より、野田政権は一層苦しい立場に追い込まれた。問責決議に法的拘束力はなく、野田佳彦首相は2人をかばう姿勢を変えていないが、このまま居座れば、首相が目指す消費税増税の与野党協議入りは困難となり、来年1月召集の通常国会も冒頭から紛糾するだろう。追及の矛先は今後、野田首相へ向かうことになる。

 問責決議で閣僚の首がすげ替えられるのは正常な姿とは言い難く、官邸周辺では首相の 独断で2人を更迭できないという声もある。両者ともに小沢一郎元代表のグループから登用した経緯があり、2人を外せば党内融和に傷が付く。特に「参院枠」の一川氏の辞任には輿石東幹事長の了解も必要とされる。小沢氏が消費税増税批判を強めているだけに、野田首相からすれば腫れ物に触るような心境なのかもしれない。

 だが、普天間飛行場移設問題での環境影響評価書の提出と次期主力戦闘機(FX)選定 が年内に迫っている。一川氏が続投したままで、辺野古移設の環境影響評価書を沖縄県知事に提出すれば、沖縄の怒りは頂点に達するだろう。次期主力戦闘機の選定もこの先数十年の日本の安全保障を左右する重大案件であり、トップの見識が問われよう。党内融和より国益を最優先に考えれば、答えはおのずと明らかである。

 普天間問題以外でも中国やロシア、北朝鮮の動向は気が抜けず、新たな「挑発行為」の 可能性も否定できない。一川氏続投でこうした課題を乗り超えられるのか。野田首相のみならず、政府・与党全体で真剣に考えてほしい。

 民主党内では国会召集前に小規模な内閣改造を行って、一川、山岡両氏を交代させる案 が浮上している。野田内閣は発足から3カ月しかたっておらず、ここで改造に踏み切れば、自らの任命責任を認めるようなものであり、政権の求心力低下は避けられない。

 それでも辞任による事態の収拾を求める声は日増しに強まり、決断を求められるときは 遠からずやって来る。結論の先延ばしは傷口を広げるだけである。

◎金沢創造都市会議 「ルネッサンス」の牽引役に
 「都市の再創造」を総合テーマに掲げた金沢創造都市会議は、その代表例として、金沢 21世紀美術館、しいのき迎賓館、金沢城公園を挙げ、テーマの方向性を明確に示した。

 都心の真ん中にあった大学、県庁の移転という都市の浮沈にかかわる劇的な変化を経て 、跡地周辺では今、年間150万人以上を集める21美をはじめ、各施設の魅力で都心に新たな磁力を生み出している。創造都市会議が評価した、まさに「歴史の審判にたえうる施設」といえる。

 むろん、3施設とも簡単に実現したわけでなく、具体化までには行政、経済界、市民も 巻き込んだ激しい論争があり、曲折の末の難産だった。これらの経緯をみても、「歴史の審判」にたえるには、望ましい都市像を追求する、たゆまざる営みが必要である。都市の再創造とは「ルネッサンス」の積み重ねとの指摘がなされた。北陸新幹線開業へ向け、金沢創造都市会議が担う役割も、そうした議論の牽引役になることだろう。

 金沢創造都市会議は、金沢経済同友会の創立40周年を機に具体化し、2001年に第 1回が開かれた後、金沢学会と交互に開催されてきた。経済人が自らの利害を超え、研究者や行政関係者と議論を重ねて具体的な提言を練り上げ、県や市の施策に反映されてきた。

 行政の都市政策は財政の制約もあり、長期的な視野に立った斬新な発想が出にくい面が ある。補助金目当ての立案では、中央の制度に引き寄せられ、画一的になりやすい。既成概念にとらわれない発想で金沢像を探る創造都市会議の役割はますます重くなっている。

 金沢中心部では今、昭和30年代に親しまれたメニューを復活させた「香林坊レトロ食 堂」の企画が展開されている。B級グルメや丼選手権など、全国で食のイベントが広がるなか、「レトロ」の切り口は金沢独自のアイデアである。

 都市の再創造とは、都市が本来もっている力を生かすことであり、そのヒントは歴史の なかにある。都市の活力を取り戻す「ルネッサンス」の種は、足元にまだまだ埋まっているはずだ。